インフルエンザは例年12月から3月にかけて全国的に流行する感染症です。インフルエンザの基礎情報から対策までインフルエンザの疑問を全て解決します!
インフルエンザの症状
インフルエンザの初期症状
インフルエンザの初期症状には主に3つの特徴があります。風邪の初期症状と違うのは、急激な高熱と全身の痛みや倦怠感などが強く現れることです。
・38℃~40℃の急激な高熱
・全身倦怠感
・頭痛・筋肉痛・関節痛
これらの症状と同時か、少し遅れて喉の痛みや鼻水などの風邪に似た呼吸器症状が発症します。
インフルエンザの症状について詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザと風邪の違い
インフルエンザは感染力が強いため、風邪との違いを把握して早めに対処することが大切です。
インフルエンザ | 風邪 | |
症状 | 突然の高熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・咳・喉の痛み・鼻水など | 喉の痛み・鼻水・鼻づまり・くしゃみ・咳・発熱など |
特徴 | 倦怠感・食欲不振などの強い全身症状 | 鼻・喉など局所的な症状 |
熱 | 38〜40℃ | 37〜38℃ |
発症 | 急激 | 比較的ゆるやか |
感染力 | 強い | 弱い |
原因 | インフルエンザウイルス | ライノウイルス・アデナウイルスなど |
インフルエンザウイルスの種類:A型・B型・C型の違い
インフルエンザは全身症状が風邪よりも激しく出ることが特徴です。また、A型・B型・C型のウイルスの種類の違いによって、症状の現れ方の強さや時期が異なります。
インフルエンザA型
インフルエンザA型は、通常11月から全国的に感染がみられ、1~3月頃に流行のピークを迎えます。その後、4~5月にかけて減少していきます。ただし、近年は秋からの流行が始まるなど、流行の時期が早まる傾向があります。
インフルエンザA型の中でも複数の種類があり、2017年現在では144パターンのウイルスが発見されています。近年は主にA香港型(H3N2)とA型(H1N1)pdm09の2種類が流行しています。
人間は特定のウイルスに感染して回復すると、そのウイルスに対して免疫ができ、2度と同じウイルスに感染することはありません。
しかし、A型ウイルスは毎年小さな変異を繰り返しているため、インフルエンザA型に感染し免疫ができた人も微妙に変異した別のA型ウイルスに感染することがあります。
◼︎インフルエンザA型の症状の特徴
インフルエンザA型は感染力と増殖力が強いため、感染から発症までの期間が短く、急激に症状が進行します。初期症状から激しい全身症状が出ることも特徴です。
インフルエンザA型は、高熱、悪寒、筋肉痛・関節痛の全身症状に加えて、咳などの呼吸器症状が強くでる傾向があります。風邪よりも強い喉の痛みやひどい鼻づまりをともないます。
インフルエンザA香港型
インフルエンザウイルスの種類の中でも、インフルエンザA香港型は最も流行しやすい型のひとつです。
インフルエンザA香港型は「香港かぜ」とも呼ばれます。1968年6月に香港での爆発的な流行を筆頭に、8月に台湾・シンガポールなどの東南アジア、9月に日本・オーストラリア、12月にアメリカで流行のピークを迎えました。
当時、香港では6週間で50万人が香港かぜに感染し、全世界で56,000人以上の死者が出たとされています。日本では、14万人が感染し死亡者は2,000人に上りました。
なお2017/2018シーズンも、ウイルスのタイプがH3N2型のインフルエンザA香港型が流行すると予測されており、予防接種のワクチンに組み込まれています。
インフルエンザB型
インフルエンザB型は、A型の流行が終わった直後の2~3月にかけての春先に流行するケースが多くみられます。
毎年流行するA型と異なり、B型はこれまで2年に1度のサイクルで流行を繰り返していました。しかし近年は毎年流行がみられ、流行時期も早まっている傾向があります。
インフルエンザB型のウイルスは、2種類にわけることができます。
3分の2が「山形型」、3分の1が「ビクトリア型」と呼ばれるウイルスです。それぞれ遺伝子配合が異なるため、予防接種のワクチンに対する免疫も異なります。そのため同時に2つの型が流行すれば1シーズンに2回、インフルエンザB型のそれぞれの型に感染する可能性もあります。
◼︎インフルエンザB型の症状の特徴
