「腹部」はみぞおち周辺からへそ周りの下腹部までの広い範囲をさします。

痛む場所によって疑われる原因や病気が異なるため、痛み方や痛む場所による原因の違いを知っておくことで、病気の早期発見・早期治療につながります。

この記事では、腹痛で疑われる病気を痛む場所別に解説していきます。

腹痛の原因や治し方など、腹痛について詳しくは関連記事をごらんください。

みぞおち周辺の痛み:胃・十二指腸

みぞおち周辺が痛む場合は、主に胃・十二指腸の異常が原因ですが、心臓の異常が原因となることもあります。

以下のような病気を疑い、胃腸の場合は消化器内科または胃腸科、心臓の場合は循環器内科を受診しましょう。また、内科での診察も可能です。

みぞおち周辺の痛みで疑われる病気
胃炎胃・十二指腸潰瘍心筋梗塞胃がん

胃炎

「胃炎」は、食生活・ストレス・ピロリ菌への感染によって、胃酸が過剰に分泌されたり、胃粘膜が弱ったりすることで起こります。

胃粘膜が傷つけられることによる、みぞおち周りの不快感や鈍い痛みが特徴です。

市販薬によって治療することが可能ですが、痛みが長く続いたり、あまりにも激しい場合はなるべく早く医療機関を受診しましょう。

ガスター10

有効成分「ファモチジン」が胃酸の分泌をコントロールすることで、胃酸の出過ぎによる胃痛を緩和します。

ガストール細粒

有効成分「M1ブロッカー」が胃酸の過剰分泌をおさえ、「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム」が胃粘膜を保護することで、胃痛を緩和します。

胃・十二指腸潰瘍

「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」は、ストレス・ピロリ菌への感染・解熱鎮痛剤の副作用などによって起こります。また、胃炎が悪化すると胃潰瘍になることもあります。

胃潰瘍は食後2〜3時間後のチクチクとした痛みが特徴で、十二指腸潰瘍は空腹時の痛みが特徴です。

潰瘍部分に出血がある場合は、内視鏡などで止血から治療します。

止血後、または出血がない場合は、ピロリ菌の除去や解熱鎮痛剤の使用をやめるなどして潰瘍を治療します。

心筋梗塞

「心筋梗塞」は、食生活・喫煙・運動不足・ストレスなどによって起こり、高齢者に多くみられます。

血液が固まったものが血管を詰まらせることで起こる、胸やみぞおち周辺の激しい痛みが特徴で、吐き気・冷や汗などの症状も現れます。

発症から原則として6時間以内に、詰まった血管を広げるための「再灌流療法(さいかんりゅうりょうほう)」という治療を行う必要があります。さまざまな合併症を引き起こすおそれもあるため、異変を感じたらすぐに医療機関を受診しましょう。

