髭を濃くしたい・長く伸ばしたいというとき、髪用の育毛剤を転用することは避けてください。髭と髪では、発育に関係するホルモンが違っています。
髭の育毛・増毛を目指す場合、髪とは別のアプローチが必要になるため、髭専用の育毛剤を活用するようにしましょう。
この記事では、髭を伸ばしやすくするためのポイントや使用できる育毛剤を解説します。
髭に髪用の育毛剤は使える?
髭に髪用の育毛剤・増毛剤を使うことはできません。髭の発育には男性ホルモンが関わっているのに対し、髪の発育は女性ホルモンの影響を大きく受けるためです。
髭の発育に作用するホルモン
髭の発育に作用するホルモンは、男性ホルモンの一つであるテストステロンです。テストステロンの分泌が多いと体毛が濃くなり、髭も伸びやすい傾向があります。一方、髪の発育に関わるのは、主にエストロゲンやプロゲステロンと呼ばれる女性ホルモンです。
髭だけでなく髪などの体毛は、ずっと伸び続けているのではありません。成長期・退行期・休止期というサイクルのなかで毛は成長し、やがて抜け落ちます。このとき、テストステロンに5αリダクターゼが結合することで作られた「ジヒドロテストステロン(DHT)」は、細胞の成長因子などに影響を与えて髭の成長期を伸ばす働きをするのが特徴です。
成長する期間が長くなれば、髭は長く濃くなりやすいでしょう。ただし、髪の場合はジヒドロテストステロンによって毛の成長期が短くなることが報告されています。
また、髭の生育は遺伝や生活習慣にも影響され、男性ホルモンだけが要因になるわけではありません。しかし、男性ホルモンが多い人は髭が濃くなりやすい傾向にあります。
髭を濃くするには髭専用の育毛剤を使用する
男性ホルモンは髭の成長期を伸ばし、濃くする働きを持っています。髭のための育毛剤は、この男性ホルモンの働きを利用した薬です。市販の髭用育毛剤は男性ホルモンであるテストステロンを主成分としており、髭などの硬さのある毛に使用できます。市販されている髭専用の育毛剤を購入する他、クリニックで相談して薬を処方してもらうことも可能です。
対する髪の育毛剤は、エチニルエストラジオールなどの女性ホルモンの働きによって発毛・毛の成長を促進するものであり、髭のような頭髪以外の場所には使えません。
髭が伸びにくいのはなぜ?
髭が細い、部分的にしか生えないなど、髭が伸びにくい方は遺伝の影響や男性ホルモンの分泌量が原因として考えられるでしょう。ただし、遺伝的に髭が伸びにくい方でも、生活習慣によって髭が濃くなる場合はあります。
遺伝
成人男性には1平方センチメートルあたりで120本ほど、平均で一人2~3万本程度の髭が生えていますが、その量には個人差があります。特に「一つの毛穴から生える毛の本数」「毛の太さ」「毛の長さ」は、遺伝による影響が大きい要素です。
また、髭に関係する遺伝型があることも研究で明らかになりました。とあるDNAの配列において、髭の濃さは以下3つの遺伝型に影響を受ける傾向にあります。
・GGの遺伝型:髭が薄い ・GAの遺伝型:髭がやや薄い ・AAの遺伝型:髭がやや濃い |
ただし、髭の濃さは遺伝がすべてではなく、生活習慣によって濃くなることもあります。
男性ホルモンの分泌が少ない
男性ホルモンの分泌量が少ない場合、髭は育ちにくいといわれています。男性ホルモンであるテストステロンは、加齢とともに減少するだけでなく、運動不足や食生活の乱れ、睡眠不足などによっても分泌量が減ってしまうため注意が必要です。
テストステロンの減少は、疲れやすさや集中力・やる気の低下、性欲の減退にもつながります。ストレスもまた、テストステロンの分泌を低下させる要因となるため、疲れを溜めこみすぎないようにしましょう。
髭を伸ばしやすくするためのポイント
毛穴から生える髭の本数や太さ、長さは遺伝によって左右されやすい要素です。しかし、髭の濃さは遺伝だけでなく、日々のスキンケアや生活習慣など遺伝以外の要素にも影響されます。髭を伸ばしたい場合には、適切な食生活や運動習慣を心がけてみてください。
毎日のスキンケアを心がける
人間の肌は、日常生活を送るなかで表面に角質や皮脂が溜まっていきます。これらは皮膚のうるおいを保つ役割をする一方で、過剰に蓄積すると肌トラブルを招きかねません。毎日の洗顔で過剰な皮脂や角質を取り除き、保湿を心がけると肌のターンオーバーが正常に近付き、髭も生えやすくなります。
毛穴の詰まりや角質の溜まりやすさが気になる方は、週に1~2回ほどスクラブ洗顔を行うとよいでしょう。スクラブ洗顔で優しく皮脂や角質を落とすことで、髭剃り後の埋没毛や肌荒れも防ぎやすくなります。
男性は皮脂が多く水分は少ない傾向にあり、肌を健やかな状態に保つには保湿がとても大切です。洗顔後は、化粧水や乳液でしっかりと保湿をしてください。
