海外旅行やビジネスでの滞在時など、気候や環境の違い、時差、食事などが原因となって体調を崩してしまう人はたくさんいます。

なかでも特に多いのが旅行者下痢症と呼ばれる症状です。
現地での食事や水が原因となり、下痢の症状が出てしまったという人は少なくありません。特に、近年日本人の旅行者が増えている東南アジアや南アジア、ラテンアメリカなどでは70〜80%もの人に下痢の症状がでてしまう地域もあるので気をつけましょう。

この記事では、旅行者下痢症状の原因、治療法、予防法について解説します!

旅行者下痢症状とは?

旅行者下痢症状とは、海外に滞在中、もしくは帰国後1〜2週間以内に発症する下痢の総称です。通常は3〜5日の経過で回復しますが、症状が1週間以上続いてしまう場合もあります。

症状

24時間以内に4〜5回以上、時には20回以上の水のような下痢があり、約20%の人に血便や発熱の症状があらわれます。軽症の場合は安静にしていれば2〜3日で自然に治ることが多いですが、下痢の症状が強い場合、水分補給をしないと脱水症状になってしまう可能性があります。

旅行者下痢症は、現地に着いてから3日目ほどの早い時期に起こすことが多いですが、旅行期間が1週間程度と短い場合には、帰国後の検疫で判明したり、帰国後に発症することもあります。

胃腸障害を原因とする場合

水や食事の違い、環境の変化によるストレスが原因で、胃に負担がかかり下痢の症状がでてしまう場合があります。
この場合の下痢症状は軽く、自然に治ることも少なくありません。しかし、甘く見ていると悪化してしまう場合もあるので気をつけましょう。

原因 理由
日本の水は軟水ですが、海外では硬水のところが多くあります。ミネラルを多く含む硬水は腸を刺激し、下痢の症状がでてしまう人もいます。
油、香辛料など エスニック料理などに多く使われる強い香辛料や変性した油によって、下痢の症状がでてしまうことがあります。
環境の変化 腸の動きは、神経系によってコントロールされています。急激に環境が変化することによって体が疲れたり、精神的にストレスを感じることは、腸の運動の調整機能を乱してしまうことがあります。

細菌やウイルスを原因とする場合

日本臨床微生物学会によると、旅行者下痢症を発症した人の中で病原体が検出される割合は約30〜60%であり、そのうち細菌が80〜85%、寄生虫が10%、ウイルスは5〜10%となります。

旅行者下痢症の主な病原体は、以下のようなものがあります。

病原体    検出頻度   
細菌
・病原性大腸菌(毒素原性大腸菌、凝集付着性大腸菌)
・カンピロバクター
・サルモネラ
・赤痢菌
・エロモナス
・プレシオモナス
約80〜85%
  5〜70%
  0〜30%
  0〜15%
  0〜15%
  0〜10%
    0〜5%
寄生虫
・ランブル鞭毛虫
・赤痢アメーバ
・クリプトスポリジウムなど
約10%


 
ウイルス
・ノロウイルス
・ロタウイルスなど
約5〜10%

 

旅行者下痢症の原因となる細菌は、病原性大腸菌が最も多くなっています。カンピロバクターは国内でも食中毒の原因菌として検出されることがありますが、旅行者下痢症の原因の1つとしてもアジア地域を中心に気をつけなければならない原因菌です。

一方で、赤痢菌やコレラ菌は、旅行者下痢症の原因としては検出頻度が低くなっています。コレラ菌は、1995年にバリ島を訪問した日本人旅行者の間で300人以上が感染し発症しましたが、それ以降の日本人の海外感染例は稀となっています。

