子どもだけじゃない!風疹患者の8割が20代~40代男性
風疹(ふうしん)は、主に4歳~10歳の幼児から小学生にみられ、別名「3日ばしか」とも呼ばれていますが、はしか(麻疹:ましん)とは別の病気です。
小児の場合は一般的には軽症とされていますが、近年、大人の流行が大変問題になっています。
平成25年の風疹患者の報告数は14,000人を超え、その8割が20代~40代の男性です。
大人の感染は子供より重症化することも多く、特に妊婦さんへの感染は赤ちゃんに「先天性風疹症候群」という障害をもたらす危険があるため、社会全体で風疹の感染を減らし、赤ちゃんを守ろうという呼びかけが行われています。
風疹は気が付かないうちに感染し、また感染源となるため、注意が必要です。
風疹についての基礎知識と大切なポイントを解説します。
風疹の原因と感染経路
風疹は「風疹ウイルス」によるウイルス性発疹症です。
感染経路は主に「飛沫感染」と「接触感染」です。
風疹の多くは、患者の咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸い込むことによる「飛沫感染」ですが、ウイルスが付着した手で口や鼻に触れることによる「接触感染」もあります。
風疹の流行時期
風疹は春先から初夏にかけて多く流行します。ただし大流行の年はそうとは限りません。
風疹は感染力が強く、インフルエンザの2~4倍とされ、1人の患者からインフルエンザでは1~2人に対して、風疹は、免疫がない5~7人に感染させる可能性があるとされています。
風疹の潜伏期間と感染期間(いつまで感染する?)
潜伏期間とは、風疹のウイルスが体内で活動し、風疹の症状が出るまでの期間のことです。
風疹は、感染から14~21日(平均16~18日)の潜伏期間の後発症します。
ウイルスの排泄期間は、発疹出現の前後の約1週間(発疹出現の2~3日前から出た後の5日位)です。
この間は周囲に感染しやすいとされています。
不顕性感染が15%以上
不顕性感染(ふけんせいかんせん)とは、ウイルスに感染しても典型的な症状が現れないまま免疫ができてしまうことです。
風疹には約15~30%見られ、本人に自覚がないまま、咳やくしゃみなどで飛び散った唾などの飛沫感染により、周りにうつしてしまう可能性があります。
風疹の症状・特徴・合併症について
風疹は以下の3つの症状が特徴です。
- 37度~38度の発熱
- 発疹(3日程度で消える)
- リンパ節腫脹(リンパ節の腫れ)
風疹の症状の経過
発熱
●37度~38度の発熱で、一般的には軽い(患者の約半数は熱が出ない)
●発熱は発疹の前後2~3日で解熱する
発疹の症状
●発熱と同時または翌日位に小さく淡紅色(ピンク色)の細かい発疹が出る
●発疹は顔や耳の後ろに現れ、頭部、体、手足と全身広がる
●発疹は3日程度で消えていく
●発疹が消える頃にかゆみが出る
●色素沈着や皮膚の表面がはがれ落ちる(落屑)は見られない。(発疹が強い場合には伴うこともある)
リンパ節腫脹
●耳の後ろや首のリンパ節がはれる
●腫れはグリグリとして押すと痛む
その他の症状
●白目の充血
●軽い咳やのどの痛み
合併症に注意
風疹は通常、数日で自然に治りますが、まれに、髄膜炎、脳炎、血小板減少性紫斑病(出血を止めるのに必要な血小板が壊れていく)、溶血性貧血(赤血球が壊れて貧血になる)などの合併症を引き起こすことがあります。
以下の症状には注意が必要です。
■40度近い高熱が持続
■頭痛
■強い疲労感
■けいれん
■意識障害
このような症状が出たら病院を再受診して下さい。
風疹の治療方法について
風疹ウイルスに対する特効薬はなく、発熱時に必要な場合は解熱剤を使うなど、症状を和らげる対処療法となります。
対処療法と共に自宅でのケアで治癒を待ちます。
自宅ケアのポイント
自宅では以下に注意しましょう。
●熱が高い時や夏は脱水症状にならないよう、こまめに水分を与えましょう。
●無理に寝かせなくても大丈夫ですが、なるべく室内で安静に過ごしましょう。
●お風呂は熱がある時には控えましょう。
●汗をかいたらシャワーで体を清潔に。
●発疹のかゆみが出たら、冷たいタオルなどで冷やしてあげましょう。
風疹の予防はワクチン接種を!