タンパク質を中心にバランスのよい食事をする
偏った食事は栄養バランスの乱れにつながり、肌のターンオーバーを滞らせてしまいます。また脂肪分の多い食事ばかり摂っていると、毛穴が詰まりやすく髭の発育にも悪影響を及ぼしかねません。
髭はタンパク質でできています。良質なタンパク質を摂るとともに、タンパク質の吸収をサポートするビタミンB6、男性ホルモンの生成に役立つミネラルもきちんと摂取しましょう。ビタミンA、C、Eも髭の成長に関係する栄養素です。野菜や果物もバランスよく摂るようにしてみてください。
特にタンパク質は、男性ホルモンの産生に関わる重要な栄養素です。羊や牛の肉に多く含まれるアミノ酸の一種であるカルニチンは、テストステロンの分泌量を増やす効果が期待できます。また、貝類もおすすめの食材です。貝類にはタンパク質のもととなるアミノ酸や、男性ホルモンを作るのに使われる亜鉛が多く含まれています。
ストレス解消法を持っておく・運動習慣をつける
ストレスの蓄積は、男性ホルモンの分泌量を減少させる一つの要因です。強いストレスがかかると、ストレスから体を守るホルモンであるコルチゾールの分泌量が増え、テストステロンのもととなるDHEAというホルモンを消費してしまいます。ストレスを抱え込みすぎないためにも、自分なりのリフレッシュ方法を持っておくとよいでしょう。
なお、大きな筋肉を動かすことでテストステロンの分泌量が増える他、筋肉自体でもテストステロンが作られるとされています。このため、適度に体を動かすことでストレスを解消しつつ、筋肉を維持するのも一案です。
適切な睡眠時間・環境を確保する
男性ホルモンであるテストステロンは、睡眠中に多く生成されます。睡眠中は成長ホルモンの働きによって細胞の修復も行われているため、良質な睡眠は髭の発育にもよい影響を与えるでしょう。睡眠の質を向上させるには、次のようなことを心がけてみてください。
・7~8時間の睡眠時間を確保する ・就寝の2~3時間前にお風呂に入る ・眠る前にスマートフォンやテレビを観ない ・寝室の照明を暗くして気分を落ち着かせる ・起床後は朝日を浴びる |
睡眠不足になると筋肉が維持しにくくなり、ストレス耐性も下がりやすくなるという悪循環に陥ります。就寝前はゆったりと過ごし、眠りにつきやすい環境を整えましょう。
髭に使える市販育毛剤「ミクロゲン・パスタ」
髭に使える市販の育毛剤として、ミクロゲン・パスタという製品が発売されています。
効能効果 |
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男女両性の無毛症、貧毛症(顔面、胸部、四肢、腋窩、恥部の発毛促進と育毛) |
ミクロゲン・パスタは男性ホルモンを主成分とした薬
ミクロゲン・パスタは、男性ホルモンを補うメチルテストステロンとテストステロンプロピオン酸エステルを主成分とした、髭や眉毛、胸毛、腋毛など頭髪以外に使える育毛剤です。吸収されやすいクリームタイプになっており、髭などの硬毛の生育促進に役立ちます。
この製品は、薬剤師から説明を聞くことで購入できる第1類医薬品です。男性はもちろんのこと、女性が使っても問題ありません。頭髪とまつ毛以外であれば眉毛やアンダーヘアなどさまざまなパーツに使用でき、比較的手に取りやすい価格で販売されています。
使用方法
ミクロゲン・パスタはチューブに入ったクリームタイプの外用薬で、体毛を濃くしたい場所に擦り込んで使います。髭に使用する場合、1回につき小豆粒くらい(0.1~0.3g)の量を出し、1日1~2回塗布しましょう。
効果が得られるまでには個人差がありますが、2~3か月が使用期間の目安です。1~2か月使用しても変化がない場合、人によっては効果が期待できない可能性もあるため、漫然と使い続けることは避けましょう。
副作用
ミクロゲン・パスタは医薬品であり、副作用が出ることもあります。副作用として報告されているのは、使用した部分の発疹・発赤・はれ・かぶれ・かゆみ・水疱・にきびなどです。ミクロゲン・パスタを使ったあと、もしこれらのような症状が出たら、使用を中止して医師や薬剤師に相談してください。
使用上の注意点
ミクロゲン・パスタは、頭髪やまつ毛には使用できません。妊婦の方や妊娠している可能性のある方、授乳中の方、15歳未満の小児も使用不可です。
また、ミクロゲン・パスタは前立腺の機能に影響を及ぼす可能性があります。特に50歳以上の男性では前立腺腫瘍のリスクが高まるため、ミクロゲン・パスタの使用前と使用継続期間中は、前立腺検査を定期的に受けるようにしましょう。
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