飛行機に乗ったときに耳がツーンと痛んだり耳が詰まった感じになった経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

特に発着陸の時に赤ちゃんが泣く理由の大半は、耳痛のせいだとも言われています。

この症状は「航空性中耳炎」というれっきとした病気です。

航空性中耳炎は、あくびやつばを飲み込むことなどで解消される軽症の場合がほとんどです。

しかし、ひどいときには耳の中で出血したり、めまいや吐き気を伴ったり、耳の痛みや難聴が着陸後も数日間続いた場合は耳鼻科の受診が必要になります。

快適な空の旅のために、航空性中耳炎の予防法・対処法をチェックしておきましょう。

航空性中耳炎の症状

航空性中耳炎とは急性中耳炎の一種で、飛行機の機内で気圧の変化により起こる症状です。

航空性中耳炎の主な症状には、次のようなものがあります。

軽い症状

・耳の詰まり

・耳がキーンと痛む

重い症状

・耳鳴り

・めまい

・耳が刺されるような激痛

多くの場合は軽い症状が数分間続くものの、唾を飲み込んだり、耳抜きをすることで一時的な症状であり長く続くことはありません。

航空性中耳炎の原因は?

鼓膜の内側にある中耳にはもともと少量の空気が入っており、耳管によって鼻の奥の上咽頭部とつながっています。

耳管は通常閉じていますが、あくびをした時や唾を飲み込んだ時に一時的に開きます。この時に空気が通ることで、外部の気圧と内側の気圧を保ちます。

機内では離着陸時に急激な気圧の変化が起こるため、耳管が開けず閉じたままになってしまい、鼓膜の内側と外側の気圧に差が生じてしまい、耳の痛みや詰まりを引き起こします。

普段私たちが生活している環境と飛行機内の環境にはかなり大きな違いがあるため、環境の特性をあらかじめ知っておくと安心ですね。

機内の気圧は地上より低い

地上の気圧が通常1013hPa(1気圧)程度なのに対し、高度1万メートルの上空での気圧は265hPa(約0.26気圧)です。

これはエベレストの山頂レベルの気圧で、人間が過ごすには過酷な環境なので、旅客機では機内に圧縮空気を送り込み、0.8気圧(810hPa)ほどになるよう調整しています。

0.8気圧は2000メートル級の山の上と同程度。座っていると空気の薄さを感じることはないと思いますが、高地トレーニングの効果が得られる標高であり、運動をすると地上より息が苦しくなりやすいレベルです。

ちなみに、酸素の取り込みが減りアルコールの処理能力が低下するため、機内ではお酒に酔いやすくもなります。

機内は湿気が少なく乾燥しやすい

機内温度は22℃~26℃に調整されており、外気から取り入れる湿度は極めて低く、長時間の飛行になると湿度が20%前後にまで低下することがあります。

乾燥しやすい環境から、のどや鼻に痛みを感じることがあります。のどや鼻は耳とつながっているため、のどや鼻に痛みがあると航空性中耳炎の症状の悪化を招く恐れがあります。

機内は地上に比べて低酸素状態である

気圧の低下によって機内の空気中の酸素濃度も地上の酸素濃度の70%~80%まで低下します。
呼吸器疾患や重い貧血のある方は注意が必要です。健康な人でもまれに頭痛や違和感を感じることがあり、航空性中耳炎を併発した際にめまいや吐き気の症状が強くなることがあります。

離陸時より着陸時の方が痛くなりやすい

人は機体の上昇時には耳管から空気を逃がし、降下時には空気を取り込みます。

耳管は空気を逃がすときと比べ空気を取り込むときには開きにくい構造になっているため、着陸時に急激に機内の気圧が上がる場合には調整が追いつかず、鼓膜の内外で気圧に大きな差ができてしまうことが多くなります。

