ヘルペスが唇や唾液に集まる=疲れ・うつ症状?

疲れによって体に現れる症状には、さまざまなものがあります。頭痛やめまい、吐き気に肩こり・・・。
こうした症状のひとつとして、近年注目されているのが「唇のヘルペス」です。
さらに、唾液に含まれるヘルペスウイルスによって「うつ症状」が分かることも判明し、こちらも注目を集めています。

なぜ、唇や唾液のヘルペスで「疲れ」や「うつ症状」が分かるのか?詳しくみていきましょう。


 

唇のヘルペスは「疲れ」のサイン?その理由とは?

唇のまわりに水ぶくれがブツブツとできる「口唇ヘルペス」。
口唇ヘルペスを引き起こすのは、ヘルペスウイルスの一種「単純ヘルペスウイルス1型/HSV-1」です。
子どもの頃に家族間で感染するケースが多く、日本人の70~80%が感染しているといわれています。

ヘルペスウイルスは、一度感染すると一生体内に潜伏し、再活性化することが特徴です。
そして、ヘルペス再活性化の原因に「疲れ」やがあるとされています。

「疲れ」でヘルペスが再活性化する理由は?

あなたは「沈没船のネズミ」という話を聞いたことがありますか?
ネズミは船の危険を察知すると、新しい船を探しにいち早く逃げ出すという話です。
ヘルペスが再活性化するメカニズムも、これによく似ています。

ヘルペスにとっての船は、宿主の体。この船が「疲れ」によって危険な状態にあると察知すると、新しい住処を探そうと再活性化が始まるのです。
唇のヘルペス(口唇ヘルペス)は、再活性化が唇に現れたことで発症します。
疲れているときだけではなく、風邪のときや体調がすぐれないときに唇にヘルペスができるのも、ヘルペスが宿主の体から逃げ出そうとするためなのです。

 

唾液に潜む「ヒトヘルペスウイルス6」で「うつ症状」が分かる?

「うつ症状」が分かるとして、近年注目を集めているのが「ヒトヘルペスウイルス6/HHV-6」と呼ばれるヘルペスウイルスの一種です。
「ヒトヘルペスウイルス6」は、ほとんどの人が生後6~12ヶ月にかかるといわれる「突発性発疹」の原因となるヘルペスウイルス。
初感染後、脳内に潜伏感染しているケースが多く、思考や情動に関わる「前頭葉」「側頭葉」「海馬」に潜んでいます。

「ヒトヘルペスウイルス6」が再活性化する理由も、唇のヘルペスと同様、宿主の体の危機です。
「ヒトヘルペスウイルス6」の場合は、唾液に集まる傾向にあり、ヘルペスが危機感を感じる度合いに「疲れ」が大きく関わっています。
唾液に潜むことで、くしゃみや咳などで別の宿主の体へと引っ越すのです。

「ヒトヘルペスウイルス6」の再活性化で作られるタンパク質・「SITH-1」

なぜ「ヒトヘルペスウイルス6」が、うつ症状を知るサインとなるのか?その理由は「SITH-1」にあります。
「SITH-1」とは「ヒトヘルペスウイルス6」が再活性化したときに発現が誘導される、タンパク質。
「SITH-1」に対する抗体の保有状況を検討した結果、以下のようなことが分かりました。

・健康成人には「SITH-1」の抗体がほとんど見つからなかった
・気分障害患者の半数以上が「SITH-1」の抗体を保有していた
(ここでは気分障害患者とは、慢性疲労症候群のうつ症状を示す患者、うつ病患者、双極性障害を指す)

この2点から、ヘルペスによって「うつ症状」が引き起こされる可能性が示唆されているのです。
特に「慢性疲労症候群/CFS」とは、強い関係にあると考えられています。

慢性疲労症候群とは・・

大クライテリア(大基準)による診断基準

1)生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続ないし再発を繰り返す。
2)ほかの疾患が見つからない

主な症状

〇微熱・悪寒
〇喉の痛み
〇頚部や腋窩リンパ節の腫張
〇原因不明の筋力低下・脱力感
〇筋肉の痛み
〇全身倦怠感
〇頭痛
〇腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
〇物忘れ、錯乱、思考力低下、抑うつ
〇睡眠障害
〇急な発症

心が原因とも、体が原因ともいわれる慢性疲労症候群ですが、ヘルペスウイルスが大きく関わっている可能性も考えられます。
現段階では病院で調べることはできませんが、唾液によって、うつ症状が分かる日が来る日も、そう遠くないかもしれません。
 

さいごに:充分な休息、睡眠を

唾液に集まる「ヒトヘルペスウイルス6」は、休息によって減少することが分かっています。
また、疲れている自覚のない人ほど「ヒトヘルペスウイルス6」が再活性化する傾向にあるので、注意が必要です。

忙しさや疲労感は、ときに私たちに達成感を与えてくれますが、一方で体には大きな負担を与えています。
充分な休息や睡眠を摂ることを心がけ、体に異変が起こった場合は放っておかずに早めに医師に相談するようにしましょう。
 

参考文献:近藤一博(2010)ヘルペスウイルスと疲労、うつ症状との関係『疲労の医学』170-180頁、日本評論社