風疹の最も大切な予防法は、ワクチン接種を受け、風疹ウイルスに対する免疫を作っておくことです。
1歳になったらすぐに MRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)を接種しましょう。
MRワクチンは、5~6歳で2回目を接種します。
定期接種は公費で受けられます。まずは小児科(かかりつけ医)に確認しましょう。
風疹になったあとの幼稚園・保育園・学校の登園・登校について
まず、医師より風疹と診断された場合は、速やかに園・学校へ連絡してください。
風疹は「第2種の学校感染症」に定められており、幼稚園・保育園・学校共に「発疹が消失するまで出席停止」とされています。
園および学校に届け出て、定められた出席停止期間に従い、登園・登校再開については医師の許可が出るまで家庭で安静にします。
学校感染症には病状により出席停止の基準は定められていますが、病状は個人によって異なるため、子どもが感染症にかかった場合は必ず医師の指示に従い、登園・登校の許可が出るまで十分に休養することが大切です。
もし大人が風疹に感染したら
成人の風疹が増えていますが、その原因と対策を知っておくことが必要です。
大人の風疹の症状
成人でも風疹に感染することはあり、大人の場合は以下のような症状を伴うことがあり、子どもより重症化することがあります。
■発熱、発疹、リンパ節腫脹
■高熱や発疹が長く続く
■手指のこわばりや痛み、関節炎
風疹が20代~40代以上の成人に流行している原因
風疹が流行した2013年の患者数は14,000人を超え、うち約70%が男性でした。
また男性患者の約80%は20代~40代と成人の働く世代に多くなっています。
これには子どもの頃、予防接種の対象ではなかったり、対象であっても受けていなかったりして、抗体がない人が多いためです。
以下の年代の方は注意が必要です。
■昭和37年4月2日~昭和54年4月1日以前生まれの男性
中学生の時に学校で集団接種が行われていましたが、女性だけが対象で、男性は免疫のない人が多い
■昭和54年4月2日~昭和62年10月1日生まれの男女
男女ともに中学生の時に風疹のワクチンを接種の対象でしたが、学校での集団接種ではなく個別に医療機関にて受ける制度であったため、男女ともに接種率が激減し、風疹の免疫が無い人が多い
■昭和62年10月2日~平成2年4月1日生まれの男女
男女ともに幼児期に接種を受ける対象となり、接種率は比較的高かったものの、受けていない人や1回の接種だけで抗体が不十分な人も多い
こうしたことにより、20代~40代の働く世代にワクチン接種の割合が低いため、海外出張時などで感染し、国内に風疹ウイルスを持ち帰るケースもあります。
このような男性の感染増加により、結果的に妊娠中の女性への感染率も高まっています。
妊婦さんの風疹感染について
胎児への風疹の影響「先天性風疹症候群」について
妊娠中に感染した場合、時期によって赤ちゃんに障害が残る「先天性風疹症候群」を発症する危険があります。
その確率は妊娠初期に感染するほど高く、妊娠1ヶ月で50%以上、2ケ月で35%、3ヶ月で18%、4ヶ月で8%程度というデータがあります。
先天性風しん症候群は、目、耳、心臓などに障害が起こることが多く、先天性風しん症候群の3大症状は、先天性心疾患、難聴、白内障です。
3大症状以外の症状には、網膜症、肝脾腫、血小板減少、糖尿病、発育遅滞、精神発達遅滞、小眼球など多岐にわたっています。
これらのすべての障害を持つとは限りませんが、生後、気づかれるまでに時間がかかることがあります。
妊娠週数でいうと、妊娠4週から16週までの妊娠初期~中期が特に注意する時期です。
この頃に赤ちゃんが体の各器官を形成する時期に当たるため、障害が出る確率が高くなるのです。
妊娠20週以降の感染ではほとんど影響がないと報告されています。
妊娠中に風疹ワクチン接種はできるの?
