木の下で雨宿りはNG?山や海では?レジャーの前に知っておきたい「落雷」対策まとめ

はじめに~雷による死亡者は世界で年間2万4000人とも言われています

ここ数年ですっかり夏の風物詩となってしまった感のあるゲリラ豪雨。
局地的な集中豪雨による都市型洪水の発生も問題となっていますが、雷を伴う場合は落雷が心配だったり、轟音に怖い思いをするという人も多いのではないでしょうか?

都市化とともに雷による死者数は減り、カナダ・アメリカ・オーストラリア・シンガポール・日本などを含む先進国では20世紀前半に年間100万人あたり2人程度だった死者数は、20世紀後半には100万人あたり0.4人ほどにまで減少しています。
日本に限ってみると、1990年代には雷による死者数は100万人あたり0.1人未満となっているそうです。

一方で、2000年代のデータでもジンバブエでは100万人あたり14.8人、南アフリカの農村部では100万人あたり8.8人など、雷による死亡率は先進国と途上国、都市部と農村など地域によりばらつきがあり、世界的にみると年間に2万4000人が落雷により死亡、24万人が負傷するとも言われています。

毎日の通勤通学途中や休日のレジャーの最中など、外出先で突然の雷雨に襲われたときのため、落雷対策の基本をおさえておきましょう!

都市部は避雷設備が充実!建物の中で「雷宿り」をすれば基本的に安全です

都市部で雷雨にあったとき、最も安全な避難場所はショッピングモールやオフィスビル、学校、マンションなどの、避雷設備を備えた大型の建築物の中です。
アパートや戸建ての住居など小さ目の建物でも日本では避雷針を設置している場合が多いですし、配電設備や上下水道がある建物なら、雷は人間の体より効率のよいコンダクタ(伝導体)である導線や水道管を通るので、基本的に建物の中は安全です。ただし、落雷が原因の火事などの二次災害も起きているので、木造建築などでは注意してください。

家や建物の中ではテレビやパソコン、ゲーム機や電灯、ポットなどの有線の電化製品からは1m以上離れ、有線電話や水道の蛇口、ガスの栓などからも1m以上離れましょう。
壁や柱からも離れ、できるだけ家の真ん中、部屋の真ん中に居るようにし、落雷の可能性がある間はお風呂やトイレの使用も避けた方がベターです。

携帯電話や、電池式の携帯ゲーム機、懐中電灯などは使用しても安全です。

また、雷雨のときに雨宿りはしても、「雷宿り」をしているという感覚がない人は多いかもしれませんが、雷は雨が降り始める前から発生し、雨が止んだあとも続きます。
降雨範囲から10マイル(16km)も離れたところまで落雷の可能性があり、落雷は降雨のピークよりも、その前後の方が多いというデータもあります。

雷鳴が聞こえ始めたら雨が降り始めるまで待つ必要はありません。ただちに建物の中へ避難し、雨が止んだあとも、最後の雷鳴が聞こえてから30分は外に出るのを待つのが理想です。
 

自動車は乗ったままやり過ごし、自転車やバイクは降りて避難しましょう

自動車やバスは、建物が近くにない場合の避難場所にもなります。
自動車で走行中に雷雨に見舞われた場合は、基本的にそのまま乗っていて大丈夫です。窓はすべて完全に閉めてください。
雷が近い場合は、車を止め、窓をすべて閉め、天井や壁、窓、ハンドル、イグニション、ラジオ、カーライターなどには一切触らないようにし、手をひざに置いて雷雲が去るのを待ちましょう。

ただし、これは屋根が金属製の自動車の場合で、オープンカーやゴルフ場のカート、トラクターなど、屋根が「ほろ」になっている乗り物の場合は、雷をひきつける金属の塊の上に座っているようなものなので、かえって危険です。降りて近くの建物内へ避難しましょう。

自転車・バイクに乗っていた場合も、オープンカーと同様にかえって危険です。雷雨のなか河川敷や農道を自転車・バイクで走行するなどは最悪です。降車して4m以上離れた場所に避難しましょう。
都市部を走行中で急に自転車やバイクを放置できないというような場合は、できるだけ高架の下や電線の下などを選んで通り、コンビニなど最寄りの駐輪できる場所で降車しましょう。
 

スポーツやレジャーの時はどうすればいいの?避難の基本を知っておきましょう

ゴルフ中の落雷事故が多いことは知られていると思いますが、サッカーやラグビーなどのフィールドスポーツ中、学校の校庭での体育の授業や部活中などにも事故は起きています。
最近では2014年8月に愛知県で、高校の野球部の練習試合中にピッチャーマウンドにいた投手に落雷し、死亡したという例もあります。このときは降雨で一旦は試合を中断したものの、雨が止み晴れ間が見えたので再開した直後の落雷だったそうです。

