エンテロウイルス(D68):症状・治療法・予防方法について解説

エンテロウイルスは腸管で増殖するウイルスの総称です。まだまだ解明されていない部分も多くありますが、麻痺症状などの重大な症状を引き起こす可能性もあります。症状や感染経路、予防方法について解説します。

エンテロウイルスとは、腸管で増殖するウイルスの総称です。
まだまだ解明されていない部分が多く、明確な情報が少ないウイルスではありますが、過去に大流行した際には多くの人を苦しめた危険なウイルスです。

特に近年話題となっているエンテロウイルスD68は、流行してしまうと大変危険なウイルスであり、感染すると麻痺症状などの重大な症状を引き起こす恐れがあります。

この記事では、エンテロウイルスやエンテロウイルスD68について解説します。
症状や予防方法について正しく認識しましょう。

エンテロウイルスとは?

エンテロウイルスとは、腸管で増殖するウイルスの総称です。
67種類のウイルスが存在し、年ごとに流行するウイルスの種類が異なります。特に、夏季を中心に5月〜10月にかけて流行しやすくなります。

エンテロウイルスによる感染症

エンテロウイルスが主に腸管やその周囲の限られた組織にとどまる場合は、症状がでることはなく、体が免疫をつけることで感染は終わります。しかし、感染が進み、体の組織や中枢神経まで達してしまうと、下の表のようなさまざまな症状があらわれます。

エンテロウイルスによる感染症
 呼吸器  風邪症状、咽頭炎、ヘルパンギーナ、口内炎、急性気管支炎、胸膜痛
皮膚 発疹、手足口病
神経 無菌性髄膜炎、急性脳炎、神経麻痺
消化器 嘔吐、下痢、腹痛、肝炎
急性出血性結膜炎
心臓 急性心筋炎

子どもの夏風邪の1つとしてよく知られる手足口病や、子どもに麻痺を起こすポリオもこのエンテロウイルスの仲間が原因となります。
同じ型のエンテロウイルスが異なる症状を引き起こし、異なるエンテロウイルスが同じ症状を引き起こすことがあるので、症状のみで原因となるウイルスを特定することは困難となっています。

エンテロウイルスの種類別の症状の例として、下の表のような病気があげられます。

病名 ウイルスの種類 感染経路 症状
急性灰白髄炎 ポリオ1〜3型 ・感染者の便からの排出
・経口感染
・接触感染
・飛沫感染
発熱、頭痛、倦怠感、嘔吐、筋肉痛、頸部硬直、ケルニッヒ徴候、麻痺
無菌性髄膜炎 エコー
コクサッキーA・B群
ポリオ1〜3型
エンテロ71
・経口感染
(飛沫感染、腸管感染)
・感染力が強い
発熱(38〜40度)、頭痛、嘔吐、悪心、下痢
手足口病 コクサッキーA・B群
エンテロ71
・経口感染
・接触感染
・飛沫感染
口腔粘膜及び四肢末端に水疱性発疹
ヘルパンギーナ コクサッキーA群 ・経口感染
・接触感染
・飛沫感染
口腔粘膜に現れる水疱性発疹、38度以上の発熱
急性出血性結膜炎 エンテロ70
コクサッキーA24
・接触感染 充血、目痛、目やに、まれに四肢麻痺

エンテロウイルスの感染経路

エンテロウイルスの感染経路は幅広く、経口感染、接触感染、飛沫感染を起こします。
咽頭などから感染した後に、消化器官で増殖しますが、この期間は症状がほとんどでません。また、ウイルスは糞便中に長期間排泄されますが、咽頭からは初期の短期間しか検出されることがありません。
通常は一過性の感染や症状を引き起こさないことが多いウイルスですが、重症化する可能性もあるので注意しましょう。

 感染経路 特徴
 経口感染  ウイルスなどの病原体が含まれた水を飲んだり、食べ物を食べたりすることで、口から腸などの消化器官にウイルスなどが入り、感染すること。
 接触感染 皮膚や粘膜などの接触や、ウイルスなどの病原体を持つ人が触れた手すりなどを触ることで間接的にウイルスが付着して感染すること。
 飛沫感染 ウイルスなどの病原体を持った人のくしゃみ、もしくは咳によって飛散した体液の粒子が他の人の粘膜に付着して感染すること。

