夜泣きは子どもにとって当たり前におこる生理現象です。
しかし、ただ泣くだけではなく、夜中に突然起きて怯えたように大声で泣き叫ぶ、歩き回るなどの行動は、夜驚症(やきょうしょう)の可能性があります。
夜驚症は乳幼児だけではなく、12歳頃までの子どもにも現れる症状です。突然子どもが泣き叫ぶ様子をみて動揺してしまったことがある方も多いのではないでしょうか。
この記事では、夜驚症の詳しい症状や原因について解説します。夜驚症に使われる薬などの対処法も紹介します。
夜驚症とは
夜驚症(やきょうしょう)とは、睡眠障害のひとつです。
睡眠障害とはいっても、子どもの夜驚症は病院を受診して投薬などの専門的な治療が必要なものではありません。
睡眠中は脳が深く眠っている「ノンレム睡眠」と、脳の眠りが浅い「レム睡眠」を繰り返しおこなっています。まだ脳が発達途中の子どもは、深い眠りから浅い眠りに移行するときに覚醒できないために夜驚症が起こりやすくなります。
脳が成長するにつれて脳の働きは安定し、夜驚症は自然に消えていきます。一般的に夜驚症は3歳~12歳頃までの症状とされています。
ただし、まれに大人になってから夜驚症を発症する場合もあります。大人の夜驚症については関連記事をごらんください。
夜驚症と夜泣きの違いは?
夜驚症は夜泣きととてもよく似ていますが、夜泣きは浅い眠りの「レム睡眠」のときに起こります。そのため、声をかけたり抱き上げると夜泣きは止まることが多くあります。
それに対して夜驚症は深い眠りの「ノンレム睡眠」のときに起こるため、脳の一部だけ覚醒してほかの部分は覚醒していない状態であり、声をかけても反応がありません。また、本人の自覚症状もありません。
夜驚症の症状
夜驚症では激しく泣くだけではなく、恐怖がともなうような様子や行動が特徴になります。
夜驚症による行動
・夜中に急に起き上がる
・激しく泣き出したり、大声を出したり叫んだりする
・過剰におびえている、震えている
・理解不能なことをいう
・10分ほどでパニックは治まり再び寝る
夜驚症による体や本人の反応
・目が見開かれている
・呼吸が激しく汗をかいている
・意識がはっきりしているように見えるが話しかけても反応は鈍い
・翌日、本人は夜中の行動を覚えていない
治療を検討する症状
基本的には夜驚症は自然となくなるため治療の必要はないものですが、以下のような症状が出る場合は一度病院を受診することをおすすめします。
・一晩に数回も夜驚があったり、1回に10分以上も続く
・夜驚が起きている時に窓や家から出て行こうとする
・学校行事などで宿泊をともなう場合、精神的な不安やストレスを回避するため
夜驚症の原因
夜驚症の発生には昼間の感情や刺激が影響しています。怖いことだけでなく、楽しいことも含めてさまざまなことがきっかけとなる可能性があります。
以下のようなことが夜驚症の症状がでる原因として多いきっかけです。
・怖いテレビや本をみた
・事故の体験や目撃
・幼稚園や学校で叱られた
・親に叱られた
・発表会など緊張することがあった
・友達と遊んで興奮した
・遊園地や旅行などで楽しんだ
夜驚症の対処法
夜驚症は昼間の感情や症状が影響するため、睡眠時に症状がでている時以外の対処も大切です。
日中の対処法
子どもは夜驚症の症状がでている時のことは覚えていません。そのため、夜驚症について説明したり、注意したりする必要はありません。
また、昼間の感情が影響するからといって、しつけのために叱ることを止める必要はありません。いつもと変わらず接してください。
怖いテレビや本を寝る前に見せるのは控えましょう。ただし本人が見たがるなら無理に止めなくて構いません。夜驚症は怖いことも楽しいことも含め、感情を刺激するような出来事ならば、何でもきっけになります。
夜驚症の症状がでるからと、遊園地や旅行など無理に外出を控える必要もありません。
症状の対処法
動き回らず泣いている時は、そのままそばで様子を見ていましょう。優しく声をかけて落ち着くのを待ちます。
泣きながら走り回っている時は、無理に止めたり押さえつけたりせず、危険が無いように見守ります。ケガをしないように、壊れ物やぶつかりやすいものは片づけておきましょう。
夜驚症の改善策
夜驚症はいずれ自然に症状がでなくなります。しかし症状がでる頻度が多いと、家族も心配が強くなったり、対応に疲れてしまう場合もあります。
その時は改善策を試してみることもひとつの対処法です。
薬で改善
乳幼児や子どもの夜泣きには、精神を落ち着かせる作用や、胃腸の機能を健康にし身体の調子を整える作用などがある医薬品や漢方薬が使用されます。一時的な情緒不安を改善させて、安心して眠れるように誘導する作用もあり、副作用の少ない動植物由来の生薬が有効成分です。
子どもの夜泣きに使用できる薬については関連記事をごらんください。
小児鍼(はり)で改善
小児鍼(はり)は産まれてすぐの赤ちゃんから、4~5歳くらいまでが対象です。
鍼といっても大人への治療法とは違い、皮膚に刺すことはありません。一般的には髪の毛よりも細い針で皮膚に接触させて刺激を与えるものです。自律神経が安定することでぐっすりと眠り、夜泣きなどに効果があります。
おわりに
夜驚症は精神障害や体内の疾患などの病気ではありません。多くは成長と共に起こらなくなるため、過剰な心配をしすぎなくて大丈夫です。
専門的な治療が必要な症状ではありませんが、親だけで抱え込む必要もありません。対応に困ったり疲れてしまったときは、小児科や睡眠障害などの専門病院に相談してみましょう。