【薬剤師が解説】インフルエンザで抗生物質が出されるのはなぜ?

インフルエンザのときにペニシリン・メイアクト・フロモックスなどの抗生物質・抗生剤・抗菌剤が処方されることがあります。その理由や服用の注意点についてまとめました。抗生物質を飲んでいるときの予防接種についても解説します。

インフルエンザの感染が確認されると、基本的に病院ではタミフル・イナビル・リレンザといった抗インフルエンザ薬が処方されます。
こういった薬と一緒に、抗生物質(抗生剤・抗菌剤)も処方されるケースがあります。

薬に詳しい方は「あれ、インフルエンザウイルスに抗生物質って効くんだっけ?」といった疑問を感じることもあるのではないでしょうか。

実際に「なんで抗生物質が出されているの?」「過剰じゃない?」といったご相談を薬局でいただくことが時々あるので、今回はインフルエンザで抗生物質が処方される理由を解説します。

抗生物質はインフルエンザウイルス自体には効果なし

抗生物質とインフルエンザウイルスの関係を先にお答えすると、「抗生物質はインフルエンザの原因であるウイルスを殺すものではない」が答えになります。
つまり、インフルエンザをはじめ、ウイルスに抗生物質(抗生剤・抗菌剤)は直接的には効果がありません。

ウイルス・細菌・真菌の違い

私たちの身近な感染症の原因のほとんどは、①細菌 ②真菌 ③ウイルスというもののどれかになります。

①細菌
細菌は通常1-10 μmほどの微小な生物です。ニキビの原因になるアクネ菌や、食中毒や腹痛の原因となる黄色ブドウ球菌などがこのグループになります。

②真菌
真菌はカビの一種で、細菌よりサイズも大きな微生物です。こちらは、パンなどに生えるカビのほか、水虫やカンジダの原因となる「白癬(はくせん)」などがこのグループにいます。

③ウイルス
ウイルスは、細菌や真菌と異なるものです。
細菌は単独でも増殖しますが、ウイルスは人間や他の生物の細胞を利用しないと増殖ができず、細胞ももたず生物ではありません。
インフルエンザの原因はウイルスのグループになります。

そして、抗生物質は①細菌を殺す薬です。抗生物質自体で直接ウイルスが死んだり消されるようなことはないんですね。

インフルエンザで抗生物質が処方される理由

それでも、インフルエンザの症状がひどい時や、子ども高齢者の方には抗生物質(抗生剤・抗菌剤)が一緒に処方されることがあります。

インフルエンザで体力や免疫力が落ちると、いつもだったら感染しないような細菌に感染して気管支炎や肺炎などになってしまうことがあります。これをインフルエンザの合併症といいます。

インフルエンザはとても身近な感染症ですが、実に1万人前後もの方が毎年亡くなっています。
そして死亡の原因の大半が、インフルエンザの感染自体よりインフルエンザによる合併症や重症化となっています。
つまりインフルエンザ感染後に、肺炎球菌などの細菌に感染して肺炎を発症し死亡につながっているのです。

そのため、合併症や重症化を防ぐために、もともと体力や免疫力が落ちている方や小さな方には、インフルエンザの薬と一緒に抗生物質が処方されるのです。

厚生労働省でも同様の情報通知が行われています。

インフルエンザウイルスに抗菌薬は効きませんが、特に御高齢の方や体の弱っている方は、インフルエンザにかかることにより肺炎球菌などの細菌にも感染しやすくなっています。このため、細菌にもウイルスにも感染(混合感染)することによって起こる気管支炎、肺炎等の合併症に対する治療として、抗菌薬等が使用されることはあります。

厚生労働省-インフルエンザQAより

インフルエンザの合併症について、詳しくはこちらの関連記事をご覧ください。

処方された抗生物質の服用の注意

抗生物質(抗生剤・抗菌剤)は通常、数日間分を処方されることがほとんどです。

そして、他の咳止めや解熱剤、痛み止めと異なり、体調・症状が良くなっても抗生物質は最後まで飲みきることが大切になります。

この理由の一つは、体調が良くなってもしばらくは体内に細菌が存在しているので、あとから症状が悪化したり発症してしまうことがあるため、再発予防のためにも最後まで飲むことが大切だという点です。

もう一つの理由は、耐性菌を作らないという点です。
中途半端に抗生物質を服用すると病原菌である細菌が、その薬に耐性を持ってしまい、薬が効かなくなるという恐れがあるのです。
そういった耐性をもった細菌が再度自分に感染したり、身近な他の方に感染してしまうと一気に治療が難しくなってくるのです。

そのため、病原菌が耐性を持つ前に徹底して叩いてしまうことが大切で、最後まで服用していただくこととなっています。

インフルエンザ予防接種と抗生物質の関係

インフルエンザのワクチンと相互作用がある薬はなく、抗生物質も一緒に飲んでも問題はありません

ただし、何かの感染症でメイアクトなどの抗生物質を服用中の場合は、予防接種の前に担当医に必ず確認しましょう。

また、一時的にワクチンの副反応で体調が崩れることがあります。
インフルエンザの予防接種の代表的な副反応には、接種した場所の赤みや発赤、はれや腫脹(しゅちょう)、痛みや疼痛(とうつう)、発熱、頭痛、寒気や悪寒、だるさや倦怠感等があります。これらの一般的な副反応は通常2〜3日で自然に治ります。こういった個別の副反応や副作用には引き続き気をつけてください。

