帯状疱疹の痛みが残るのは「帯状疱疹後神経痛:PHN」かもしれません

水ぶくれをはじめとした帯状疱疹の皮膚症状が治まっても、痛みが残る人は少なくありません。

帯状疱疹の発生から3か月以上たっても痛みが続く場合は、後遺症である「帯状疱疹後神経痛:PHN」と定義されています。

帯状疱疹から帯状疱疹後神経痛へ移行する確率は約3~15%。ただし、帯状疱疹の症状の重さに応じて起こるものではありません。帯状疱疹後神経痛の痛みは3ヶ月~半年後で改善されることが大半ですが、長い場合は5年、10年と痛みが残るケースもあります。

日本人の3人に1人はかかるとされる、帯状疱疹。帯状疱疹後神経痛も他人事とはいえない病気です。

そこで今回は、帯状疱疹の後遺症といわれる「帯状疱疹後神経痛」の症状や原因、治療法について解説していきます。


 

帯状疱疹後神経痛の症状とは?

「帯状疱疹」と「帯状疱疹後神経痛」の症状が同時にあらわれるケースがあるため、明確な線引きは難しいですが、帯状疱疹後神経痛の症状には以下のものがあるとされています。

帯状疱疹後神経痛の症状:痛み

●うずくような痛み
●焼けるような痛み
●締め付けられるような痛み
●電気が走るような痛み
●アロディニア:異痛症
→「衣服が肌にこすれるだけで痛い」「風が肌にあたるだけで痛い」といった、本来なら痛みを感じない刺激でも痛みを感じる、感覚異常。

そのほか帯状疱疹後神経痛の症状

●皮膚に何かが貼り付いているような違和感
●感覚鈍麻(つねっても痛くない・・など)
●しびれ
●温・冷覚の低下

これらの症状ですが、何かに集中しているときや就寝時には起こらないことが、帯状疱疹後神経痛の特徴です。そのため、患者の痛みに周りの人間が気付きにくいケースも、多々あります。

リラックスしているときに痛みを訴えるケースが多いので、周囲に帯状疱疹後神経痛(あるいは帯状疱疹)の患者がいる場合は、こうした傾向を理解しておくと良いでしょう。

帯状疱疹後神経痛の痛みの原因は?

帯のように広がる多数の水ぶくれが有名な帯状疱疹ですが、痛みが生じているのは「皮膚」ではなく「神経」です。

帯状疱疹の原因ウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が神経を傷付け、炎症を起こしています。

神経の炎症によって神経細胞などが傷付けられた結果、神経の性質(硬さや、神経細胞の数など)が変わってしまうことが、痛みの原因です。

また、神経は一度性質が変わってしまうと回復は困難とされ、これが帯状疱疹後神経痛の痛みが長引く原因となっています。

帯状疱疹後神経痛にかかりやすい人とは?

3~15%の確率で帯状疱疹から移行するとされる、帯状疱疹後神経痛。特にかかりやすいのは、どんな人でしょうか。大きく分けて2つの傾向があります。

●60歳以上の高齢者
●初期の皮膚症状が重症だった人

帯状疱疹後神経痛にかかりやすい人:60歳以上の高齢者

20代の帯状疱疹の患者で痛みが残るケースは、ごく稀です。

一方、60歳以上で帯状疱疹にかかった患者は、発症から3ヶ月経っても痛みを感じる人が4人に1人いるとされています。さらに発症から半年たっても、60代では約5%の人が、70代では約6%、さらに80代では約11%の人が痛みを訴えています。

帯状疱疹後神経痛にかかりやすい人:初期の皮膚症状が重症だった人

初期の皮膚症状が重症だった人も注意しなければいけません。痛みも皮膚症状も、原因はウイルスによる神経の損傷。

つまり皮膚症状が重症だった人は、それだけ神経が傷ついてる可能性が高いので、帯状疱疹後神経痛へ移行する確率が高くなります。

帯状疱疹後神経痛を防ぐために、帯状疱疹の早期治療が欠かせないのは、このためです。

帯状疱疹後神経痛の治療や痛みの緩和について

帯状疱疹の治療は「痛みをなくす」ではなく、「痛みを軽減する」という形で行われます。医師は患者ひとりひとりに適した治療法を組み合わせて、治療を進めていきます。

抗うつ薬 抗うつ薬をはじめとした抗精神薬には
痛みを緩和する物質「カテコールアミン」を
増やす働きがある。
鎮痛薬 アセトアミノフェンなど。鎮痛作用は弱めだが
胃や腎臓への悪影響が少ないことがメリット。
抗けいれん薬  神経が過剰に興奮するのを抑える。
漢方薬 抑肝散・桂枝加朮附湯など。
神経痛や関節炎などに使われる漢方を使用。
オピオイド 強い鎮痛作用が特徴。様々な痛みに安定した効果が
期待できる医療用麻薬。
外用薬 アスピリンの軟膏や湿布薬で局所の痛みを抑える。
イオントフォーレシス  薬を吸収させた電極によって皮膚鏡面から電気的に
薬を浸透させる。
痛みは少なく、深部まで成分が届くが
帯状疱疹後神経痛の治療では保険適用外。

帯状疱疹後神経痛の痛みを緩和するには?

帯状疱疹の痛みを緩和させるには「体を温める」ことが有効とされていますが、帯状疱疹後神経痛の場合も同じです。

これは帯状疱疹によって傷ついた神経が、周囲の血管を収縮させ血流を悪くさせるためです。

血流が悪いと酸素や栄養が十分に届けられないだけでなく、服用中の薬の成分もきちんと届けられないので、痛みを長引かせる原因となります。

こうした血流悪化を改善するには、体を温めることが効果的なのです。

さいごに

突然ですが、スポーツ観戦中、ケガをしたアスリートが痛みを忘れてプレイに集中しているシーンを見たことはありませんか?

これは人間の体の機能のひとつ、「疼痛抑制機能」が働いているためです。

人間の神経は木の幹と枝のように、太い神経から細い神経が枝分かれして体中に張り巡らされています。それぞれ、細い神経は「痛みを太い神経に伝える」、太い神経は「痛みを脳へ伝える」。

アスリートが痛みを忘れてしまうのは、プレイに熱中することで細い神経と太い神経をつなぐ門を閉じてしまうためです。この門を閉じる働きが「疼痛抑制機能」と呼ばれています。

帯状疱疹後神経痛の患者の場合、神経の損傷によってこの機能が上手く働かない傾向があります。

それでも趣味や娯楽など、何かに夢中になることは、痛みを緩和させる上で重要です。

また、少しでも疼痛抑制機能を活性化させることで、薬の効果が高まります。痛みを気にしすぎて、じっとしてしまうより、アクティブな生活を送ることで効率よく治療を進めましょう。