基本的な症状は、A型とほとんど変わりません。インフルエンザの初期症状は、発熱、悪寒や筋肉痛・関節痛の全身症状が先に出るのが特徴ですが、B型の場合は次のような特徴があります。
・下痢などの消化器症状が強く出る傾向がある
・38~40℃の高熱が出ないケースがある
インフルエンザC型
インフルエンザC型は、5歳までの幼児が感染しやすく、ほとんどの子どもが一度はかかるといわれています。7歳頃までには抗体を獲得することが多くなりますが、まれに大人の感染もみられます。
インフルエンザA型・B型と異なり、C型が最も多く発症するのは1~6月です。ただし、A型とB型が最も流行する冬場の時期にも感染はみられ、ほぼ年間を通して感染することから「通年制インフルエンザ」ともいわれています。
基本的に大きな流行を起こすことはなく、ほぼ1年おきに小規模ながら全国で流行がみられます。
◼︎インフルエンザC型の症状
ウイルスに感染後1~3日の潜伏期間を経て、主に大量の鼻水、鼻づまり、発熱(微熱)、くしゃみ、のどの痛み、咳などの症状が出ます。
鼻風邪と似たような症状で、ほとんどが軽症です。症状が出ないこともあり、多くは病院に行かずに自然に治ります。
インフルエンザC型は比較的熱も低く、全身症状もほとんど見られません。
インフルエンザの種類について詳しくは関連記事をごらんください。
季節性インフルエンザと新型インフルエンザ
季節性インフルエンザとは?
インフルエンザは、毎年冬場にかけて全国的に大流行を繰り返すため、新型インフルエンザと区別して「季節性インフルエンザ」と呼ばれています。
一般的に「インフルエンザ」と呼ばれるものは、季節性インフルエンザに該当します。季節性インフルエンザの原因であるインフルエンザウイルスには、A型・B型があります。
季節性インフルエンザは、ウイルスが小さな変異を起こしながら、毎年世界中で流行します。
新型インフルエンザとは?
新型インフルエンザとは、A型インフルエンザウイルスが変異して引き起こす感染症のことです。、A型インフルエンザウイルスは、体内で増殖する際に遺伝子情報を担うRNA配列の複製ミスが起こりやすく、これにより突然変異を起こしやすくなっています。
過去にかかったことがあるインフルエンザウイルスであれば体内に抗体を獲得している可能性がありますが、新型インフルエンザは多くの人が体内に抗体を持っていないため、世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性があります。
■新型インフルエンザはいつ流行する?
季節性インフルエンザと違い毎年流行するわけではなく、10~40年周期で発生します。新型インフルエンザが、いつ発生するのか予測することはできません。
しかし、過去の発生周期や近年の鳥インフルエンザの流行などから、近い将来、新型インフルエンザが新たなパンデミックを引き起こす確率は高いと予想されています。
■新型インフルエンザの症状
新たに生まれたインフルエンザウイルスの正体を突き止めるまでは、どういった症状がみられるのかはわかりません。
季節性インフルエンザと比較すると重症化するリスクが高くなることが考えられます。新型インフルエンザは通常のインフルエンザ以上に感染者が増えるため、肺炎のような合併症を起こす危険性が高まります。
インフルエンザの感染経路
インフルエンザウイルスの感染経路には、大きくわけて「飛沫感染」と「接触感染」があります。
飛沫感染
インフルエンザウイルスに感染した人が会話や咳・くしゃみをすると、ウイルスを含んだ飛沫が飛び散ります。ウイルスが含まれた飛沫を口や鼻から吸い込むことで、ウイルスが体内に侵入して感染します。
感染者から1〜1.5mの近距離で感染が起こりやすく、飛沫の数は1回のくしゃみで約200万個、咳で約10万個といわれています。
飛沫感染を防ぐためにもマスクの着用が欠かせません。
接触感染
インフルエンザウイルスに感染した人が、咳・くしゃみ・鼻水などウイルスが含まれた飛沫がついた手でドアノブやスイッチなどを触り、触れた部分にインフルエンザウイルスが付着します。ウイルスが付着した場所を他の人が触れて、その手で口や鼻、目を触ることでウイルスに感染します。
さまざまな場所にウイルスが付着しているおそれがあり、どこにでも感染の危険性が潜んでいます。
接触感染を防ぐには、食事前や帰宅時などこまめな手洗いが大変重要になります。
インフルエンザ予防接種
インフルエンザ予防接種はインフルエンザが流行のピークをむかえる前に受けることが大切です。
インフルエンザ予防接種の効果