万が一急な体調変化があったときは、医療機関に相談しましょう。

インフルエンザの予防接種について、詳しくは関連記事をご覧ください。

インフルエンザで処方される薬一覧

インフルエンザでは症状や個人の体質、状況に合わせてウイルス以外のお薬もセットで処方されることが多くあります。
それぞれ、どのような薬なのか御門がある場合は、医師や薬剤師に確認して薬や病気への理解を深めましょう。

最後におまけとして、インフルエンザのときに処方される薬をまとめてみました。
(あくまでも一例なので、他の薬が一緒に出ることも多くあります。他の薬が出た時などは医師や薬剤師に確認を取り、用法用量をしっかり守りながら治療にあたってください)

■抗インフルエンザ薬
インフルエンザになるとほぼすべての方に「イナビル、タミフル、リレンザ」のいずれかが処方されるでしょう。病院で入院や点滴を受ける方は「ラピアクタ」というお薬が使われるかもしれません。
これらはインフルエンザウイルスの増殖を抑えるお薬で、ウイルスの活動に直接的に効果を発揮する主力的な治療薬になります。

■解熱剤・鎮痛剤・けいれんの薬
子供であれば「アセトアミノフェン(カロナールやアンヒバやピリナジンなど)」、大人であれば「ロキソプロフェン(ロキソニンなど)」がよく処方されるでしょう。
インフルエンザになるとかなりの高熱と、頭痛などを伴います。これらの発熱や痛みを止めるのにこういった薬がよく処方されます。
これらの薬は発熱や痛みがあるときだけ使い、症状が良くなったら飲まなくて良いという処方がほとんどです。
(状況によっては最後まで服用するように言われることもあるので、その場合は医師・薬剤師に相談しましょう)

また、2歳未満の子どもは高熱でけいれんを起こすこともあるため、けいれんを予防する薬が一緒に処方されることもあります。
ダイアップ坐剤(座薬)などが処方された時は、使うタイミングなどをしっかりと医師や薬剤師に確認しておきましょう。

■胃の粘膜を守る薬
ロキソニンが処方された時などは、副作用の胃痛を防ぐために胃の粘膜を抑える薬が一緒に処方されることもあります。
「ムコスタ」「セルベックス」などが有名ですね。解熱鎮痛剤とセットで飲むようにと処方された時はこれらの理由であることが多いでしょう。

■咳止め・痰を抑える薬・喉のはれを抑える薬
インフルエンザでは咳がよく出るため、咳止めや喉の腫れを抑える薬がよく出ます。
これらの薬は対症療法であることも多いので、症状が治まったら飲まなくても良いかなどを処方医や薬剤師に確認してみても良いでしょう。

■鼻水を抑える薬
インフルエンザでは鼻水が出ることも多く、鼻水を抑える薬や鼻づまりを抑える薬が一緒に出ることも多いです。
代表格としては「アレルギー薬(抗ヒスタミン剤)」です。
これらの薬も対症療法であることも多いので、症状が治まったら飲まなくても良いかなどを処方医や薬剤師に確認してみても良いでしょう。
また、注意したいのは、アレルギー薬の中には眠気の副作用が出るものもあるという点です。
眠気が出にくいタイプの薬も最近はいくつかあるので、眠気が出たら困る方は事前に医師にお伝えいただくのもオススメします。

■抗生物質(細菌を殺すお薬)
今回ご説明した通り、抗生物質(抗生剤・抗菌剤)も一緒に処方されることがあります。
もし処方されたらしっかりと用法用量を守って最後まで服用するようにしましょう。

インフルエンザ菌には抗生物質が効く!

インフルエンザウイルスと似た名前で、インフルエンザ菌という細菌がいます。インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは全く違う病原体です。

インフルエンザ菌感染症は、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Haemophilus influenza type b)が原因で起こる細菌感染症です。
別名Hib感染症とも呼ばれ、5歳未満の乳幼児なら誰でも感染の危険性があります。

Hibが脳や脊髄を包む髄膜の奥まで入り込んでしまうと肺炎、敗血症、髄膜炎、化膿性の関節炎になることがあり、特に髄膜炎にかかった場合には、運動マヒ、難聴、知能障害などの重い後遺症に繋がる可能性があります。

この場合、インフルエンザ菌は細菌感染の部類になりますので、抗生物質は治療薬として有効です。

インフルエンザ菌について、詳しくは関連記事をご覧ください。

おわりに

このようにインフルエンザではウイルスの増殖を抑える薬や、細菌の感染を抑えるといった根本解決に直接繋げる薬とセットで「対症療法薬」もよく出ます。

日頃あまり薬を使われていない方は突然多くの薬を目にして驚かれるかもしれません。

それぞれの薬が何を目的とした薬なのか、そして、どの薬はしっかりと最後まで服用するのかなどは医師や薬剤師に確認しておきましょう。

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