旅行者下痢症の原因となる疾患の例として、以下のようなものがあります。

毒素原性大腸菌下痢症
流行地 東南・西・東アジアやアフリカ
感染経路 食品や水、感染者の手指などから経口感染
潜伏期間 1〜数日程度
症状 水様性の下痢、腹痛、嘔吐、発熱
経過 排菌期間は1週間ほど続く
細菌性赤痢
流行地      推定感染国は東南アジア、南アジアが多いが、アフリカや中南米などの他の国でもみられる
感染経路 患者の糞便などに触れた手指、食品、水からの経口感染
潜伏期間 1〜5日程度(通常3日以内)
症状 発熱、腹痛、下痢
経過 便意があるものの、便があまり出ることはなく、常に便意があるような状態が続く
ランブル鞭毛虫症
流行地      世界中に分布していますが、特に熱帯や亜熱帯の発展途上地域では要注意
感染経路 食品や水からの経口感染
潜伏期間 2〜3週間程度
症状 下痢(軟便、水様便、脂肪便など様々で、正常の便と下痢便を繰り返すこともある)
経過 発熱はないが、まれに胆管炎、胆嚢炎を起こすことがある
コレラ
流行地      世界中に分布していますが、特に熱帯や亜熱帯の発展途上地域では要注意
感染経路 コレラ菌に汚染された食品や水から経口感染
潜伏期間 数時間〜5日程度(通常1日前後)
症状 急激な水様性の下痢
経過 通常発熱や腹痛はほとんどないが、下痢による脱水症状や体重減少に注意

旅行者下痢症の治療方法

旅行者下痢症は一般的には自然に治りますが、症状が出た場合には以下のことに気をつけましょう。

水分補給と食事に注意

旅行者下痢症になった場合、失われた水分を速やかに補給しなければなりません。また、下痢によりミネラルも多く失われてしまうので、ミネラルの補給にも気をつけましょう。
水分補給の方法としては、経口補水液を摂取することが望ましいですが、無理な場合でもミネラルウォーターやスポーツドリンクなどを補給しましょう。
食事は腸に負担を与えないように、消化のよいものを摂取しましょう。特に硬い料理や香辛料、乳製品などは腸への刺激が強いので、体調が戻るまでは避けましょう。

脱水症の対処法や経口補水液の作り方については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
関連記事:脱水症の症状や対処方法について解説します!

薬の服用

下痢の回数が多い場合は、整腸剤や抗菌剤の使用が症状の改善に役立つことがあります。抗生剤や下痢止めはし症状を悪化させることがあるので注意しましょう。
また、薬はなるべく日本から持参した、なるべく使い慣れたものを使用するようにしましょう。現地の薬の調達が可能な場合もありますが、海外で薬を買い慣れていない人や、外国語で書かれた使用上の注意などを読めない人が海外で薬を購入することは避けましょう。

病院に行く

2〜3日間経過しても症状が改善しない場合や、激しい嘔吐などにより水分補給ができない場合は受診することをおすすめします。また、高熱、猛烈な下痢による脱水症状、腹痛や血便の症状が強い場合は、早めに病院に行きましょう。
特に持病のある人は、脱水などにより病気が悪化する可能性があるので気をつけましょう。

海外で病院に行く場合の対処法については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご参照ください。
関連記事:海外で病気にかかってしまった場合の対処法を解説します!

旅行者下痢症を予防しましょう

旅行者下痢症になってしまうことを避けるために、現地で気をつけるべきことを知っておきましょう。

*食事や水で気をつけること*
・食事の前には必ず石鹸でよく手を洗うか、ハンドジェルなどで手を消毒する。
・水道水などの生水は飲まないこと。やむおえない場合は、必ず沸騰させてから飲む。
・生野菜のサラダも、水で汚染されている可能性があるので避ける。また、カットフルーツも食べないようにする。
・氷が入った飲み物やかき氷には気をつける。
・生の料理や、火が十分に通っていない肉や魚は食べないようにする。屋台料理には十分に注意すること。
・加熱されていない乳製品は避ける。

*現地の生活で注意すること*
・歯磨きの水にも気をつける。
・自炊したり、食品を調理する場合には、包丁や食器なども安全な水で洗う。
・食品は十分に加熱する。
・無理なスケジュールを組まずに、休息をしっかりとる。
・事前に現地の情報を集めておく

おわりに

旅行者下痢症は、海外に行けば誰にしも起こりうる症状です。
普段病気をしない人や、体力に自信がある場合でも、必ず気をつけましょう。
事前に現地の情報を集め、食べ物や水には十分に注意しましょう。