乳幼児の10人に1人は入院!急性胃腸炎の原因第1位は「ロタウイルス」
子どもが嘔吐や下痢を繰り返し、病院へ行ったら「ロタウイルス」に感染していた・・・ということがよくあります。
ロタウイルスの流行は、冬から始まり、2月~4月の春先に最も多く見られます。
一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、ロタウイルスによる胃腸炎は、子どもがかかる「急性胃腸炎」の第1位となるほど頻度が高く、日本では、年間80万人の子どもたちが感染しています。
ちょうどママからの免疫が切れる生後3か月頃からかかりはじめ、6か月~2歳が発症のピーク。
5歳までには必ず一度はかかるといわれています。
ロタウイルスは、衛生環境の差にあまり関係なく世界中で見られ、世界では年間約50万人の乳幼児が死亡。
日本での死亡例は少ないとされていますが、患者の10人に1人は入院。
このように子どもたちには重要な感染症ですが、幸いにもロタウイルスにはワクチンがあります。
赤ちゃんや子どもを守るために、ロタウイルス胃腸炎の特徴と、正しいワクチン接種について知っておきましょう。

ワクチン接種をしないとどうなる?ロタウイルス胃腸炎の症状
ロタウイルス胃腸炎の潜伏期間は1~3日で、突然の嘔吐から始まり、38度以上の発熱に続き、激しい下痢が起こります。
米のとぎ汁のような白い水様性の下痢が特徴で、酸味の強い臭いがします。
回復までは1~2週間かかり、治療を行わなくても自然に回復することはあります。
ただし生後3か月以降の初感染は重症化しやすく、特によく見られるのが「脱水症状」です。
激しい嘔吐と下痢から体液が奪われるため、重症脱水症を起こした場合は、けいれんや意識障害などを起こすことがあり、点滴をしても死亡することもあるほど危険です。
その他、脳症、心筋炎、肝機能異常も起こりやすく、特に脳症は神経系の後遺症を残すことが多く、予後は不良です。
ロタウイルス胃腸炎には、残念ながら、インフルエンザのような抗ウイルス薬はありません。
そのため、何よりも予防が大切。ロタウイルスの重症化や死亡数は、ワクチン接種によって減少できることが分かっています。
ロタウイルスワクチンは、子どもが接種する重要ワクチンの1つとされ、早い時期からの接種が薦められています。
ロタワクチンは生後2か月がベスト。ママからの免疫が切れる前に接種を!
ロタウイルス胃腸炎は、新生児や生後3か月以内の感染は低いとされています。
これは胎児のときに母親から受け継いだ抗体や、母乳による免疫効果。
そのため、免疫が切れる前になるべく早くワクチンにより免疫をつけることが薦めらています。
ロタウイルスワクチンは生後6週から接種可能ですが、0歳児は他にも多数、接種が必要なワクチンがあります。
他のワクチンとの同時接種も考えると、生後2か月になったらすぐに接種することをオススメします。

ロタワクチンは2種類。飲むタイプの「経口生ワクチン」
現在、ロタウイルスのワクチンは、「ロタリックス」と「ロタテック」という2種類が承認されています。
ロタリックスが2011年11月に、ロタテックが2012年7月に発売になりました。
どちらも口から飲むタイプの「経口ワクチン」で、ロタウイルスの病原性を弱めてつくられた生ワクチンです。
接種方法は、チューブ入ったシロップ状のワクチンを、1回分を赤ちゃんに少しずつ飲ませます。
経口接種なので痛みがなく、赤ちゃんには接種しやすいワクチンです。
2種類のワクチンの違いは接種回数と時期
ロタワクチンは、「ロタリックス」と「ロタテック」の2種類がありますが、効果については大きな違いはないとされています。
ただし、接種回数と時期が異なります。
■ロタリックス(2回接種)
●生後6~24週の間に2回
●メリット:少ない回数で早く済ませられる
●デメリット:接種できる期間が短い
●生後24週を過ぎると接種できない
■ロタテック(3回接種)
●生後6~32週の間に3回
●メリット:2回接種より時間の余裕はある
●デメリット:回数が多い
●生後32週を過ぎると、2回目、3回目は接種できない
どちらを接種するかは、かかりつ医と相談することがよいでしょう。
「いつか受けよう」はできない!スケジュール確認を忘れずに
ロタウイルスの2種類のワクチンは、いつでも接種できるわけではなく、接種できる時期は限定されていて、接種できる期間が短い点に注意が必要です。
誕生日から、どのワクチンをいつ打つのか、接種の時期を見逃さないことが大切です。
またロタワクチンは、1回目の接種後から4週間(27日)以上、間隔を空けなければ、次のワクチン接種はできません。
2種類のワクチンについては、スケジュールをよく確認しましょう。

ロタワクチンの気になる副作用
ワクチン接種には、副作用が見られることがあります。
ロタウイルスワクチンにおいては、接種後30日間に、ぐずり、下痢・嘔吐、咳・鼻みず、発熱、食欲不振などが報告されています。
これらは感染したときと同じような症状が一時的に出る反応。本当にかかった時よりずっと軽く一時的なことのため、あまり心配は要りません。
■最も注意すべき副作用:腸重積症
「腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)」は、腸が腸の中に重なり、細胞が壊死する可能性がある病気です。生後6か月以降にかかりやすいのですが、ロタワクチンにより発症のリスクが少し高まるとの報告があります。
通常は数日で回復する一過性ですが、以下の様子がみられたら、救急で医師の診察を受けてください。
■ぐずる、泣く、不機嫌を繰り返す
■顔色が悪い
■嘔吐を繰り返す
■イチゴジャムのような血便
重篤なものはまれですが、ワクチン接種後から1週間は、赤ちゃんの健康状態を十分に観察しましょう。
ワクチンの副作用を恐れないで
ワクチン接種は何らかの反応が出ることがありますが、副作用を心配するあまり、ワクチンを接種せずに重症化してしまう事の方が問題です。
ロタリックスとロタテックは共に、ロタウイルス胃腸炎のほとんどの重症化を防げることが確認されています。
予防接種のタイミングを逃さないようにすることが大切です。
ロタワクチンは任意接種。気になる費用について
ロタウイルスのワクチンは「任意接種」です。
任意接種の場合費用は自己負担。受けるかどうかは保護者が決めることになります。
ただし、任意接種のワクチンは、定期接種より重要度が低いというわけではありません。
そのため、各自治体で助成制度があります。
ロタワクチンの料金は、病院によって異なりますが、おそよ1回10,000円前後~14,000円程度かかります。
これを2回~3回接種するのですから、決して安くない金額のため、接種を迷ってしまう・・・という声がありますが、助成制度を利用して接種率も上昇し、2013年には約半数の赤ちゃんが接種しています。
現在、補助される金額は、各自治体によって異なりますが、ワクチンを接種せず、重症化して入院治療になってしまった場合は、ワクチンの費用よりずっと高い医療費がかかることにもなるでしょう。
ぜひ地域の自治体に確認し、助成制度を利用しましょう。

予防接種をしてあげなかったことを後悔しないために
赤ちゃんは、様々な感染症にかかりながら、徐々に免疫を獲得していきます。
小さな体にせまる病原体と戦いながら強くなっていくのですが、そのプロセスで、時に重い後遺症を残したり、命を落とすことにならないとは限りません。
重要な感染症の中には、ワクチンがないものもあり、かかってしまってからの対処しかできないものもあります。
「ワクチンで救える命がある」といわれていますが、ロタウイルスにはワクチンがあるので、できる限り病気から守ってあげることが大切ですね。