はじめに  ~前置胎盤(ぜんちたいばん)とは?~

通常、受精卵は子宮底部(子宮の奥や上)に着床し、胎盤は受精卵が着床した位置に作られます。
「前置胎盤」は、胎盤が通常より低い位置に作られ、子宮の入り口(内子宮口)をおおっている状態です。

胎盤が内子宮口をおおっている位置や状態により、3つの種類に分かれます。
1、全前置胎盤(完全におおっている)
2、部分前置胎盤(一部にかかっている)
3、辺縁前置胎盤(端にかかっている)

このように、前置胎盤とは胎盤の位置を示す言葉ですが、前置胎盤の程度により、出産までに様々なリスクを伴う可能性があります。

 

前置胎盤の症状は?

◇警告出血とよばれる無痛性の出血がおこる
◇出血がない場合もある
◇ひどい腹痛や圧痛は伴わない
◇突然、大量出血が発生する可能性がある

前置胎盤は、初期に症状が軽いことがありますが、突然の大量出血があるなど予測が付きにくい特徴があります。

 

前置胎盤の原因は?

◇高齢妊娠
◇喫煙
◇多胎妊娠(双子以上)
◇帝王切開の既往
◇不妊治療既往
◇子宮内の傷や筋腫
◇子宮の奇形

などがあげられます。

 

前置胎盤の問題点は?

大量出血

妊娠中、分娩時に大量出血の可能性があり、母子ともに命にかかわる危険があります。
 

帝王切開による出産

正常分娩ができないため、多くは37週末までにほぼ帝王切開による出産になります。
妊娠経過中に大量出血となった場合は、緊急の帝王切開術が行われます。
緊急の帝王切開の場合、早産になる可能性があるため、赤ちゃんにとっても危険です。
 

合併症

胎盤と子宮が癒着して胎盤がはがれない「前置癒着胎盤(ぜんちゆちゃくたいばん)」となる可能性もあります。
胎盤を剥離する際に大量出血を伴う場合があり、子宮全摘出や死亡のケースもあります。
帝王切開の回数が増えるほど癒着胎盤や子宮摘出のリスクが増えます。

「ハイリスク妊娠」といわれている理由は、このように、妊娠中から産後まで、胎児への影響や合併症の発症などの可能性が、通常よりも高いことです。

 

前置胎盤の診断、治療、出産までの経緯は?

診断

超音波で診断します。妊娠初期の前置胎盤は、子宮が大きくなるのに伴い、後半になって位置が変わる場合があります。
最終的には前置胎盤でなくなる例もあるため、妊娠30週以降に診断します。 
癒着胎盤を疑われる場合には、MRIなどの精密検査が必要となることがあります。
 

治療法と出産までの経緯は?

大量の出血がある場合には入院する場合があります。
基本的には安静にし、お腹が張らないように、子宮収縮抑制剤の投与を行います。
貧血などがある場合は、鉄剤などの点滴投与をする場合もあります。

出産までの準備として、「前置胎盤」と診断されたら、緊急時以外は、帝王切開の日程を決めます。
手術当日に一定量の出血が予想されるため、自分の血液(自己血)を採取し、ストックしておく「自己血貯血(じこけっちょけつ」を行います。

このように、手術には輸血の準備などを含め、万全の態勢を整えてから行います。

 

おわりに

前置胎盤は、秋篠宮妃紀子様やタレントの矢沢心さんなども経験され話題になり、お二人は無事出産されました。
前置胎盤は、かつては非常に深刻な問題でしたが、現在では無事に出産するケースが多いです。
妊娠から出産までは様々な問題がありますが、大切なのは体の異常や気になることを「見逃さない」ことですね。