アクアチムとは
アクアチム(一般名:ナジフロキサシン)は、ブドウ球菌属やアクネ菌といったニキビやとびひなどの原因菌に対して抗菌効果を発揮する薬です。抗菌薬の中でもニューキノロン系に分類されます。
アクアチムの特徴として、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や、キノロン系薬に耐性をもったMRSAに対しても抗菌効果があることがあげられます。そのため、ほかのニキビ治療薬では治療効果が得られない場合に処方されるケースもあります。
なお、ペニシリンなど天然由来の薬は「抗生物質」と呼びますが、アクアチムなど科学的に合成された成分で作られている薬は「抗菌薬」と呼び区別しています。
アクアチムはステロイドの薬?
アクアチムにステロイドの成分は含まれていません。
ステロイドは炎症を抑える薬ですが、アクアチムはニキビの炎症そのものを治す薬ではありません。アクアチムはニキビの炎症を引き起こしている細菌を殺菌することで、結果的に炎症反応を抑えているのです。
アクアチムの効能・効果:ニキビ・とびひなど
アクアチムの規格には、クリーム・軟膏・ローションの3種類があり、このうちクリームとローションはニキビの治療に効果があります。
また、クリームは軟膏と同様に表在性・深在性の皮ふ感染症に適応があり、子どもに多くみられる「とびひ」によく使われています。
ニキビへの効果:クリーム・ローション
ニキビは正式には「ざ瘡(そう)」と呼ばれる病気で、皮脂が毛穴につまることで起こります。アクネ菌は皮脂を栄養源とするため、毛穴につまった皮脂を食べて増殖します。また、毛穴に詰まった皮脂は空気に触れにくく、アクネ菌が増殖しやすい環境となっています。
アクネ菌が増殖すると毛穴の皮ふが炎症を起こしてしまい、同時にブドウ球菌が繁殖することで膿がたまる白ニキビや黄ニキビとなります。
アクアチムはアクネ菌・ブドウ球菌どちらの菌にも抗菌作用が働くので、炎症を起こして赤くなっているニキビや、膿がたまっているニキビといった症状が進行しているニキビの治療に使われています。
また、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やキノロン系薬に耐性をもったMRSAに対しても抗菌効果があるため、ほかのニキビ治療薬では効果を感じられない場合に処方されるケースもあります
とびひへの効果:クリーム・軟膏
とびひは正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」という病気です。ブドウ球菌や溶連菌が原因となって引き起こされます。
アクアチムはブドウ球菌に対して抗菌作用があり、とびひの治療に使用されます。
とくに軟膏は粘り気が強く汗で流されにくいことから、子どものとびひにはアクアチム軟膏がよく使われています。
ほかに使える疾患は?
アクアチムは化膿している皮ふ疾患に効果があるので、化膿している切り傷・擦り傷、あせも、虫刺され、やけどなどに使用することがあります。
ただし、抗菌薬を安易に使うと細菌が薬に耐性を持ってしまい、薬が効きにくくい耐性菌が発生することがあります。耐性菌の出現を防ぐためにもアクアチムは医師の指示があるまでは自己判断で使用しないでください。
なお、アクアチムは細菌に対してのみ効果があるので、ヘルペスなどウイルス性の疾患、水虫・カンジダなどの真菌(カビ)による疾患には効果がありません。ウイルス性の疾患には抗ウイルス薬を、真菌による疾患には抗真菌薬を使用してください。
アクアチムの使い方
ニキビの場合:クリーム・ローション
朝・夕の1日2回、洗顔後に適量をニキビに塗ります。
ニキビを覆うように、こすらずにそっと触れるように塗りましょう。ニキビの肌はとても敏感なので、強くこすったりすると悪化してしまうおそれがあります。
ローションが塗りにくいときは、コットンを使うのも良いでしょう。化粧水のようにコットンに数滴染みこませ、ニキビをこすらないように注意しながらポンポンと軽く押すようにして塗ってください。
また、頭皮にできたニキビにも使用できます。後頭部など鏡で見ても塗りにくい場所は、ほかの人に頼んで塗ってもらうと良いでしょう。
スキンケアの順番は?
ニキビに抗菌薬を使用する場合は、化粧水や美容液で保湿ケアをした後に使用してください。
また、アクアチムのクリームとローションには、乳液などと同様に油分が含まれているので、アクアチムの使用後に乳液などで肌を保護する必要はありません。
とびひなどの場合:クリーム・軟膏
朝・夕の1日2回、炎症を起こしている患部や傷口などに塗ってください。
塗った後は、衣服についたり薬が落ちないようにガーゼなどで保護しましょう。
陰部にも使える?
アクアチムは陰嚢などの表皮部分であれば使用しても問題ありません。
ただし、安全性の観点から、医師の指示がない限りは陰部には使用しないでください。また、医師の指示によって使用する場合、粘膜部分に薬剤が付着しないように注意してください。
アクアチムの副作用
アクアチムの使用後に肌がピリピリするなどの刺激を感じる人もいます。
多少ピリピリする程度であればほとんど問題はないので、そのまま使ってください。刺激感が強く使用を続けるのがつらい場合は、医師に相談しましょう。
ほかにも、かゆみや発赤、皮ふの乾燥感、ほてりなどの副作用が報告されています。刺激感と同様に、使用を続けるのがつらい場合は医師に相談してください。
また、キノロン系の薬では光線過敏症が報告されています。日光に当たって肌が真っ赤になるような場合は光線過敏症のおそれがあるので、医師・薬剤師に相談してください。
アクアチムの市販薬や通販について
アクアチムなどの抗菌薬など、細菌に対して強い効果を発揮する薬には市販品がありません。
また、アクアチムを販売しているインターネットサイトもありますが、薬の個人輸入や通販では安全性が保証されません。
日本国内で扱われている医薬品については、重大な健康被害が生じた場合、「医薬品副作用被害救済制度」と呼ばれる公的制度が適用されます。しかし、医師の処方せんが必要な薬を非正規のルートから入手した場合、医薬品による健康被害の救済対象となりません。
アクアチムの購入には、まずは皮膚科を受診して医師の診断を受けましょう。