秋から冬にかけて大流行を迎えるインフルエンザウイルス感染症。

インフルエンザウイルスに感染し、病院へ行くと薬物治療の一環として抗インフルエンザウイルス薬を処方されます。

 

抗インフルエンザ薬にはいくつか主流な物があり、特に「タミフル」、「リレンザ」などはテレビやインターネットでも耳にする薬でしょう。

 

タミフル・リレンザが主流だった中、2010年に「イナビル」という抗インフルエンザ薬が発売されました。イナビルは第一三共株式会社が創製・開発した、純国産で比較的新しい抗インフルエンザ薬です。

 

この記事ではイナビルの概要・使い方・予防・副作用などを詳しくご紹介します。

インフルエンザの流行時期に是非とも役立ててください。

 

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A型・B型インフルエンザウイルスに効果あり

イナビルはインフルエンザウイルス感染症の治療、または予防の目的で使われる抗インフルエンザウイルス薬です。

 

イナビルという呼び名は商品名で、正式名称は「ラニナミビル」です。

正式には「イナビル吸入粉末剤20mg」という名称で販売されている吸入粉末剤。薬自体は白色の粉末であり、薬の入った容器を口にくわえて吸入します。

 

イナビルが効果を発揮するウイルスは、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの二種類です。

治療時の用法・用量

イナビルの用法・用量は成人と子どもで異なります。

 

成人:ラニナミビルオクタン酸エステル40mgを単回吸入投与する。

10歳以上の小児:ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。

10歳未満の小児:ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。

 

治療に用いる場合、可能な限り速やかに投与を開始するのが望ましいとされています。インフルエンザウイルス感染症の発症から48時間を経過して投与した場合、薬の有効性を裏付けるデータは得られていないのが現状です。​

 

イナビルは保険薬局で薬を購入する際に薬剤師さんから説明を受けながらその場で吸入することも珍しいことではありません。

イナビルは単回投与ですので、その場で吸入してしまえばイナビルの投与はそれで終わりになります。

 

ポイント!

単回投与とは「1回投与したらおしまい」という意味合いです。1日1回という意味ではありません。

薬価

イナビルの価格 = 2139.9円

 

イナビルは処方薬ですので、保険薬局で購入することが可能です。保険薬局では薬の値段に加えて、調剤技術料や薬学管理料などの費用がかかります。

 

インフルエンザウイルスに感染し、保険適用を受けて保険薬局で薬を購入する場合、「薬の値段+調剤技術料+薬学管理料などの総合計金額の3割」が患者さんの負担する金額になります。

予防目的などで購入しようとすると保険の適用外になるため、上記の総合計が10割負担となってしまうのでご注意ください。

 

また、薬の価格は、2016年度が次の薬価改定期になります。

治療に用いる際の使い方

(A)薬剤の入った容器を軽く“トントン”と叩き、容器内の薬を容器の下に集めます。

   ↓

(B)ラベルのついている側を正面とし、容器の左下部に記載されている①を右側にスライドさせます。

その状態の容器の吸入口を口にくわえ、大きく吸い込みます。2~3秒息を止めた後、吸入口に息を吹きかけないようにゆっくりと息を吐いてください。

   ↓

(C)ラベルのついている側を正面とし、容器の右下部に記載されている②を左側へスライドさせます。

その状態の容器の吸入口を口にくわえ、大きく吸い込みます。2~3秒息を止めた後、吸入口に息を吹きかけないようにゆっくりと息を吐いてください。

   ↓

 

(D)スライドした状態になっている容器を元の状態に戻し、薬の吸い残しをなくすためにもう一度(A)~(C)の工程を行います。

   ↓

 

(E)10歳未満の患者さんはこれで終了です。10歳以上の患者さんは同じ手順で2容器目の吸入をします。

 

画像出典:第一三共株式会社 イナビル吸入方法

インフルエンザ予防としても使える!

実は、イナビルには治療だけではなく予防として投与する使い方があります!

 

治療の場合と予防の場合では、用法・用量・服用期間など、様々な面で違いがあります。

イナビルが有効なインフルエンザウイルス、A型インフルエンザウイルス・B型インフルエンザウイルスの感染予防に効果を発揮します。予防として投与するイナビルについてみていきましょう。

予防で使用する場合の用法・用量・服用期間

イナビルをインフルエンザの予防目的で使用する場合、治療の時とは用法・用量・服用期間が異なります。更に、予防目的の場合は使える人の対象についても制限があります。

 

対象:成人及び10歳以上の小児

用法・用量・服用期間:ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mg1日1回、 2日間吸入投与する。

 

10歳未満の小児に関しては、予防目的でイナビルを使用するのは推奨されていません。イナビルは比較的新しい薬のため、10歳未満の小児に対して臨床試験による安全性が確立されていないことが理由の一つにあげられます。

 

また、イナビルは20mg入りの容器でしか販売されていないため、10歳未満の小児が20mg投与するとなると、治療と同じ量の投与になってしまうという安全性上の理由があります。

 

以上のことから10歳未満の小児に対して抗インフルエンザ薬を使ってインフルエンザ感染を予防する場合、イナビル以外の薬が使われるケースがほとんどです。

予防目的の場合、保険適用額で購入できません

イナビルは処方薬なので、購入には医者の処方箋が必要です。

さらに、自分がインフルエンザウイルス感染者ではなく、予防目的で処方箋を貰うには家族や一緒に生活している人がインフルエンザになった場合という条件がつきます。

 

ではどうしたら予防目的でイナビルを購入出来るのか。

それは医者に相談することで処方箋を出して貰えるケースが多いです。

受験や旅行など、インフエンザにかかるわけにはいかない事情は人それぞれ。事情を医者に相談することで処方箋を貰えるケースがあります。

 

