インフルエンザとの戦いは、古代から始まっていた!
人類とインフルエンザウイルスとの戦いは長く、なんと古代にもその記録が残されています。昔の人は、インフルエンザ流行は星の巡りなどが原因と考えておりました。科学的に検証されるようになったのは、1900年代とつい最近のことなのです。
長きにわたり、インフルエンザは形を変え、世界中で大流行を起こしてきました。約100年前に起こったスペイン風邪や、2009年の新型インフルエンザもそのひとつです。
なぜ、こんなにも長い間インフルエンザは私たちの生活を脅かすような流行を繰り返すのでしょうか?その原因には、インフルエンザウイルスの増殖スピードと感染期間の長さが関係しているのです。まずは、インフルエンザ潜伏期間についてみていきましょう。
増殖スピードが速いインフルエンザは、潜伏期間が短い
一般に、インフルエンザの潜伏期間は1~2日とされています。長い場合は、5日ほど潜伏期間が続くこともありますが、その一方で16時間で発症するケースもあります。これは、ほかのウイルス感染症と比べて極めて短い潜伏期間です。
潜伏期間が短い理由は、インフルエンザウイルスの増殖スピードが速いことにあります。
例えば、たったひとつのインフルエンザウイルスが体内に侵入した場合でも、16時間後には1万個にまで増殖してしまうのです。
また、インフルエンザは発症(38℃を超える発熱を目安とします)の前日から、感染力を持ち始めるとされています。つまり潜伏期間中も、周囲にうつしてしまうおそれがあるのです。
しかし感染者自身が、潜伏期間中にインフルエンザの感染に気付くことは難しいです。多くの場合が、だたの風邪と判断し、ときには無理をする人もいるでしょう。こうした傾向が、さらに周囲に感染を広げる原因となります。
インフルエンザの潜伏期間では、全身倦怠感や筋肉痛、関節痛といった全身症状がみられるのが特徴です。体調に変化がみられたら軽視せず、安静に過ごし、早めに病院を受診しましょう。

インフルエンザ発症から48~72時間後に増殖のピークを迎える
潜伏期間から急激なスピードで増殖したインフルエンザウイルスは、48~72時間後に増殖のピークを迎えます。もちろん感染力も、ウイルスが増殖するこの期間がピークです。インフルエンザウイルスは非常に感染力が強いため、1人の患者から、3人の感染者が出るともいわれています。
その後、ウイルス増殖の低下とともに感染力も弱まっていきますが、感染期間は3~5日程度続きます。つまり、一度インフルエンザウイルスに感染してしまうと、7~10日間も感染期間が続くのです。
感染期間の終了の判断は、咳や発熱といった症状の緩和が目安になります。ただし、完全に症状が治まるまではマスクなどをして周囲に感染を広げないよう心がけることが大切です。
インフルエンザ流行中は、こんな場所に注意!
