もともと女性は生理などもあって貧血になりやすい体質ですが、妊娠中は赤ちゃんへ栄養を送るなどの影響で、より貧血になりやすい状態になります。

この記事では、妊娠中の貧血についての基礎知識と、貧血と妊娠の関係性、そして貧血の対処法について解説します。

妊婦が貧血になりやすいのはなぜ?

妊娠中は、血液中のヘモグロビン濃度が低下して貧血になりやすいため、妊娠検診時に行われる血液検査により貧血かどうかを調べます。

ヘモグロビンには体内のすみずみに酸素を運ぶ働きがあるため、貧血になると体内の多くの臓器や細胞が酸欠状態になり代謝機能が低下します。

特に、前の出産からの間隔が短い方、つわりにより十分な食事がとれなかった方、もともと貧血気味であった方は注意が必要です。

妊娠中は血液の量が増加する

妊娠すると、体を循環する血液量は徐々に増え、20週後半には妊娠前より平均5割程増加します。

血液量が増える理由は次のようなものがあります。

・子宮にできた新しい血管に血液を送るため
・子宮が静脈を圧迫によって足から心臓へ戻る血液量が減少するのを防ぐため
・分娩時の出血にも耐えられるようにするため

そのため、妊娠中は赤血球の数やヘモグロビンの量が増加しますが、血液の液体成分である血漿の量も増加するため、ヘモグロビンの相対濃度が低下して貧血になることがあります。

なお、WHO(世界保健機構)の基準によると、妊娠中の女性の貧血の基準値は11g/dL未満とされており、妊娠していない女性の12g/dLより低くなっています。

妊娠後期は特に貧血になりやすい

妊娠中期以降は胎児が自分で血液を作り始めるため、鉄分など血液を作る材料の必要量が格段に増えて、妊娠初期より貧血になりやすくなります.。

また、妊娠が後半になるにつれて体を循環する血液量も増えるため、鉄欠乏性貧血になることが多くなる傾向があります。

妊娠後期になると、1日に必要な鉄分摂取量でいうと妊娠初期の約2.5倍、正常時の約3.5倍の鉄分を摂取することが推奨されるほど血液の必要生産量が増加します。

妊娠中の貧血は胎児に影響がある?

妊娠中に貧血になることはごく自然なことですが、失神・極度の疲労・息切れなどの症状が現れる重度の貧血状態が続くと胎児に悪影響が出ることがあります。

重度の貧血が続くと、正常時と同じだけの酸素を運べなくなり、胎児の成長と発達に必要な酸素が十分に供給されずに切迫早産になるおそれがあります。

また、母体にも影響が出て、正常な陣痛・分娩による出血だけで貧血が命にかかわる状態にまで悪化する場合があります。

そのほか、分娩後の感染症が起こりやすくなったり、産後の回復や母乳の出が悪くなったりすることがあります。

妊娠中の貧血は長引くと胎児や母体へ悪影響が出ることもあるため、主治医に相談しましょう。

妊娠中の貧血の主な原因

鉄の欠乏

貧血は原因によっていくつかの種類に分けられますが、最も多いのがヘモグロビンの材料となる鉄分が不足して起こる鉄欠乏性貧血です。

女性は妊娠中でなくても、毎月の生理によって1カ月に摂取する鉄分とほぼ同じ量の鉄分を失います。

妊娠すると体内では胎児の分の赤血球が作られるため、通常時の約2倍の鉄分が必要になります。結果として鉄欠乏性貧血になりやすい状態になります。

葉酸の欠乏

葉酸は、胎児に酸素や栄養を運ぶ役割を持つ赤血球を形成する上で必要不可欠な栄養素です。

そのため、葉酸欠乏によって貧血が起こることもあります。

また、葉酸は胎児の神経系の発達にも必要であり、葉酸が不足すると胎児が神経管閉鎖障害を発症するリスクが高まります。

妊娠中は母体の健康と胎児の健全な発育のためにも、鉄分だけでなく、葉酸も積極的に摂取する必要があります。

妊娠中の貧血の対処法

貧血の症状が重い場合には医師の治療を受ける必要がありますが、症状が軽い場合は自分で改善できることがあります。

食生活を見直す

妊娠による貧血の予防・対策には、食生活を見直す必要があります。

妊娠中は、鉄分・たんぱく質・ビタミンC・ビタミンB12・葉酸といった栄養素が多い食材を積極的に摂取しましょう。

妊婦の1日に推奨される栄養素の摂取量は次の通りです。

栄養素 推奨される1日の摂取量
鉄分 妊娠初期:8.5~9.5mg|妊娠中期・後期:21~22mg
たんぱく質 妊娠初期:50g|妊娠中期:60g|妊娠後期:75g
ビタミンC 110mg
ビタミンB12 2.8~2.9μg
葉酸 480~490μg

鉄分・たんぱく質・ビタミンC・ビタミンB12・葉酸といった栄養素を含む食品は次のようなものがあります。

栄養素 食品
鉄分 ひじき・牡蠣・レバー・卵黄・ほうれん草・菜の花・小松菜・まぐろ・カツオ・いわし・あさり・大豆など
たんぱく質 牛肉・豚肉・鶏肉・レバー・卵・魚・牛乳・チーズ・大豆・豆腐など
ビタミンC ピーマン・パセリ・キャベツ・ブロッコリー・ほうれん草・ゴーヤ・いちご・レモン・みかん・オレンジなど
ビタミンB12 レバー・魚介類・あさり・牡蠣・赤貝・卵黄・チーズ・牛乳など
葉酸 レバー・卵黄・大豆・納豆・ほうれん草・ブロッコリー・菜の花・ゴーヤ・さつま芋・柿・みかん・メロン・オレンジなど

貧血におすすめの食べ物について、詳しくは関連記事をごらんください。

サプリメントを摂取する

サプリメントは、食事で足りない栄養素を補うための栄養補助食品です。

1日の目安量を守り、あくまで食事で不足した栄養素を補うために取り入れましょう。

エレビット

葉酸や鉄をはじめとする18種類のミネラル・ビタミンが配合されている、女性のためのマルチビタミンサプリメントです。

無味無臭でつわりのときも飲みやすいのが特徴です。

市販薬の使用は医師に相談

鉄欠乏貧血に効果のある鉄剤は市販されていますが、特に妊娠4週~15週は胎児に薬の影響が出やすい期間とされています。

妊娠中は自己判断で市販薬を使用せず、医師や薬剤師に相談しましょう。

おわりに

妊娠中の貧血のほとんどは鉄欠乏性貧血によるものですが、まれに鎌状赤血球症といった遺伝性貧血である場合があります。

遺伝性貧血の場合は、妊娠中に胎児や母体に問題が生じるリスクが高くなるため、分娩前に定期的に血液検査を行う必要があります。

妊娠中に貧血の症状で生活に支障が出ている場合は、一度病院で血液検査と適切な治療を受けることをおすすめします。