はじめに

「クラミジア」と聞くと、性感染症のイメージが強い人も多いと思いますが、クラミジアは細菌の一種で、性感染症以外にも肺炎を起こすことでも知られています。

 

クラミジア肺炎は、生後間もない赤ちゃんから、成人までかかることのある肺炎ですが、新生児と成人では感染経路や症状も異なります。

特に赤ちゃんへの感染予防が大切になるため、基礎知識を知っておくことが大切です。

クラミジア肺炎の原因から対処法までのポイントを解説します。

 

クラミジア肺炎の特徴

病原体によって発症年齢が違う!

クラミジアは細菌に分類され、細胞内に寄生して増える小微生物です。

 

ヒトからヒトに感染する代表的な病原体は

1、クラミジアトラコマティス(Chlamydia trachomatis)

2、クラミジアニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)

 

があり、これらが原因のクラミジア肺炎は、新生児と乳児特有のものと、小児~成人(高齢者)に多く見られるものがあります。

季節性はなく、感染をくり返します

クラミジア肺炎は、特に流行の季節性はなく、感染しても症状が現れない「不顕性感染」も多く、抗体には感染防御の機能はないため、感染を繰り返しやすいのが特徴です。

 

特にクラミジアニューモニエによる肺炎は、日本では、病院以外の日常生活で発症する肺炎(市中肺炎)の10%に関与するといわれ、他の微生物との複合感染も多く、症状も様々です。

 

以下、発症しやすい年齢ごとの詳細を見ていきましょう。

 

クラミジア肺炎の原因・感染経路・潜伏期間

新生児・乳幼児の場合

新生児・乳幼児の原因菌は「クラミジアトラコマティス」

稀に生後6ヶ月未満では、クラミジアニューモニエと混在している場合が見られることもありますが、新生児・乳幼児がかかるクラミジア肺炎は、ほぼクラミジアトラコマティスによるものに限られています。

新生児・乳幼児の感染経路は「産道感染」

新生児のクラミジア肺炎は、出産時の「産道感染」によるものです。

母親がクラミジア子宮頸管炎(クラミジア感染症)を持っている場合、分娩時に産道を通る時に感染することが原因です。

 

クラミジア感染症は、妊婦健診で3~5%に感染が認められるほどよくある感染症です。自覚症状があまりなく、妊婦検診を受けてはじめて気がつく場合も多いようです。

新生児・乳幼児の潜伏期間は「生後3ヶ月以内」

分娩時、産道を通るときにすでに感染し、ほとんどの例は生後3ヶ月以内に肺炎や結膜炎を発症します。

 

クラミジアトラコマティスによる肺炎は、母子感染のため、母親がクラミジア感染症の治療をしていない場合は、3%~20%と高い確率で赤ちゃんに感染し、クラミジア肺炎を発症します。

小児~成人の場合

小児~成人の原因菌は「クラミジアニューモニエ」

クラミジアニューモニアによる肺炎は、主に小児から成人、高齢者に多くかかります。

年齢では0歳~14歳頃までの学童期までの子どもと、65歳以上の高齢者に多く見られ、性別では、やや男性に多い傾向があります。

小児~成人の感染経路は「飛沫感染」

小児から成人は、咳、くしゃみなどにより飛び散った唾液や鼻水などを吸い込んで感染する「飛沫感染」により感染します。

小児~成人の潜伏期間は3~4週間

小児~成人の場合は、クラミジアが体内に侵入し感染してから発症までの潜伏期間は、3~4週間です。

 

家族内での感染や、学校や高齢者施設などでも集団発生が報告されており、インフルエンザ程の感染力はないものの、何度でも感染します。

 

クラミジア肺炎の症状

クラミジアトラコマティス肺炎

新生児・乳児の症状

新生児・乳児には以下の症状が見られます。

 

・無熱(発熱はほとんどない)

・鼻炎や結膜炎が先に現れることが多い

・多呼吸

・ゼーゼーという雑音を含む喘鳴

・痰を伴った激しい咳

・呼吸困難を起こすこともある

 

一般に、発熱はないため、酸素投与や人工呼吸などを要することは少ないとされていますが、低出生体重児などは重症化する場合もあります。

 

クラミジアニューモニエ肺炎

小児・成人の症状

小児~成人には、主に以下の症状が見られます。

 

・ほとんど38度以下の微熱で治まる

・乾いた咳が長期間続く

・急性上気道炎(鼻水や喉の痛み)

・上気道炎から下降して肺炎に至る

・感染しても症状が出ない不顕性感染も多い

 

クラミジア肺炎と他の肺炎との大きな違いは、高熱が出ないことが特徴です。

ただし、クラミジアは、様々な合併症を引き起こすことがあります。

クラミジアは肺炎以外の病気にも注意

クラミジアに感染すると、肺炎以外にも合併症を招くことがあります。

主に急性副鼻腔炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の悪化、関節炎、リンパ節の腫れ、紅斑(赤い発疹)などを併発することがあり、また血管に感染を起こすことも分かっており、動脈硬化なども指摘されています。

 

小児や成人は比較的軽症の場合で済むことも多いのですが、高齢者や基礎疾患がある場合は重症化する例が見られるため、症状が見られたら早期の受診が大切です。

 

