風邪や鼻炎などによる鼻水・鼻づまりはよくある症状ですが、鼻づまりと同時に鼻水から嫌なにおいを感じることがあります。
この記事では、鼻水がにおう原因やメカニズムについて解説します。
原因のほとんどは副鼻腔炎
鼻水に悪臭を感じる場合の多くは、副鼻腔炎によって鼻の周辺に化膿が起きていることが原因です。
副鼻腔炎は、風邪やアレルギー性鼻炎の透明な鼻水と異なり、ネバネバとした黄色い鼻水が出たり、進行すると黄緑色の鼻水が出ることもあります。
急性副鼻腔炎
急性副鼻腔炎は、風邪のウイルスなどによって起きた粘膜の炎症が、鼻の周囲にある副鼻腔と呼ばれる空洞に広がることで起こります。
初めはサラサラとしていた鼻水が徐々に黄色い粘り気のある鼻水に変わり、発熱や頭痛をともないます。
また、症状の広がり方によっては目と目の間や目の奥、歯に痛みが現れることもあります。
急性副鼻腔炎は、通常1ヶ月前後で快方に向かいます。
慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎は、ちくのう症とも呼ばれ、急性副鼻腔炎の状態からさらに細菌などの二次感染が加わり、粘度の高い鼻水や鼻づまりなどの症状が3ヶ月以上続きます。
慢性化した場合の主な原因はウイルスや細菌ではなく、化膿によるものです。
鼻水や鼻づまり、頭痛や頭の重さなどの症状があるほか、鼻水がにおうと感じたり、口臭が気になる場合もあります。
副鼻腔炎がもたらすさまざまな症状
副鼻腔炎は、炎症や化膿が起きている場所によって症状の出方も異なります。
鼻水や鼻づまりのほかには、どのような症状が出るのでしょうか。
頭痛・頭重
鼻づまりによって頭がモヤモヤしたり、思考力や集中力の低下が見られることがあります。
勉強や仕事など、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
顔面や歯の痛み
副鼻腔内に膿がたまると顔の神経が圧迫され、鼻や頬、目の周りに痛みを感じたり、虫歯ではないにも関わらず歯が痛んだりすることがあります。
食べ物の味がわからない
鼻粘膜の炎症によってにおいの分子が感知されにくくなり、嗅覚が鈍ることがあります。
これにより食べ物のにおいがわからなくなり、味がしないと感じることがあります。
咳や痰が出る
副鼻腔の炎症が喉に広がったり、鼻水が喉に垂れる「後鼻漏(こうびろう)」によって喉の奥がネバネバし、咳や痰が出ることも少なくありません。
副鼻腔炎の検査方法
副鼻腔炎の症状が疑われた場合、どのように検査するのでしょうか。
レントゲン検査
副鼻腔炎の検査には、頭部のレントゲンを撮るのが一般的です。
炎症がどこに起きているか、どれくらいの範囲かを調べることができます。
さらに詳しい情報を得るために、CTやMRI検査を行うこともあります。
内視鏡検査
内視鏡を使って直接鼻の中を覗く方法です。
粘膜の腫れの程度や、鼻水の量、鼻の中にポリープがあるかどうかなどを調べることができます。
細菌検査
鼻の穴や喉の奥の分泌物を細長い綿棒や吸引装置で取り出したり、鼻の穴の中から上顎洞(じょうがくどう)に針を刺して、その中に含まれる細菌の種類を調べる検査です。
副鼻腔炎の治療方法
長い間、副鼻腔炎は慢性化すると治らないものとされてきましたが、現代では医療の進歩によって治癒できるようになってきました。
副鼻腔炎の治療には、大きく分けて2つの治療方法があります。
保存療法
【抗生物質による治療】
急性副鼻腔炎をはじめ、重症化していない副鼻腔炎の場合には、少量のマクロライド系抗生物質を2〜3ヶ月服用することで約7割の症例が治癒しています。
マクロライド系の抗生物質には、細菌を殺しながら粘膜の繊毛機能を改善して自浄作用を高める効果があります。
【ネブライザー療法】
ネブライザー療法とは、抗生物質などの薬が副鼻腔まで届きやすくなるように細かい粒子にし、蒸気として鼻から吸う方法です。
手術療法
【ESS(内視鏡下副鼻腔手術)】
保存療法で改善がみられない場合や、何度も症状をぶり返す場合には手術を行います。
マイクロ・デブリッダーと呼ばれる小さな電気カミソリのような器具を使い、鼻の穴から手術を行います。
従来の手術と比べて術後の痛みが少なく、顔の腫れはほとんど出ません。入院期間も両側の場合で1〜3日と短く済みます。
また、術後治療はかさぶたや鼻水の除去、必要に応じて薬が処方されることもあります。
【内視鏡下鼻内整復術】
鼻の中には、左右の鼻を隔てる鼻中隔や中甲介、下甲介という棚状の組織があります。
しかし、鼻中隔が大きく湾曲していたり、本来一枚の板のようになっている中甲介の内部に空洞ができていると、鼻づまりの原因や副鼻腔炎が悪化する要因となります。
このようなケースには内視鏡下鼻内整復術を行い、鼻の中で骨構造を改善します。
顔に傷がついたり鼻の形が変わるようなことはなく、出血も少なく済みます。
【拡大前頭洞手術】
副鼻腔炎は、前頭洞というおでこの裏側にある部分に炎症を起こし、頭痛や眼痛の原因となることもあります。
前頭洞は、炎症が起きていても症状が現れないことも多く、耳鼻科ではなく脳ドッグや頭痛によって受診した脳神経外科などで指摘されることも少なくありません。
前頭洞は眼球や脳などデリケートな部位に囲まれていて、鼻腔とのパイプも細いために副鼻腔の中でも手術の難易度が高い部位だといわれています。
しかし、現在では医療機器の進歩により鼻内で手術をできるようになり、皮膚を切開する手術方法であった以前に比べて後遺症のリスクも減少しています。
おわりに
鼻水からいやなにおいを感じるときは、副鼻腔炎によって膿が溜まっていたり、炎症が起きているおそれがあります。
放っておくと不快なだけでなく、炎症が広がり鼻以外にも症状が現れることがあるため、副鼻腔炎が疑われる症状が出たときはなるべく早めに医療機関を受診しましょう。