バセドウ病(グレープス病)とは?バセドウ病の原因・症状・治療方法について

バセドウ病は、甲状腺に対する自己抗体が出来てしまったがために起きる病気です。
日本における、男女比はおよそ1:4で、20歳〜40歳代の女性に多い病気です。

全世界の女性のうち、2%近くに発症すると言われています。

甲状腺はホルモンを産生する臓器であり、甲状腺ホルモンは全身の代謝を司る働きがあります。

バセドウ病ではその機能が亢進する(高まる)ため、必要以上に代謝が行われてしまいます。

従って、人より疲れやすく、動悸や息切れ、頻脈なども起こりやすいです。

眼球が突出したり、首もとが腫れたりという症状も有名ですが、全員に起きるわけではありません。

日常生活において一番影響が出るのは、やはり疲れやすいということがあげられるでしょう。

バセドウ病の原因

バセドウ病がなぜ起こるのか。それには免疫が関与しています。

免疫とは、本来、体外の異物に対して働く防御機構であり、体内に存在する臓器に攻撃することはありません。

しかし、稀に自分の臓器を攻撃対象とした抗体がつくられてしまうことがあります。

この抗体のことを自己抗体といい、自己抗体によって起きる疾患のことを自己免疫疾患と言います。

バセドウ病は、甲状腺に対する自己抗体によって、ホルモンをもっともっと作れという信号が過剰に出てしまうことが原因となっています。

では、なぜ自己抗体が出来てしまうのか、この根本的な原因についてはまだ詳しくは分かっていません。

まわりの環境や遺伝など、さまざまなことが背景にあると言われています。

特にストレスは大きく影響を与えると言われています。

また、たばこは、バセドウ病の発症に大きな影響は及ぼしませんが、眼症の症状を悪化させると言われています。

 

バセドウ病の症状

Merseburg3徴という、眼球突出、甲状腺腫、頻脈というものがまず挙げられます。
しかし、バセドウ病患者に、必ずしも3つすべての症状が出るわけではありません。

眼球突出

大きく見開き、突出した眼はバセドウ病に特有の眼症です。眼球が前に飛び出ることと、上まぶたが挙上することで起こります。
約10%の人では、眼球突出が片側のみとなります。

眼球突出が見られない人もいますが、超音波検査やCT検査などを行えば、ほぼすべての患者に、特徴的な外眼筋(眼の筋肉)の腫れが見られます。

また、充血が見られることもしばしばあります。

 

甲状腺腫

甲状腺が存在する首もとが広く腫れてきます。一般に、甲状腺は正常の2〜3倍になると言われています。
甲状腺に流れる血液の量が増えるため、血管の雑音が聞こえることもあります。

 

頻脈

一般成人の方の脈拍の正常値は60〜100回とされていますが、バセドウ病の方は100を越え、頻脈になることがあります。
これは、甲状腺の機能が亢進し、代謝が増えたために起こります。

 

これらMerseburg3徴の他にも、甲状腺ホルモン過剰のために起こる種々の症状があり、例えば以下のようなものがあります。

  • 汗を多くかく、暑がりになる
  • 収縮期高血圧になる
  • 手指が震えたり、指先が太くなる
  • 筋力が低下する
  • 体重が減少する
  • 骨粗鬆症になる
  • 過小月経、無月経になる
  • 食欲が増える、下痢・腹痛になる
  • 精神が高揚してくる

もちろん、すべての症状が出るわけではなく、度合いも年齢や重症度などによってばらつきがあります。

高齢者の方だと、おもに疲れやすいこと、体重が減ったことを訴える人が多く、この場合を無欲性甲状腺中毒症と言います。

この無欲性甲状腺中毒症は不眠症や注意力の減少なども起こることがあり、この症状だけ見ると、うつ病と間違われることもしばしばあります。

食欲は増えるにもかかわらず、体重減少が起きる場合もありますが、これは代謝が増えすぎることが原因となっています。つまり、食欲の増加とそれに伴う食事量の増大を追い越すほど、代謝が進んでいるということです。

しかし、5%程度の人には、摂食量の増加によって体重増加が起こることもあります。

 

バセドウ病の検査

血液検査とアイソトープ検査があります。

主に血液検査だけで診断がつきます。

血液検査では甲状腺ホルモンの量や、甲状腺に対する自己抗体(TRAbまたはTSAb)があるかどうかを調べます。

血液検査をするときに、前もって注意するべきことはほとんどありません。

血液検査だけでは分かりにくい場合、アイソトープ検査が行われることもあります。

バセドウ病ではヨウ素の取り込みが促進されているため、放射性ヨウ素を投与したときに甲状腺にたくさん集まっていれば診断されます。

アイソトープ検査の前は、検査一週間前よりヨウ素の多い食品を食べることを避ける必要があります。

 