年代や性別を問わず感染するインフルエンザ。流行期間中は、あらゆる場所で感染に注意が必要ですが、特に気を付けたい場所があります。
まずは電車やバスといった、公共交通機関。原則として、インフルエンザに感染した場合は発熱が治まっても2日間は外出を控えることが推奨されています。しかし、中にはやむをえない事情で外出しなければならない人もいるでしょう。そのため多くの人が集まる公共交通機関では、特に注意が必要です。
同じ理由で、スーパーマーケットやコンビニエンスストアも気を付けましょう。一人暮らし感染者の場合、自分で食料やマスクなどを買わねばならず、無理をして外出するケースがみられます。

インフルエンザの症状とA型・B型・C型の特徴を知ろう
インフルエンザの代表的な症状といえば、38℃を超える急な発熱があります。これはインフルエンザウイルスが、急激に増殖しているためです。高熱が出た後も潜伏期間に引き続き、全身症状が多くみられます。具体的には頭痛や全身倦怠感、関節・筋肉痛などです。
そして、これらの症状の少し後に喉の痛みや咳、痰、鼻水、鼻づまりがあらわれます。すべての症状が治まるまでは10日間前後かかるとされています。
こうした傾向に加えて、インフルエンザには種類ごとの特徴があります。
≪インフルエンザA型、B型、C型それぞれの特徴≫
■インフルエンザA型の特徴
変異を繰り返すため、まれに「新型」として大流行することがある。
症状は、喉や鼻といった呼吸器系が多い。
■インフルエンザB型の特徴
新型のような大流行は起こりにくく、全体的な症状はA型より軽いものの、長引く傾向がある。腹痛や下痢といった消化器系に症状が強くあらわれることが特徴。
■インフルエンザC型の特徴
5歳以下の幼児を中心に、季節を問わず感染するが、症状は全体的に軽い傾向。
鼻に症状があらわれることが多く、鼻風邪と間違えることも。
子どもや高齢者に多いインフルエンザの合併症
インフルエンザが重症化することで合併症を招くことがあり、特に子どもや高齢者は注意が必要です。子どもに多くみられる合併症は、インフルエンザ脳症やライ症候群。いずれも原因は不明ですが、アスピリン系の解熱剤など誤った薬の使用が重症化を招く要因ともされています。解熱剤使用の際は、医師や薬局できちんと確認することが大切です。
高齢者に多くみられる合併症は、肺炎。
インフルエンザで死亡する原因の9割を占めるともされています。
肺炎は発見が難しいため、インフルエンザ感染の段階で早めに治療することが大切です。48時間以内には病院を受診しましょう。そのほか、インフルエンザでみられる合併症は以下の通りです。
- 中耳炎・・・耳の奥(内耳)に細菌が入り込むことで発症
- 気管支炎・・・痰がからむ咳が特徴
- 熱性けいれん・・・発熱時に起こる全身性のけいれん
- 副鼻腔炎・・・頭痛、目の奥の痛みなど
インフルエンザの予防は免疫力にかかっている!
インフルエンザには、特効薬やウイルスの侵入を完全に予防する方法はありません。
インフルエンザに感染しないためには、私たちの体内にある免疫力が重要になります。
最も有効なのは、インフルエンザワクチンです。インフルエンザワクチンには、体内の免疫力を助ける効果が期待されています。2015年からは、これまで以上に多くのウイルスに対応した「4価ワクチン」というものが導入されています。なお、子どもや高齢者の場合は費用の一部が助成されることがほとんどです。
生活習慣を振り返って、インフルエンザ予防を!
免疫力を高めるためには、毎日の生活習慣を振り返ることも大切です。
例えば食生活では、ビタミンをきちんと摂取していますか?ビタミンDには、免疫力を助ける働きがあります。このほかビタミンCには白血球をサポートする働きがあり、ビタミンAは鼻や喉の粘膜の形成を助ける栄養素です。意識して摂るようにしましょう。
また睡眠中に免疫力を高めるホルモンが分泌されるため、寝不足は免疫力低下を招きます。
疲労を溜めこまないためにも、睡眠時間はきちんと確保しましょう。
また、インフルエンザウイルスはのどや鼻から侵入します。
インフルエンザ流行期はこれまで以上にこまめな手洗い、うがいを心がけてください。
さらにマスクによる予防を行えば、より効果的です。
家族がインフルエンザに感染したら、環境整備と経過観察を
家族がインフルエンザに感染した場合は、室内の環境を整えてあげましょう。インフルエンザウイルスは、暖かくて湿度が高い場所が苦手です。室温は18~20℃、湿度は50~60%を目安に調節しましょう。また、1時間に3回ほど喚起を行ってウイルスの滞留を防いでください。
さらに感染者の症状に変化がないか、経過観察も行いましょう。特に発熱や下痢による脱水症状には注意してください。唇の渇きや尿量の減少がみられたら、脱水症状の可能性があります。
このほか呼吸が苦しそうであったり、けいれんが起こっていないか、大人の場合は3日以上発熱が続いていないか注意深く観察しましょう。これらの症状が目立つ場合は、早めに医師に相談してくださいね。