基本的に妊娠中に風疹ウイルスのワクチン接種はできません。
そもそも予防接種は免疫を獲得するために、あえて風疹ウイルスを体内に取り込む目的があり、それにより風疹ウイルスが胎児へ感染するリスクはゼロとは言い切れないからです。
妊娠中は人ごみを避けるなど、風疹にかかっている可能性のある人との接触は、可能な限り避けてましょう。
家族には風疹の予防接種を検討するように相談しましょう。
妊娠していることを知らずに風疹ワクチンを接種した場合は?
もし妊娠中にワクチン接種をしてしまっても、慌てる必要はありません。
厚生労働省研究班によると、世界中において、妊娠中に風疹ワクチンを誤接種をしたことによる「先天性風疹症候群」の発症はないとのことです。
よってワクチン接種によって先天性風疹症候群を心配するあまり、妊娠を中断をするなどの必要はないとしています。
ただし「妊娠が分かった後はワクチン接種はできない」という原則を認識しておきましょう。
妊娠中に風疹に感染したときの対処は?
風疹に感染したと思われる場合は、直ちにかかりつけ医に、まずは「電話を入れてから」受診しましょう。
問診にて、風疹を疑う症状や風疹患者との接触の有無などを確認します。
赤ちゃんへの感染診断は、専門家によりリスクの程度を判断するための相談窓口があります。かかりつけ医と相談のうえ行います。
大人の出勤と職場の対策について
医療機関等で風疹と診断された場合、症状が軽いからといって無理して出勤せず、主治医や上司等と相談して、休業等の措置を取ることが必要です。
大人の感染も、学校保健安全法を参考に、欠勤基準は「発しんが消失するまで」とされています。
出勤再開については主治医や産業医の判断に従います。
現在、職場における風疹対策の重要性が指摘され、国立感染症研究所による「職場における風疹対策ガイドライン」が作成されています。
妊婦さんと赤ちゃんを守るため、また社会全体の風疹感染拡大を防止するためにも「抗体検査」と「ワクチン接種」を推奨しています。
抗体検査や予防接種を受けやすい環境作りや自治体において各種公費助成をしているところもあります。
参考:「職場における風疹対策ガイドライン」をご覧ください
抗体検査について
風疹の免疫があるかどうかを知っておくことが非常に大切です。
血液検査で調べられます。
無料の抗体検査は「先天性風しん症候群予防」のため、主に妊娠を希望する女性を対象としていますが、自治体によって実施状況が異なります。
抗体検査については、地域の自治体または保健所にお問い合わせください。
地域の保健所検索は、厚生労働相HPでも検索できます。
成人の風疹ワクチン接種について
特に妊娠前の女性と成人男性はワクチン接種を積極的に検討しましょう。
妊娠中はワクチン接種はできないため、妊娠前に風疹の予防接種をご検討下さい。
接種後2ヶ月は避妊が必要です。
成人は以下をチェックして下さい
■風疹にかかったことが無い
■風疹ワクチンを受けていない
■どちらも不明
これらに該当する方は、風疹の予防接種を検討しましょう。ただし病気やアレルギー反応があるなど医師の判断で接種できない場合もあるため、医師に相談の上行いましょう。
風疹のワクチン接種は、最寄りの内科や小児科で受けられます。
接種には保険が適応されないため、実施状況や費用は医療機関によって異なります。事前に医療機関に問い合わせましょう。
市区町村によっては、成人女性や妊婦の夫などを対象に、接種費用を助成するところもあります。
現在20代~40代の成人患者が増えており、中には15%以上不顕性感染があるため、妊婦さんにおいては、母親が無症状であっても、赤ちゃんに先天性風疹症候群は発生する可能性があるため、パートナーにも積極的にワクチン接種をすることがすすめられています。

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おわりに ~風疹は昔かかったからといってもう発症しないわけじゃない~
風疹は、一度かかると生涯かかることはないといわれていますが、子どもの頃に風疹にかかったから大丈夫という人の中には、約半数が「りんご病」や「はしか」など、他の感染症との誤診などがあるとのことです。
また予防接種も1回のみの場合は十分な抗体が作られず、時間と共に抗体が減少することがあるため、曖昧な記憶を頼らず、血液検査でしっかり抗体値を確認することをお勧めします。
風疹は子どもはもちろん、大人の感染を防止することが非常に大切な時代であり、自分と家族、赤ちゃんを風疹による障害から守るために、改めて風疹感染を予防するための理解と協力が必要です。