そのため、離陸時とくらべ着陸時に耳の痛みを感じる人が多いのです。

航空性中耳炎になりやすいのはこんな人

気圧の変化による耳痛には個人差があり、フライトの状況や、体調によっても、耳が痛くなりやすい日と平気な日があったりします。

また、航空性中耳炎になりやすい人、重い症状を発症しやすい人には特徴があります。
自身に当てはまるものはないか、確認してみましょう。

感染症やアレルギー疾患をもっている人

副鼻腔炎や花粉症など、のどや鼻に感染症やアレルギー症状を持つ人は耳管機能に問題があることが多いです。のどや鼻に痛みや詰まりがあると、のどや鼻とつながっている耳にも症状が出やすくなります。

風邪をひいて鼻や喉に炎症がある人

風邪をひくとのどの痛みや、鼻づまりなどの炎症を起こしていると航空性中耳炎を起こしやすくなります。鼻やのどにつながる耳にも炎症がでやすくなり、鼻が詰まった状態では飛行機での離陸・着陸時に耳抜きをしづらく、航空性中耳炎を発症しやすくなります。

耳管での気圧の調整が苦手な人

元々の耳管のつくりが小さかったり、耳抜きがしにくい、または耳抜きが苦手な人も航空性中耳炎になりやすいです。子どもは耳抜きをするのが苦手と言われており、離陸・着陸時に子どもが泣いてしまったりするのは耳抜きがうまくできず航空性中耳炎になってしまっている可能性があります。

航空性中耳炎の予防法

航空性中耳炎にならないためには、どんな予防法があるのでしょうか。機内で航空性中耳炎を発症してしまった時の対処法も、確認しておきましょう。

のど・鼻・耳の炎症を治療しておく

風邪や副鼻腔炎、花粉症や外耳炎などの症状がある場合には飛行機に乗る前に病院に行って治療を行っておくとよいでしょう。

完治が難しい場合でも、のどの痛みを抑えたり、鼻詰まりを緩和するような一時的に症状を抑える薬を服用しておくことも予防につながります。

医師や薬剤師に相談して、適切な治療をしておくことで航空性中耳炎の予防・症状緩和につながります。

搭乗当日に風邪や鼻炎の症状がある場合、市販の点鼻薬を搭乗前と機体の下降前に使用し鼻の通りをよくすることも耳痛予防になります。

アレルギー性鼻炎などで鼻詰まりや炎症をおこしやすく、耳が痛くなりやすい自覚がある場合は、抗ヒスタミン剤をあらかじめ(搭乗前日と当日)飲んでおいてもよいでしょう。

離陸・着陸時の前後約30分にあくびを繰り返す

離陸・着陸の急激な気圧変化の前にあくびや口を大きく開ける作業を繰り返したり、つばをのみこむ作業を繰り返してみましょう。

航空性中耳炎の発生を抑えてくれる上、もし発症した際もこれらの行動を繰り返すことによってすぐに痛みや違和感を解消することができます。

離陸・着陸の前後に耳栓をしておく

あらかじめ耳栓をしておくことで気圧の変化をダイレクトに感じることがなく、機内の騒音もカットすることで耳の疲労感も減少してくれ、航空性中耳炎の発生を防ぐことができます。

外耳道(鼓膜の外)の気圧の変化を緩やかにし耳痛を予防することを目的とした専用の耳栓も市販されているので、耳が痛くなりやすい人は試してみてもよいかもしれません。

その他の予防法

・アルコールは耳管周辺の粘膜を腫らし耳管を狭くさせるため、お酒を飲み過ぎない

・睡眠中はつばを飲み込む回数が減るため、機体の降下時は寝ずに起きておく

・ヘッドホンで音楽を聴く

航空性中耳炎が起こったときの対処法

機内で航空性中耳炎になってしまった時の対処法を知っておくと、いざ発症した時に焦らず対応することができます。予防法と重なる部分もあります。あわせて確認しておきましょう。