ただし、基本的には処方のための条件があるため、予防目的では処方箋を出さない病院や医師もいます。予防目的での処方が可能かどうか事前に病院側に確認することをお勧めします。

 

そして忘れてはいけないのが、イナビルを保険薬局で購入する場合、保険適用額で購入出来る条件はインフルエンザウイルスに感染し、症状の発症がみられる場合のみです。

 

例え家族にインフルエンザ患者がいたとしても、予防目的での購入は保険適用外になり、購入額は「薬の値段+薬剤技術料などの総合計額」を負担しなくてはいけません。ご注意ください。

 

予防の場合は、一度の予防投与に対して10日ほどしか効果が出ません。

インフルエンザにかかってはいけない日や期間に合わせて予防投与するように気をつけてください。

 

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さまざまな副作用や使用上の注意

イナビルの投与には様々な副作用が伴うケースがあります。

治療・予防のどちらの場合でも副作用はあらわれるので注意が必要になります。一般的に症状があらわれる可能性のある副作用として、下記のような症状があげられます。

イナビルの臨床試験や使用成績調査によると、治療目的で投与した時に生じる可能性のある主な副作用は、下痢、めまい、悪心、ALT(GPT)上昇、胃腸炎、蕁麻疹などが報告されています。

 

予防目的での投与の時には下痢や頭痛が主な副作用であると報告されています。

重篤な副作用が出たら即病院へ!

イナビル投与において副作用自体は誰しもにあらわれるものではありません。

しかし「こんな副作用が出たらそれはマズイ!」という副作用の症状があります。

 

その代表的なものがショック、アナフィラキシー様症状です。呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷汗等の異常が認められる場合があるので、観察を十分に行い、適切な処置を行うことが求められます。

 

また、イナビル以外の吸入剤・抗インフルエンザウイルス薬で、

 

・気管支攣縮

・呼吸困難

・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)

・中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)

・多形紅斑

 

などの副作用が報告されています。万が一、これらの症状が出たらただちに服用を中止し、病院での診察を受けてください。

高齢者や妊娠中の使用について

高齢者や糖尿病を含む慢性代謝性疾患・慢性・腎機能障害・慢性心疾患などの基礎疾患を有する患者、免疫低下状態の患者などは「使用経験が少ない」とイナビルの添付文書に記載があります。

 

上記のような患者がイナビルを投与する場合には、状態を十分に観察しながら医師と相談の上で投与を検討するようにしてください。

また、これまで妊婦中・授乳中の方へのイナビル投与は「出来るだけ控えるように」というのが主流でした。

しかし、近年、各学会からの発表により以下のような見解が出されています。

妊娠中の方

妊娠中にイナビルを服用しても、「流産・早産・胎児形態異常などの有害事象は増加しなかった」と、2014年の7月に「公益社団法人 日本産科婦人科学会」から発表がありました。

妊娠中のイナビル服用は妊娠予後に悪影響は見られなかったとし、妊婦さんのイナビル投与は可能とされています。

授乳中の方

2013年に行われた、第44回日本小児臨床薬理学会で授乳婦へのイナビル投与をした時の母乳中の薬物濃度測定についての発表がありました。

検査の結果、「イナビル吸入後1~46時間の母乳の薬物濃度を測定した所、全ての例において薬物濃度が検出限界未満であった」ことが発表れさ、授乳婦に対するイナビル投与の安全性は高いと示されました。

 

様々な見解はありますが、妊娠中や授乳中の場合は、かかりつけ医とよく相談の上、投与を検討するようにしてください。

抗インフルエンザ薬がもたらす異常行動のウソ・ホント

インフルエンザの流行時期になると、必ずといっていいほど「抗インフルエンザウイルス薬の服用による患者の異常行動が見られた」というニュースをテレビやインターネットなどで見るようになりました。

 

■突然走りだす

■飛び降りる

■会話中、突然会話が通うじなくなる

■おびえ、恐怖状態に陥る

■激しいうわごと・寝言

■わめく

■泣き止まない

 

など、様々な異常行動が報告されています。

最悪の場合、死亡事故にも繋がるケースも。

果たしてこれは本当に抗インフルエンザウィルス薬の服用が原因なのでしょうか?

抗インフルエンザ薬と異常行動の因果関係は?

厚生労働省が発表しているインフルエンザ罹患に伴う異常行動研究のデータによると、2012/2013年・2013/2014年共にイナビルを投与していないインフルエンザ患者の方が異常行動件数が多かったということが分かります。

 

これはイナビルに限った話ではなく、異常行動のニュースの際に話題にのぼるタミフルなどの抗インフルエンザウイルス薬にも似たような結果が出ました。

秋・冬にかけて流行する、皆さんにも身近で最も恐ろしい感染症が「インフルエンザウイルス感染症」です。
まずは感染しないようにしっかり予防することが第一。

それでもインフルエンザウイルスに感染してしまった場合、治療薬として抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。

その中でも代表的な薬の一つ、「タミフル(オセルタミビル)」



この記事では「

 

 

以上のようなデータから、国立感染症研究所研究員を中心としたインフルエンザ罹患に伴う異常行動研究チームからも、抗ウイルス薬の種類、使用の有無と異常行動については、特定の関係に限られるものではないと発表されています。

 

また近年、インフルエンザによる発熱からの脳の損傷が、異常行動の有力な原因の一つだと言われています。

おわりに

イナビルは抗インフルエンザ薬の中でも比較的新しい薬です。

投与方法も吸入だったり、基本的には1回で済むという特徴があります。

 

さらに、ここ2~3年の間にも安全性などの研究発表が多方面でされており、これから先まだまだ知り得る知識が多き薬だと言えます。

 

今年のインフルエンザ流行シーズン、イナビルの活躍に期待です!