髄膜炎(ずいまくえん)には世界的な支援団体があり、子どもたちを守るために、その情報や予防法などについて広く呼びかけをしています。
病名は知っていても、身近に感じていない人も多いようですが、未だに後遺症や死亡例が断たない病気の1つです。
日本では年間約1.000人の子供たちがかかっていると言われています。
ぜひ原因、症状、治療法、予防法などの情報を得ておきましょう。
髄膜炎ってどんな病気?
髄膜炎は、脳や脊髄を覆っている髄膜に、ウイルスや細菌が入って炎症を起こす病気です。
昔は旧称で「脳膜炎」と言われていました。病名も知られていて、とても恐れられていた病気です。
抗生物質がなかった時代にはほぼ助からず、医学が進歩した現代でも死亡や後遺症が残る難しい病気です。
髄膜炎にはウイルスの感染による「無菌性(ウイルス性)髄膜炎」と細菌の感染による「細菌性髄膜炎」があります。
特に細菌性髄膜炎は、早期治療が望ましいのですが、ごく初期は風邪の症状と違いがないため、診断が非常に難しい病気です。
髄膜炎は炎症部位によっては命の危険があるため、救急疾患に分類されます。
●無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)
主にエンテロウイルス、ムンブウイルス、コサッキーウイルス、などが原因となります。
おたふくかぜ、はしか、風疹、夏かぜではヘルパンギーナや手足口病などからの合併症として、ウイルスが中枢神経に侵入して脳脊髄膜が炎症を起こします。
無菌性髄膜炎の場合、比較的症状は軽く、多くは後遺症もほとんど残りません。
●細菌性髄膜炎
最も多いのがHIB(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)その他は肺炎球菌、溶連菌、大腸菌などが主な原因です。
細菌性髄膜炎は炎症の程度も強く、脳細胞にまで影響を及ぼします。
乳幼児にかかりやすく、月齢が低いほど合併症や後遺症、命にかかわる危険があります。
後遺症としては、脳萎縮、てんかん、まひ、難聴、頭蓋内に髄液が増えて頭が大きくなる水頭症、運動障害、発達障害など多くのことがあります。
細菌性髄膜炎は、症状が急激に進行することが特徴です。
死亡も免れない場合や、発症してしまうと救命や治療が困難なケースも多々あります。
症状は?
無菌性(ウイルス性)髄膜炎も細菌性髄膜炎も、以下のような共通の症状があります。
◇38度~39度の高熱
◇異常に不機嫌
◇母乳やミルクの飲みが悪い、食欲不振
◇頭痛
◇吐き気、嘔吐
◇首の後ろ(うなじ)が硬くなり首を曲げづらい
◇けいれん、意識障害
などが見られます。
また髄膜の炎症によって頭の中の髄液圧が上がり水が集まってくるため、おでこにある骨と骨のつなぎ目の「大泉門」が腫れて膨らむことがあります。
初期はかぜの症状と似ているため判断が難しく、また原因によって症状の程度は異なります。
まずば以上のような症状が現れた場合は、夜間でも至急病院へ行ってください。
治療法は入院治療
診断は血液検査や髄液検査で髄膜炎かどうか、また無菌性・細菌性かを判断します。
無菌性(ウイルス性)髄膜炎の治療
特効薬がないため、症状に応じて解熱剤や鎮痛剤など、対症療法で回復を待ちます。
検査で髄液を抜くだけでもかなり回復し、後遺症の心配もほとんどありません。
細菌性髄膜炎の治療
脳髄液から原因になっている細菌を特定し、抗生物質や抗菌薬の投与により治療します。
その他、嘔吐、脱水症状予防のための点滴、解熱剤や鎮痛剤など症状に応じた治療も合わせて行います。
抗菌薬の投与期間は全身状態を確認しながら行います。
特に細菌性の場合は早期診断と早期治療は大切ですが、治療にも限界があるようです。
まずは、ワクチン接種により予防することが最も大切と言われています。
生後2か月になったらワクチン接種を!
細菌性髄膜炎の大半は、HIB(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型)と肺炎球菌が原因です。
HIBワクチン接種により、HIBが血液や髄液から検出されるような重篤なHIB感染症にかかるリスクを95%以上減らすことができます。
生後2か月になったらすぐにHIB(ヒブ)ワクチン接種を受けましょう。
肺炎球菌ワクチンも、生後2か月からHIBワクチンと同時接種で受けましょう。
3か月からはこれに加えて、四種混合(三種混合)ワクチンも同時に接種できます。
かかりつけ医や各市町村の保健所などでスケジュールを確認しましょう!
おわりに
髄膜炎自体に感染はありません。ただし、ウイルスや細菌感染が流行っている時期は、他の病気からの連鎖によって起こることが多くあります。
まずはワクチン接種などできることを見過ごず、大切な赤ちゃんを守っていきましょう。
後遺症を残さないためにも、おかしいと思ったら至急に受診、治療することが大切です。