インフルエンザ予防接種はインフルエンザウイルスの感染を防ぐわけではありませんが、体内にウイルスに対する抗体を作っておくことで、感染しても発症をおさえたり症状を軽くすることができます。
厚生労働省の資料によると、ワクチン株とその年の流行株が一致した場合、インフルエンザの予防接種の有効率は、健康な成人では70〜90%であるとしています。
インフルエンザ予防接種の時期
インフルエンザはその年によって流行入りする時期が異なり、11月下旬に流行入りが発表された年もあります。
予防接種の効果が現れるまでには約2週間かかるため、インフルエンザの流行が始まる前の10月〜11月中の予防接種が望ましいです。遅くても12月中には予防接種を受けましょう。
ただし、12月を過ぎてしまった場合でも予防接種の効果がなくなるわけではないので、必要に応じて予防接種を受けてください。
インフルエンザ予防接種の料金
インフルエンザ予防接種は、値段を各医療機関で設定できるため一律料金ではありませんが、多くの医療機関が3,000円台に設定しています。
予防接種は予防目的の医療行為なので、健康保険や医療費控除は適用されません。基本的には全額自己負担になります。
ただし、インフルエンザにかかることで持病や治療中の疾患が悪化するおそれがあると医師が判断して予防接種を行う場合は、医療費控除の対象となることもあります。状況によって違うので、詳しくは担当の医師に確認しましょう。
■補助金は出る?
地域によっては13歳未満の子どもや65歳の高齢者に補助金を出している自治体もあります。
また、加入している保険組合が補助金を出したり、会社で費用を一部負担する企業もあるため、予防接種を受ける前には加入している保険組合や自治体などに確認すると良いでしょう。
自治体によっても、13歳未満や65歳以上の方に対してなど対象が限定されていることが多いですが、補助金が出る場合があります。
予防接種の予約をする前に、自分が加入している保険組合や自治体へ問い合わせることをお勧めします。
■13歳未満は2回
13歳未満の子どもは2回接種が推奨されているため、2回分の料金がかかります。しかし、病院によっては2回目を1回目よりも安く料金設定している場合もあります。
インフルエンザ予防接種の時期や料金について詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザ予防接種の副反応
インフルエンザ予防接種はウイルスなどの病原体を身体にいれることで抗体をつくるため、予防接種後には体の自然な反応として副反応が現れる場合があります。
副反応とは、ワクチン接種の目的である「免疫をつくること」以外に起きる腫れや赤みなどの反応のことを指します。
インフルエンザ予防接種の副反応は、接種部位の周辺に出るものと全身症状として現れるものがあります。
■接種部位周辺の主な副反応
軽度の副反応として、接種部位の周辺に以下のような副反応がみられることがあります。
・腫れ、かゆみ、膨張
・発赤(肌に赤みが出る)
・疼痛(うずくような痛み)
・接種した側の腕や腕のしびれ……など
■全身症状としてみられる主な副反応
接種部位の周辺以外に副反応が現れるケースもあります。その場合、以下の症状が多くみられます。
・発熱、頭痛、倦怠感
・吐き気、嘔吐、下痢、めまい……など
ほかにも、まれにアナフィラキシーなどの重篤な副反応が現れるおそれがあります。アナフィラキシーは、ほとんどが予防接種後30分以内に起こります。重篤な副反応が現れたときにすぐに対処できるように、予防接種後の30分間は院内で安静に過ごすことが望ましいです。
予防接種の副反応について詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザの予防対策
インフルエンザ予防に最も有効な手段は予防接種です。しかし、予防接種で100%インフルエンザを防げるわけではありません。日常的にできる予防対策も取り入れることが大切です。
こまめな手洗い
帰宅時や食事前などこまめに手洗いをしましょう。指の間や指先、爪の間、手首まで洗いましょう。
手指の消毒にはアルコール消毒が有効です。ただし、消毒用アルコールを使えば安心というわけではありません。アルコール消毒を正しい手順で行うことが重要です。
効果を最大限に引き出すためにも、日頃から爪は短く切り、アルコール消毒の前には指輪や時計をはずしてから行ってください。
