はじめに ~肝炎(かんえん)とは~

「肝炎(かんえん)」とは、何らかの原因で肝臓の細胞に炎症が起こり、肝細胞が壊される病態をいいます。
肝炎の原因は、①ウイルス ②アルコール ③薬物によるものがあります。
「ウイルス性肝炎」は、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こり、日本人になりやすいのはA型肝炎、B型肝炎、C型肝炎と言われています。

肝炎になると肝臓の細胞が壊れて肝臓の働きが悪くなりますが、肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、病気になってもなかなか症状が出ないことがあり、そのため体の不調を感じる頃には肝臓の病気はかなりの重症化してしまっているケースが多くあります。
妊娠においては赤ちゃんに影響を及ぼすものがあるため、早期発見と対処が必要です。

 

肝臓の働きは?

❏代謝=食事から摂った栄養分を体内で使える形に分解、合成
❏貯蓄=栄養分を貯蔵し、必要に応じて全身に供給
❏解毒=血液中の薬物や老廃物などの分解、解毒
胆汁の産生=脂肪の消化吸収を助ける、不要物を排泄する
防御=身体の中に侵入したウイルスや細菌感染の防御

など、肝臓は500を超える重要な機能と様々な働きをしており、私たちが生きていくためには肝臓が健康であることがとても大切です。

 

特になりやすいA型、B型、C型肝炎の胎児への影響は?

A型、B型、C型肝炎の特徴

  A型肝炎 B型肝炎 C型肝炎
原因 水・食物 血液・体液     血液      
感染経路 経口感染 輸血・性交、母子感染 輸血・母子感染、刺青・使用済の注射針
症状 発熱、倦怠感、嘔吐、下痢、痛、黄疸 倦怠感、食欲不振、吐き気、嘔吐、黄疸 ほとんど無症状、自覚症状なし
胎児への影響 ほぼなし キャリア率有り キャリア率有り
ワクチンの有無 有(A型肝炎ワクチン) 有(B型肝炎ワクチン)

 

A型肝炎

A型肝炎は牡蠣などの二枚貝、生の魚介類や不衛生な環境の生水を口にして感染することもあります。
5歳以下の小児には非常によく見らますが、ほとんどが軽症で済みます。
また胎児や新生児への感染も知られていないため、ほぼ影響はないと言われていますが感染予防は必要です。
 

B型、C型肝炎

B型、C型肝炎ウイルスについては、感染した人の全員に症状が出るとは限らず、発症しないまま抗体ができる場合があります。
ただし
慢性肝炎に移行し、肝硬変、肝がん(肝臓がん)に移行しやすくなる場合があります。
特にB型肝炎においては、母子感染した子どもはキャリア(持続感染者)となり自覚症状もないまま病気が進行することがあります。
 

B型肝炎は「劇症型」に注意

成人してからの感染の多くは「急性肝炎」として発症し、数%の割合で「劇症肝炎」になることがあります。
「劇症肝炎」とは肝臓の細胞が急激に壊れてしまい、肝不全症状を引き起こす病気です。肝臓の機能が著しく低下すると体に有害な物質が蓄積し、意識障害、肝性脳症などを引き起こすことがあり、死亡の可能性もあり予後も悪い肝炎です。

 

妊婦健診で検査します

B型、C型肝炎は、妊娠12週頃までに妊婦健診で検査します。
肝炎ウイルスに感染しているかどうかは血液検査でわかります。
 

陰性の場合

陰性の場合は、パートナーや家族みんなでの感染予防が大切です。
C型肝炎はワクチンはありませんが、B型肝炎ワクチンはあるためパートナーや家族みんな
で感染予防のためにワクチン接種をすることがすすめられています。妊娠中でもワクチン接種は可能。危険はないのですが医師と相談しましょう。
 

陽性の場合

陽性だった場合は、医療機関にて定期的に血液検査や指導の元、適切な処置を行います。陽性でも症状が出ない場合もあり、基本的な注意事項を守ることで、日常生活において周囲の人への感染はほとんどありません。
ただし母子感染を防ぐための対応が必要になります。

 

陽性の場合の母子感染の防止策は?

分娩時には、産まれてきた赤ちゃんを保護するために、母親の血液や分泌物をきれいに洗い落とし、出生後12時間以内に、免疫グロブリンやB型肝炎ワクチンを接種することが必要です。
これらの感染防止処置によって、ほとんどの母子感染を防ぐことができます。
その後定期的に検査し効果を確認していく必要があります。

 

日常の注意点は?

B型肝炎やC型肝炎ウイルスは、主に感染している人の血液が体の中に入ることによって感染します。
以下のことに注意しましょう。

  • 飲み物や歯ブラシ、カミソリなどを共用しない
  • 乳幼児に食べ物を口移しで与えない
  • 外傷や皮膚炎、鼻血などはなるべく自分で手当てをする
  • 手当てをしてあげる場合は、血液や分泌物に直接触れないようにする
  • 献血はしない


このようなことを家族みんなで守り、感染の拡大を防ぐことが大切です。

 

おわりに

肝臓の病気は症状が出ないことも多く、特に日常生活に支障がない場合も多くありますが、妊娠した場合は赤ちゃんへの影響が考えられるため、検査を受けてしっかり確認しておくことが大切です。

 

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