インフルエンザの解熱にアスピリンは使える?

インフルエンザの治療には、2通りの考え方があります。
ひとつは抗インフルエンザ薬を使ってインフルエンザウイルスの増殖そのものを抑える、というもの。
インフルエンザは症状が出てから48時間をピークにウイルスが急増するので、それまでに抗インフルエンザ薬を投与すればウイルスの増殖が抑えられ、症状が軽く、治りも早くなるのです。
病院で処方されるタミフル、リレンザ、イナビルなどがこれにあたります。

もうひとつの考え方は対症療法で、解熱鎮痛剤を使って高熱や筋肉痛、咳、鼻水など、つらい症状を緩和するというもの。
本来インフルエンザは、風邪などと同じように安静に過ごせば自然に治るものですが、体力のない小児や40度を超えるような高熱の場合は、体の衰弱を防ぐためにも解熱剤が使用されます。
このとき注意しなければならないのは解熱剤の選択です。
解熱剤の中には、インフルエンザの際に使用を控えなければならない薬があり、そのひとつがアスピリン(アセチルサリチル酸)です。

アスピリンの使用は日本小児神経学会でも注意喚起

アスピリンがなぜインフルエンザに悪影響を及ぼすのか、実はいまだに全てが解明されているわけではありません。ただしこれまでの数々の症例から、日本をはじめアメリカなど世界的にも「インフルエンザの解熱で、アスピリンの使用はNG」は共通認識となっています。

日本小児神経学会は、インフルエンザに対する解熱剤の使用にあたって、アスピリン(アセチルサリチル酸)やポンタール(メフェナム酸)、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)などは使用しないように注意喚起しています。

アスピリン(アセチルサリチル酸)やポンタール(メフェナム酸)、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)などはインフルエンザ脳症の予後の悪化やライ症候群の発症と関連があると疑われています。

アスピリンやジクロフェナクナトリウムとインフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群の関係

インフルエンザで解熱鎮痛剤を使用する際にとくに心配されているのが、インフルエンザ脳炎・脳症、ライ症候群との関係です。

インフルエンザ脳炎・脳症

インフルエンザ脳炎・脳症とは、インフルエンザによる高熱とともに意識障害や麻痺、嘔吐、精神障害が起きる病気です。
インフルエンザの発症から脳炎・脳症の発症まで平均わずか1.4日。気がついたらあっという間に悪化し、危険な状態に陥ることが特徴です。

インフルエンザ脳炎・脳症のはっきりとした原因はわかっていませんが、インフルエンザウイルスが血液の凝固作用を引き起こし、その結果、脳やさまざまな臓器に血栓ができたり血管が破綻して重篤な症状を引き起こすとされています。

関連記事:インフルエンザ脳症について解説!〜子どもの発症に要注意〜

ライ症候群

ライ症候群とは、インフルエンザや水痘などに感染した後に脂肪肝を合併して発症する急性脳症で、命にかかわる病気です。

正確な原因はいまだにわかっていませんが、アメリカなどでの症例報告から、ウイルス性疾患へのアスピリン投与の強い関連性が示され、とくに幼児から学童期に多く発症する傾向にあるということです。

この欧米におけるライ症候群とアスピリンの関係から、インフルエンザ脳炎・脳症についても解熱剤の関与が疑われた流れにつながります。

インフルエンザとアスピリンの医療現場の見解

実際に医療現場で、インフルエンザの患者にアスピリンを投与した際の症例として解熱剤と死亡についてわずかながらも関係が疑われる結果が得られたという報告があります。

しかし化学的な判断を下すには充分な情報とはいえないもので、インフルエンザにアスピリンを使用する危険性は完全に証明されたものではない、とされています。

ただ、万が一のリスクを排除するためにも、疑わしいものは避けるべきとして、子どもはもちろん、大人もインフルエンザの際にアスピリンの使用は避ける、という共通の認識につながっています。

参考:日本小児科学会

なお、アスピリンの添付文書にある「使用上の注意」の「重要な基本的注意」の中で、小児に対しては次のことが明記されています。

原則として15歳未満の水痘、インフルエンザの患者には投与しない
アスピリンを投与中の患者が水痘、インフルエンザを発症した場合には、投与を中断することを原則とする

アスピリンってどんな薬?効果効能と副作用について

アスピリンの効果

1.解熱・鎮痛
2.抗炎症
3.血栓・塞栓の形成抑制(抗血小板作用)

アスピリンは、体内での情報伝達物質で炎症や発熱作用をもつプロスタグランジンの合成を抑制。これにより痛みや発熱、炎症を鎮める作用を発揮します。
頭痛や歯痛などでアスピリンがよく使われるのは、この作用を利用したものです。
また血小板の作用に関係するトロンボキサンの作用も抑制し、血栓の形成を妨げることから、脳梗塞や虚血性疾患の予防でも用いられる薬です。

アスピリンの副作用

1.胃粘膜が荒れやすくなる
2.出血に注意
3.アレルギー

アスピリンは、炎症や発熱作用をもつプロスタグランジンの合成を抑制すると同時に、胃酸の分泌を制御する作用も抑制してしまいます。
これにより胃酸が出過ぎたり、胃粘膜が荒れやすくなるなど、胃腸障害の副作用が出現。空腹時の服用は避けてください。

また抗血小板作用によって出血しやすくなるため、脳や肺、消化管、眼底などの出血や血尿などに注意が必要です。

アスピリンの詳細はこちらをごらんください。
ミナカラおくすり辞典:アスピリン(ホエイ)

インフルエンザの解熱にアスピリンを含む市販薬の使用は避けよう

アスピリン(アセチルサリチル酸)が含まれている主な市販薬は、次のとおりです。

バファリンA
バファリン顆粒
バファリンプラスS
エキセドリンA錠
エキセドリンカプセル
ケロリン
ケロリン錠S
ケロリンチュアブル
ケロリンT
ケロリンA錠
バイエルアスピリン
ベネスロン 

例えばバファリンシリーズの中にもアスピリンが入っていないものがあるなど、薬の種類によって成分は違います。
購入時は必ず箱に明記されている成分名を確認し、わからないことがあったら気軽に医師や薬剤師に相談してみてください。

インフルエンザの解熱には、医師が処方した薬が一番です。
しかしながら、どうしても病院へ行くことができない場合は、市販薬でもアセトアミノフェンを成分としている、ノーシンやタイレノールなどの解熱鎮痛剤を選ぶようにしましょう。