クラミジア肺炎の治療方法

病院での対処法

クラミジアは細菌の一種のため、マクロライド系、テトラサイクリン系の抗生物質を使います。

ただし8歳以下の乳幼児には、テトラサイクリン系抗生剤は、歯が黄色くなる(歯牙黄染)や骨の発育に影響を来たす恐れがあると言われるため投与しないようにし、マクロライド系抗生物質で治療します。

 

激しい咳、のどの痛み、鼻水、発熱などがひどい場合には、緩和する薬も一緒に処方します。

 

抗生物質は10日~14日間と長めに投与します。

軽症の場合は、抗生物質の内服で治療し、一般的に予後は良好ですが、乳幼児や高齢者は重症化しやすく、入院が必要な場合もあるため、経過の観察が大切です。

 

ホームケアのポイントと注意点

薬は途中でやめない

クラミジアは体内細胞で強い繁殖力を持っている為、症状が治まったからといって途中で服薬をやめてしまうと、体内に菌が残って再発することがあります。

薬の使用は、必ず医師指示に従いましょう。

淡を出しやすくするために水分は多めに摂る

水分は淡を切りやすく、喉を湿らせて呼吸を楽にするため、水分はたっぷり摂りましょう。

特に赤ちゃんの場合、上手く水分が摂れない時は、こまめに少量ずつ分けて与え下さい。冷たいものはのどを刺激して咳き込むことがあるので、人肌程度のものが良いでしょう。

湿度を保って時々換気を

咳を誘発しないよう、加湿器などで部屋の湿度を50~60%前後に保ちます。加湿器が無い場合は、鍋でお湯を沸かしたり、部屋にタオルや洗濯物を干すなどして湿度を保ちましょう。

また換気も大切。数時間おきに換気もして新鮮な空気を心がけ、鼻とのどに優しい環境を作りましょう。

気道を圧迫しない楽な体制に

寝るときは気道が圧迫されないように、枕を高くせず、首と背中がまっすぐになるように。またクッションなどで上半身を少し高くするのも楽になります。

赤ちゃんの場合、咳がひどいときは、縦抱きに抱っこして背中を軽くトントンと叩いてさすってあげると落ち着きます。

ほこりとタバコはNG

咳はほこりを吸い込んだ時に悪化します。床や寝具、ソファーや家具などをはじめ、ほこりの溜まりやすい場所はこまめに掃除してクリーンな環境に。

もちろんタバコの煙は咳の悪化の最たる原因になるため、赤ちゃんはもちろん、大人も厳禁です。

 

クラミジア肺炎の予防法

1、産道感染を防ぐ

ママになるなら検査が重要!

赤ちゃんのクラミジア肺炎は、産道感染が原因のため、胎児の時点で、ママの感染の有無を調べることが重要な予防策です。

 

クラミジア感染症は、妊婦健診で3~5%に感染が認められるほどよくある感染症ですが、自覚症状がないことが多いのも特徴です。

産道感染はママが鍵となるため、妊娠前からでも、もし感染症にかかっている場合には、直ちに治療することが重要です。

男性も検査を!

ママにクラミジア感染症は、女性(ママ)に感染している場合は、もちろん直ちに治療が必要ですが、男性にも多く見られる感染症のため、パートナー(パパ)が検査をすることも大切です。

 

 

性感染症であるクラミジア感染症は、大人の病気のみにとどまらず、赤ちゃんには、肺炎をはじめ、流産など命の危険もあるとされているため、放置しないことが大切です。

クラミジア感染症については、以下の詳しい記事もありますのでご覧ください。

性器クラミジア感染症は放置をすると不妊症になる危険性がありますが、それは女性だけの話ではありません!男性不妊の原因にもなるクラミジアについて解説!

 

2、他の感染症対策と同様に予防を

クラミジア肺炎の感染予防は、他の病気と同様、日頃から、正しい手洗い、うがいが基本です。

 

また、免疫力が低下していると感染しやすくなるため、バランスの良い食事と十分な睡眠を取り、体力が低下しないようにすることが重要です。

 

家族間感染も多いため、家族に症状が見られたら早めに検査し、治療を行うことが大切です。

クラミジア肺炎に関わる感染症法について

クラミジア肺炎は届け出が必要な疾患の1つ

日本では、「感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」というものがあります。

 

感染症法は、感染症の発生や流行のまん延を防ぐための対策や、医療従事者や私たち国民のへの情報提供に役立てることが目的です。

そのため、医師は国に指定された感染症と診断した場合、最寄の保健所に届出る事になっています。

 

エボラ出血熱やマーズ、インフルエンザや風しんなど、あらゆる感染症の流行の時期や地域などの情報(発生動向)が分かるのはこのおかげです。

 

感染症法は、感染力や症状の重さにより、危険性が高い順に1類~5類類に分類し、その他を指定感染症および新感染症として、合計7種類に分類しています。

 

クラミジア感染症は、インフルエンザと同じ「5種感染症」に当たり、発生、拡大を防止すべき感染症とされているため、注意すべきものの1つとして覚えておくと良いですね。

おわりに

今回は、クラミジアによる肺炎を解説してきましたが、押さえておくべきポイントは、感染経路と予防法です。

肺炎とクラミジアの関係を知らなかった…という方も多く見られるため、今回の基礎知識を知っておき、大事に至らないよう注意しましょう。