インフルエンザ脳炎とは?

インフルエンザの合併症には、肺炎、中耳炎、関節炎などがありますが、その中でも深刻なのがインフルエンザ脳症・脳炎です。

インフルエンザ脳炎は、重症化すると死に至ることや、重い後遺症を残すことがあります。

5歳以下、特に1歳〜3歳の子どもに発症しやすく、多くの場合はインフルエンザを発症してから1〜2日の間で脳炎の症状があらわれます。

インフルエンザ脳炎と脳症の違い

脳炎と脳症の症状は似ていますが、脳炎より脳症の方がより重症な疾患であるとされています。ただし、インフルエンザ脳炎と脳症を症状などから識別することは、厳密には難しいとされています。

一般的には脳内に直接ウイルスが侵入し炎症を起こす状態を脳炎といい、脳内にウイルスは検出されず、過剰な免疫反応が見られる場合に脳症と診断されます。

インフルエンザ脳症の原因は明確にはわかっていません。しかし、ウイルスに対する免疫の反応が高まりすぎて、本来の免疫の反応を果たさなくなってしまうことが原因とされています。本来免疫とは、ウイルスにだけ攻撃するものですが、脳や体のあらゆる器官や機能まで攻撃してしまう状態になることが脳症を引き起こすのではないかと考えられています。

インフルエンザ脳炎の症状

インフルエンザ脳炎・脳症では、意識障害・異常行動・痙攣などの症状が起こります。次のような症状が見られる場合は、すぐに医師の診断を受けてください。

意識障害

目が合わない、痛みに反応しない、朦朧としているというような、意識障害の症状がみられます。

インフルエンザ脳炎・脳症の診断においては、意識障害はもっとも重要な神経症状です。

異常行動

異常行動が連続または断続的に1時間以上続く、または意識の状態が悪いか明らかに悪化している場合、インフルエンザ脳炎・脳症が疑われます。

異常行動の例には、次のようなものがあります。

・人を正しく認識できない
・食べ物とそうでないものが区別できない
・幻視・幻覚的な訴えをする
・ろれつが回らず、意味不明な言葉を発する
・おびえや恐怖感を訴える
・急に怒ったり、泣き出したり、歌い出したりする

インフルエンザを発症して普段と違う行動がみられたら、医師の診断を受けましょう。

痙攣

インフルエンザ脳炎の症状のひとつとして痙攣があげられます。

インフルエンザの高熱で痙攣が起こることは珍しいことではなく、痙攣を起こしたからといってインフルエンザ脳炎であるとは限りません。

ただし、意識障害や異常行動をともなう場合は、インフルエンザ脳炎を発症している危険性があります。

インフルエンザ脳炎は大人も発症する?

インフルエンザ脳炎は、特に5歳以下の子どもに発症しやすい病気とされていますが、大人であっても発症することはあります。

20歳以上の発症例は子どもの発症例よりも少ないものの、重症度においては決して軽視はできないと考えられています。

インフルエンザ脳炎の症状としては、子どもと同じように意識障害や異常行動、痙攣などがみられます。

子どもの病気だと油断はせずに、大人であってもインフルエンザ脳炎の症状がみられたり、いつもと様子が違う場合にはすぐに医療機関を受診しましょう。

インフルエンザ脳炎と解熱剤との関連性は?

インフルエンザ脳炎・脳症が起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、解熱鎮痛剤の成分の中でも、非ステロイド系解熱鎮痛剤とインフルエンザ脳炎・脳症との関連性が指摘されています。

非ステロイド系の解熱鎮痛剤を使用しなくてもインフルエンザ脳炎・脳症を発症するため、非ステロイド系解熱鎮痛剤が脳炎・脳症を引き起こしていることは証明されていませんが、重症化に関与している可能性があります。

インフルエンザ脳炎・脳症を発症している人は、アスピリンなどのサリチル酸系、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸の解熱鎮痛剤の使用が禁忌とされています。また、発症していなくても15歳未満の子どもへの使用は避けることとなっています。

インフルエンザの時の解熱鎮痛剤は、カロナールやアンピパ座薬などのアセトアミノフェンの薬の使用が推奨されています。

アスピリンなどの成分は市販の風邪薬にも含まれているため、自己判断で市販薬は使用せず、病院で処方された薬を使用してください。

インフルエンザ脳炎の治療

インフルエンザ脳炎の症状が悪化すると、急激に自発呼吸が難しくなったり、肺出血や腹腔内出血を起こし、最悪の場合、心肺停止にいたる危険性もあります。少しでも早く医師の診断を受け、早期治療を行いましょう。

