インフルエンザは誰もが感染する危険性がある感染症です。特に妊娠中は、予防接種は受けられるのか、胎児への影響があるのかなど、不安なことがたくさん。

この記事では、気になる妊娠中のインフルエンザ予防と治療についての疑問を解消します!

インフルエンザ感染は胎児に影響なし

母親がインフルエンザにかかっても、インフルエンザウイルスそのものが胎児に影響することはほとんどありません。

しかし、妊娠していない人と比べると肺炎を併発しやすく、重症化しやすい傾向があることが明らかになっています。世界保健機構(WHO)では「妊娠28週以降の妊婦は特に重症化の危険が高い」としています。

妊婦はもともと、糖尿病をはじめとする代謝異常などの合併症を起こしやすいため、基礎疾患がある人と同じように重症化に注意が必要です。肺炎などの合併症や喘息持ちの妊婦は呼吸器の症状が悪化するおそれもあるため、インフルエンザに感染した場合はしっかりと休養を取りましょう。

インフルエンザの症状が与える影響

インフルエンザで起こる症状が軽度の場合は胎児に影響はありませんが、胎児の負担を少しでも減らすように早期の治療が大切になります。

【発熱】

インフルエンザで母体が高熱になると、羊水の温度もあがり胎児の負担が増えることで心拍数が上がります。高熱が直接胎児へ影響するわけではありませんが、40度以上の高熱が3日以上続くと胎児へ影響がでる可能性もあるので、早めの解熱が望ましいです。

【咳・くしゃみ】

咳やくしゃみが原因となり流産や早産が引き起こされることはありません。ただし、激しい咳やくしゃみでは、腹圧があがりお腹が張りやすくなります。そのため、通常よりも子宮が収縮しやすく、子宮口が開いて早産になる可能性が通常より高くなると指摘されています。

【下痢】

軽度の下痢は胎児に影響はありませんが、下痢症状が長引くと、腸の動きが刺激となり子宮が収縮してお腹の張りや早産につながるおそれもあります。

インフルエンザが疑われたらすぐに受診を

妊娠中にインフルエンザが疑われたら、まずはかかりつけの産婦人科に電話をしましょう。他の妊婦への感染を防ぐためにも、電話で医師の指示を仰いでください。

風邪と自己判断して受診のタイミングを誤ってしまうと、症状の重症化につながります。特に妊娠中は重症化しやすくなっているので、少しでも早く医師の診断を受けることが大切です。

なお、日本産婦人科学会では、他の妊婦への感染を防ぐため内科の受診を推奨しています。ただし、膣からの出血や破水、陣痛のような痛みがある場合は、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡してください。

妊娠中に抗インフルエンザ薬は使える?

妊婦のインフルエンザ治療に使われている代表的な抗インフルエンザ薬としてタミフルとリレンザの2種類があります。

2017年10月現在、厚生労働省と日本産婦人科学会によってタミフルとリレンザを使用することによる胎児への悪影響はほとんどないと報告されています。

国立成育医療研究センターの調査結果では以下のような報告があります。

妊娠初期にタミフルを服用した場合の赤ちゃんへの影響について、妊娠と薬情報センターと虎の門病院が調査した結果が世界に発信されました。タミフルを妊娠初期に服用したのち出産した86人の女性のうち、1人の女性から先天異常の赤ちゃんが生まれましたが、これは通常の発生率と比較して高くありませんでした。一般的にすべての妊娠において、先天異常は約3%の確率で起こると考えられています。
調査人数が少ないため、この調査結果だけから結論づけることはできませんが、先天異常をもたらすリスクは高くないものと思われます。

国立成育医療研究センター

これは一例であり、厚生労働省のホームページなどでは抗インフルエンザ薬による胎児への影響はないとしています。

インフルエンザが重症化することによって胎児に影響が出る危険性よりも、抗インフルエンザ薬を使用する有益性の方が高いことから、抗インフルエンザ薬を使用することをお勧めします。

妊婦などによく処方される抗インフルエンザ薬のタミフルとリレンザは、インフルエンザの症状が出始めてから48時間以内に使用することで重症化の防止がより期待できます。

しかし、症状が軽くなり始めたからといって独断で薬の使用を中断してしまうと、薬が効きにくいウイルスが体内で増えてしまいます。症状が再び悪化し、胎児に何らかの影響をもたらすおそれがあるので必ず処方された分は使い切りましょう。

タミフル

「オセルタミビルリン塩酸」が主成分の、飲み薬タイプの抗インフルエンザ薬です。血液中に移行する成分量が非常に少ないため、胎児に影響が出る可能性はほとんどありません。

リレンザ

「ザナミビル」が主成分の、粉薬タイプの抗インフルエンザ薬です。吸入器から薬を吸入して肺や気管支などに対して作用するため血液中に成分が入ることはほとんどなく、胎児への影響もほとんどありません。

タミフルやリレンザは感染予防にも効果あり

タミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬は、インフルエンザの感染予防にも効果があります。

卵アレルギーなどでワクチン接種ができない場合は、ワクチンの代わりに予防目的として抗インフルエンザ薬を使用することもあります。

ただし、予防効果は10日間であることや、自由診療扱いのため医療費が全額自己負担になるなどのデメリットもあるので、自身の状況に合わせて医師としっかり相談することをお勧めします。

抗インフルエンザ薬の予防投与については関連記事をごらんください。

インフルエンザによる流産や統合失調症・障がいの心配は?