屋外でスポーツ中に雷鳴が聞こえてきたら、できるだけ早く校舎や体育館など近くの建物へ避難すべきです。
ダグアウトやプレハブタイプの部室・更衣室などは大きな建物ほど安全ではありませんが、スポーツを続けるよりははるかに良いでしょう。

河川敷のグラウンドやジョギングコースなどに居るときに雷鳴がた場合は、車で来ている場合は車の中へ避難しましょう。近く橋があれば橋の下へ避難してください。ただし、大雨で増水している場合や氾濫の可能性がある場合は河川自体から離れた方がよいでしょう。

水泳中は、屋外プールの場合はもちろんですが、屋内プールでも、水から出て退避すべきです。


ビーチパラソルの下や、テントの中で雨宿りをするのは、何もない場所より危険です。運動会やお祭りの屋台などで使うような屋根だけのテントも同様です(高さとポールが雷寄せになるため)。

突然の雷雨に襲われ避難する場所が近くにまったくない場合、両足をそろえてしゃがみ姿勢を低くし(座り込んだり寝そべったりして接地面積を大きくすると、付近に落雷した場合に地面から感電する危険性が高くなります)、目を閉じ、耳の穴を指でふさぎましょう。
 

木の下で雨宿りは危険!「保護範囲」を覚えておきましょう

避雷針が発明される以前から、「雷よけ」のために庭に木を植える家があったことからもわかるように、高い木はいわば天然の避雷針のように、雷をひきつけます。
しかし、落雷後に燃えて火事となる場合もあるので、現在では避雷針がわりに木を植えることは推奨されません。ロシア東部やシベリアなどでは、落雷が森林火災の主要な原因となっているそうです。

特に落雷が多い樹木はナラやカシ、ニレ、マツなどです。

木に落雷したとき、電流は木の幹だけをまっすぐに通って根に伝わるわけではなく、枝や葉などにも伝わり、近くに伝導体(生き物など)があればそこにも「横流れ」します(側撃雷)。
そのため、落雷しやすい木からは4m以上離れるべきで、これは幹から4mではなく張り出した枝や葉からも4mということなので、雨宿りは絶対にNGです。

雷が落ちやすい木や電柱・ポール・建物などの物体(高さ5~30m)から4m以上離れ、かつ物体からの距離が物体の高さ以下の範囲が、その物体が避雷針の役割を果たしてくれる「保護範囲」になります。
保護範囲内でしゃがんで目を閉じ、耳をふさぐと、建物内ほどではありませんが比較的安全な避難方法となります。

保護範囲の目測の際は、物体のてっぺんと根本と自分の立ち位置が直角二等辺三角形を作る位置まで、ということなので、しゃがんで視線を低くして物体のてっぺんを見上げたときに、仰ぎ見る角度(仰角)が45°以上というのが判断の目安になります。

なお、高さ30m以上の物体(鉄塔・煙突・高層建築など)では、保護範囲は物体からの距離が4m以上30m以内となります。100mのビルでも保護範囲が半径100mとはならないので注意が必要です。
 

大気が不安定なときの登山や海水浴はNG!海・山には入らないことが基本です!

天気予報で「大気が不安定」というキーワードが出たら、落雷の危険性があると解釈してOKです。海や山のレジャーは避けましょう。
しかし、家を出たときには晴れていたのに、外出先で天気が崩れてしまうということもあると思います。
海水浴場や自然公園などでは雷注意報が出ると注意喚起の放送を行う場合などもあるので、監視員などの指示にすみやかに従ってください。

海上や湖上、海岸などの開けたところや、山の上(山頂、尾根、森林の中の登山道)などは、ほとんど避難する場所がありません。

海や湖では水面に落雷すると、一度に複数の人が死傷することもあり、落雷位置から20m以内にいた人が死亡・重体になるケースが多くなっています。
落雷のショックですぐに呼吸停止や心拍停止とならなかったケースでも、意識を失ったり体のしびれにより一時的に泳げなくなって溺死してしまう例もあります。

サーフボードやカヌー、水上バイクなどが「雷寄せ」となってしまう場合もあるので注意が必要です。
直接水に触れる遊泳やマリンスポーツ以外でも、避雷針のない小さな漁船やヨットでの航海も落雷の危険がある場合には控えるべきでしょう。