インフルエンザ脳炎の治療には、痙攣のコントロール、呼吸や循環器の管理、脳圧の軽減などの対症療法がとられます。また、抗インフルエンザ薬を使用し、インフルエンザウイルスの増殖を抑えます。

インフルエンザ脳炎の後遺症

インフルエンザ脳炎や脳症の重症度によっては幅があるので一概には言えませんが、次のような身体障害や精神障害などの後遺症が残ることもあります。

・身体障害…四肢麻痺、両麻痺、片麻痺
・精神障害…知的障害、てんかん、高次脳機能障害(視覚認知障害、記憶障害、注意集中障害、感情コントロール不良など)

 リハビリテーションの種類 

後遺症が残ってしまった場合には、医師や理学療法士などの指導のもと、医療機関をはじめさまざまな専門職の方々と連携をとりながら、回復に向けてリハビリテーションを行います。

医師 医療検査やてんかん治療など
理学療法士 運動訓練など
作業療法士 動作訓練や感覚刺激など
言語聴覚士 コミュニケーション訓練など
臨床心理士 知的機能訓練など
ソーシャルワーカー 在宅生活に向けての支援など

インフルエンザ脳炎の予防策

インフルエンザ脳炎は症状が急激に進むことが多く、どれだけ早く対応しても症状の悪化を防ぐことが難しい場合もあります。いつもと様子がおかしいと感じたら、躊躇せずに病院に連絡したり、救急車を呼んで指示を受けましょう。

また、インフルエンザを発症した場合、子どもだけではなく大人もインフルエンザ脳炎にかかる可能性があるということを認識しておく必要があります。

インフルエンザ脳炎に対する一番の対策は、発症を予防することです。重症化すると命に関わる危険な病気なので、予防策をしっかりと抑えておきましょう。

インフルエンザを予防する

インフルエンザ脳炎はインフルエンザウイルスが引き金になり起こる病気なので、一番確実な予防策はインフルエンザにかからないことです。

インフルエンザが流行するシーズンの前にはインフルエンザの予防接種を受け、感染を予防しましょう。インフルエンザワクチンは感染を防ぐことはできませんが、発症と重症化を防ぐ一定の効果が認められています。

アレルギーなどの理由で予防接種を受けられない場合には、一緒に生活している人など、周りの人がワクチンを接種することも大切です。特に小さな子どもがいる家庭では、子どもだけではなく周りの大人も予防接種を受けましょう。

また、インフルエンザの感染予防策として、普段から手洗いを習慣にしてください。インフルエンザの流行シーズンにはマスクをして出かけたり、人混みに近づかないなどの対策も必要です。

インフルエンザを発症したら病院を受診

インフルエンザ脳炎を予防するためにも、インフルエンザの症状が現れたら迅速に対処しましょう。

ただし、症状が現れたからといってすぐに検査を受けてしまうと、インフルエンザの発見が遅れる場合があります。症状が出てから12時間以内の検査では、ウイルスに感染しているにも関わらず陰性反応が出ることがあるからです。

そのため、最初の検査では陰性反応が出たのに、後から症状がひどくなり、もう一度検査をしたら陽性反応が出たというケースもあります。インフルエンザの症状が現れたら、最低でも12時間以上経ってから病院で検査を受けましょう。

タミフル・イナビル・リレンザなどの抗インフルエンザ薬にはインフルエンザウイルスの増殖をおさえる働きがあるため、インフルエンザ脳炎を発症するリスクを下げることができます。ただし、抗インフルエンザ薬は発症してから48時間以内の使用が効果的です。

治療を遅らせないためにも、インフルエンザの発症の疑いがある場合は医療機関を受診してください。

インフルエンザで病院を受診するタイミングについては関連記事をごらんください。

おわりに

インフルエンザ脳炎は子どもが発症しやすい病気ではありますが、大人でも発症する可能性があり、重症化すると死にいたる危険性のある病気です。

日頃からインフルエンザへの予防策を怠らないことが、インフルエンザ脳炎の一番の予防策です。インフルエンザの流行シーズンが始まる前に、インフルエンザ予防対策を取りましょう。