新型インフルエンザとは?ガイドラインから予防接種や治療を解説

新型インフルエンザと季節性インフルエンザの違いとは?ガイドラインをもとに、新型インフルエンザ対策や予防接種・特定接種についてわかりやすく解説します。治療に使用する薬についても掲載しています。

新型インフルエンザの基礎知識

新型インフルエンザとは、世界的大流行(パンデミック)を起こすおそれがあるA型インフルエンザウイルスが変異して引き起こす感染症のことです。

過去にかかったことがあるインフルエンザウイルスであれば体内に抗体を獲得している可能性がありますが、初めて感染するウイルスであるため体内の抗体などでは対処できないおそれがあります。

また、感染が広範囲に急速に広がるという特徴があります。

新型インフルエンザの症状・潜伏期間

残念ながら、新型インフルエンザの症状や潜伏期間に関しては未確定です。新たに生まれたインフルエンザウイルスの正体を突き止めるまでは、どういった症状がみられるのかはわかりません。

致死率についても未確定ですが、通常のインフルエンザと比べるとやや高くなる傾向にあります。通常のインフルエンザの致死率は0.1%以下であるのに対し、1918~1919年に発生したスペインインフルエンザは約2%、そして1957~1958年に発生したアジアインフルエンザは約0.5%となります。

季節性インフルエンザとの違いは?

新型インフルエンザと季節性インフルエンザの違いは、主に2つあります。ひとつは、感染の規模です。新型インフルエンザは、ほどんどの人が免疫を獲得していないので、爆発的に感染が広がるおそれがあります。

もうひとつの違いは、重症化するリスクの高さです。新型インフルエンザは通常のインフルエンザ以上に感染者が増えるため、肺炎のような合併症を起こす人も増えるおそれがあります。

季節性インフルエンザについては関連記事をごらんください。

新型インフルエンザ発生時の予防接種

新型インフルエンザが発生したときの予防接種では、通常と違う点が2つあります。

・ワクチンはパンデミックワクチンとプレパンデミックワクチンが用意されること
・特定の事業者を対象とした「特定接種」と、住民のための一般的な予防接種の2段階にわけて実施されること

パンデミックワクチンとプレパンデミックワクチン

パンデミックワクチンとプレパンデミックワクチンには、以下のような違いがあります。

パンデミックワクチン 新型インフルエンザの発生後に新型インフルエンザウイルスを基に製造されたワクチン
プレパンデミックワクチン 新型インフルエンザが発生する前の段階で、パンデミックを引き起こす可能性のあるウイルスを基に製造したワクチン
実際にパンデミックが起きた時にはウイルスが変異している可能性もあり、その時のウイルスに効果があるかどうかは不明

なお、日本ではプレパンデミックワクチンを製造するときに、A型インフルエンザにあたる「H5N1亜型」が用いられます。しかし、その有効性は不明です。

厚生労働省は、新型インフルエンザ発生から6か月以内に国内でパンデミックワクチンを製造することを目標にしています。

パンデミックワクチンができるまでの対策として、特定接種の対象者にプレパンデミックワクチンの接種が実施されます。

特定接種について

特定接種は、医療提供業務をはじめとした特定の登録事業者や新型インフルエンザ等対策の実施に携わる公務員に対して、先行して実施される予防接種のことです。

特定接種の登録対象となる業種などは4つのグループに分けられ、接種順位が決められています。なお、対象となるには業務継続計画(BCP)を作成していることが条件となります。

グループ① 新型インフルエンザなどの医療の従事者
緊急系医療の従事者
グループ② 新型インフルエンザ等対策の
実施に携わる公務員
グループ③ 介護・福祉事業所
同類含む指定公共機関型(医薬品・化粧品等卸売業など)
社会インフラ型(金融証券決済事業者など)
グループ④ 飲食料品卸売業・小売業
廃棄物処理業
その他の生活関連サービス業など

一般的な予防接種について

国が「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」をすると、一般的な予防接種も実施されるようになります。

なお、「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」とは、国民の健康や生活に多大な影響を及ぼす新型インフルエンザが国内で発生したことを認める宣言のことです。

接種順位は、新型インフルエンザが重症化しやすい人に重点を置きつつ、国の将来も考慮して政府対策本部が決定します。このほか、年齢ごとのインフルエンザの効果の程度も考慮されます。なお、接種対象者は4つのグループに分けられます。

1:インフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者 (救急隊員含む)
2:医学的ハイリスク者(基礎疾患を有する人、妊婦など)
3:小児(1歳~小学校低学年)、1歳未満の小児の保護者
4:小学校高学年、 中学生、 高校生、高齢者 (65歳以上)

※予防接種の優先順位は変更となる場合があります。

一般的な予防接種は集団接種が原則であり、会場などの情報が通知されたら、各自治体の方法にしたがって予約をします。

新型インフルエンザ等対策特別措置法とは?

