性器ヘルペスウィルス感染症は治らない!?
性器に突然かゆみや痛みを伴う水ぶくれや炎症が起きてしまったら、
「もしかして性病?どこで感染したんだろう…」
と、色々な不安が頭をよぎる方も多いかもしれません。
性病は、性行為を行うことにより感染する病気のことを指します。
性病にはさまざまな種類があります。性器に水ぶくれや潰瘍(ただれ)ができる代表的な性病として、性器ヘルペスウィルス感染症(Genital Herpes:GH)があります。
性器ヘルペスウイルス感染症(以下性器ヘルペス)は、日本で感染者数が多い性病の1つで、主に20代~30代前半の女性に多くみられます。
性器ヘルペスは、若い女性だけでなく、60歳以上の方にも多くみられる病気です。特に、60歳以上の女性に関しては、20代~30代男性の倍近い患者数がいます。
それは、性器ヘルペスは感染したら完全には治らないという特性があるためです。
性器ヘルペスがなぜ治らない病気なのか。この記事では、性器ヘルペスの原因や症状、治療法について詳しくご紹介しましょう。
ヘルペスウイルスは一度感染したら一生体内に住み続ける
性器ヘルペスの原因は、単純ヘルペスウイルス(Herpes semplex virus:HSV) という120~130nmの原因菌です。
1nmは0.000001mm、単純ヘルペスウイルスはハウスダスト(ダニ等)の5000分の1ほどの大きさです。

image byWikipedia
単純ヘルペスウイルスには1型(HSV-1)と2型(HSV-2)があります。
1型は主に、口に感染する口唇ヘルペスの原因菌として知られています。性器にできる性器ヘルペスの原因は主に2型ですが、口唇ヘルペスの原因菌が付着した手で、そのまま性器を触ると、1型のウイルスが性器に付着して感染することもあります。
ヘルペスウイルスは殺せない
単純ヘルペスウイルスは性器へ感染すると神経を登っていき、腰の近くにある神経に身を隠します。
ウイルスが神経の中に潜伏している期間は症状はでません。
しかし、感染者の免疫力が疲労やストレスなどで低下すると、ウイルスが神経を下っていき、性器周辺で活動することで症状がでます。単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると人間の神経に住み続け、身体が元気な時は神経に身をひそめ、免疫力が低下した時に活動する、という動きを繰り返します。
現代の医療技術では、体内の単純ヘルペスウイルスを完全に殺す方法がないため、一度感染したら完全に病気を治すことはできないのです。
症状が現れていなくても要注意!感染者の7割が知らないうちに感染!?
性器ヘルペスは、主に性行為でウイルスが含まれた分泌液に直接触れることによって感染します。
性器にできた水ぶくれや潰瘍には、単純ヘルペスウイルスがたっぷり詰まっているため、性行為で水ぶくれや潰瘍に触れてしまうことで高確率で感染します。また、フェラチオやクンニリングスなどのオーラルセックスで、口唇ヘルペスの原因菌が性器に感染して発症することもあります。
性器ヘルペスの感染で最も注意しなくてはいけないことは、水ぶくれなど目で見える症状が発症していない【無症状期】でも、感染する可能性です。
アメリカでは、性器ヘルペス感染者の約7割が、相手方に症状の自覚がない時に感染しているという報告もあります。性器に症状がみられない【無症状期】でも、コンドーム無しの性行為で感染する可能性があります。
性器ヘルペスは性行為以外でも感染します
単純ヘルペスウイルスは非常に感染力が強いため、タオルやトイレの便座に付いた分泌液に間接的に触れることで感染するケースも稀にあります。性器ヘルペスを発症している場合は、他の人への感染を防ぐためにも。感染部位に触った手はすぐに洗浄するなど、日常生活に気を配りましょう。
性器ヘルペスの恐怖の痛みについて
性器ヘルペスに感染してしまった場合は、適切な処置が早ければ早いほど症状は軽くなります。
早期発見・早期治療のためにも、症状をしっかり認識して見逃さないようにしましょう!
性器ヘルペスの主な症状は、陰部の水ぷくれ・潰瘍(ただれ)の出現、痛みやむずがゆさ、灼熱感です。
症状の発症パターンは主に3つに分けられ、それぞれ症状の重さが異なります。
①急性型(初感染初発)
性行為などによって、はじめて単純ヘルペスに感染・発症することを急性型と呼びます。
潜伏期間は約4~10日です。患部にかゆみや違和感などの前兆症状が現れた後に、水ぶくれや潰瘍が多数出現し、強いかゆみや痛み、太もものリンパ節の腫れ、発熱や全身倦怠感などの症状が出ます。
治療を行わないと2~4週間症状が続きますが、治療を行えば1~2週間程度で症状が改善します。
女性が発症した場合は痛みが強く、排尿困難や歩行困難となり、入院治療を要する場合もあります。
病気が進行すると、頭痛や尿が出なくなる髄膜炎を併発する可能性もあります。
②誘発型(非初感染初発)
単純ヘルペスウイルスに感染後、一定期間を経た後に、免疫力の低下などによって初めて発症することを誘発型と呼びます。
急性型に比べると、比較的症状は軽く、治療期間も短いです。高齢者や免疫不全の病気にかかっている場合、重度の症状が出る場合があります。
③再発型
過去に性器ヘルペスを発症しており、その後の単純ヘルペスウイルスの再活性化によって再発することを再発型と呼びます。
性器ヘルペスは再発率が非常に高く、初感染から1年以内に再発する率は80%と言われています。
再発型はストレスや疲労などによって、免疫力が低下することが原因で発症します。急性型に比べて症状は軽く、水ぶくれや潰瘍の数も少なくなります。再発を繰り返す度に症状は軽くなっていくといわれています。
性器ヘルペスは男性と女性で症状の現れ方が違うんです!
