ネキシウムはどんな薬?
ネキシウムはアストラゼネカ社により開発されたプロトンポンプ阻害薬(PPI)で、主成分はエソメプラゾールです。
胃酸の分泌を抑え、主に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎の治療や、ヘリコバクター・ピロリによる感染胃炎のヘリコバクター・ピロリの除菌を助ける薬です。
酸抑制効果に優れ、1日1回の服用で効果が長時間持続すること、副作用の発現確率が比較的低いことが特徴です。
国内ではネキシウム10mg、ネキシウム20mgが販売されています。
ネキシウム服用時、消化性潰瘍においては軽度から重度の症状にも優れた効果を発揮し、逆流性食道炎の症状に対しては速やかな症状持続消失効果を発揮します。
ネキシウムの効能・効果
ネキシウムは胃痛、胃もたれ、胃潰瘍、胃炎 胃痛、慢性胃炎などの胃の不調や、むねやけ、逆流性食道炎、十二指腸潰瘍、腹痛など幅広い消化器における不調の改善緩和に効果的です。
胃粘膜など、胃内に感染したピロリ菌の除菌を補助するときにも使用されます。
ネキシウムの効能効果について、添付文書上には以下のように表記されています。
逆流性食道炎、胃痛、ピロリ菌に対する効果についても確認しておきましょう。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症(ネキシウムカプセル10mg のみ)、Zollinger-Ellison 症候群、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制。
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALT リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助。
ネキシウムは逆流性食道炎の症状持続を消失させる
ネキシウムは胃酸の分泌異常により引き起こされた逆流性食道炎による痛みや腹部の違和感の継続を消失させます。
ネキシウムの胃痛への効果は?
ネキシウムは優れた胃酸分泌抑制効果を持つため、胃酸過多による胃痛、胃もたれ、胃炎(慢性胃炎含む)、胃・十二指腸潰瘍、むねやけ、腹痛症状には高い効果を発揮します。
ネキシウムのピロリ菌に対する効果は?
ネキシウムはピロリ菌を完全に除去する効果は認められていないものの、ピロリ菌のはたらきを鎮める効果を持つため、除菌を補助する役割を担っています。
ネキシウムが効かないときの対処法とは
ネキシウムを用法用量に沿って一定期間使用しても一向に効果が感じられない時は、一度かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
効果がない場合、漫然と使用を継続していくことは適切ではありません。これはどの薬にも共通して言えることです。
ネキシウムはプロトンポンプ阻害薬(PPI)に分類される薬ですが、同じ胃酸分泌効果をもつものにH2ブロッカーという薬が存在します。
ネキシウムを服用して効果を感じられない場合、薬の量を変更する、もしくはPPIからH2ブロッカーというように含有成分の異なる薬を服用するという選択肢があげられます。
ネキシウムの効果が感じられなかったり、効果に対して少しでも疑問に思うことがあれば医師または薬剤師と相談の上、症状の改善のための選択をしていきましょう。
気になるネキシウムの副作用とは?
ネキシウムの主な副作用は下痢、CK(CPK)上昇(筋肉などに多い酵素)、肝機能異常、ALT(GPT)上昇(肝機能系の酵素)などが報告されています。
いずれも頻度はあまり高くないため、特別な対策は必要ないかもしれませんが、比較的長い期間飲み続ける薬ですので、異常を感じた場合は、処方された先生に相談しましょう。
重篤な副作用
まれに起きうる重篤な副作用は以下のとおりです。
*ショック、アナフィラキシー
*汎血球減少症、無顆粒球症、血小板減少
*劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全
*中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
*間質性肺炎・間質性腎炎
*低ナトリウム血症
*錯乱状態
これらの副作用も発現する可能性は低いと考えられますが、やはり異常を感じた場合は、処方した医師または薬剤師に相談しましょう。
その他の副作用
ネキシウム服用時、まれに眠気、めまい、頭痛、吐き気の症状が出ることがあります。
発生頻度は低いものの、副作用の症状がひどかったり、何度も継続してあらわれる場合は処方した医師または薬剤師に相談しましょう。
ネキシウムには骨を弱くする副作用がある?
ネキシウムの長期服用により骨を弱くするリスクがあるのではないかという仮説のもと研究が行われていることは事実ですが、ネキシウムの服用で骨に影響を与えるという事実の根拠は実証されていません。
現在、骨粗しょう症などを患う人は、その旨をかかりつけの医師や薬剤師に申告したうえで服用しましょう。
ネキシウムを服用すると痩せる?
