はじめに ~過去の病気ではない百日咳~

百日咳(ひゃくにちぜき)とは、特有のけいれん性の咳発作(せきほっさ)を特徴とする急性気道感染症です。

百日咳は世界中に見られる疾患で、多くは1歳未満の乳児にかかる病気とされていましたが、日本では近年、大人の百日咳が増加しています。

家族や職場内で咳をしている人の場合、かぜではなく、百日咳が多かったという報告があります。

百日咳は、特に生後6ヶ月未満では重症化しやすく、最悪は死に至る危険性が高いといわれるほど、乳幼児には重要な感染症です。

百日咳は決して過去の病気ではないため、感染には十分な注意が必要です。

百日咳の原因は細菌

百日咳(ひゃくにちぜき)は主に「百日咳菌」という細菌による急性呼吸器感染症です。

夏風邪の場合はほとんどがウイルスによる感染ですが、百日咳は細菌による感染症です。

百日咳菌は、鼻やのど、気管、気管支の粘膜を侵し、気道の繊毛(じゅうもう)の活動をまひさせる毒素により気道に炎症を起こします。

百日咳の流行期間

百日咳は一年を通して見られますが、比較的、春から夏にかけて多く発症します。

流行の周期は2~5年とされており、百日咳の予防接種が滞ると流行の間隔が狭まるといわれています。

百日咳の感染経路は、飛沫感染、接触感染

感染は以下のような経路をたどります。

飛沫感染とは

咳やくしゃみなどで飛散した病原体を吸い込むことにより、口や鼻の粘膜に付着して感染。

飛沫が1~2m以内の場合は感染の可能性が高く、患者や周囲の人がマスクを付ければ、ある程度の予防効果が見れられます。

接触感染とは

感染している人の皮膚や粘膜、汚染された物に触れることで感染。体の表面に病原体が付着しただけでは感染せず、手で口、鼻、目を触ることにより病原体が侵入し感染が成立します。握手、キス、ドアノブ、手すり、遊具などからの間接接触感染もあります。

百日咳の症状

百日咳の症状は以下の経過をたどります。

■潜伏期間:7日~10日

■カタル期:1~2週間

■頸咳期(けいがいき)2~3週間

■回復期:2~3週間

初期症状・カタル期:1~2週間

■普通のかぜ症状。微熱、鼻水、咳から始まる

■咳がだんだん強くなる

■短い間隔で乾いた咳が続く

頸咳期(けいがいき):2~3週間

■発作性けいれん性の咳で回数も増えて激しくなる

■発熱はなく、あっても微熱程度

■顔を真っ赤にして短い咳が連続的に起こる(スタッカート)

■息を吸う時に(ヒュー)と笛のような音を立て大きく息を吸う発作(ウープ)

■嘔吐を伴う場合がある

回復期:2~3週間

■咳は軽くなる

■時折発作性の咳が出る

■次第に咳は治まる

百日咳は名の通り、咳が100日以上続くことも多く見られ、発症から回復までには約2~3ヵ月かかることもあります。

百日咳の重症化に注意しよう

特に6ヶ月未満には以下の症状には注意が必要です。

■けいれん

■チアノーゼ(唇や爪が紫色)

■典型的な咳が無い無呼吸発作

■呼吸停止に発展することがある

このような症状が見られたら、合併症として肺炎や脳症を引き起こす可能性があり、最悪は命に関わるため至急受診しましょう。

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百日咳の潜伏期間

潜伏期間とは、細菌などの病原体に感染してから、細菌が体内で活動し、百日咳の症状が出るまでの期間のことです。

百日咳は、通常は7~10日の潜伏期の後発症しますが、最大3週間程度潜伏していることもあり、潜伏期間が長いことも特徴です。

百日咳の感染期間(いつまで他人にうつる?)

百日咳菌は感染力が強く、特に発症してから約3週間は菌の排出が最も強い時期ですが、大人の場合、典型的な症状が出ないこともあり、知らずに長期間にわたり感染源になっているケースが多くあります。

特にカタル期には百日咳と診断することが難しく、百日咳に免疫が無い場合は70~100%の確率で感染します。

百日咳の主な治療法

病院での対応は?

主に、エリスロマイシン、クラリスロマイシンなどのマクロライド系の抗生物質により百日咳菌の増殖を抑えます。

咳の症状を抑えるための対症療法も併用します。

抗生物質は、早期の「カタル期」に有効で、服用すれば「頸咳期(けいがいき)」に進行せず軽快できることが多いのですが、カタル期には気づかないことがあります。

頸咳期(けいがいき)からでは発作性の咳は治まりませんが、百日咳菌を体外に排出するために、2週間ほど内服します。

注意として一般的な咳止めでは効果が無く、乳幼児には使用できないものもあるため、市販薬を自己判断で服用せず、必ず医師の指示の元で治療しましょう。

自宅での過ごし方は?何に気を付ければいい?

