四十肩・五十肩という名前は、一般的にわかりやすく表現したものであり、正式名称は「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」といいます。
服を着たり脱いだりするとき、腕を上げたとき、寝返りをうったときなどに、突然、肩にズキンという激痛に襲われることで始まることが多いのが特徴です。
起こる年齢により40代なら四十肩、50代なら五十肩と呼び分けられることもありますが、四十肩・五十肩は同じ肩関節周囲炎のことです。
四十肩・五十肩は自然に治ることもありますが、放置してしまうと症状が長引いたり、悪化して日常生活に支障がでることもあります。場合によっては関節が動かなくなることもあります。
四十肩・五十肩が疑われる肩の強い痛みを感じた場合は、まずは医療機関を受診してください。
四十肩・五十肩のときにどの診療科を受診したら良いか、また病院での治療法については関連記事をごらんください。
四十肩・五十肩にストレッチは有効?
ストレッチ・体操・運動などは、四十肩・五十肩の「慢性期」から行うのであれば改善の助けになります。
「急性期」は四十肩・五十肩の痛みが出て数日~数週間の痛みの強い時期です。
急性期には、無理に動かすのは逆効果です。重い荷物を持ったり、スポーツをするのは避け、安静にしてすごしましょう。
「慢性期」は急性期の強い痛みがやわらいでくると同時に、肩がこわばり腕を動かせる範囲がだんだん狭くなっていく時期です。特に腕を上げたり、腕を後ろに回す動きが困難になります。
ストレッチには、筋肉をほぐし血液循環を改善する効果があります。また、筋肉の可動域を広げる効果もあることから、五十肩で動かなくなった肩周りの状態を改善する効果が期待できます。
病院や症状によって運動療法・ストレッチには違いがあるので、医師の指導のもと行うのが理想的です。
家でもできるストレッチ
慢性期からのストレッチは、家でも簡単にできます。体が温まって血行が良くなっている入浴後に行うと効果的です。
ストレッチで大切なことは無理せず、動かせる範囲で行うことです。ストレッチや体操は無理に行うと逆効果になることもあります。
病院での運動療法と合わせて、家でもできる範囲のストレッチを行いましょう。
ただし、症状や病態によって負担や回数が変わりますので、医師や理学療法士の指導のもと行うようにしてください。
振り子運動
四十肩・五十肩の症状が軽いときは「振り子運動」が効果的です。
1kg程度のダンベルや500mlのペットボトル、持ちやすいアイロンなどをおもりに使って手を振る運動です。
【やり方】
1)脚の付け根くらいの高さのテーブルや台を用意します
2)痛くない方の腕をテーブル側にして立ちます
3)30~40度くらい軽くおじぎした姿勢になりましょう(痛みのない範囲で)
4)痛くない方の手をテーブルに置きます
5)痛む方の手でおもりになる物を持ち、腕をたらします
5)振り子をイメージして、腕全体を前後にゆっくり動かします(10往復ほど)
6)次は同じ要領で腕を左右に大きく動かしましょう(10往復ほど)
7)最後にたらした腕で円を描くように動かしてください(10回ほど)
タオルを使った運動
タオルを使ったストレッチも五十肩に効果的です。タオルはスポーツタオルのような細長いものを用意しましょう。
【やり方】
1)まっすぐに立ち、タオルを両手で前方に持ちます
2)ひじを伸ばしたままタオルを上げられるとこまで上げます
3)腕を引き伸ばした状態で数秒間維持した後、ゆっくりと腕を下ろします
4)3~4回繰り返しましょう
5)タオルを背中側に回して両手で左右を持ちます
6)タオルを腰につけたまま、ひじを曲げてタオルを上げる運動を行います
7)3~4回繰り返しましょう
まずはタオルを前方で持った状態でストレッチができるようにしましょう。体が慣れてきたら、タオルを背中側に持った状態でのストレッチにも挑戦してみてください。
壁をはうストレッチのやり方
1)壁に向き合うようにして立ちます
2)痛い方の手を壁につけ、はうようにして少しずつ腕を上げます
3)少し痛みが感じる場所でやめましょう
4)次に痛い方の腕を壁側にして平行に立ちます
5)痛い方の腕を床と並行に伸ばした状態で、壁に手をつけます
6)指をはわせるようにして少しずつ、できるところまで腕を上げましょう
予防のためのストレッチ
四十肩・五十肩の痛みが起こる前には、肩の違和感や肩こりなどの兆候が続いている方も多くいるため、肩こりや小さな痛みが肩にある場合は要注意です。
肩に違和感がある方は、予防として日頃からストレッチを行うといいでしょう。
朝起きたときにするような伸びや、肩をぐるぐる回す運動は四十肩・五十肩になりにくくしてくれると考えられています。
習慣的に行うことが大切なので、暇を見つけたら痛みを感じない程度に行う習慣をつけると良いでしょう。
四十肩・五十肩におすすめのツボ
ツボは病院の治療の代わりになるものではありません。あくまで補助的に試しましょう。
肩井(けんい)
首の中心から肩先の真ん中で、ちょうど肩の筋肉の中心にあるツボです。
肩井は血行促進のツボであり、血行不良が原因の四十肩・五十肩には向いていると考えられます。
血行不良を感じている方は試してみても良いでしょう。
マッサージについて
整形外科でも治療の一環としてマッサージを行うこともあります。
しかし、症状・病態によってはマッサージをおすすめできないことがあります。特に痛みがある場合は、炎症を悪化させるおそれもあります。
医師の治療を優先し、マッサージを受けたい場合は、まず医師に相談することをおすすめします。
四十肩・五十肩におすすめの市販薬とサポーター
すぐに病院を受診できない場合は、痛みを少しでも緩和するために、市販薬を活用するのもひとつの手です。
また医師に相談して治療を行いながら血行改善などに効果的なビタミン剤・漢方薬などを使用することもできます。
医師の指導のもとストレッチとあわせて活用するのが理想的です。
また、四十肩・五十肩で痛みの症状が強く出ているうちは、重い荷物を持ったり、スポーツをするのは避け、安静にしてすごしましょう。
痛みが強い急性期には腕を固定するタイプのサポーター(アームスリングなど)がおすすめです。ある程度痛みが引いた慢性期には肩を温めてくれるタイプのサポーターがおすすめです。
四十肩・五十肩におすすめのサポーターの情報は、関連記事をごらんください。
おわりに
四十肩・五十肩の改善に役立つストレッチは、無理のない範囲で毎日コツコツ続けることが大切です。
一度にたくさんストレッチをすると肩への負担が大きく、炎症がぶり返してしまうことがあるので注意しましょう。