はじめに ~過去の病気ではない百日咳~

百日咳(ひゃくにちぜき)は「百日咳菌」という細菌による急性呼吸器感染症で、世界中に見られる疾患です。
もともとは1歳未満の乳児に多い子どもの病気とされ、主要な死因の一つともされていましたが、近年大人の流行が増加しています。

日本では1950年代にワクチン接種が開始され減少しましたが、1970年代に副作用の問題でワクチンを中止した際に増加したという経緯があるため、ワクチン接種が滞れば流行の可能性のある感染症です。

なぜ今大人に増えているかは、ワクチン接種後の効力が無くなったことと大きく関係しています。

百日咳は春から夏にかけて多く見られます。秋や冬にも発症の報告があり感染力が高いため、乳児から大人まで広く注意が必要です。

 

百日咳菌の特徴

百日咳菌は、鼻やのど、気管、気管支の粘膜を侵し、気道の繊毛の活動をまひさせる毒素により気道に炎症を起こします。

感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や接触感染で起こり、7日~10日の潜伏期間の後に発症します。
百日咳の免疫がない人は70~100%の確率で感染するとされています。
 

百日咳の症状の経過

百日咳は、症状の経過を三期に分けることができます。

1、カタル期:1~2週間

  • 普通のかぜ症状。微熱、鼻水、咳から始まる
  • 咳がだんだん強くなる
  • 短い間隔で乾いた咳が続く
  • この時期は感染力が非常に強い
     

2、頸咳期(けいがいき)2~3週間

  • 発作性けいれん性の咳で回数も増えて激しくなる
  • 発熱はなく、あっても微熱程度
  • 顔を真っ赤にして短い咳が連続的に起こる(スタッカート)
  • 息を吸う時に(ヒュー)と笛のような音を立て大きく息を吸う発作(ウープ)
  • チアノーゼ(顔色が悪くなる)
  • 嘔吐を伴う場合がある
     

3、回復期:2~3週間

  • 咳は軽くなる
  • 時折発作性の咳が出る
  • 次第に咳は治まる
     

百日咳は名の通り、咳が100日以上続くことも多く見られ、発症から回復までには約2~3ヵ月かかることもあります。


 

子どもの場合は重症化しやすい

息が続く限り咳が続いてしまう 
夜間の発作が多い
息をつめて咳をするため、顔面浮腫、鼻血が見られることもある
体力消耗、疲労、不眠
脱水症状
年齢が小さいほど、無呼吸発作からチアノーゼ、けいれん、呼吸停止に発展することがある 

特に生後6ケ月未満には重症化しやすいため注意が必要です。
 

大人の場合は診断が遅れる

子どものような特徴的な症状はない
2週間以上咳が長引く
かぜと間違いやすく放置しやすい 
不眠や寝不足による疲労感
重症化することは少ない

成人の場合は、症状の多くは軽症のため、診断が遅れることがあります。
 

大人の多くは軽症→問題は乳児への感染源となること

成人の百日咳が増加している原因として、ワクチン接種後の抗体価の低下があげられています。
ワクチンの予防効果は、接種後3~5年で抗体価の減少が始まり、10~12年で予防効果が無くなるとされています。そのため抗体価の低下する年齢では、百日咳にかかる危険性が高くなるのです。

百日咳は、日本では2010年にも大流行し、20歳以上の感染者が全体の50%を上回っているという報告がされています。
これにより大人は軽症でも、「大人が乳幼児への感染源となる」ことが問題視されています。

百日咳の合併症として、肺炎、脳症、脳炎、肺高血圧症などを引き起こし、死に至ることもあることもあるため、大人から乳児へ感染させないことが大切です。

 

乳児には生後3ヶ月になったらワクチン接種を!

百日咳は、四種混合ワクチン(DPT-IPV)または、三種混合(DPT)ワクチンで予防します。

四種混合ワクチンとは百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオの混合ワクチンです。
四種混合(DPT-IPV)ワクチンは2012年11月に導入され、原則として2012年8月以降に誕生した赤ちゃんが接種します。対象年齢内(生後3ヶ月~7歳6ヶ月)で過去に三種混合ワクチンやポリオワクチンを一度も接種していない人が対象となります。

四種混合ワクチンの費用は市町村が負担してくれる為、対象年齢内であれば無料でワクチン接種を受ける事が可能です。
詳しくは各市町村へ問い合わせてみましょう。
 

おわりに ~咳が長引いたら百日咳を疑いましょう~

家族や職場内で咳をしている人の場合、かぜではなく、百日咳が多かったという報告があります。
百日咳は感染力が強いため、感染しないようにすること、咳エチケットなどを守り、周りに感染させないことが大切です。

特に春から夏、秋などに咳が長引く場合は、百日咳の可能性も考えて医療機関を受診しましょう