新型インフルエンザが発生した場合、国は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づいて対策を実施します。国の方針を知ることができる「新型インフルエンザ等対策特別措置法」について知っておきましょう。

新型インフルエンザ等対策特別措置法が作られた背景

新型インフルエンザ等対策特別措置法は、2009年に発生した新型インフルエンザの経験を踏まえ、これまであった「新型インフルエンザ対策行動計画」を改定し、制定されました。

新型インフルエンザ等対策特別措置法の目的

新型インフルエンザ等対策特別措置法は、新型インフルエンザや全国へ急速に広がるおそれがある新感染症に対する対策を強化して、国民を守るための法律です。

新型インフルエンザの発生が認められると、地方公共団体へ感染を広げないための訓練を促したり、国民に正しい知識を届けたりといった対策が実施されます。

また、予防接種に関しては新型インフルエンザ等対策特別措置法第28条に基づき、特定接種が実施されることとなります。

ガイドラインが定める新型インフルエンザ対策

「新型インフルエンザ等対策ガイドライン」では、今後新型インフルエンザが発生した場合の対策を紹介しています。

新型インフルエンザ対策:基本編

ガイドラインが、新型インフルエンザ対策の基本として取り上げているポイントは4つです。

・マスク着用
・咳エチケット
・手洗い
・人ごみを避ける

マスクは不織布製のものを選び、1日1枚を目安に使い捨てるようにしましょう。

咳エチケットでは、咳、くしゃみをするときはティッシュで口と鼻を押さえるようにしましょう。周囲に人がいるときは、顔をそむけて1m以上離れてください。使用したティッシュはフタつきのゴミ箱にすぐ捨てましょう。

手洗いは外出後に必ず行いましょう。手を洗うときは石鹸を使って15秒以上かけてきれいにしてください。また、仕上げに60~80%の濃度のアルコール製剤で消毒しましょう。

いずれも通常のインフルエンザでいわれる対策と同じですが、こうした基本を守ることこそ感染予防には重要です。

新型インフルエンザ対策:家庭編

家庭内で行える新型インフルエンザ対策は、主に3つあります。

【2週間程度の食料品(米や保存食など)や生活必需品(消毒用アルコールや体温計、氷枕など)を備畜しておく】

新型インフルエンザが国内で発生した場合、物流に影響を及ぼすおそれがあることから、備蓄品があると良いとされています。

ただし、買い占めは控えるなど消費者としてのマナーを忘れないことも大切です。

【基礎疾患がある場合は定期検診を受け、こまめに主治医に相談する】

基礎疾患がある人は、新型インフルエンザが重症化するおそれがあります。そのため念入りに予防対策を行うほか、主治医に自分の体調をこまめに伝えるようにしましょう。

【家族が感染したときは、二次感染を防ぐよう心がける】

もしも家族が感染した場合は、看病後に手洗いや消毒を行いましょう。また、1日1回ほどドアノブやトイレの便座などを清掃・消毒してください。その際には、マスクと手袋を着用し、最後は必ず手洗いをしましょう。

新型インフルエンザ対策:職場編

多くの人が集まる職場だからこそ、心がけたい対策が4つあります。

【38℃以上の発熱、咳、全身倦怠感といった症状があれば出社しない】

【公共交通機関のラッシュの時間帯を避ける】

【症状がある人との接近は避け、接触したら必ず手洗いをする】

【職場を清掃・消毒する】

感染の疑いがある人が出社した場合は、使用した机やいす、周囲のものを清掃・消毒しましょう。

また、最低1日1回は職場を清掃・消毒してください。階段の手すりやエレベーターのスイッチなど、多くの人が触れる場所は特に清潔にしておきましょう。床も濡れたモップや雑巾で清掃してください。

清掃・消毒の際にはマスクと手袋を着用し、最後は必ず手洗いをしてください。ガイドラインでは、清掃・消毒した時間を提示し、職場全体で共有することを推奨しています。

新型インフルエンザで使用する薬

新型インフルエンザの場合でも、治療には通常のインフルエンザと同じ薬を使用します。

WHOが新型インフルエンザの治療に「ノイラミニダーゼ阻害薬」を推奨していることから、日本のガイドラインでもこの方針を採用しています。

ノイラミニダーゼ阻害薬とは、タミフルやリレンザといった抗インフルエンザ薬のことです。

日本を含む23か国が、小さな子どもから高齢者まで飲みやすい「タミフル」を中心にして備蓄しています。このほか日本では、タミフルが効果を発揮しなかったときのためにリレンザも備蓄しています。

さらに、イナビルやラピアクタといった薬も国内で製造販売が承認されたことから、薬の選択肢が増える傾向にあります。

市販薬の使用に注意

新型インフルエンザの症状は未確定なため、独断で市販薬を使用することは避けてください。

特に市販の解熱鎮痛薬を使用すると、合併症としてライ症候群などを起こす危険性が高くなります。市販の薬は自分で選ぶ前に、必ず薬剤師に相談するようにしましょう。新型インフルエンザが疑われる場合には早めに病院を受診してください。

おわりに

新型インフルエンザが発生したときは、情報収集も大切です。どんな症状が現れるのか明確になったら厚生労働省が発表するので、ホームページで必ず確認しましょう。

正しい情報を集めて的確な対策を行うことで、自分自身や家族、そして一緒に働く職場の人たちを感染から守ることにつながります。

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