胃がん

「胃がん」は、生活習慣・ピロリ菌の長期感染などによって起こるといわれています。

胃の最も内側にある粘膜ががん細胞になり、時間が経つと胃の外側や大腸・すい臓などにも広がっていきます。

初期段階で自覚症状が出ることは少なく、進行したのちにみぞおち周辺の鈍い痛み・不快感・胸やけ・吐き気などの症状が現れることが特徴です。

これらの症状は胃炎や胃潰瘍でも現れるため、がんの発見が遅れる原因となります。

少しでも違和感を感じたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

右上の腹痛:肝臓・胆のう

右上腹部が痛む場合は、主に肝臓・胆のうの病気が原因です。

以下のような病気を疑い、内科または消化器内科を受診しましょう。

右上腹部の痛みで疑われる病気
胆のう炎肝炎肝硬変肝臓がん

胆のう炎

「胆のう炎」は、細菌感染による胆のうの炎症によって起こります。また、胆石によって胆管がつまることで胆のうや胆管が炎症を起こす場合もあります。

さしこむような痛みが特徴で、他に吐き気・悪寒・発熱・黄疸などの症状も現れます。

軽度の胆のう炎であれば抗生物質・鎮痛剤・点滴などで治療されますが、炎症が強い場合は胆のうを摘出する場合もあります。

肝炎

「肝炎」には、主に肝炎ウイルスの感染によって起こる「急性肝炎」と、長期にわたる過剰飲酒によって起こる「アルコール性肝炎」があります。

肝炎ウイルスは現時点までに、A・B・C・D・E型の5種類が確認されており、A・E型は水や食べ物から、B・C・D型は血液や体液から感染します。

アルコール性肝炎は腹部を押すと痛むのが特徴で、ウイルス性肝炎では痛みが現れることは少ないですが、他に発熱・黄疸・倦怠感・嘔吐などの症状が現れることがあります。

急性肝炎では食事療法・抗ウイルス剤の使用などによって治療し、アルコール性肝炎では食事制限・アルコール摂取制限などによって治療します。

肝硬変

「肝硬変」は、肝炎などによって傷ついた肝臓を修復する際のたんぱく質が、肝臓全体に広がることで起こります。

腹痛にあわせて疲れやすくなるのが特徴で、他に黄疸・下腹部の膨満などの症状も現れます。

肝硬変そのものを治療する薬はなく、原因となった肝炎を治療することで症状の改善を目指します。また、症状が改善されない場合は肝臓移植をする場合もあります。

肝臓がん

「肝臓がん」は、主にB型・C型肝炎がきっかけになることで起こります。また、糖尿病や高血圧などによっても起こることがあります。

腹痛にあわせて疲れやすくなるのが特徴で、肝炎や肝硬変の症状と似ているため、がんに気づきにくいといわれています。

少しでも違和感を感じたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

左上の腹痛:すい臓・大腸

左上腹部が痛む場合は、主にすい臓・大腸の病気が原因です。

以下のような病気を疑い、内科または消化器内科を受診しましょう。

左上腹部の痛みで疑われる病気
急性すい炎すい臓がん大腸がん

急性すい炎

「急性すい炎」は、主にアルコールの過剰摂取や胆石によって起こります。

すい管内にすい液がたまりすい自身を消化してしまうことで、腹部に痛みを感じるのが特徴です。他にも吐き気・嘔吐・背中の痛みなどの症状が現れることもあります。

絶食・絶飲・点滴などによって治療します。

すい臓がん

「すい臓がん」は、すい炎・糖尿病・肥満・喫煙などによって起こるといわれています。

初期段階で自覚症状が出ることは少なく、進行したのちに左上腹部の痛み・背中の痛み・食欲不振・黄疸などの症状が現れることが特徴です。

これらの症状はすい臓がん以外でも現れるため、がんの発見が遅れる原因となります。

少しでも違和感を感じたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

大腸がん

「大腸がん」は、運動不足・食生活・肥満・飲酒などによって起こるといわれています。

初期段階で自覚症状が出ることは少なく、進行したのちに左上腹部の痛み・血便・お腹の張り・体重減少などの症状が現れることが特徴です。

これらの症状は痔・腸閉塞などの大腸がん以外でも現れるため、がんの発見が遅れる原因となります。

少しでも違和感を感じたら、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

右下の腹痛:盲腸・腎臓・子宮

右下腹部が痛む場合は、主に盲腸・腎臓・子宮の病気が原因です。

以下のような病気を疑い、盲腸の場合は消化器内科、腎臓の場合は泌尿器科・子宮の場合は婦人科または産婦人科を受診しましょう。

それぞれ、内科での診察も可能です。

右下腹部の痛みで疑われる病気
急性虫垂炎(盲腸炎)結石子宮外妊娠

急性虫垂炎(盲腸炎)

「急性虫垂炎(きゅうせいちゅうすいえん)」は「盲腸炎」とも呼ばれ、細菌やウイルスへの感染・暴飲暴食・過労・不規則な生活習慣などが原因で起こるといわれています。

はじめはみぞおち周辺に痛みを感じますが、時間が経つと右下腹部に激しい痛みを感じるのが特徴です。他にも吐き気・嘔吐・発熱などの症状が現れることもあります。

軽度の急性虫垂炎であれば、抗生物質によって治療が可能ですが、悪化すると手術による治療が必要な場合もあります。

結石

「結石」は、食生活・ストレス・体質などが原因で起こるといわれています。腎臓内にできた結石を「腎結石」、尿路内にできた結石を「尿路結石」といいます。

腎臓や尿路は左右にあり、右下腹部が痛む場合は右側に結石ができていると考えられます。

さしこむような痛みが特徴で、他にも血尿・吐き気・頭痛・めまいなどの症状が現れることもあります。

小さな結石の場合は、尿からの排出をうながすために尿管を広げる薬を使用するなどして治療します。結石が大きかったり、尿の排出の妨げになっている場合は手術が必要な場合もあります。