バセドウ病の治療法

主な治療には、薬の服用、アイソトープ治療(放射性ヨウ素による治療)、手術の3種類があります。

どれも甲状腺ホルモンが過剰に出ないようにするために行います。

主に、最初は薬の服用から入りますが、症状が強い場合は、アイソトープ治療や手術を行うことになります。

また、国によってどの治療を選択するかに幅があります。

このことが示しているのは、現在の医療ではどの治療法にも利点と欠点があり、最適と言える治療法の確立はまだ出来ていないということです。

 

薬の服用

抗甲状腺薬である、チアマゾール、プロピルチオウラシル(プロパジール、チウラジール)を服用します。

これらの薬は、甲状腺ホルモンがつくられるのを阻害します。

甲状腺ホルモンの生成量が正常になるまで、数週間〜数ヶ月くらいかかります。

生成量が正常になるまではおよそ8〜12時間毎の服用となりますが、機能が正常に戻ったあとは、1日1回の服用とすることも可能です。

また、正常値が安定した状態が続けば、服用を終えることも出来ます。

一般的な副作用は、発疹、蕁麻疹、発熱、関節痛がありますが、別の薬と併用することで治ることがほとんどです。

また、重篤になりうる副作用として、1%未満の人に起こる、無顆粒球症というものがあります。

無顆粒球症では、白血球や顆粒球などの身体の防御を行うリンパ球の数が減少します。

これによって感染症にかかりやすくなるため、この症状が出たら薬の服用は中止します。

 

アイソトープ治療

最初からこの治療を行われることもありますが、再発防止のために行われることもあります。

放射性ヨウ素を服用することで、甲状腺の細胞を破壊し、原因となる甲状腺ホルモンの分泌量を抑える効果があります。

手術のように傷跡は残らず、薬よりも早く治るという利点がありますが、患者さん毎に最適な量がバラバラであり、またその量をうまく算出する方法は未だ確立できていません。量が多すぎると、逆に甲状腺の機能が低下してしまう、というリスクも存在します。

しかし、この治療の前に1ヶ月間、抗甲状腺薬を服用することで、上のような症状が起こるリスクを減らすことも出来ます。

また、そもそも最終的には5〜10年間で甲状腺機能は低下するというデータもあるため、もとから甲状腺の機能を正常化させることよりも放射性ヨウ素によって甲状腺を除去することを薦める専門家も多くいます。

この治療を行った最初の数日間は周りの人への被爆を防ぐため、数日の間は子どもや妊婦の方と長い時間接することを避けることが望まれます。

放射性という名前だけで癌になりやすくなるのではないか、と心配に思う人も多いですが、治療に用いる程度の量では癌のリスクがあがることはない、ということが統計的に示されています。

また、子孫への影響もほとんどないとされているので、アメリカでは抗甲状腺薬よりも、このアイソトープ治療の方が多く選択されています。

しかし、妊娠中や授乳中では、アイソトープ治療は絶対に行われません。

 

手術

外科的に甲状腺を取り除くことで、甲状腺ホルモンの産生量を減らすという治療法です。
手術には、甲状腺を全て摘出する全摘術と、一部分しか取り除かない亜全摘術があります。

抗甲状腺薬療法後に再発した患者が、アイソトープ治療ではなく手術を選択した場合、行われます。
特に、若い人で甲状腺腫がとても大きい人には薦められる場合が多くなります。

亜全摘術では、甲状腺ホルモンが正常となるためには、どれほどの量を摘出すれば良いのかということを正確に測る方法はまだ確立されていません。

これは、アイソトープ治療で放射性ヨウ素の量を計算することが難しいのと同じです。

 

食事

この病気ではホルモンのバランスが取れておらず、食事は気をつける必要がありますが、原則として食べてはいけないものはありません。

まず代謝が正常以上に多く行われており、体重減少といった症状が出る人も多いため、基本的には三食しっかりバランス良く、規則正しく食べることが大切です。

また、甲状腺ホルモンの合成を妨げる、ゴイトロゲンという物質の食べ過ぎには注意が必要です。
例えば、アブラナ科の野菜(キャベツ、芽キャベツ、ブロッコリー、かぶ)にはゴイトロゲンが多く含まれています。

動悸や息切れを助長させるおそれがあるので、アルコールの飲みすぎや刺激物の取りすぎはオススメしません。

 

妊娠への影響について

バセドウ病にかかると妊娠出来ないのではないか、という話も良く聞きますが、治療後6ヶ月を過ぎれば妊娠しても安全です。

しかし、甲状腺ホルモンが過剰に出ているときに妊娠すると流産する可能性はあがるので、甲状腺ホルモンの量をしっかり計測して観察することが大切です。

 

おわりに

バセドウ病は医療機関での診断と治療が必要になる疾患ですので、疑われる時はまずは医療機関で医師に相談するようにしましょう。

 

参考文献

2013年発行『ハリソン内科学 第4版』MEDSi 

2012年発行『病気が見える vol.3 糖尿病・代謝・内分泌 第3版』MEDIC MEDIA

http://caregohan.jp/sickness/koujousen.aspx

http://www.aseanlife.com/03/post_26.html

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