はじめに

腱鞘炎(けんしょうえん)は昔は職業病の1つと言われていましたが、今や年齢、性別、職業に関わらず、誰にでもなる可能性がある「新現代病」の一つといわれています。

「腱鞘炎」は正式には「狭窄性腱鞘炎:きょうさくせいけんしょうえん」といい、手や指の使い過ぎにより、指や手首に炎症が起こるものです。
腱鞘炎で近年多く見られるのは、親指の付け根や手首に炎症が起こる「ドケルバン病」と言われるものです。
腱鞘炎には、手首や親指の炎症の他に、指の関節(特に人差し指、中指、薬指)に炎症が起こり指が曲がってしまう「ばね指」もあります。
現代は「ドケルバン病」が増加しています。

腱鞘炎の第一の原因は同じ作業の繰り返しによる「手の使い過ぎ」ですが、悪化すると、「持つ」「押す」「つまむ」「ひねる」など、手指を動かす全ての動作に痛みを感じ、箸が持てない、字が書けないほど重症化するケースも多く完治にも時間がかかる病気です。


そのため腱鞘炎は、「ならないための予防」が何より大切なのですが、腱鞘炎になってしまった時にはどのような治療法があるのでしょうか。
主な治療法とケア方法を紹介します。


 

腱鞘炎の主な治療法は?

基本的には整形外科を受診し診断しますが、まず、自分で診断できる典型的なテストに「ファンケルシュタインテスト」といわれるものがあります。
①親指を内側に入れて握りこぶしを作り ②手首を小指側に曲げる、と親指側の腱の部分に激しい痛みが生じる場合は、炎症を起こしているサインです。これは整形外科の診断時にも同じテストを行います。

腱鞘炎の主な治療法には以下の方法があります。

1、患部の安静、休養

腱鞘炎は、手や指の使い過ぎによるもののため、安静と休養が第一の治療です。
言い換えれば、どんな治療をしても治療後も今までと同じように手を酷使し続けると一進一退となってしまいます。
仕事のみならず日常で、手をなるべく使わないことは大変難しいことですが、なるべく安静にすることが大切になります。
 

2、薬や湿布

薬に関しては、市販薬の鎮痛剤でも痛みが和らぐ場合もありますが、薬に関しては医師の処方に従うようにしましょう。
また湿布薬については、医療用ではモーラステープなどの冷湿布が処方されます。
湿布は冷湿布と温湿布のどちらがいいのか迷う方も多くいますが、これはどちらでも大丈夫です。そもそも湿布には、血行を多少良くする効果はありますが、冷たいと感じても温かいと感じても、湿布自体は温度を調節しているわけではありません。そのため、市販の湿布を選ぶ際は、自分が気持ち良いと感じる方を使用しましょう。ただし湿布薬はあくまでも痛みを緩和するためのもので、貼ったからといってすぐに治癒するわけではありません。
 

3、固定

骨折時のギブスのように完全に固定するのではなく、運動を制限します。病院では医療用の装具もありますが、サポーターやテーピングなどでも有効です。痛みは腱と腱鞘が擦れることによって痛むため、運動を制限することにより痛みが楽になり悪化を防ぐことにつながります。
 

4、電気療法、温熱療法

マイクロウエーブなどの超音波や超短波、レーザー光線などを発生させる機械を使い、温熱刺激により血行不良や筋肉の緊張を取り除きます。
その他、保険治療による整骨院などでのマッサージや鍼灸治療なども血行促進のために有効と言われています。
 

5、ステロイド注射(副腎皮質ホルモン剤)

副腎皮質ホルモンは炎症を沈静化する効果があり、ステロイド注射により注射直後から症状が軽くなる場合がありますが、症状が重い場合は効果が長くは続かないため、繰り返し注射をすことも多々あります。ただし注射を繰り返すと副作用として、腱そのものが委縮してしまう可能性もあります。
 