ネキシウムを服用したとき、薬の作用として体重が減少することはありません。
ネキシウムの副作用である下痢等の症状の発現により、結果的に体重が減少する可能性はありますが、痩せることを目的としてネキシウムを服用することは適切ではありません。
ネキシウムの用法・用量
ネキシウムの服用方法、服用量は症状により異なります。
投与を継続できる期間についても、症状により異なるため、しっかり確認しておきましょう。
胃潰瘍症状の場合
■胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、Zollinger-Ellison症候群
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを1日1回経口投与する。なお、通常、胃潰瘍、吻合部潰瘍では8週間まで、十二指腸潰瘍では6週間までの投与とする。
■非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを1日1回経口投与する。
■低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを1日1回経口投与する。
食道炎症状の場合
■逆流性食道炎
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mgを1日1回経口投与する。なお、通常、8週間までの投与とする。さらに再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、1回10~20mgを1日1回経口投与する。
■非びらん性胃食道逆流症
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回10mgを1日1回経口投与する。なお、通常、4週間までの投与とする。
ピロリ菌症状の場合
■ヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びクラリスロマイシンとして1回200mg(力価)の3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。
なお、クラリスロマイシンは、必要に応じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とする。
プロトンポンプインヒビター、アモキシシリン水和物及びクラリスロマイシンの3剤投与によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合は、これに代わる治療として、 通常、成人にはエソメプラゾールとして1回20mg、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びメトロニダゾールとして1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。
参考:ネキシウム添付文書
ネキシウムを服用するときの注意点
ネキシウムを服用するときに知っておきたい4つのことを紹介します。
ネキシウムは脱カプセル服用が可能?
ネキシウムにおける脱カプセル服用(カプセルを外し服用すること)は推奨されていません。
カプセル状のまま服用することが困難な場合の方法として、脱カプセル服用は禁止されていませんが、自己判断で脱カプセル服用をすることはやめましょう。
どうしてもカプセル状での服用が難しい場合は、必ず医師や薬剤師と相談しましょう。
医師や薬剤師と相談の上で脱カプセル服用をする場合にも注意したいのは、脱カプセル服用時、中身は粉砕して服用しないこと。
粉砕することにより薬の効果に影響を与える可能性があるためです。
ネキシウムを服用するのは食後?最適なタイミングとは
ネキシウムを服用するとき、食前や食後でないといけないという決まりはありません。
1日のうちのどのタイミングで服用しても症状を悪化させたり、薬の効果に大きな影響を与えるものではないとされています。
ネキシウムの服用するタイミングを選択するならば、ネキシウムの効果があらわれる時間、効果の持続時間をふまえた上で自身のライフスタイルにあわせて服用を継続するとよいでしょう。
※医師や薬剤師からの指導により服用のタイミングを指定されている場合は、そのタイミングに従って服用してください。
ネキシウムを服用後どれくらいで症状消失がみられるか
胸やけ症状を主とした逆流性食道炎を患う人を対象とした初期治療の試験結果を参考に症状消失時間の目安を考えていきましょう。
※症状の改善ではなく7日間全く症状のない状態を症状消失と定義します。
ネキシウム服用前、胸やけ症状が見られた患者においてネキシウム20mgを1日1回服用したところ、胸やけ症状消失日は1.5日(中央値)でした。
個人差はあるものの、1.5日で症状消失効果がみられるネキシウムはつらい症状に悩む人にとって早期改善のきっかけとなる可能性は高いでしょう。
ネキシウムの効果持続時間はどれくらい?
