インフルエンザ脳症は大人でも発症する?症状・原因・後遺症を解説

インフルエンザ脳症の症状・原因・後遺症・治療に関することから予防ができるかまで解説。大人でも発症するのか?幻覚を見るのはインフルエンザ脳症のせい?などの疑問も解決します。

インフルエンザ脳症とは

インフルエンザ脳症は、インフルエンザをきっかけとして生じる脳症です。

毎年数百人が発病する代表的なインフルエンザの合併症で、後遺症や生死に関わることもあります。

インフルエンザの流行の規模が大きいほど、インフルエンザ脳症も多発します。

インフルエンザ脳症を発症しやすい年齢

インフルエンザ脳症は主に5歳以下の小さな子ども、中でも1歳児が最も多く発症する傾向にあります。男女に発症の差はありません。

大人でも発症する?

子どもに発症が多いインフルエンザ脳症ですが、大人でも発症します。

国立感染症研究所の調査によるインフルエンザ脳症発生年齢別割合では、2015/2016年は報告があり、 10 歳未満の割合が多く70%を占めました。その中でも 5 歳未満の症例が 39.9%を占めており、過去3シーズンの中で最も多い割合でした。

20歳以上の成人でも10〜35%の発症報告があります。特に60歳以上の高齢者は割合が多く、持病がある方や免疫力の落ちている方なども発症しやすくなっています。

インフルエンザ脳症の症状

インフルエンザ脳症の症状は非常に早く現れることが特徴で、インフルエンザの発熱から数時間〜1日のうちに神経症状があらわれます。

主な症状はけいれん、意味不明な言動(異常行動)、意識障害などです。他にも、嘔吐や突然死、血液凝固障害、他臓器不全などがみられます。

熱性けいれんは0〜4歳に多く、5〜59歳では頭痛や嘔吐の症状が比較的多いという報告があります。

早期に発症に気づくためにも、主な症状の特徴を確認しておきましょう。

意識障害

意識障害は、インフルエンザ脳症の中でも最も高い頻度でみられる重要な神経障害です。

意識障害は程度によってレベル分けされていて、ゆさぶったり声をかけたり刺激しても全く起きない重度のものから、なんとなくボーっとしている軽度のものまであります。

起きているのか寝ているのかわからない状態であったり、起きているのに返事をしないだけだったり、なかなか判断が付きづらいかもしれません。

明らかに意識がない場合は、すぐに病院を受診しましょう。

けいれん

けいれんを起こすと筋肉がこわばりガクガクとした動きになります。1分ほどの短さから20分以上も長く続くものまでさまざまで、回数も1度で止まったり何回も繰り返したりします。

■熱性けいれんとの違い

熱性けいれんも乳幼児に起こりやすい病気ですが、良性の病気です。高熱に誘発されて起こる全身のけいれんで、大半は5分以内に自然と止まることが多く、後遺症などの心配もありません。

熱性けいれんとインフルエンザ脳症の見分けは大変難しいですが、下記のような症状がみられる場合はすぐに病院を受診しましょう。

・けいれんが15〜20分以上けいれんが止まらない
・けいれんがとまっても意識がはっきりしない
・けいれんの前後に異常な言動があった

異常行動

異常行動には個人差がありますが、以下のような行動を起こします。

・両親がわからない、いないはずの人がいると言う(人を正しく認識できない)
・自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものとを区別できない
・アニメのキャラクター・象・ライオンなどが見えるなど幻視・幻覚を訴える
・意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない
・おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情
・急に怒りだす、泣き出す、大声で歌いだす

子どもの場合、インフルエンザ脳症を発症していなくても高熱で異常行動を起こすことは珍しくなく、けいれんと同じく原因の見分けがつきにくいケースがあります。

また、抗インフルエンザ薬であるタミフルでも幻覚や妄想などインフルエンザ脳症と似たような症状が現れるおそれがあり、タミフルを使用した場合はインフルエンザ脳症によるものかタミフルによる副作用かが判断がつきにくい場合があります。

異常行動が長引くときや、けいれん・意識障害を起こしたときは病院を受診しましょう。

インフルエンザ脳症の死亡率と後遺症

死亡率

インフルエンザ脳症での死亡率は約30%と非常に重い病気であることが認識されていましたが、その後、ガイドラインの発表などにより病気への認知が広まり死亡率は8〜9%ほどに下がっています。

後遺症

インフルエンザ脳症による死亡率が下がったのに対し後遺症は25%の子どもにみられ、いまだに重い合併症であることに変わりはありません。

後遺症として残る精神障害としては、知的障害、てんかん、高次脳機能障害が多く、症状の種類や程度には個人差がでます。身体障害は残らないケースが多いですが、まれに四肢麻痺が残ることもあります。

いずれもリハビリを行い長く付き合っていく病気になります。

インフルエンザ脳症の原因

インフルエンザ脳症になる原因は、完全には明らかにされていません。

インフルエンザ脳症では、ウイルスは脳の中から発見されないにも関わらず、血液中の水分やさまざまな物質が血管の外に漏れて脳が腫れた状態になり、頭の中の圧力が高まることで脳の機能を低下させて意識障害が起こります。

インフルエンザによる高熱などへの免疫の過剰反応が原因という説が有力になっています。

解熱剤が原因になることも

さまざまな研究から、メフェム酸、ジクロフェナクナトリウムなどの解熱剤の成分が、インフルエンザ脳症の予後を悪化させるのではないかと疑われています。

また、アスピリン(アセチルサリチル酸)といったサリチル酸系の解熱剤もライ症候群との関係が示唆されています。

そのため、これらの成分が使用されている解熱剤はインフルエンザのときは使用しないように注意が必要です。また、アスピリンは15歳以下の子どもはインフルエンザの発症に関わらず使用できません。