インフルエンザのときにアルコールを使う手洗い方法について、詳しくは関連記事をごらんください。
咳エチケット
インフルエンザの主な感染経路である飛沫感染を防ぐために、咳エチケットを心がけましょう。
・咳やくしゃみをするときはティッシュなどで口と鼻を押さえ、他人から1m以上離れ顔をそむける。
・マスクをつける。咳をしている人にマスクの着用をうながす。
・鼻水や痰がついたティッシュはゴミ箱に捨てる。手で覆って手のひらについたときはすぐに手を洗う。
免疫力を高める
インフルエンザの感染・発症を予防するためにはウイルスに対する抵抗力を高めておくことが大切です。
十分な休養とバランスのとれた食生活を心がけましょう。
湿度を適度に保つ
インフルエンザウイルスは口や鼻から侵入し、気道や肺で増殖します。空気が乾燥すると気道粘膜の防御機能が低下してインフルエンザにかかりやすくなります。
インフルエンザウイルスが嫌いな室内環境は温度22℃程度・湿度50%以上です。加湿器などを使用して部屋の環境を整えると効果的です。加湿器がない場合は濡れたタオルを部屋に干しておくなど、乾燥を防ぐ対策をしましょう。
インフルエンザが嫌がる室内環境について、詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザは潜伏期間でも感染力がある?
インフルエンザの潜伏期間は個人差がありますが、1〜3日程度です。潜伏期間とはウイルスに感染してから体に症状が出るまでの期間のことをさします。
潜伏期間中はほとんど症状はみられず、この期間にインフルエンザへの感染を疑うことは困難です。
しかし、インフルエンザウイルスは潜伏期間中でも発症1日前から感染力を持っていると考えられています。
インフルエンザの感染力のある期間
個人差はありますがインフルエンザが感染力をもっている期間は、発症の1日前から発症後7日までの8日間程度です。
インフルエンザの潜伏期間について、詳しくは関連記事をごらんください。
解熱後でも感染する?
解熱した後でも体内にインフルエンザウイルスが残っていて感染力を持っています。インフルエンザウイルスが感染力を持っている期間は、インフルエンザ発症1日前から7日後の約8日間です。
インフルエンザ検査を受ける最適なタイミングは?
突然の高熱や全身の倦怠感、関節痛などインフルエンザの症状が疑われる場合は、病院を受診してインフルエンザの検査をしましょう。
インフルエンザの検査にはいくつか種類がありますが、広く使用されているのが迅速検査キットです。
迅速検査キットは鼻や喉の粘膜から検体を採取して、インフルエンザウイルスがいるかどうかを調べます。迅速検査キットではインフルエンザ感染の有無だけではなく、インフルエンザA型・B型などウイルスの種類も判定することができます。
インフルエンザの検査キットについて、詳しくは関連記事をごらんください。
検査時間
迅速検査キットは10~15分程度で、A型またはB型のインフルエンザウイルスへの感染を確認することができます。
迅速検査キット以外の検査の方法は結果が出るまでに5日〜2週間ほど時間がかかるため、現段階では迅速検査キットは最も手軽かつ有効な検査方法といえます。
最適な検査のタイミング
インフルエンザの検査は、発熱や関節痛などの症状が出てから12時間以上〜48時間以内に受けましょう。
インフルエンザ発症直後はウイルスの量が少ないため、迅速検査を受けるタイミングによっては感染していても陰性となる場合があります。迅速検査キットが陽性を示すのに十分なウイルス量に達するのは、発症から12時間以上経過してからになります。
また、インフルエンザだと判断された場合に処方されるタミフル・イナビル・リレンザなどの抗インフルエンザ薬は、発症後48時間以内に使用することで効果が発揮されます。
抗インフルエンザ薬の効果を最大限に得るためには、検査を受けるタイミングがとても大切になります。
インフルエンザの検査について、詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザの治療に使われる薬
インフルエンザに使われる薬は、インフルエンザウイルスに直接作用する抗インフルエンザ薬と、発熱や痛みなどの症状を緩和するために使われる薬の二種類です。
抗インフルエンザ薬
主に使われる抗インフルエンザ薬は、内服薬のタミフル・吸入薬のイナビルとリレンザです。病状や年齢などによって医師の判断により処方される薬が異なります。
