はじめに

男の子の精巣:せいそう(睾丸:こうがん)の成長過程を知っていますか?

男の子の精巣は、はじめから正常な状態にあるのではなく、胎児の頃から生後間もなくの間に、ある成長の経路をたどっていきます。

その成長過程の間には、精巣に関するトラブルも色々あります。

今回は「陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)」のお話です。

巣(睾丸)の成長過程

精巣の特徴は、胎児の頃の男の赤ちゃんの場合、精巣(睾丸)は陰嚢(玉の袋)ではなく赤ちゃん自身のお腹の中にあります。

太ももの付け根の鼠径部(そけいぶ)に鼠径管(そけいかん)という通路があり、生れる間近になると、精巣は鼠径管を通って陰嚢に降りてきます。

通常ママのお腹の中にいる胎児期(妊娠3~9ヶ月頃)に精巣は陰嚢におさまるようになります。

陰嚢水腫(いんのうすいしゅ)はどんな病気?

陰嚢水腫は、陰嚢内の精巣を包んでいる「精巣鞘膜(せいそうしょうまく)」に水(腹水)が溜まり、陰嚢が腫れる病気です。

精巣が鼠径管を通って陰嚢内に降りてくる過程では、腹膜(お腹の臓器を包んでいる膜)も引きずり一緒に降りてきて通路が閉じますが、この通路が閉じなかったことが原因で、腹水が漏れ出して陰嚢が大きくなります。

症状

・陰嚢や鼠径部(太ももの付け根)が膨らんでいる

・触ると柔らかく、ブヨブヨとした感触

・痛みやかゆみはない

・片方の陰嚢だけに起こることが多いのですが、両方に起こることもある

・寝ている間は腹水が戻る為、朝よりも活動した後の夕方の方が大きくなる

大体生後4か月位までの間におむつ替えの時に気づ くか、健診で発見されることが多くあります。

一見「鼠径ヘルニア」と似ている

陰嚢水腫は一見、鼠径部が膨らんでいるため鼠径ヘルニアと症状が似ているようですが、鼠径ヘルニアは、鼠径部に「腸の一部が飛び出してしまう」病気で、昔から「脱腸」ともいわれます。

触診での違いは、鼠径ヘルニアの場合は「膨らみが硬め」で「陰嚢の腫れを指で押しても戻らない」ことです。まれに精巣腫瘍(せいそうしゅよう)とも症状が似ているため注意が必要です。

陰嚢水腫の診断と治療法は?

診断

陰嚢水腫の場合、陰嚢を暗いところでペンライトなどの光を当てると、透けて見えるのが特徴です。

鼠径ヘルニアの場合は脂肪や腸があるため 透けては見えません。

陰嚢水腫と鼠径ヘルニアなどを識別をするために、確実な診断には超音波を使って診断します。

治療法

1歳くらいまでは経過を観察します。多くの場合、腹水は1歳までには自然に体内に吸収されるため、特に治療を行わず自然に治るのを待ちます。

陰嚢水腫は臓器が飛び出しているわけではないため、嵌頓:かんとん(血流が悪くなり壊死する)を起こす心配はありません。

また陰嚢水腫は将来の生殖機能にも影響はないといわれています。

以前は注射針で中の液体を抜くようなことがあったようですが、液体を抜いても数日でまた元通りになってしまうことと、子どもが痛がって恐怖を与えるだけのため意味はない考えられています。まずは半年~1年ごとに小児科で経過を観察をしてもらいましょう。

手術を考える場合

3歳位になっても腹水が吸収されず小さくならない場合は、自然治癒は望めないとされています。

その頃にはトイレの際本人が気にするようになることがあるため、腹水が溜まらないための手術を考えることもあります。

手術は日帰り手術で、鞘状突起のつけ根を切り離して糸でしばります。小さな手術ですが術後に気なることがある場合は入院も考慮します。

陰嚢水腫は基本的には良性のため、あまり慌てる必要はありません。手術については経過を観察する中で医師とよく相談の上行いましょう。

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おわりに

赤ちゃんの精巣が落ち着くまでの成長過程がお分かりいただけたと思いますが、その間にはトラブルもつきものです。

陰嚢水腫は、通常痛みも無く良性とされていますが、赤ちゃんのおちんちんの異常については、ヘルニアや細菌感染などの可能性もあるため、自己判断はせずにかかりつけの小児科に相談しましょう。