インフルエンザの高熱には、アセトアミノフェンが成分の解熱剤が使われます。

アスピリンなどに比べると解熱作用は穏やかで効き目を感じられにくいこともありますが、発熱はウイルスと闘っている正常な反応です。無理やりすぐに熱を下げようとせずに、解熱剤を使用した後は安静にして様子を見ましょう。

インフルエンザ脳症の検査

インフルエンザ脳症が疑われたら、速やかに病院を受診しましょう。インフルエンザ脳症は症状の進行がとても早いので、迅速な処置が必要です。

問診・診察

病院では、まず最初に医師による注意深い診察と問診が行われます。

インフルエンザ脳症は、経過中あるいは回復期や死亡後に確定診断が下されることもあり、必ずしも発症後の早期に確定診断できるとは限らない難しい病気です。

インフルエンザの感染状況や来院前の症状、けいれんや意識障害の有無、家族内の症状など、可能な限り詳しく説明できるように来院前の状態を観察しておきましょう。

発症の程度によっては、診察と並行してすぐに気管支に管を入れて人工呼吸を行ったり、点滴のルートを確保することが行われます。

診察の後はさまざまな検査が行われます。

診察後の検査

◼︎血液検査
血液を採取して、血液細胞・血液凝固の状態・炎症反応などを調べます。

初期の段階では問題が見られないことも多いですが、症状が重症化すると血液が血管の中で固まりやすくなったり、肝臓や腎臓などの臓器の機能障害が起こったりします。

◼︎髄液検査
背中に針を刺して髄液を採取し、細胞の数や成分などを調べます。この検査ではインフルエンザ脳炎とインフルエンザ脳症の違いを判別します。

また、ウイルスの種類や他の細菌感染症の疑いを検査します。

◼︎頭部CT検査
脳の形を調べます。インフルエンザ脳症では脳浮腫が起きるため、必要に応じて頭部MRI検査や、脳血流SPECT検査が行われます。

◼︎脳波検査
意識障害やけいれんの度合いを計ります。

インフルエンザ脳症の治療

インフルエンザの治療では、症状によって治療法を選択します。

全般的な治療では、血管から水分や塩分、ブドウ糖などを補給して成分を整えます。脳の圧が高い場合は減圧剤、けいれんが続く場合は抗けいれん剤など、症状に合わせた薬を使用します。

呼吸が困難な場合は、気管にチューブを通すなど人工呼吸器を取り付ける場合もあります。インフルエンザウイルスへの対処としては、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を用います。

そのほか重度の症状には特殊な治療として、脳低体温療法、血漿亣換療法、シクロスポリン療法、アンチトロンビンⅢ大量療法などがありますが、一部では安全性や効果を表す報告がされていますが、明確に有効性を示す統計などはまだありません。

個人の状態に合わせて、経過を観察しながら治療法を選択していくことになります。

後遺症とリハビリテーション

インフルエンザ脳症が完治しても、子どもの約25%が後遺症を発症するといわれています。後遺症の程度には個人差があり、軽度から寝たきりになる重い状態までさまざまで、後遺症の症状も、知能低下や運動麻痺まで多岐に渡ります。

後遺症が残ったときは、障害の内容や程度に関わらずリハビリテーションを行っていきます。医師や理学療法士など、各専門分野の担当者があつまり個人の状態に合わせてプログラムを組んでいきます。

インフルエンザ脳症を予防するために

インフルエンザ脳症の発症を直接予防する対策は残念ながらまだありません。

インフルエンザ予防接種を受ける

インフルエンザ脳症の最大の予防法は、インフルエンザの予防接種を受けることです。

これまで予防接種を受けながら、インフルエンザ脳症と診断された例はありませんでした。予防接種を受けることで、そもそもインフルエンザにかかりにくくなります。

また、感染しても予防接種を受けていれば重症化を防ぐことにもつながります。1歳以上の幼児は積極的に予防接種を受けましょう。

ただし、インフルエンザワクチンの予防接種の重大な副反応に、まれではありますが「脳症・脳炎」が報告されています。小さな子どもでは特に注意が必要です。

予防接種を受けた後数日の間に、ぐったりしている、けいれんや意識障害(意識の喪失や呼びかけに反応しないなど)、ずっとグズっている、嘔吐、頭痛、行動や言動の異常などが見られた場合には病院を受診するようにしましょう。

予防接種にプラスの予防習慣を

予防接種は100%インフルエンザの感染を防ぐものではありません。

予防接種を受けたからといって安心せずに、日々できる予防対策も同時に行うことをおすすめします。

・外出時にはマスクを着用
・外出から戻った後の手洗いの徹底
・十分な栄養と休養をとる
・室内の加湿と換気

どれも身近で簡単にできることなので、インフルエンザの流行が始まる変えることから実践してみましょう。

インフルエンザの予防について詳しくは関連記事をごらんください。

おわりに

インフルエンザ脳症は診断が難しく、死亡率や後遺症の発生率も高く重度の病気です。いざという時に迅速な処置につなげるためにも、症状を覚えておきましょう。

子どもは特に自分で症状を訴えることが難しくなっています。インフルエンザを発症した時は、体調の程度や変化をしっかり観察してください。

何より大事なのは、まずはインフルエンザにかからないこと。予防接種やマスクの着用などで予防対策を徹底しましょう!

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