抗インフルエンザ薬はウイルスの増殖を防いでインフルエンザの症状を軽くしたり、ウイルスが細胞外に出ることを阻害して感染の拡大を防ぐ効果があります。
また処方される条件がありますが、インフルエンザの予防目的として使用されることもあります。
抗インフルエンザ薬について、詳しくは関連記事をごらんください。
解熱鎮痛剤・風邪薬:成分に注意が必要
基本的には、インフルエンザの高熱は体の自然な免疫反応により起こるため、無理に解熱することは望ましくありません。しかし、高熱などにより体力を著しく低下させる場合などは解熱鎮痛剤を使用します。解熱鎮痛剤は、つらいインフルエンザの症状を和らげるために病院でも処方されるケースがあります。
インフルエンザのときに使用してはいけない成分があるため、市販の解熱鎮痛剤や風邪薬を使用するときには注意が必要です。
■熱や痛みにおすすめの市販薬
病院に行くまでの間に熱や痛みを抑えたい場合は、市販薬ではアセトアミノフェンを配合したタイレノールAをおすすめします。
■悪寒や咳などにおすすめの市販薬
インフルエンザによる悪寒、発熱、頭痛、咳などの諸症状には麻黄湯が使用されます。
病院で処方される麻黄湯には、効能効果に「インフルエンザ(初期のもの)」と明記されているものがあります。ただし、市販で使う場合はあくまで症状に対する対処療法と考えてください。
インフルエンザのときに使用する市販薬について、詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザの合併症に注意!
インフルエンザは身近な感染症ですが、症状が悪化すると生死に関わる危険な合併症を引き起こすおそれがあります。
特に重い合併症とされるインフルエンザ脳症とインフルエンザ肺炎に注意が必要です。
インフルエンザ脳症
毎年数百人が発病する代表的なインフルエンザ合併症です。インフルエンザの流行が猛威をふるうほど、インフルエンザ脳症も多発します。特にA型香港型の流行時には注意が必要です。
■症状
インフルエンザ脳症の症状として意識障害、けいれん、異常言動・行動、頭痛、嘔吐、麻痺などがあげられます。
インフルエンザ脳症の神経症状の中でも、意識障害は最も高い頻度でみられる重要なものです。インフルエンザのときに意識障害が起きたときはすぐに病院を受診してください。
けいれんは熱性けいれんを起こしやすい0〜4歳に高い割合で起きる傾向があります。インフルエンザでもけいれんを起こすおそれがあるため、けいれんだけでインフルエンザ脳症と断定することはできませんが、けいれんが長引いたり意識障害がともなう場合はすぐに病院を受診しましょう。
■発症しやすい年齢
厚生労働省のインフルエンザ脳症研究班調査によると、インフルエンザ脳症は主に5歳以下の子どもに発症しやすく、1歳が最も多く発症しているという報告があります。
■発症までの時間
インフルエンザによる発熱から数時間〜1日と発症が早いことが特徴です。
■インフルエンザ脳症による死亡率と後遺症
インフルエンザ脳症では知能低下・運動麻痺・てんかんなどの後遺症が残ったり、最悪の場合は死にいたることもあります。
インフルエンザ脳症での死亡率は8〜9%で、後遺症は25%の子どもにみられます。後遺症は軽い場合もあれば、寝たきりの状態になるほど重い場合もあります。
インフルエンザ脳症について、詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザ肺炎
インフルエンザでの死亡例の多くがインフルエンザ肺炎であるほど合併症として重いものです。
インフルエンザ肺炎は、インフルエンザによる肺炎と細菌の二次感染による肺炎の2つに大きく分けられます。細菌の二次感染による肺炎がインフルエンザ肺炎をほぼ占めています。
■細菌の二次感染による肺炎
重症化しやすく、インフルエンザ関連の死亡原因の多くは二次感染による肺炎によるものです。
インフルエンザウイルスに感染すると、気道が炎症を起こして細菌に対する防御力が低下し二次感染を引き起こしやすくなります。弱った気道に細菌が侵入することで肺炎を引き起こします。
■症状
インフルエンザ肺炎の症状は主に、高熱が続く・咳や痰が出る・呼吸が苦しい・胸の痛みや息苦しさなどです。
細菌の二次感染による肺炎の場合は、インフルエンザの症状が一時的に軽くなった後に、発熱、悪寒、膿のような痰、呼吸困難などが現れます。
■発症しやすい年齢
65歳以上の高齢者や免疫力が低下している方に多く発症します。心臓や呼吸器に慢性の病気を持っている方も注意が必要です。
■入院は必要?
