はじめに

髄膜炎(ずいまくえん)は、脳や脊髄を覆っている髄膜に、ウイルスや細菌が入って炎症を起こす病気です。

髄膜炎には、ウイルスが増殖する「無菌性髄膜炎(ウイルス性髄膜炎)」と、細菌が増殖する「細菌性髄膜炎(化膿性髄膜炎)」があります。

無菌性髄膜炎(ウイルス性)よりも、細菌性髄膜炎は比較的重症で、脳の障害を起こす「神経救急疾患」とされる危険な病気です。

主に乳幼児に多くかかりますが、高齢者まで幅広い年代にかかり、治療法が進歩した現在も、後遺症や致死率も高いため、基礎知識を知っておくことが大切です。

今回は「細菌性髄膜炎」の症状から対処法までの大切なポイントを解説します。

細菌性髄膜炎の原因は複数の細菌

髄膜炎は、脳や脊髄を保護している髄膜に、細菌が感染し炎症を起こす病気です。髄膜は、軟膜、くも膜、硬膜の3重からなる膜で、脳や脊髄(せきずい)を覆っています。

細菌性髄膜炎の原因菌は、インフルエンザ菌、肺炎球菌、B群レンサ球菌、大腸菌などの細菌が主な原因菌となり、他にもリステリア菌、髄膜炎菌、ブドウ球菌などがあります。

日本での主な原因菌は、インフルエンザ菌b型(Hib:ヒブ)と肺炎球菌です。

これらは普段は鼻やのどの奥にいる常在菌で、普段は症状を起こしませんが、特に免疫力のない乳幼児の場合、これらの菌が体内に侵入して重度の感染症を起こすことがあり、髄膜へ侵入すると細菌性髄膜炎を引き起こします。

年齢によって原因菌が異なる

細菌性髄膜炎は、年齢によって原因菌が異なります。

生後3ヵ月まで :B群レンサ球菌、大腸菌、リステリア菌

生後3ヵ月~6歳未満:インフルエンザ菌(Hib)、肺炎球菌

年長児〜青年期:肺炎球菌、インフルエンザ菌、髄膜炎菌

成人(50歳未満):肺炎球菌、髄膜炎菌

高齢者:肺炎球菌、リステリア菌

このように、6歳以降にはインフルエンザ菌が減少し、成人と高齢者では肺炎球菌が主になります。

リステリア菌は頻度は少ないのですが、新生児期・乳児期と高齢者にみられるなど、細菌性髄膜炎は、年齢によって原因菌が異なる特徴があります。

季節性はほとんどありません。ただし、髄膜炎菌による髄膜炎を「髄膜炎菌性髄膜炎」といい、こちらは流行することがあります。

細菌性髄膜炎のかかりやすい年齢は0歳と1歳

細菌性髄膜炎は、生後3ヶ月以下の0歳児が最も多く、半数を占めています。

次に1歳児が多く、免疫力が未発達な2歳位までは多くかかります。

5歳頃までは注意年齢です。

それ以降の年齢では減少していますが、70代ではまた多くなっています。

細菌性髄膜炎の感染経路は主に飛沫感染

細菌性髄膜炎は、多くの場合、感染者の咳やくしゃみにより、鼻水や唾液に含まれている菌が飛散し、それを吸い込むことによる飛沫感染です。

体内に侵入した原因菌が血液を通じて髄膜に到達することによって起こります。

新生児の場合は、産道感染も考えられています。

出産時に、母体が、B群レンサ球菌感染症(GBS感染症)の場合には、生れた新生児に、髄膜炎や肺炎、敗血症などの重症のB群レンサ球菌感染症を起こすことがあります。

細菌性髄膜炎の症状について

初期症状

髄膜炎は主に以下の症状が見られます。

・発熱

・頭痛

・嘔吐

これらの初期症状は、風邪と見分けが付かず、病気が進行してしまうことが少なくありません。

主な症状

初期症状から進行すると以下の症状が見られます。

・38~40度位の高熱

・うなじがこわばり固くなる(項部硬直)