咳の発作を誘発しないような注意が必要です。

●低温は咳を誘発するため、夏はエアコンの冷たい空気に注意する

●十分な水分摂取

●食事は消化が良く、刺激の少ないものを

●たばこ、花火の煙、ホコリ等を避ける

百日咳が治った後に、「気道過敏症(きどうかびんしょう)」になることがあります。

ちょっとした運動やホコリなどに対しても気管支が敏感に反応し、喘息を発症するきっかけにもなる為、治った後も注意が必要です。

百日咳の有効な予防方法

乳幼児は生後3か月を過ぎたらワクチン接種を

日本では、生後3ヶ月から、四種混合ワクチン(DPT-IPV)または、三種混合(DPT)ワクチンで予防します。

四種混合ワクチンとは百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオの混合ワクチンです。四種混合(DPT-IPV)ワクチンは2012年11月に導入され、原則として2012年8月以降に誕生した赤ちゃんが接種します。

対象年齢内(生後3ヶ月~7歳6ヶ月)で、過去に三種混合ワクチンやポリオワクチンを一度も接種していない人が対象となります。

四種混合ワクチンの費用は市町村が負担してくれる為、対象年齢内であれば無料でワクチン接種を受ける事が可能です。

詳しくは各市町村へ問い合わせてみましょう。

百日咳は生後12か月までの乳児期に感染すると重症になりやすいので、生後3か月になったら早めにワクチン接種を受けましょう。

成人の場合は感染予防に努めましょう

近年、日本で20歳以上の成人の百日咳が増加している原因に、成人のワクチン未接種、または以前接種したワクチンの効力が無くなったことが挙げられています。

ワクチンの予防効果は、接種後3~5年で抗体価の減少が始まり、10~12年で予防効果が無くなるとされている中、成人用三種混合(DPT)ワクチンは、欧米では認可されていますが、日本では実用化に至っていないのが現状です。

感染予防として

●家族など患者との濃厚接触者には、マクロライド系抗菌薬を、予防投与として10日から2週間投与する

●百日咳の症状が無い場合でも、濃厚な接触から3週間は、百日咳の発病がないか観察をする。

このような対策で​百日咳の発病を防ぐことが勧められます。

赤ちゃんを守るために日常の感染予防を!

感染予防のため、日頃から以下に注意しましょう。

●マスクによる咳エチケットを守る

●咄嗟の咳やくしゃみは、手ではなく、袖や衣服の内側でカバーする

●使用したティシュには病原体が付着しているため、すぐゴミ箱に捨てる

●手洗いをしっかり。石鹸やアルコール消毒などで病原体を広げないようにする

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百日咳のよくある疑問・質問

保育園や学校はいつから登園・登校再開できる?

まず、医師より百日咳と診断された場合は、速やかに園・学校へ連絡してください。

百日咳は、学校保健安全法により、「登園・登校停止が必要なもの」に当たります。

保育所、幼稚園、学校共に、出席停止期間は「特有な咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療を終了するまで」とされています。

園および学校に届け出て、定められた出席停止期間に従い、登園・登校再開については医師の許可が出るまで家庭で安静にします。

学校感染症には、症状の重さにより3種類に分類され、百日咳は第2種学校感染症とされています。

詳しくは関連記事を参考にして下さい。

関連記事:夏に注意したい子どもの出席停止となる感染症は? 学校感染症の出席停止の基準・手続きについて

尚、保育所の場合は、幼稚園、小学校、中学校における学校感染症対策にプラスして、乳幼児は児童・生徒等と比較して抵抗力が弱いこと、手洗いなどが十分に行えないなど、乳幼児の特性を踏まえた感染症対策が必要です。

保育所については「保育所における感染症対策ガイドライン」に基づいています。

参考:厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」をご覧ください。

学校感染症には病状により出席停止の基準は定めれらていますが、病状は個人によって異なるため、子どもが感染症にかかった場合は必ず医師の指示に従い、登校の許可が出るまで十分に休養することが大切です。

妊婦の百日咳感染について

妊娠中に感染した場合は、必ず産婦人科に相談しましょう。

百日咳については、細菌自体による胎児への影響はないとされています。

もちろん妊娠中は何であれ感染症にかかった場合は、妊娠経過を慎重に観察する必要はありますが、過度な心配は要りません。

授乳婦・ママの百日咳感染について。母乳からうつる?

授乳中のママが百日咳に感染しても、母乳自体には原因細菌は含まれていないため、母乳感染はありません。

百日咳は、特に6ヶ月未満の乳児への感染は命に関わることがあるため、ママの唾液や手からの経口感染・接触感染により、赤ちゃんへ感染させないよう細心の注意が必要です。

大人の百日咳感染について。出勤再開は?

大人の場合は、子どものような特徴的な症状が出ないことがありますが、2週間以上咳が長引き、不眠や寝不足による疲労感が続くことがあります。

ただ重症化することは少ないため、かぜと間違いやすく放置しやすいため、診断が遅れることがあります。

咳が2週間以上続いたら放置せず、医療機関を受診し、百日咳を診断されたら、速やかに会社に伝えましょう。

他人にうつすため、マナーとして欠勤せざるを得ないでしょう。

出勤可能かどうかは、医師と相談し、感染のおそれが無いと診断されてからにしましょう。

おわりに

百日咳は、決して過去の病気ではなく、今尚、流行が続いています。特に日本では成人のワクチン接種の問題もあり、大人の百日咳が増えれば、当然赤ちゃんにへの影響は大きくなります。

もし咳が長引いている場合は、百日咳の可能性も視野に入れ、自然治癒を待つのではなく、早期の段階で治療を始めましょう。