性器ヘルペスは男女によって、症状が出る場所や、初めて感染した時の症状の現れ方に違いがあります。
症状が出る場所
♦︎女性♦︎
・外陰部
・膣の入口
・おしり
・膀胱
・子宮頸部 etc...
♦︎男性♦︎
・包皮
・冠上溝
・亀頭おしり
・太もも etc...
初感染の症状の現れ方
♦︎女性♦︎
・はじめは患部にむず痒さやヒリヒリ感が現れる。
・その後出現した小さな複数の水疱が破れて融合し、痛みを伴う潰瘍に。
・1週間後にもっとも重症化する。
♦︎男性♦︎
・潜伏期間後に比較的突然発症。
・水疱や潰瘍は両側性のことが多い。
・痛みで排尿困難や歩行困難になることも。
・まれに髄膜炎を合併する。
性器ヘルペスは早期発見・早期治療が大事!
性器ヘルペスの検査方法は、血液検査や遺伝子検査などがありますが、これらの検査はあまり行われることはありません。
性器ヘルペスは、専門医であれば、いつ・どのように発症したのか、という症状に関する問診と、性器や症状の状態を見るだけで判断を下せる場合がほとんどです。無症状期など、見た目での診断が難しい場合は、検査が行われることがあります。
性器ヘルペスは早期発見・早期治療がとても大事です。
症状があらわれる前でも、気になることがあれば一度専門医に相談しましょう。
女性の場合は、「女医がいる病院」という条件で病院を検索できるサイトもあるので、ぜひ活用してみてくださいね。
病院なび(病院ナビ)は、全国のクリニック・診療所・医院・病院を検索できるサービスです。東京・名古屋・福岡などの皮膚科・耳鼻科・整形外科といった困った時の病院・医院・薬局検索も出来ます。
完治はできないけど、治療と予防ができます
現代の医学的技術では、残念ながら体内に潜伏している単純ヘルペスウイルスを完全になくすことはできません。
性器ヘルペスの治療は、抗ヘルペスウイルス薬の服用により、ウイルスの活動・増殖を抑えることになります。
治療が早ければ早いほど症状は軽く済むため、症状を感じたら速やかに皮膚科や泌尿器科、性病科、女性の場合は婦人科で診察を受けるようにしましょう。
まずは予防が第一!
性器ヘルペスの基本的な予防方法は、単純ヘルペスを身体から出している人と性行為をしないことです。
性器ヘルペスは無症状期でもウイルスを出していることがあるため、性行為の相手方が感染しているかどうかの判断が難しい場合があります。性器ヘルペスにかかったことがある方と性行為を行うときは、無症状期でも、はじめから終わりまできちんとコンドームを着用することが大事です。
また、性器ヘルペスを発症している場合、コンドームだけでは単純ヘルペスウイルスに全く触れないようにすることは困難です。
明らかに性器に症状がみられる場合は、性行為自体を行わないようにしましょう。
単純ヘルペスウイルスは感染力が非常に強いため、日常生活でもごく稀に感染の可能性があります。性器ヘルペスを発症している場合は、周りの人への感染を防ぐためにも以下の点に注意しましょう。
●家族やパートナーとタオルを共有しない
●感染部位に触った手はすぐにみずする
●性器ヘルペス発症中は、患部をガーゼなどで覆い、洋式トイレを使用した後は便座を消毒用エタノールで拭く
再発は防げる!その1~再発抑制療法~
性器ヘルペスは、免疫力が低下すると再発を繰り返す厄介な病気です。
再発抑制療法は、抗ヘルペスウイルス薬を毎日飲むことによって、再発前にウイルスの活動を抑える治療法です。
目安としては、年に6回以上再発する人が対象となる治療法となります。治療対象の詳細に関しては医師に相談してみましょう。
海外で行われた調査によれば、再発抑制療法により、1年間の治療期間中に性器ヘルペス再発のリスクが71%も低下したという報告もあります。再発抑制療法によって、パートナーへの感染率も低下するとされています。
再発は防げる!その2~ストレスをためない生活を!~
性器ヘルペスの再発は、風邪や疲労などの肉体的要因や、精神的ストレスによる免疫力の低下も原因となります。
免疫力を低下させないためにも、以下の点に注意して生活を送るように心がけましょう。
●規則正しい生活習慣を身に着ける
●バランスの良い食生活を送る
●アルコールの過剰摂取を避ける
●適度な運動を行う
●十分な睡眠をとる
●ストレス発散方法を見つけて上手にストレスを逃す
また、女性の場合、生理前はホルモンバランスの影響により免疫力が低下するため、性器ヘルペスを再発しやすくなります。
生理前は特に生活習慣に気を配るようにしましょう。それでも、生理前になると必ず再発してしまう場合、一度お医者さんに相談してみましょう!