はじめに

赤ちゃんや子供が、風邪の症状もないのに高熱が出たら、何が原因なのか判断するのは難しいものです。

熱が出る病気は多くありますが、尿路感染症もその一つで、重症化する危険があるため早期発見が鍵になります。

特に気が付きにくく、乳幼児にかかりやすい「尿路感染症」を知っておきましょう

尿路感染症ってどんな病気?

尿は腎臓で作られますが、腎臓は体内を流れる血液をろ過してきれいにする働きがあり、その結果できたのが尿です。

尿は、腎盂(じんう)→尿管→膀胱→尿道という「尿路」を通って体外へ排出されます。

この尿路のどこかにウイルスや細菌が感染、炎症を起こすのが尿路感染症です。

原因のほとんどは細菌による感染で、8割以上と最も多い原因菌は腸内にすみつきやすい大腸菌です

炎症を起こす場所によって症状に特徴があり、「膀胱炎」 「急性腎盂腎炎」など病名も異なります。

赤ちゃんの場合は、感染した場所が特定しにくいため、まとめて尿路感染症と呼んでいます。

膀胱炎(ぼうこうえん)

大腸菌などの細菌やウイルスが膀胱に侵入して炎症が起こります。

一般に女の子に多く見られます。

これは、男の子よりも女の子の方が尿路が短く、細菌が侵入しやすい構造になっているためです。

成人でも同様で、女性の方が男性より膀胱炎にかかりやすくなっています。

腎盂腎炎(じんうじんえん)

主に大腸菌などが「尿道から腎盂へ逆行」して炎症を起こしたものです。

尿路感染症は低月齢の赤ちゃんの場合、4~5割に「膀胱尿管逆流症」などの異常が隠れています。

膀胱尿管逆流症とは、腎臓で作られた尿は尿管を通って膀胱に貯められますが、尿管と膀胱のつなぎ目(接合部)の異常のため、膀胱に貯まった尿が再び尿管、さらには腎臓に逆戻りする現象です。

膀胱尿管逆流症の合併症として膀胱尿管逆流のために腎機能が低下し、腎不全に陥ることがあります。

腎不全は生まれた直後からすでに始まっていることもあります。

尿路感染症の症状は?

風邪でもないのに、熱が出たら要注意です。

膀胱炎の場合、大人なら排尿痛や残尿感、下腹部痛などの不快感に気づき治療にとりかかれますが、赤ちゃんの場合は痛みや不快感を伝えられないので、膀胱炎の段階では気が付かないことが多いようです。

その結果、炎症が尿路上部の腎盂(じんう)などまで進んでしまい、より症状の重い腎盂腎炎になってしまいます。

膀胱炎の症状

膀胱炎の症状には、次のような特徴があります。

・尿の回数が増える

・排尿時に痛みを伴う

・発熱症状は少ない

・尿が濁り、血尿が見られる場合がある

腎盂腎炎の症状

腎盂腎炎の症状には、次のような特徴があります。

・突然38度以上の高熱

・排尿の回数が増え、排尿持に痛みを伴う

・熱はあるが鼻水、せき、下痢などの症状は見られない

・顔色が悪い、機嫌が悪い

・食欲不振

・嘔吐や黄疸を起こすこともある

赤ちゃんが、「熱が高い場合や発熱を何度も繰り返す」場合は、尿路感染症、特に「腎盂腎炎」の疑いがあります。早めに小児科を受診することが大切です。

診断の落とし穴になりやすいもの

乳幼児の場合、発熱以外に目立った症状がないため、上気道炎(風邪)と診断されてしまうことも少なくありません。

この時、二次感染予防のためと抗菌薬を服用してしまうと、細菌が原因の場合、熱が下がってしまいます。

熱が下がってほっとしますが、ここが落とし穴になることも多くなっています。

熱の本当の原因である尿路感染症を発見できず、尿路感染症を繰り返し、そのうち腎臓に再生不可能なダメージを与えてしまうこともあります。

尿検査や血液検査が必須!

まず発熱の原因が「尿路感染症ではない」か「尿路感染症である」かを確かめる必要があります。

尿路感染症が疑われるのであれば、それが膀胱なのか、腎盂なのかも確かめることになります。

そのためには尿検査や血液検査が必須です。

腎盂腎炎を起こしている可能性が高い時は、超音波検査と排尿時膀胱造影検査(X線撮影)を行います。

尿路感染症の治療法は?

治療については、子供の年齢と性別、尿路感染症の頻度、逆流の程度などを総合的に考えて判断します。

膀胱炎の治療

多くの場合外来通院で、抗菌薬や抗生物質を服用して治療します。

おうちでもできるホームケアとしては水分をたくさん取り、膀胱内の細菌を尿と一緒に排出させることがとても大切です。

腎盂腎炎の治療

原則として入院し、一定期間抗菌薬や抗生物質での治療を行い、尿の状態が改善するまで継続します。

さらに膀胱尿管逆流症などが隠れていないかを確かめることも重要です。

症状によっては逆流そのものを止める手術をすることがあります。

尿路感染症を防ぐための日常の注意点は?

尿路感染症を防ぐために、日常生活では次のようなことを心がけましょう。

・普段から性器の清潔を保ちましょう

・ 女の子はうんちのときは、前から後ろへ拭く習慣をつけさせ、大腸菌の感染を防ぎましょう

・ふだんから十分な水分を取るように心がけましょう

・おしっこを我慢せず、3時間を目安にトイレに行くようにしましょう

・赤ちゃんの場合、下痢などでうんちがべったりついている時はシャワーできれいに洗い流してあげましょう

おわりに

尿路感染症は、高熱以外の症状がほとんどないため、診断がしにくい病気です。

見過ごされると「敗血症」といって、細菌が血液に乗って全身に回り命にかかわる可能性があります。

原因不明の高熱や発熱を繰り返す場合、今回を参考に病気を疑ってみましょう。

重症化する前に、専門医へ早期の受診をおすすめします。