エンテロウイルスD68に注意

エンテロウイルス D68は、数あるエンテロウイルスのなかの1つです。手足口病のように子どもに多く感染し、夏季を中心として流行します。
日本では、2005年〜2010年までは毎年感染例は少なかったのですが、2010年と2013年には100を超える感染例が報告されています。アメリカでは2014年の夏から大流行し、2015年の1月までに1153人が感染し、10人以上が死亡したと報告されています。

また、日本でも2015年の秋頃からエンテロウイルスD68の感染、発症例の増加が報告されました。今後、特に注意しなければならないウイルスです。

エンテロウイルスD68が引き起こす症状

エンテロウイルスD68は、乳幼児や子どもを中心に発症しやすくなっています。
大人の場合は症状が出ない場合や、軽症で済む場合が多いのが特長です。

エンテロウイルスはまだまだ解明されていないことが多いウイルスであり、はっきりしたことは不明ですが、エンテロウイルス全体に3〜7日間が潜伏期間ではないかと考えられています。

乳幼児や子どもが感染し、発症した場合は、以下のような症状があらわれます。

・くしゃみ、鼻水
・発熱
・体や筋肉の痛み
・気管支炎
・肺炎

最初はくしゃみや鼻水、そして発熱などの風邪と似た症状が出るので、エンテロウイルスに感染したとすぐに気がつかない場合があります。
しかし、重症化すると気管支炎や肺炎を引き起こす危険性があります。2014年のアメリカでの大流行の際は、重い呼吸器症状を患う人もいました。放っておくと大変危険な感染症であるので、注意しなければなりません。

エンテロウイルスD68と麻痺には関係がある?

国立感染研究所による2016年1月の報告によると、2015年のエンテロウイルス感染者のなかで2人に急性弛緩性麻痺の症状が現れました。また、2014年のアメリカでの大流行の際には、1000人以上が感染し、そのなかの一部の人に麻痺症状があらわれ、麻痺の後遺症が残ってしまったという報告もあります。

しかし、現時点では麻痺症状とエンテロウイルスD68の因果関係は不明であると国立感染研究所は発表しています。(2016年7月現在)
それでも国内外の報告例から、エンテロウイルスD68は麻痺症状を引き起こす可能性があるとは考えられていますので、注意する必要はあります。

エンテロウイルスに有効な治療方法はない

現段階では、エンテロウイルスに特別に効果があるワクチンはありません。(2016年7月現在)
症状に合わせた対症療法という治療法が多く、人によって治療法は変わります。

それと同じように、エンテロウイルスD68に対するワクチンも現在はありません。
エンテロウイルスに感染した疑いがある場合は、医療期間での診察を受け、症状に合わせた治療と感染拡大を予防する措置を取る必要があります。

エンテロウイルスの感染を予防しましょう。

エンテロウイルスD68を含む様々なエンテロウイルスには、治療方法がありません。
したがって、いかに感染を予防するかということが大切です。

感染予防としては、マスクを装着することによる飛沫感染予防と、手を洗って接触感染を予防することがなにより大切です。

また、エンテロウイルスは他のウイルスと同様に、次のような予防策も有効です。

・流水と石鹸で20秒間の手洗いを頻繁に行う。特に、赤ちゃんのオムツを交換したあとは必ず手を洗う。
・手を洗う前に目、鼻、口に触れることを避ける。
・病人の人とのキス、抱擁、コップや食器の共有はしない。
・病気の患者がいる場合は、おもちゃやドアノブなどの手に触れる頻度の高い物の消毒をこまめにする。
・喘息の人は呼吸器疾患を起こすリスクが高くなるので、薬剤を用いて喘息をコントロールする。

また、国立感染研究所によると、エンテロウイルスはアルコール消毒には抵抗性が強いですが、次亜塩素酸による消毒は有効です。

これは、ノロウイルスと同様の対策方法になります。
次亜塩素酸による消毒液の作り方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

関連記事:インフルエンザやノロウイルスに効く!消毒液を簡単に作る方法

おわりに

エンテロウイルスは有効なワクチンがなく、重症化すると命に関わる症状を引き起こす危険なウイルスです。エンテロウイスD68など、流行が危惧されるウイルスには特に注意する必要があります。
乳幼児や子どもの小さな体調の変化にはなかなか気づけない場合がありますが、ウイルスが流行しやすい季節には、気をつけましょう。
しっかりと予防をすることが1番の対策となります。身の回りでできることから始めましょう。

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