毛じらみ(ケジラミ症)は第二次大戦以降激減していましたが、近年再び流行しつつあるといわれています。
性にオープンになった現代の環境と、性行為によって接触するだけで感染するという毛じらみの相性がいいことが流行の原因と考えられます。
しかし、第二次大戦直後とは違い毛じらみに対する治療はすでに確立されています。
有効な治療薬も開発されており、正しい対処をすれば毛じらみを駆除することはさほど難しくありません。
毛じらみに感染してしまったら他の人にうつす前に発見し、治すことが大切です。
毛じらみの症状や原因、治療について知っておきましょう。
毛じらみの正体は寄生虫?!
シラミは、幼虫から成虫までオス、メスともヒトより吸血し血液を栄養源としている寄生虫です。
ヒトに寄生するシラミは、ケジラミにアタマジラミ、コロモジラミの3種類に分けられます。
その中でも主に陰毛に寄生するのが毛じらみ(ケジラミ)です。
体長はメス成虫で1.0~1.5mm、オス成虫で0.8~1.0mmと小さいですが、肉眼でも見える大きさです。
見た目は茶色を帯びた白色で、頭部は小さく、触覚が有り、体には3対の脚があります。
この脚の先のカニのような大きな爪で陰毛をつかむため簡単には落ちません。
毛じらみはヒトからの吸血によって成長し、死ぬまでの約1か月の間に30~40個の卵を産みます。
卵は灰色を帯びた白色で光沢を持っており、セメント様物質で毛に固定されるため毛じらみの本体同様、自然に落ちることはまずありません。
そして、産卵後の卵は7日前後で幼虫が孵化し、5~6日で脱皮、8~11日後に成虫となり、1~2日後にはまた卵を産み始めます。

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毛じらみの原因となる感染経路は、ほぼ性交渉
毛じらみは移動できる距離がとても短く、自力で移動して感染することはありません。
そのため毛じらみは主に陰毛同士の直接接触、つまり性行為によって感染します。
直接接触による感染力はとても高く、毛じらみが寄生している人との性行為による感染率はほぼ100%といわれています。
また、毛じらみは直接接触による感染以外にも下着やタオル、シーツなどにより間接的に感染することもあります。
毛じらみに感染した家族が使用したタオルなどを使い回すことで幼児に感染してしまう可能性もあるのです。
しかし、浴槽やプールのような水の中では毛じらみは毛にしがみつくため、感染することはありません。
温泉やプールでの集団感染の可能性は考える必要はないでしょう。
毛じらみの症状の代表・かゆみは、日に日に強くなる!
毛じらみ(ケジラミ症)の特徴的な症状はかゆみ。
しかし、毛じらみに感染しても最初はかゆみはありません。
かゆみが出始めるのは毛じらみが増えてからです。
最初は軽いかゆみですが、毛じらみの数が増えるのに従ってだんだんとかゆみが強くなっていきます。
このかゆみは毛じらみへのアレルギーにより引き起こされます。
そのため、かゆみの程度やかゆみを感じる時期には大きな個人差があります。
一般的には感染から1~2か月程度経って、毛じらみが増えてくるとかゆみを感じ始めますが、アレルギーが強い人だと数匹の毛じらみがいるだけでもかゆみを感じることもあるようです。
しかしどれだけかゆくなっても、毛じらみによって皮膚に発疹などが出ることはありません。
その代わり、激しいかゆみのために皮膚をかきむしり、湿疹や細菌性の感染症を併発する可能性があります。
また、長期に感染が及んだ場合は、皮膚の深いところにヘモジデリンが沈着し青灰色の斑点を作ることもあると考えられています。

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毛じらみの診断は下着でできる?!
毛じらみは肉眼で確認することができます。
とはいえ、大きさがおよそ1~2mmでシミやフケと区別しづらいため、見落としてしまうかもしれません。
しかし、簡単に毛じらみに感染しているかどうか判断する方法もあります。
毛じらみは養分として取り込んだ血液を消化し排泄するので、もし毛じらみがいるのであれば下着に便が付着するはずです。
排泄された便は茶色い粉のような形状をしているので、白い下着を着けておけば便が付着しているかどうか一目で分かり、毛じらみかどうか判断することができます。
陰部のかゆみと茶色い粉の付着がどちらも確認できたら、毛じらみに感染している可能性は非常に高くなります。
毛じらみの治療はスミスリンシャンプーで
毛じらみは陰毛に取り付くため、陰毛をすべて剃毛すれば駆除できますが、実際には肛門のまわりなど完全に剃毛するのは困難です。
そのため、一般的にはシラミを駆除する医薬品の「スミスリンシャンプー」を利用した治療法をすることになります。
スミスリンシャンプーにはシラミを駆除する成分であるフェノトリンが含まれているため確実に毛じらみを駆除することが可能です。
スミスリンシャンプーの使い方
症状が陰毛の場合の使い方は以下のようになります。
1.水又はぬるま湯で陰毛を少し濡らす。
2.キャップの目盛を参考に、3~5mL程度使用する。
3.手やクシで薬液が全体にいきわたるようにする。
4.5分間そのまま待つ。
5.水又はぬるま湯で薬剤を十分に洗い流す。
スミスリンシャンプーの使用頻度は3日に1回ずつで、3~4回繰り返すのが望ましいとされています。
間隔をあけて使用するのは、卵の硬い殻によって薬が入りにくい場合があり、生き残った卵からふ化した幼虫が残ってしまうことがあるためです。
毛じらみが少しでも残ってしまうと、再び潜伏期間になってしまうため、一度使ってかゆみがなくなったからといっても油断せずに繰り返し使用する必要があります。
毛じらみの予防方法
毛じらみは陰毛同士が触れ合うことによって感染するという性質を持っています。
そのため、他の性病と異なり、コンドームを装着しても予防はできません。
予防として有効なのは、まず毛じらみに感染している人と性行為を行わないこと。
また、感染する可能性のある下着やタオル、シーツなどを共用しないことです。
家族が毛じらみにかかってしまった場合も、同様にタオルやシーツを共用しないようにしましょう。
感染力が強く、人によっては潜伏期間も長いため、家族の誰かが感染してしまったら早急に治療し、症状が治まっても油断せずに予防に努めましょう。

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おわりに
一般的に性病はコンドームを装着すれば予防できると考える方が多いと思います。
しかしコンドームを装着しても陰毛同士の接触は防げないため、毛じらみ(ケジラミ症)は予防できません。
また、感染してしまっても軽いかゆみ程度なら性病だとは思わずあまり気にされない方もいるかもしれません。
毛じらみのかゆみは最初はあまり強くないですが、時間が経つにつれてどんどん強くなるのが特徴です。
また、軽度であってもパートナーや家族にうつしてしまう可能性が高いです。
軽度のかゆみでも放っておかず、早めに毛じらみかどうか調べて、素早く適切な対処を心がけましょう。