「てんかん」とはどんな病気?
てんかんとは、大脳の神経細胞の一部が、刺激に対して過剰に興奮することによって起こる発作です。
脳の神経細胞の数は数百億ともいわれ、基本的に電気的活動を行っています。
てんかんは、脳の一部が「一時的な電気発射」を起こすことにより、突然意識を失ったり、筋肉が硬直してけいれんを起させるなどの「てんかん発作」を繰り返す病気です。
てんかんはどの年齢層でも発症しますが、特に小児と高齢者で発症率が高いといわれています。
小児の場合は1歳までに発症することが多く、脳のどの範囲で電気発射が起こるかによって、様々なタイプや症状があります。
てんかんは、良性のものから難治性のものまで重症度は様々です。
発作を放置すると、大脳機能の発達に障害をもたらす可能性があるため、適切な診断と治療が重要です。
てんかん発作の種類
てんかん発作は、過剰な電気的興奮が起こった部位や電気的な興奮の広がり方によって、2つの種類に分けられます。
「部分発作」=意識がある
脳の一部が過剰に興奮することによって起こるものです。
けいれん、しびれ、手が勝手に動く、頭痛など、運動野や視覚野などをはじめとする脳の一部の過剰反応により、体の一部に発作が起こります。
発作は突然始まり1分程度で治まります。全体の60~70%にあたります。
「全般発作」=突然意識を失う
脳全体が過剰に興奮しておこるものです。
突然意識を失う、体の硬直、突っ張り、倒れる、呼吸が停止するなど、全身に及ぶ発作です。
全体の20~30%にあたります。
てんかんの種類
てんかんの種類はその原因によって、2つの種類に分かれます。
特発性てんかん
原因が分からず、体質によると考えられるものです。
症候性てんかん
脳の外傷、脳腫瘍や脳炎、髄膜炎など、脳の病気に伴って起こります。
乳幼児に多いタイプのてんかん
点頭(てんとう)てんかん(ウエスト症候群)
生後数か月~1才までに発症することが多く、乳幼児の代表的な疾患ともいわれます。
症状は、寝起きや眠い時に、手足や頭部に数秒間力が入る発作です。
首をカクンカクンと前に倒し、体を硬直させる特徴的な発作が毎日十数回以上あります。
発作は一瞬ですが、短時間の間に「連続的」に発作を繰り返すため、発作により脳のダメージが深刻です。
将来運動や知能などの発達障害を生じる可能性がある難治性のてんかんです。
小児欠神(けっしん)てんかん
突然ぼーっとして意識が無くなり、直前の動作が止まる発作が起こります。
発作は数秒から数十秒前後で、治まった後は何事もなかったように再び発作前にしていた動作を続けます。
発作のために倒れたりすることはほとんどなく、治療によっては治りやすいてんかんです。
レノックス・ガストー症候群
2~5歳に発症し、ウエストてんかんから移行することが多いてんかんです。
急に手足が突っ張る、ぼんやりする、突然体の力が抜けるなど発作型が多岐に渡り、治療が困難なてんかんです。
発作が消失しても、点頭てんかんで受けた脳へのダメージにより、精神発達や運動発達の遅れを伴うこともあります。
光過敏性てんかん
明るいところに出た途端に発作を起こしたり、点頭している光を見て発作が起こります。
近年話題になった、テレビアニメやゲームによるてんかんは、光過敏性てんかんです。
光や色、画像などで誘発されるケースもあります。
てんかんの診断ポイント
小児のてんかんには色々な種類がありますが、診断にはてんかん発作かどうかの識別が必要です。
てんかんに似たような症状で「熱性けいれん」「泣き入りひきつけ(憤怒けいれん)」などがあります。
発作は医師の目の前で起こすケースはあまりないため、発作を目撃した人の観察が大切です。
診断の前に整理しておきたいこと
「ひきつけ」「けいれん」「発作」だけでは内容は分かリません。
そのため病院では、てんかんが起きるときの状況と全身の様子を聴取します。
子供の様子をよく観察しておくことが大切です。
◼︎状況について
・何をしているとき
・体のどこが
・どんなふうに
・どのくらいの時間
・どうなったか
◼︎症状について
・意識はあるか
・顔つき・目つき・眼球の位置・顔色・唇の色
・呼吸・息づかい
・力が入っているか、抜けているか
診断方法
診断は、脳波、CT、MRIなどの検査をし、脳の異常など原因を判断します。
発作が起きたときに受診する病院は、まずは小児科の「かかりつけ医」を受診します。
てんかんの可能性がある場合、二次診療として「神経学の専門医の診断」があり、三次診療 として「てんかん専門医」があります。
てんかんの治療法
治療にあたっては、発作の確認、他の疾患の除外、脳波のてんかん波形の確認が必要になります。
その上でどのようなタイプのてんかんか、原因は何かを調べ、抗てんかん薬の服用など症状に合せて治療します。
薬で発作が抑制されない場合には、発作が起こっている部分を切除するなどの手術が検討されます。
治療は数年に渡ることがありますが、近年は治療法の進歩で経過が順調なケースが多く見られます。
発作を起こす脳の部分や症状によって薬の選択も変わるため、処方された薬は自己判断でやめず、医師の指示に従います。
おわりに
赤ちゃんや子どもは、けいれんやひきつけなどを起こしやすいため、一般にはてんかんとの判断が難しいものです。
また、てんかんになった場合、後の経過はてんかんの種類によって異なります。
起きたときの様子をしっかりと伝え、早期の診断、治療を心掛けてください。