インフルエンザ肺炎になったからといって必ず入院が必要なわけではありません。
しかし生死に関わるおそれがあるため、5日以上発熱が続いていたり、咳や痰があって息苦しさを感じている場合は、早めに病院を受診しましょう。体の状態や重症度によって医師が入院の有無を判断します。
合併症を防ぐには?
生死に関わるおそれのあるインフルエンザ合併症を防ぐには、なによりもまずインフルエンザの感染・発症を防ぐことが大切です。インフルエンザ予防接種とそのほかの予防対策を心がけましょう。
インフルエンザ合併症について詳しくは関連記事をごらんください。
インフルエンザを発症したときの過ごし方:生活の注意点
お風呂
入浴は体力を消耗するため、高熱が出ているインフルエンザの初期にの入浴は控えましょう。
37~37.5℃まで熱が下がれば入浴は可能ですが、体がつらい場合は無理な入浴は禁物です。熱が下がってから2日ほど経ち、体力が回復してきてからお風呂に入ることが理想的です。
■お風呂で感染する?
お風呂で家族などに感染する心配はほとんどありません。
インフルエンザウイルスはお風呂のような高温多湿の環境が苦手であり、湿度50%ではインフルエンザウイルスはほとんど生存できないという研究結果があります。浴室の湿度は80%以上になるため、お風呂ではインフルエンザウイルスは生存できません。
インフルエンザと入浴の関係について詳しくは関連記事をごらんください。
食べ物
インフルエンザ治療の基本は、しっかり休養をとり、栄養のある食事をとることにあります。
インフルエンザでは高熱が出るなど、ウイルスと闘うために体力が消耗されてしまいます。疲れた体をサポートするには、ビタミンB群やビタミンCといった栄養がおすすめです。
ビタミンB群とは、ビタミンB1やB2、B6をはじめとしたの計8種類の水溶性ビタミンの総称です。豚肉・ごま・卵(うずら卵、鶏卵)・海苔・ヨーグルト・バナナなどに多く含まれています。
ビタミンCが多く含まれているのは、いよかんなどの柑橘類・キウイフルーツ・いちご・パイナップル・キャベツ・チンゲン菜などです。
そのほか、下痢や吐き気があるとき・喉や鼻の症状があるとき・解熱後など症状に合わせて食事を変えることも有効です。
インフルエンザのときの食事に関して詳しくは関連記事をごらんください。
飲酒
インフルエンザに感染中は、体力が落ちているため飲酒は控えましょう。
アルコールは胃腸や肝臓にも負担がかかるため、インフルエンザウイルスと闘っている体にさらに負担をかけてしまうことになります。
また、インフルエンザでは、高熱による発汗や嘔吐、下痢などにより水分を失いやすく、脱水症状になる危険性があります。この状態でアルコールを飲むと、さらに脱水症状を加速させることにつながります。
■いつから飲酒しても良い?
インフルエンザ後の飲酒開始について明確な決まりはありませんが、インフルエンザが発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまでは安静にしておくのが望ましいです。
インフルエンザのときの飲酒について詳しくは関連記事をごらんください。
洗濯
インフルエンザウイルスは水・石けん・洗剤に弱く通常の洗濯で洗い流すことができるため、インフルエンザにかかった方の衣類と家族の衣類を一緒に洗濯しても問題ありません。
鼻水などで汚れているものは、ウイルスがほかの物に付着しないように静かに水で洗い流し、次亜塩素酸ナトリウムなど塩素系の消毒液や漂白剤に30分以上つけ置いてから通常どおり洗濯するとさらに安心です。なお、消毒後にはほかの洗濯物と一緒に洗っても問題ありません。
枕カバーやパジャマなどは咳やくしゃみなどの飛沫で汚れやすく、汚れたまま使い続けるとウイルスを再び吸い込んで治りが遅くなったり、家庭内での二次感染源となるおそれがあります。こまめに交換して洗濯しましょう。
インフルエンザのときの洗濯について詳しくは関連記事をごらんください。
タバコ
喫煙はインフルエンザを重症化しやすくするため、インフルエンザにかかったら禁煙しましょう。喫煙者はインフルエンザに感染しやすくなることや肺炎を合併する確率が高くなることも報告されています。
また、本人だけでなく副流煙による影響も強いため、インフルエンザにかかっている人の側でタバコを吸うことも避けましょう。
インフルエンザと喫煙の関係について詳しくは関連記事をごらんください。
生理
インフルエンザのときに「生理が予定より早い」という人もいれば、「生理が遅れている・こない」という方もいます。
しかし実際には、インフルエンザウイルスが生理周期に影響を与えることはない、とされています。また、インフルエンザ治療薬の副作用にも、生理不順は報告されていません。
インフルエンザウイルスや抗インフルエンザ薬で生理が遅れるのではなく、体調不良による疲労が原因である可能性があります。多くの場合一過性のものなので、必要以上に気にする必要はありませんが、生理不順が翌月以降も続く場合は念のため婦人科に相談することをお勧めします。
インフルエンザと生理の関係について詳しくは関連記事をごらんください。
■生理痛の薬は飲んでも大丈夫?