6、手術

最終手段としては「腱鞘切開術」という手術もあります。日帰り手術で体への負担や危険性は低いものですが、手術後は傷が残り、中には手術後に神経のマヒが起きるケースもあります。そのため、手術に関しては、医師とメリット、デメリットを十分に話し合い、納得の上での手術が重要です。
 

腱鞘炎の治療には主に以上のような治療法がありますが、それぞれにメリット、デメリットがあり、また再発を繰り返すことも多いため治りにくい厄介な病気です。
腱鞘炎になってしまったら、なるべく手指の安静を心がけ、状態により治療法を選択しながら、日頃のケアも合わせて治療していくことになります。

 

頸肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)に注意

「腱鞘炎」の症状と重なる病気として、「頸肩腕症候群」があります。この病気は昭和30年代よりタイピスト、ライン作業、ボールペン複写、銀行員(お札を数える)、保母さん、学校給食の調理員などをはじめとする様々な職種の人たちに見られました。
腱鞘炎同様、連続して同じ作業を繰り返すことによる筋肉疲労と、長時間に渡る緊張状態や過度なストレスによる精神疲労が大きな要因となります。


症状は手の指、関節、手首の痛み、肩こり、だるい、疲れやすいから始まり、首、肩、背中などの痛み強くなり、やがて腰や足のしびれなどを訴える場合もあり、ひどくなると頭痛や耳鳴り、めまいなどの「自律神経失調症」を患うこともあります。
腱鞘炎から頸肩腕症候群へ連動して起こる可能性は非常に高く、症状としては同じような訴えが多く見られます。

現在はストレス社会といわれ、またIT機器の使用頻度も劇的に上がったことにより、小学生の肩こりも蔓延し、今や年齢や職業を問わず腱鞘炎や頸肩腕症候群は増加の一途をたどっています。
同じ動作や姿勢を続けることは、思っている以上に心身に負担がかかっているのです。
「痛みが出てから気づく」病気のため、日頃からの注意が大切です。

 

腱鞘炎治療のための日頃のケアは?

■正しい姿勢
腱鞘炎は部分的な関節への負荷のかけ過ぎが原因なのは確かですが、その誘因になるものは姿勢や生活習慣が大きく関与しています。
原因は悪い姿勢を長時間持続している(背骨の歪み、猫背など)が影響するため、デスクワークや家事など、日頃から姿勢に注意することが必要です。

■適度な休憩
連続作業の場合には、手指に力を入れすぎないように配慮し、また目の疲れから肩コリを起こし、腕の疲労につながることで余計手首に負荷がかかるようになりるため、こまめに休憩を取り疲れを蓄積しないようにしましょう。

血行を良くする
腱鞘炎は、手首、肘、腕、肩、首、背中、腰など、体中のさまざまな範囲に広がっているため、日頃からマッサージやストレッチなどで肘、腕、肩、背中の柔軟性を高めたり、散歩などの適度な運動で全身の血行を良くしましょう。

■リラックスする時間を作る
筋肉の緊張は、過度なストレスや精神的な緊張と連動しています。日々どこかでリラックスする時間を作るようにして、精神的な緊張を解放するような工夫が大切です。


このようなことは、腱鞘炎の予防として日頃からやっておくべきことなのですが、腱鞘炎になってしまった後も、治療法と併用して行うことが改善の近道になります。
(参考記事:「腱鞘炎(けんしょうえん)」の代表的な症状は? 新現代病と言われる腱鞘炎の症状と予防法を知ろう)


 

おわりに

病気には、異常を感じていても、倒れたりしない限り、つい我慢したり放置したりすることで悪化し、早期に対処や治療をしなかったために日常生活に支障が及ぶものは数えきれないほどありますが、腱鞘炎もその代表的なものといえるでしょう。
腱鞘炎予備軍と思われる人は大勢います。痛みが出る前に、日々、手指の力の入れ方や自分の姿勢を意識して過ごしましょう。

image by Photo AC
image by Photo AC
image by Photo AC