はじめに

解熱鎮痛薬として使われるNSAID(非ステロイド系消炎鎮痛剤)のイブプロフェンは、1960年代にイギリスで開発され、1980年代以降ほぼ世界中で処方箋なしで買える市販薬となり、広く普及しています。

日本でも「イブ」や「リングルアイビー」「フェリア」などのイブプロフェン主剤のものや、ほかの鎮痛成分と組み合わせて配合されたものが多数薬局で扱われています。

テキサスA&M大学で行われた実験により、イブプロフェンに生物の寿命を延ばす効果があることが明らかになりました。

イースト菌やセンチュウ、ハエで15%寿命が延長

Public Library of Science-Genetics誌に掲載されたテキサスA&M大学のMichael Polymenis博士らによる3年間にわたる研究では、はじめにイースト菌(Saccharomyces cerevisiae)で、次に線虫の一種のカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)で、続いてキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)で、イブプロフェン投与により寿命が延びることを発見しました。

投与量はそれぞれ、人間でいえば通常処方される用量に相当する程度の量で、寿命は約15%長くなったそうです。これは、人間でいえば12年ほどに相当します。

イースト菌での実験では、イブプロフェンにより細胞内へのトリプトファンの取り込みが低下することがわかりました。

食品から摂取される芳香族アミノ酸のトリプトファンは必須アミノ酸の一つで、すべての細胞に存在します。

なぜ線虫やハエの寿命がのびたのかはまだ解明されていないのですが、「人間にとって比較的安全で広く普及している薬が、多様な生物の寿命を延ばすことがわかりました。ほかにもイブプロフェンのような、さらに延命効果のある薬を探し、人々の人生に健康な数年間を付け足すことも可能となるでしょう」とPolymenis博士は語っています。

また、線虫はイブプロフェンで長生きになっただけでなく、その長くなった分の時間をより元気に過ごすことができたそうです。

Polymenis博士の共著者でバック加齢研究所研究員のChong He博士によると、「寿命が延びただけでなく健康になりました。線虫がうねる動きをで測ることができます。健康な線虫はたくさん動きがちです。ものを飲み込む際のポンプ運動でもわかります。健康なら動きが早いですから」とのこと。

「イブプロフェンは長年人々に服用されてきましたが、長寿と健康寿命に効果があるとはこれまで誰も知りませんでした」とHe博士は語っています。

おわりに

イブプロフェンは低用量長期投与でアルツハイマー型認知症の予防に効果があるとされ、パーキンソン病の発症率低下に結び付ける研究結果もあります。

NSAIDのなかで比較的安全性が高いとはいえ、消化器系へのダメージや高血圧、EDなどの副作用も報告されているため、サプリ感覚で安易に取り入れることは推奨されませんが、今回の実験結果をヒントに、さらに効果的で安全な「長寿の薬」が発見される日も近いかもしれません。