渡航前にしっかり予防!海外感染症対策
今夏、世間を賑わせたデング熱、アジアやアフリカでは毎度のことだったりします。日本では馴染みのない感染症も、海外に出る際にはしっかり対策をしていきましょう。今回は、世界各地に渡航される際の感染症事情と対策をご紹介します。
「中国・東アジア」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
中国は広大な国土を有するため、北部の寒帯から南部の熱帯まで、はやる病気も様々です。北京では5月から10月の夏期にかけて赤痢や腸チフスなどの消化器系感染症が多く見られます。南部の温暖な地域ではマラリアが発生しています。また、中国全土で狂犬病の感染例も報告されていますので、動物に触れたりするのは避けましょう。
「東南アジア」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
観光地として人気のタイやベトナム、フィリピンは雨期になるとデング熱が大流行することがあります。また一年を通して、アメーバ赤痢や細菌性赤痢、腸チフス、A型肝炎などの経口感染症の危険があります。生ものや生水、氷などの飲食は非常に危険です。狂犬病も注意しましょう。2006年にフィリピンから帰国した2名の方が狂犬病で亡くなられています。
「南アジア」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:ポリオ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
インドやバングラデシュなどの国々では、モンスーンの時期に上下水道が混ざるなど非常に水事情の悪い地域です。そのためコレラや腸チフスなどがしばしば流行します。A型肝炎やE型肝炎などは都市部でも見られ、ジアルジア症や回虫などの寄生虫疾患も度々見られるので、屋台での飲食やフルーツジュースを含む非加熱の食品には特に注意しましょう。また、マラリやデング熱は一年中発生しています。南部の一部地域は一年中日本脳炎が発生しています。インドは狂犬病の患者が世界最多の国です。犬だけでなく、牛や猿などの動物にも近寄らないようにするのがよいでしょう。
「中東」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:ポリオ、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
この地域は気温が50度を超える熱帯砂漠の地域から、冬は氷点下となる山岳地域もあります。アラブ首長国連邦やカタール、サウジアラビアなどの地域では5月から11月にかけて気温が上昇し、食中毒が多く発生します。細菌性赤痢やA型肝炎、サルモネラ、コレラ、アメーバ赤痢などに注意が必要です。アフガニスタンはポリオの流行国です。イスラエルでも2013年に採取された汚水から野生株ポリオウィルス1型が検出されています。また中東の凡そ半数の国々では、マラリアに感染する危険があります。過去には狂犬病や鳥インフルエンザ(H5N1)の患者も発生しているので注意が必要です。
「アフリカ北部」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:ポリオ、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
この地域は水道施設の不備により、水道水が汚染されている可能性がありますので、飲食による感染性胃腸炎がみられます。腸炎ビブリオやサルモネラ、腸チフス、赤痢、コレラ、ジアルジア症等、多くの経口感染症がみられます。アルジェリア南部では三日熱マラリア、北アフリカではウェストナイル熱に感染する危険性もあります。これらの病気は蚊を媒介に移ります。また、サシチョウバエのような吸血昆虫によるリーシュマニア症も発生しているので、虫除け対策は万全を期しましょう。
「アフリカ中部」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:黄熱、ポリオ、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
この地域では、一年中蚊を媒介にするマラリアやデング熱、フィラリア症、チクングニア熱への注意が必要です。また、このアフリカ中部は、髄膜炎ベルトと呼ばれるほどの髄膜炎流行地域でもあります。髄膜炎菌性髄膜炎になる可能性もあります。その他にもエボラ出血熱やペスト、狂犬病も非常に流行しているので注意しましょう。
「アフリカ南部」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:ポリオ、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
南アフリカ北東部、ナミビア北西部、ボツワナ北部では、年中マラリアに注意が必要です。蚊を媒介とするデング熱やフィラリア症、チクングニア熱にかかる危険性もあるので、虫除け対策は必須です。アフリカでは一般的な、ダニに咬まれることでうつるアフリカダニ熱は、時に致命的な合併症を引き起こすこともありますので注意しましょう。
「ロシア・東ヨーロッパ」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:ポリオ、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
初夏の森林地帯ではダニ媒介脳炎が流行します。シベリア南部では炭疽が散発的に発生していますので、炭疽菌に感染した食肉に触れるだけでも感染しますので注意しましょう。南部・黒海沿岸地方では、クリミア・コンゴ出血熱が春から夏にかけて流行します。またロシアでは毎年、人の狂犬病発症例が報告されています。動物への接触は避けましょう。
「中南米」への渡航での感染症対策
推奨予防接種:黄熱、A型肝炎、B型肝炎、狂犬病、破傷風。
この地域では、水や食べ物も介して、食中毒、コレラ、A型肝炎、細菌性赤痢、サルモネラ感染症などの消化器系の病気が多く発生しています。また、齧歯類の糞尿が混ざったほこりを吸い込むことで感染するハンタウィルス肺症候群も報告されています。屋内で齧歯類のいるような場所は避けましょう。
まとめ
水や食べ物の安全性、公衆衛生に関して日本はかなり進んでいる国です。日本と同じ感覚で海外に行かれると、相当痛い目に遭うかもしれません。
成田空港をはじめ、全国各地の検疫所、国立医療センターで予防接種を受けることが可能です。しっかり準備をしてから渡航するようにしましょう。