インフルエンザによる妊婦・胎児へのリスクについて、さまざまな研究結果が発表されています。

海外の論文ではあまり良い影響がないという結果も発表されていますが、日本と海外では薬の製造・管理方法、防腐剤・構成成分の量なども異なるため全く同じ結果が出るとはいい切れません。

人種の違いなどもあるため、日本人が日本でワクチンを接種する場合は、厚生労働省や日本婦人科学会などの記述を参考にするのが良いでしょう。

また、流産や胎児の障がいはインフルエンザの感染に関係なく起こる可能性があります。

流産

インフルエンザウイルスが胎児に移行しないことや、インフルエンザワクチン・抗インフルエンザ薬も胎児への影響が少ないとされていることから、インフルエンザに感染することによる直接的な流産の危険性は、妊娠中どの時期の感染であっても非常に少ないと考えられます。

しかしインフルエンザが重症化することによって肺炎が併発したり、持病の喘息が悪化したりすることで体に負担がかかると、妊娠初期の場合は特に流産の可能性が高くなってしまいます。

インフルエンザワクチンや抗インフルエンザ薬には、インフルエンザの重症化をおさえる効果があるので、インフルエンザワクチンはなるべく接種し、インフルエンザのような症状が出た場合にはなるべく早く医療機関を受診し、抗インフルエンザ薬を使用しましょう。

統合失調症・身体障害

妊娠中のインフルエンザ感染による統合失調症や身体障害のリスクは、高くないものとされています。

ただしインフルエンザが重症化することで他の病気が併発すると胎児に何らかの異常をきたすおそれがあるため、インフルエンザ予防接種と抗インフルエンザ薬を活用することが大切です。

インフルエンザ予防接種は妊娠中でもできる!

インフルエンザの予防接種は妊娠中でも受けることが可能です。

日本で使用されているインフルエンザワクチンは、不活化ワクチンという安全性の高いワクチンです。

不活化ワクチンは、ウイルスを殺して毒性をなくし免疫をつけるのに必要な成分だけを残してワクチン化したものです。体内でウイルス感染が起こることはないため、妊娠中のどの時期に接種しても問題ありません。

日本産婦人科学会でも、 インフルエンザワクチンの妊婦に対する安全性と有効性が証明されているとの見解を示しています。

また、ワクチンを受けることによる有益性がインフルエンザに感染したときのリスクを上回ることから、世界保健機構(WHO)では妊婦のワクチン接種を推奨しています。

妊娠中のインフルエンザ予防接種については関連記事をごらんください。

妊娠中の予防接種は胎児にも免疫力がつく

胎児が形成される前の妊娠初期にインフルエンザワクチンを接種しても、奇形のおそれはないという研究結果が発表されています。

インフルエンザワクチンを打つことで、母体にできた抗体は胎盤を通して赤ちゃんにも送られます。母親からもらった免疫は生後6か月位まで続くため、母親のワクチン接種で産後直後の赤ちゃんの身も守ることができます。

防腐剤フリーのインフルエンザワクチンも

一般的なインフルエンザワクチンには、防腐剤として「チメロサール」という有機水銀に由来する成分が含まれています。

防腐剤を含んだインフルエンザワクチンに毒性はなく危険性は認められていません。

厚生労働省の見解では、防腐剤のチメロサールが含まれていても、インフルエンザワクチンの予防接種を行ったほうが有益であるとしています。

どうしても心配な方は、防腐剤フリーのワクチンを選択することも可能です。しかし、防腐剤フリーのワクチンは数量が限られていたり、使用するにあたってコストがかかるため、防腐剤が含まれているワクチンより割高になるケースがほとんどです。

妊婦や子どもはインフルエンザワクチンの接種が優先的に行われるので、防腐剤フリーのワクチンによる予防接種を希望する場合は、事前に医療機関に確認しましょう。

卵アレルギーがある人は注意

インフルエンザワクチンには、ごくわずかに卵(鶏卵)の成分が含まれています。ほとんどの場合は接種しても問題ないとされていますが、以前に卵アレルギーによって全身にアナフィラキシーなどの症状が出たことがある場合は接種できないおそれがあります。

卵アレルギーがある妊婦は予防接種の前に必ず医師に相談しましょう。

卵アレルギーの人のインフルエンザ予防接種については関連記事をごらんください。

おわりに

インフルエンザは毎年必ずといっていいほど流行します。

妊婦だけが注意するのではなく、家族や周囲の人が感染しないことも重要となってくるため、手洗いや部屋の湿度を保つこと、マスクの着用などを周囲の人々とともに実施していくことが大切です。

インフルエンザに感染してしまったとしても、正しい対処を行えば母子ともに安全に乗り切ることができます。まずはしっかりと休養をとることから始めましょう。