はじめに  ~てんかんの女性の出産~

「てんかん」とは、大脳の神経細胞の一部が刺激に対して過剰に興奮することによって起こる発作です。
脳の神経細胞の数は数百億ともいわれ、基本的に電気的活動を行っていますが、てんかんには「部分発作」と「全般発作」があり、脳のどの範囲で電気発射が起こるかによって様々なタイプや症状があります。
てんかん発作は、けいれん、しびれ、体の硬直、突っ張り、倒れる、呼吸が停止する、突然意識を失う・・・などの「てんかん発作」を繰り返す病気です。

このような症状があるため、妊娠については不安や心配を多くの方が感じていますが、決して妊娠できないわけではなく、また適切な治療と生活習慣によって問題なく妊娠、出産をされた方もたくさんいます。
妊娠中の「てんかん」についての基礎知識を知っておきましょう。

 

妊娠中にてんかん発作は増える?

以前は妊娠中に発作の頻度が増えるとされていましたが、妊娠でてんかん発作が悪化することはほぼありません。

ただし妊娠中にてんかん発作が増加する場合があり、その原因として「不規則な服薬」 「服薬を怠った」 「睡眠不足」などが挙げられます。
てんかんを持つ女性が妊娠によって悪化することはありませんが、それは正しい治療を継続することが前提となります。

 

てんかん発作の胎児への影響は?

てんかんそのものでの母体への悪影響はないとされています。
またてんかん発作を起こしたために赤ちゃんの奇形発現率が増加するということも確認されていません。

ただし、けいれん発作をおこすと、その間は胎児への酸素供給が止まってしまいます。その際は胎児が低酸素状態になり、切迫流産や早産になる可能性があり、胎児死亡の危険性もあります。
そのため妊娠中は「抗てんかん薬(こうてんかんやく)」を服用し、てんかん発作を起こさないようにすることが大切です。

 

抗てんかん薬の胎児への影響は?

妊娠中には、抗てんかん薬の赤ちゃんへの影響は考える必要があります。
赤ちゃんへの異常を生じるリスクで最も注意すべきは妊娠初期の3ヶ月です。

抗てんかん薬の一部には、生まれつき脊椎(せきつい)が形成されない「二分脊椎症(にぶんせきついしょう)」などの中枢神経系の奇形や心臓血管奇形、唇や口蓋が割れたり裂けたりする口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)や泌尿生殖器系などの奇形をもたらすものがあります。

主に「服用量が多い」場合や「二種類以上複数の薬を服用」している場合には、奇形発生率が増加することが知られています。
そのため薬はできるだけ一種類(単剤)にし、奇形発現率をできる限り少なくする薬剤の選択が必要となります。
 

最も大切なのは自己判断で薬を止めないことです

妊娠前に一定期間発作が起きていなければ、薬の減量や中止ができる場合もありますが、薬を恐れるあまり薬を止めてしまい、結果発作が頻繁に起こることの方が、胎児には危険が及ぶ可能性があります。

薬の服用については自己判断での減量や中止をすることは厳禁です。必ず医師に相談しましょう。

 

授乳への影響は?

たいていの抗てんかん薬はわずかしか母乳に出ないため、赤ちゃんへの影響は少ないといわれています。
ただし影響を及ぼす可能性がないとはいえません。そのため自分が服用している薬が安全かどうか、授乳前に必ず主治医に確認しましょう。
もし赤ちゃんが眠ってばかりいたり母乳の飲みが悪い時には注意が必要です。すぐに医師に伝えましょう。


 

てんかんには「葉酸(ようさん)」の摂取が推奨されています

抗てんかん薬の服用によって体内の「葉酸(ようさん)」が減少し、奇形発現のリスクが高まるといわれています。
葉酸は細胞の増殖や発育に必要なDNAの合成をサポートする働きがあり、お腹の赤ちゃんの成長において必要不可欠な栄養素の一つです。

てんかんの女性が妊娠を希望している場合や妊娠中は、葉酸の血中濃度を定期的に測定してもらい、積極的に葉酸の摂取を心がける様にしましょう。

(参考記事):葉酸の多い食品は?ほうれん草・フルーツ・豆乳・・・妊娠中に必要な葉酸の摂取量と注意点を知ろう

 

てんかんが誘発されないような日常生活を送りましょう

てんかん発作が誘発されないよう、以下のことを心がけましょう

  • 十分な睡眠を取る
  • バランスのいい食事と葉酸の摂取
  • 十分な水分摂取
  • 疲労、ストレスをためない
  • 正しい薬の服用、医師との連絡


てんかん発作は体調不良が引き金になりやすいため、注意点を守ってゆったりと過ごすことが大切です。

 

さいごに

てんかんを持っている女性は、決して妊娠できないわけでもなく、適切な予防と治療をすれば、健康な赤ちゃんを産めることは十分可能です。
そのためには主治医とよく相談し、てんかん治療のために注意することをしっかり守ることが大切になります。


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