子宮外妊娠

「子宮外妊娠」は、喫煙・以前の手術による卵管の損傷・クラミジア感染症が原因で起こるといわれていますが、はっきりとした原因は解明されていません。

子宮外妊娠では卵管で着床することが多く、卵管は左右にあるため、右下腹部が痛む場合は右側の卵管で子宮外妊娠が起こっていると考えられます。

激しい痛みに吐き気をともなうことが特徴で、次第に下腹部全体に痛みが広がっていきます。

注射による治療や手術による治療が主流ですが、自然治癒を期待して何もせずに経過をみることもあります。

左下の腹痛:大腸・腎臓・子宮

左下腹部が痛む場合は、主に大腸・腎臓・子宮の病気が原因です。

以下のような病気を疑い、大腸の場合は消化器内科、腎臓の場合は泌尿器科、子宮の場合は婦人科または産婦人科を受診しましょう。

それぞれ、内科での診察も可能です。

左下腹部の痛みで疑われる病気
過敏性腸症候群大腸炎結石子宮外妊娠

過敏性腸症候群

「過敏性腸症候群」は、精神的ストレス・肉体的ストレスが原因で起こります。

左下腹部の痛みの他に、めまい・頭痛などが現れることが特徴です。

「便秘型」では排便が週3回以下に減少し、「下痢型」では1日3回以上も水のような便が排出されます。また、便秘と下痢を数日ごとに繰り返される「交代型」もあります。

腸の調子を整える食事をとることや、ストレスを解消する方法を見つけることが大切です。

また、市販薬を使用して症状をおさえることもできます。

ストッパ下痢止めEX

有効成分「ロートエキス」が腸内での便の移行スピードをおさえ、「タンニン酸ベルベリン」が腸内の水分調整・菌の増殖をおさえることで、下痢を緩和し、腹痛をおさえます。

コーラックハーブ

有効成分「センノシド」が腸のぜん動運動を正常にし、「甘草エキス」がセンノシドの作用をサポートすることで弛緩性便秘を改善し、腹痛をおさえます。

大腸炎

「大腸炎」は、ウイルスや細菌への感染・薬・血流異常などによって引き起こされます。また、原因がわからない場合もあります。

下痢をともない、グルグルと音がなる腹痛が特徴です。大腸炎の一種である「潰瘍性大腸炎」の場合は、大腸に穴が空いている状態のため、肛門からの出血・血便などの症状が現れます。

通常の大腸炎は、ウイルスを外に排出するか、抗生物質を服用することで治療が可能です。

潰瘍性大腸炎は、ステロイド薬や免疫抑制剤を使用して薬で治療します。重度の場合は手術による治療が必要なこともあります。

結石

「結石」は、食生活・ストレス・体質などが原因で起こるといわれています。腎臓内にできた結石を「腎結石」、尿路内にできた結石を「尿路結石」といいます。

腎臓や尿路は左右にあり、左下腹部が痛む場合は左側に結石ができていると考えられます。

さしこむような痛みが特徴で、他にも血尿・吐き気・頭痛・めまいなどの症状が現れることもあります。

小さな結石の場合は、尿からの排出をうながすために尿管を広げる薬を使用するなどして治療します。結石が大きかったり、尿の排出の妨げになっている場合は手術が必要な場合もあります。