海から上がっても海岸に落雷することもあり、ビーチパラソルの下などは特に危険です。
できるだけ早く建物の中か、自動車の中へ避難しましょう。

また、山では天気が変わりやすく予測しづらいうえ、落雷の件数そのものが多く避難場所が少ないことから、登山中の落雷事故は多く、死亡率も高くなっています。
樹木の多い山の上では木に落雷し、近くにいた人が側撃を受ける場合もありますし、山頂や尾根の岩や、山肌そのものに落雷したり、開けた場所では登山者に直撃することもあります。
複数人で登山中に、登山パーティー全員が負傷や死亡するケースもあります。

日本最悪の落雷惨事と言われる1967年の長野県・西穂高岳の落雷事故では、県立高校の登山パーティー46名のうち11人が死亡、13名が重軽症を負ったそうです。

雷注意報などが出ている場合は登山を控えることが大前提ですが、登山中の雷雨に見舞われたときは、できるかぎり山小屋などの建物へ避難し、大きな木の下での雨宿りは避け、開けた場所へ出ることも避け、木がまばらに生えた場所でできる限りすべての木から2m以上離れ、しゃがんで目を閉じ、耳をふさぎましょう。
避雷針設備のない山小屋やあずまやなどでは、壁からできるだけ離れ、部屋の中心で姿勢を低くしましょう(落雷時に柱へ壁にもたれていて死亡した例があります)。

洞窟は山の中では唯一といってよいほどの安全な場所ですが、入口付近は避け、内部では転落事故や酸欠、動物などにも注意が必要です。
 

おわりに~それでも雷に打たれるとどうなるの?主な症状と救助方法

落雷の死亡率は国や地域によって異なりますが、日本では直撃事故の場合33%、側撃事故の場合で20%とされています。
心臓病のペースメーカーが干渉を受け、直撃も側撃も受けていないのに落雷地点の近くに居ただけで死亡した例もあります。

電気工事中のミスや漏電などによる通常の感電事故の場合、電圧は20~63キロボルト、通電時間は0.5秒といったケースが典型的ですが、落雷の場合は300キロボルト(30万ボルト)で数百分の1秒といった例が多く、人体に与える影響も通常の感電事故と落雷事故では大きく異なります。
通常の感電事故では通電部全体に熱傷(やけど)が起きる場合が多いですが、落雷の場合は通電時間が非常に短く、電流のほとんどが体表面を通るため組織の温度はそれほど上がらず、やけどは入電部位と出電部位に集中(金属性のアクセサリーや時計を付けていた場合はその周囲も)するケースがほとんどです。
しかし、熱ではなく電流そのものにより、神経や筋肉の組織がダメージを受けます。電気パルスをかけることで細胞膜に穴をあける電気穿孔法(でんきせんこうほう:エレクトロポレーション)の原理です。
組織の壊死・腐敗により、手足を切断することになったり、最終的に死に至る場合もあります。

落雷に伴う火事による死亡例や落雷のショックによる溺死・転落死などを除き、落雷が直接の死因となるケースのほとんどは、落雷直後の心室細動・心停止・呼吸停止によるものです。

ですが、脈拍と呼吸が止まっていても、適切なCPR(心肺蘇生法:心臓マッサージと人工呼吸)を行えば助かる可能性もあります。心肺蘇生で最も蘇生率が高いのが、落雷事故だということを覚えておきましょう。

通常の感電事故では被害者に触れた救護者が感電する二次被害にも注意が必要ですが、落雷事故の場合は被害者の体に電気が溜まっているということはなく、触っても感電しません。
てんかん発作のような症状を起こすケースや、まぶたなどがけいれんしている場合もありますが、電流が流れ続けているというわけではありません。

落雷事故に遭遇した場合、迷わず救急車を呼び、被害者の脈拍と呼吸を確かめ、脈拍と呼吸が止まっている場合はCPRを行い(119番通報した場合は電話で脈拍の確認からCPRの方法まで指示を受けることもあります)、呼吸があっても意識を失っている場合は気道を確保して救急車を待ちます。

落雷事故は命が助かった場合でも、生存者の80%が神経症状や聴力障害、視力障害などのなんらかの後遺症を経験すると言います。PTSDなど精神的な後遺症へのケアが必要になる場合もあります。
一見ぴんぴんしているように見えるという場合でも、直撃や側撃を受けた場合は必ず救急車を呼び、病院で医師の診察を受けるべきです。
要救助者の脈拍や呼吸が安定していて意識もある場合でも、落雷前後の記憶がない場合や、一時的に耳が聞こえなくなっている場合、パニックを起こしている場合などもあるので、そばを離れず、落ち着かせながら救急車を待ちましょう。
 

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