ネキシウムは1日1回の服用で24時間の間胃内のphを良好にコントロールすることができます。
ネキシウム使用上の注意点
ネキシウムを服用するときの注意点を確認しておきましょう。
以下にあてはまる人は、特に注意が必要です。
(1) 薬物過敏症の既往歴のある患者
※アナフィラキシーショックなどを引き起こす可能性がある
(2) 肝障害のある人
※ネキシウムは肝代謝型であり、血中濃度が高くなる おそれがある。
(3) 高齢者
高齢者の服用について
エソメプラゾールマグネシウムは主として肝臓で代謝される薬です。
高齢者は肝機能やその他の生理機能が低下していることが多いので、慎重に服用することが必要です。
低用量から服用を開始するなど、医師と相談の上服用しましょう。
授乳婦の服用について
授乳婦のネキシウム服用については、ネキシウム添付文書を参考に考えていきましょう。
『授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせること』
添付文書では上記のように記載されています。
授乳婦における臨床実験は実施されておらず、薬の成分の乳汁への移行の全容は解明されていません。
しかし、ネキシウムの薬の乳汁へ移行する可能性は否定出来ないため、ネキシウムの服用は避けることが望ましいでしょう。
やむを得ず服用する場合には授乳を避けましょう。
長期服用について
ネキシウム長期服用で耐性発現による効果の増減はないと考えられます。
医師や薬剤師の使用のもと正しく服用していれば問題ないでしょう。
しかし、症状別の服用期間を自己判断により延長したり、減少させたりすることは危険ですのでやめましょう。
ネキシウムを服用するとき注意したい飲み合わせについて
ネキシウムを服用するにあたって注意したい飲み合わせについて確認しておきましょう。
ネキシウムと相性の悪い飲み合わせ
ネキシウムを服用するとき以下の成分を含むものとの併用に注意しましょう。
薬区分 | 薬品名 | 成分名 | 相互作用 |
---|---|---|---|
抗ウイルス剤 | レイアタッツ | アタザナビル硫酸塩 | アタナザビル硫酸塩の作用を減弱するおそれがある。 |
抗ウイルス剤 | エジュラント | リルピビリン塩酸塩 | リルピビリン塩酸塩の作用を減弱するおそれがある。 |
酸分泌抑制薬 | ガスター | ファモチジン | 効果の重複による作用の増強のおそれがある。 |
ネキシウムと併用できる薬
ネキシウムとロキソニンとの併用は可能です。
併用することによる目立った相互作用も現在報告されていません。
ネキシウムの類似薬
ネキシウムと同じように消化器不調を改善してくれる薬を5つ紹介します。
ネキシウムとの違いにも注目しながら、確認しておきましょう。
タケプロン(ランソプラゾール)、オメプラゾール
・・ネキシウムと同じプロトンポンプ阻害薬(PPI)に分類される処方薬。主成分はランソプラゾールです。ネキシウムとの違いは、酵素による代謝経路の違い。現在発表されている論文や検査結果では治療効果に大きな違いはないとされています。
パリエット
ネキシウムと同じプロトンポンプ阻害薬(PPI)に分類される処方薬。ネキシウムとの違いは酵素的な代謝を受けないこと。現在発表されている論文や検査結果では治療効果に大きな違いはないとされています。
ガスター
ネキシウムがプロトンポンプ阻害薬(PPI)であるのに対し、ガスターはH2ブロッカーに分類されます。
同じ胃酸分泌抑制効果を持つものの、PPIであるネキシウムの方がより高い効果を発揮します。
ガスモチン
ガスモチンはPPIやH2ブロッカーに分類されていない処方薬です。
胃腸のはたらきを改善する効果があります。
ネキシウムとの違いは、胃酸分泌抑制効果を主とするものではなく、セロトニン系に作用することにより胃腸の不調にアプローチする効果をもつ薬であることです。
ネキシウムの薬価と後発医薬品について
ネキシウムの薬価は以下のとおりです。
薬剤 | 1カプセルあたりの薬価 |
---|---|
ネキシウム10mg | 96.70 円 |
ネキシウム20mg | 168.90円 |
ネキシウムは医師からの処方箋を受けたのちに服用することが出来ます。
ミナカラお薬辞典:ネキシウムカプセル10mg/ネキシウムカプセル20mg
通販サイト等のネキシウムの個人輸入に注意
ネキシウムは原則として医師の処方箋が必要な薬です。
しかし、個人輸入等により市販され、通販サイトなどで流通しているものも一部存在します。
個人輸入で手に入れた薬は全て副作用救済制度が受けられず、万が一体に異変が生じた場合の対処法の選択肢を狭めてしまう行為です。
ネキシウムを服用するときは、正しい効果を得るためにも医師から薬の用量や飲み方についてのアドバイスを受け、服用していきましょう。
ネキシウムのジェネリック医薬品はある?
現在国内の承認薬においてネキシウムのジェネリック医薬品はありません。
海外では一部承認されているジェネリック医薬品がありますが、国内で承認されていない薬を個人輸入で購入することは危険です。
必ず医師のアドバイスを受けたうえで服用するようにしてください。
おわりに
ネキシウムはつらい胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの症状に効果的な薬です。
つらい症状の早期改善を目指すためにも、必ず用法用量を守って正しく服用することを心がけましょう。