子宮外妊娠

「子宮外妊娠」は、喫煙・以前の手術による卵管の損傷・クラミジア感染症が原因で起こるといわれていますが、はっきりとした原因は解明されていません。

子宮外妊娠では卵管で着床することが多く、卵管は左右にあるため、左下腹部が痛む場合は左側の卵管で子宮外妊娠が起こっていると考えられます。

激痛に吐き気をともなうことが特徴で、次第に下腹部全体に痛みが広がっていきます。

注射による治療や手術による治療が主流ですが、自然治癒を期待して何もせずに経過をみることもあります。

下腹部全体の痛み:膀胱・卵管・卵巣

下腹部全体が痛む場合は、主に膀胱・卵管・卵巣の病気が原因です。

以下のような病気を疑い、膀胱の場合は泌尿器科、卵管・卵巣の場合は婦人科または産婦人科を受診しましょう。

それぞれ、内科での診察も可能です。

下腹部全体の痛みで疑われる病気
膀胱炎卵管・卵巣炎骨盤腹膜炎

膀胱炎

「膀胱炎」は、膀胱内に細菌が侵入することで起こります。

下腹部全体に鈍い痛みを感じることが特徴で、他にも排尿痛・尿のにごり・血尿などの症状が現れることがあります。尿管の短い女性に多い病気で、再発しやすいため注意が必要です。

侵入した細菌に対する抗生物質を服用することで治療が可能です。

卵管・卵巣炎

「卵管炎」は、性交渉やタンポンの長時間使用による細菌感染によって起こります。卵管の炎症が卵巣にまで及んだものを「卵巣炎」と呼びます。

下腹部全体の鈍い痛みにともなって、おりものの増加・発熱などの症状が現れることが特徴です。

侵入した細菌に対する抗生物質や、抗炎症剤を使用することで治療が可能です。症状が重い場合は、入浴や性交渉に関して医師から指示が出されることがあります。

骨盤腹膜炎

「骨盤腹膜炎(こつばんふくまくえん)」は、卵管炎・卵巣炎の炎症が骨盤周辺にまで広がることによって起こります。

下腹部全体の鈍い痛みが特徴で、他にも高熱・おりものの増加・不正出血などの症状が現れることがあります。

入院の必要があり、抗生物質や抗炎症剤を使用することで治療が可能です。

炎症がひどく腹部に膿がたまっている場合は、手術によって膿を取り出す必要があります。

腹部全体の痛み:腸

腹部全体が痛む場合は、主に腸や腹部の内側の病気が原因です。

以下のような病気を疑い、消化器内科を受診しましょう。内科での診察も可能です。

腹部全体の痛みで疑われる病気
腹膜炎腸閉塞(イレウス)急性腸炎

腹膜炎

「腹膜炎」は、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの病気が原因で起こります。

さまざまな疾患が原因となり、腹部の内側を守る役割である「腹膜」が炎症を引き起こします。

激しい痛みとともに吐き気・嘔吐・ガス溜まりの症状がある場合は「急性汎発性腹膜炎」、鈍い痛みとともに微熱・お腹の張りの症状がある場合は「慢性腹膜炎」、鈍い痛みとともにお腹の張りの症状がある場合は「がん性腹膜炎」のおそれがあります。

手術によって原因となる病気を治療した後、腹膜を洗浄することで治療が可能です。

発症から時間が経つほど死亡率が高くなるため、症状が現れたらすぐに医療機関を受診しましょう。

腸閉塞(イレウス)

「腸閉塞」は、病気による腸管の癒着・腸管運動の障害によって起こります。

腸のねじれや癒着、膨張によって腹部全体に痛みを感じることが特徴です。他にも便秘・嘔吐・お腹の張り・発熱などの症状が現れることがあります。

腹痛は軽いものから激痛までさまざまです。

腸の膨張が原因の場合は、チューブで腸管内の圧力を下げるなどして治療します。腸のねじれや癒着による腸閉塞は、手術によって治療します。

急性腸炎

「急性腸炎」は、主に細菌・ウイルス・寄生虫への感染によって起こります。

激しい腹痛とともに下痢・発熱・吐き気・嘔吐などの症状が現れることが特徴です。

自然治癒による治療が一般的なため、薬の使用による治療はあまり行われません。脱水症状を防ぐための点滴や、腸内環境を整えるための整腸剤・乳酸菌製剤などを使用します。

おわりに

腹痛から疑われる病気は数多くあります。症状が現れたらできるだけ早く医療機関を受診し、病気の早期発見を目指しましょう。

また、病院に行く余裕がない場合は市販薬を使用するのもひとつの手段です。ただし、薬を購入する際は薬剤師または登録販売者に必ず相談しましょう。