生理痛がひどい方で鎮痛剤を常用している場合は注意が必要です。インフルエンザのときは使用して良い成分と使用を控えるべき成分があります。
インフルエンザのときの痛み止めとして安心して使用できる成分は、「アセトアミノフェン」と「イブプロフェン」です。
成人であればタイレノールA・イブA錠、小・中・高校生であればバファリンルナJをお勧めします。
家族に感染させないために
家族がインフルエンザに感染したときは、家族の間で感染が広がらないように注意が必要です。
■インフルエンザ感染者はできれば個室に
インフルエンザに感染したら、できれば個室で安静にしましょう。個室にできない場合は、2m以上離れて過ごすことが望ましいです。特に感染者と同じベットを使用することは控えましょう。
■家族も患者もマスクを着用する
インフルエンザが感染する原因の多くは、咳やくしゃみによる飛沫感染です。
看病する家族がマスクをすることも大切ですが、患者もマスクを着用してください。家の中でもマスクの着用が有効です。
■看病する人を決める
人やものを介して直接ウイルスに触れて感染する接触感染にも注意が必要です。患者に接触することで感染の危険性はぐんとあがるため、可能な限り少人数での接触にとどめましょう。
幼児や妊婦や高齢者、持病がある方など、重症化しやすいハイリスク群とよばれる方は、特に感染者に接近しないように注意してください。
インフルエンザの家族感染について詳しくは関連記事をごらんください。
出席停止期間と出勤停止期間は?
インフルエンザは強い感染力を持った感染症です。インフルエンザの感染が拡大することを防ぐため、法律で出席停止期間が定められています。
登園・出席停止期間
小学校や中学校では、文部科学省の定める学校保健安全法および学校保健安全法施行規則によりインフルエンザの際の出席停止期間が定められています。
インフルエンザ発症から5日経ち、さらに解熱してから2日経過すれば登校して良いと定めています。
幼稚園に関しても学校保健安全法で登園停止期間が定められています。保育園も保健所における感染症対策ガイドラインにより、幼稚園と同じ期間が登園停止期間として定められています。
幼児の登園停止期間は、インフルエンザ発症から5日経ち、さらに解熱してから3日経過していることが条件です。
インフルエンザによる出席停止期間について詳しくは関連記事をごらんください。
出勤はいつからできる?
会社勤めの人がインフルエンザに感染した場合、出勤の規則は会社によって異なります。会社勤めの人に対するインフルエンザの法律はなく、出勤停止などの共通の決まりもありません。
多くの会社の場合は、学生に適用される学校保健安全法に基づき、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」を出勤停止に定めています。
会社によってはインフルエンザに対する対応が決められていなかったり、熱が下がって仕事ができる状態なら出勤するなどといった会社独自のルールがある場合もあります。診断書が必要かどうかなども含め、詳しくは自分の会社の就業規則を確認しましょう。
インフルエンザによる出勤停止期間について詳しくは関連記事をごらんください。
おわりに
インフルエンザは感染力が強く、重症化や合併症を引き起こし生死に関わることもある感染症です。
なによりも予防をすることが大切です。インフルエンザシーズンが始まる前の予防接種や、流行期の手洗いやマスク着用などの予防対策を怠らず、インフルエンザシーズンを乗り切りましょう!