耳に違和感を感じたらあくび等を繰り返す

症状が出てしまった後でもあくびや口を大きく開ける作業を繰り返したり、つばをのみこむ作業、耳抜きは効果的です。軽い症状であれば何度か繰り返すうちに症状がなくなる場合が多いです。

飴やガムを口にする・または水分をとる

飴をなめたり、ガムを噛むことで唾液を飲み込むときに耳抜きがしやすくなり、耳のつまりが消えることがあります。離陸・着陸前後でもこまめに水分を飲んでおくと良いですね。

軽く鼻をつまんで耳抜きをする

鼻を無理のない程度に軽くつまんで、口を閉じて耳抜きをしてみましょう。苦しかったり、辛い場合は無理をせず、あくびやつばを飲み込む作業を繰り返しましょう。

耳抜きの方法には、鼻をつまんでつばを飲み込む「トインビー法」や、鼻をつまんで口を閉じたまま息を吐いて頬をふくらませ、鼻の奥に空気を送り込む「バルサルバ法」などがあります。

痛みが続く場合は病院へ!

鼓膜の内外の気圧差が大きくなりすぎると、鼓膜のひっぱられ方が強すぎるためにひどい痛みを感じ、中耳粘膜に炎症がおき、急性中耳炎の状態になる場合があります。

地上に降りても痛みや耳の聞こえにくさが続いた場合は耳鼻科を受診しましょう。

航空性内耳炎で耳鼻科を受診した人の中には、充血して赤くなった鼓膜が内側に凹んだままになっていたり、鼓膜が破れたり、鼓膜の奥に液(中耳粘膜の炎症からの分泌物)がたまっていたり(浸出性中耳炎)、圧力によって内耳のリンパ液が漏れる外リンパ漏という病状を引き起こしているケースもあります。

病院での治療は鎮痛消炎剤、抗菌剤の内服や、耳管から空気を入れる「通気療法」などを行います。

液がたまっている場合は鼓膜に小さな穴を開け、中の液を取ることもあります。

子どもの航空性中耳炎

子どもはよく耳の痛みを訴える印象があるかもしれませんが、実は子どもは大人と比べ耳管が太く短いので、鼓膜の内外の気圧調整はスムーズです。

アレルギー性鼻炎などの罹患率も子どもの方が低く、気圧の変化により耳が痛くなる確率は大人と比べ低いと言えます。

予防には、飛行機の降下の際に飴をなめさせてあげたり、飲み物を少しずつ与えるとよいでしょう。

乳児の場合は哺乳瓶やおしゃぶりをくわえさせると嚥下の回数が増え、予防に効果的です。

上空でぐっすり眠っている場合、そのまま着陸まで眠っていてくれれば……と考えるかもしれませんが、寝ているときは嚥下の回数が減るため耳が痛くなりやすく、痛みで起きてしまった赤ちゃんが火が付いたように泣き出すことも多くなっています。

飛行機の降下時に起きてミルクを飲んでくれるよう、授乳や寝かしつけるタイミングを調整しておくとよいでしょう。

それでも耳が痛くなってしまった時には、赤ちゃんは泣くことによって耳管を開き、耳に空気が通り痛くなくなれば泣き止みます。あまり心配する必要はありません。

飛行機の中で赤ちゃんが泣いてしまってもイライラせずに、ミルクを飲ませたり、優しくあやしながら耳の空気が抜けるまで待ってあげましょう。

おわりに:耳が痛くなりやすい人は一度病院へ

いろいろな対策法を試してみても効果がなく、飛行機に乗るたびに重い症状が出る人や、気圧の変化で耳が痛くなりやすく治りにくい人は、要注意。まれに上咽頭の腫瘍が原因となる場合もあるようです。

もともと耳管狭窄が起きていることが多く、アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎などの鼻疾患が原因となっている可能性が高いですが、稀に上咽頭の腫瘍が原因の場合もあるそうです。

一度耳鼻咽喉科で相談し、なぜ耳痛が起きやすいのか調べて貰うとよいかもしれません。