1981年に発見されたHIV。

発見当時は死に至る病といわれていたHIV感染症(エイズ)も、医療技術の進歩により、発症を遅らせることができるようになりました。

現在でも、世界中の研究者たちがエイズウィルスの撲滅に向けて日夜研究活動に力を注いでいます。

そんな中、アメリカ・テンプル大学HIVの研究チームが「HIVに感染した細胞からHIVを除去し、免疫能力の修復に成功した」と2014年に発表しました。

ゲノム編集技術を利用

今回テンプル大学の研究者たちが用いたのが「ゲノム編集技術」と言う最新の遺伝子技術です。

ゲノム編集技術とは標的とする遺伝子のDNA配列を改変・修正できる技術で、HIVに感染して侵入されているDNAを見つけて、酵素がそれを切り取り消し去るといった技術です。

HIVは免疫細胞に感染して増殖します。これにより、免疫細胞のDNAに侵入し遺伝子情報を自分のものに書き換えどんどん免疫細胞を破壊していきます。

今回、HIVに感染して影響を受けたDNAの部位を見つけ、その部分を出し切り取って削除し、修復機能によって再結合することに成功しました。

その結果、HIVによって損なわれた免疫機能が復活し、根本的にウイルス自体を削除することができたのです。

新しい治療法への応用

今までHIVは免疫細胞と言う防衛の最前線の細胞にゲノムと言う自分の遺伝子情報を植えつけ乗っ取ってしまうため、完全に消すことは不可能と考えられていました。

現在、実際に行われている治療法はウイルスの増殖を抑制することが目的でウイルスの消滅はできません。

HIVに感染したら患者は生涯、抗ウイルス薬を服用し続けることになります。その間もウイルスは体の中に潜んでいるため、常に再発の恐怖と背中合わせの状態です。

もしこの研究を基にした治療法が確立されれば、HIVウイルスの根絶も可能になるかもしれず、大きな大きな一歩といえます。

テンプル大学のKhalili教授は「今回の成功はあくまでも実験室環境で培養した細胞を相手にコンセプトを実証した段階であり、具体的な治療薬への応用には課題がある」と語っています。

今はまだ感染したHIV細胞すべてにゲノム編集をする方法や、非常に変異しやすいHIVに合わせて患者ごとにターゲットとなるHIVのDNA配列を作って行く必要があることなど課題もまだまだ多く含みます。今は臨床実験に向けて研究を進めているそうです。
 

おわりに

今回の技術は今すぐにHIVの治療に使えるわけではありませんが、「エイズが治る日」も近づいているのかもしれません。

それでも今エイズで苦しんでいる人たちや将来の感染予防などにとっては希望の光といえます。今後の研究成果に期待し、注目していきましょう。