・首を前に曲げにくい

・光をまぶしく感じる

・けいれん

・意識障害

月齢の低い乳幼児の症状

特に月齢の低い赤ちゃんには、以下の症状が見られます。

・高熱

・母乳やミルクの飲みが悪い、食欲不振

・吐く

・大泉門(おでこの骨と骨のつなぎ目)が腫れる

・機嫌が悪い、泣き止まない

・けいれん

細菌性髄膜炎は、急速に悪化する電撃型もあり、高熱が出てから1日で死亡することもあります。

このような症状が見られたら、夜間や休日に関わらず、至急病院を受診しましょう。

治療が遅れると死亡または後遺症へ

細菌性髄膜炎は、治療が遅れると以下のような後遺症が見られます。

・脳血栓、脳萎縮

・まひ

・てんかん

・難聴

・水頭症(頭蓋内に髄液が増えて頭が大きくなる)

・発達障害

一見後遺症がないよう見える子どもでも、だんだん知能や運動障害がはっきりしてくることもあります。

また発症してしまうと治療が困難なケースや、死亡に至ることも事実です。

他の感染症の後にも注意を

髄膜炎は、中耳炎、副鼻腔炎などの合併症として見られることがあります。

また、おたふくかぜ、はしか、風疹などの後に、髄膜炎に発展することがあります。

他の感染症の後、子どもの様子が気になった場合は、早めの受診が大切です。

細菌性髄膜炎の治療方法

診断は、脳髄液から原因菌を迅速に特定し、抗菌薬(抗生物質)の投与により治療します。

年齢や発症状況・症状などを考慮し、それに合った抗菌薬・抗生物質を約2週間から1ヶ月間、全身状態を確認しながら投与します。

ただし耐性菌(薬の効果がない菌)が増えているため、最善の治療をしても、死亡や後遺症が残ってしまうことも多くあります。

細菌性髄膜炎は、早期診断と早期治療は大切ですが、治療にも限界があるようです。

現在の最善の治療をしても、Hib(インフルエンザ菌b型)では約3~5%、肺炎球菌で約7~10%が死亡しています。

そのため、ワクチン接種により予防することが最も重要だとされています。

細菌性髄膜炎の予防方法は2種類のワクチンを

生後2か月になったらワクチン接種を受けましょう。

細菌性髄膜炎の大半は、Hib(インフルエンザ菌b型)と肺炎球菌が原因です。

ワクチンは、Hibワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンの2つの接種が重要です。

生後2か月になったらすぐに、2つのワクチンを同時接種で受けましょう。ワクチンにより、接種した子どもの多くが細菌性髄膜炎を予防することはもちろん、受けてない子どもへの感染を守ることができます。

接種スケジュールは、かかりつけ医に相談しましょう。

細菌性髄膜炎に関する感染症法について

細菌性髄膜炎は、感染の拡大を防止するため、法律により以下が定められています。

感染症法(5類感染症)

感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)において、細菌性髄膜炎は、5類感染症に指定され、「国が感染症発生動向調査を行い、その結果に基づき必要な情報を国民や医療関係者などに提供・公開していくことによって、発生・拡大を防止すべき感染症」とされています。

診断した医師は保健所への届出が義務付けられています。

学校保健安全法(髄膜炎菌性は第2種感染症)

学校保健安全法では、細菌性髄膜炎の中でも、髄膜炎菌性髄膜炎は、第2種感染症に定められており、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止とされています。

病状により出席停止の基準は定めれらていますが、病状は個人によって異なるため、子どもが感染症にかかった場合は必ず医師の指示に従い、登校の許可が出るまで十分に休養することが大切です。

image by

Photo AC

さいごに ~小児救急電話相談#8000の利用を~

小児救急電話相談 #8000は、休日・夜間の急な子どもの病気にどう対処したらよいのか、病院の診療を受けたほうがいいのかなど判断に迷った時に、小児科医師・看護師への電話による相談ができるものです。

全国同一の短縮番号#8000をプッシュすることにより、お住まいの都道府県の相談窓口に自動転送され、小児科医師・看護師からお子さんの症状に応じた適切な対処の仕方や、受診する病院等のアドバイスを受けられます。

細菌性髄膜炎は、早期の治療が大変重要です。子供の様子がおかしい場合は、夜間や休日に関わらず、至急病院での受診が大切なため、判断に迷った時には知っておくとよいでしょう。

詳しくは厚生労働省小児救急電話相談#8000のHPをご覧ください。

厚生労働省 小児救急電話相談 #8000