イナビルの長所・短所は?1回の吸入で済む抗インフルエンザ治療薬「イナビル」を解説

イナビルの長所・短所、効果、副作用などについて薬剤師が解説します。イナビルの用法用量、予防目的で使用するときの注意点、イナビルと異常行動の関係などイナビルに関する疑問を解決します!

インフルエンザの治療薬として、現在主流となっている抗インフルエンザ薬が「イナビル」です。

イナビルの最大の特徴は、「1回の使用で服用が完了する」ことです。服用の手軽さなどから、現在ではタミフルについで多くの方に使用されている薬です。

イナビルという呼び名は商品名であり、正式名称は「ラニナミビル」です。「イナビル吸入粉末剤20mg」という名称で販売されている吸入粉末剤になります。

この記事では、イナビルの長所・短所を中心に、イナビルに関する疑問を解説します。

イナビルの長所と短所

イナビルの長所

吸入型のイナビルは、インフルエンザウイルスの増殖部位である喉や気管支に直接届いて、ウイルスの増殖をおさえる効果を発揮します。

長時間効果が作用するタイプの薬で、最初に1回だけ吸入すれば服用は完了です。5日間使わなくてはいけないタミフル・リレンザなどと大きく異なり、飲み忘れを防ぐことができます。

また、長時間作用するので、薬の効かない耐性ウイルスが出にくいことも特徴です。

使い方に特徴があるため、薬局で薬を購入したときに、薬剤師に使用方法を聞きながらその場で使用することもあります。

イナビルの短所

イナビル服用後に、まれに熱が再発することもあります。 また、1回の使用で服用が完結して熱が下がり症状が良くなることから、ウイルスがまだ体内にいる状態であっても完治していると思って外出してしまうこともあります。

インフルエンザにかかった際に、自宅での療養が必要となる目安は発症後5日間かつ、解熱後も2日間(幼児は3日間)です。薬を飲んでも必ず5日以上は安静にし、感染拡大につながらないように配慮しましょう。

吸入薬のため使い方が飲み薬より面倒なので、可能であれば薬局で薬剤師に使い方を聞きながら、その場で使って服用を完了してしまうこともお勧めです。

なお、パウダー状の薬なので、ちゃんと吸えているかわからないといった意見もありますが、イナビルは半分も吸い込めば効果は十分ともいわれており、神経質になりすぎる必要はないでしょう。

イナビルの使い方と用法用量

イナビルはインフルエンザの治療、または予防の目的で使われる抗インフルエンザ薬です。

イナビルが効果を発揮するウイルスは、A型インフルエンザウイルスとB型インフルエンザウイルスの二種類です。

治療に用いる場合、可能な限り速やかに使用を開始することが望ましいです。インフルエンザの発症から48時間を経過してから使用した場合、薬の有効性を裏付けるデータは現状は得られていません。​

薬自体は白色の粉末であり、薬の入った容器を口にくわえて吸入します。

イナビルの使い方について詳しくは関連記事をごらんください。

イナビルを治療に使う時の用法・用量

イナビルの治療の時の用法・用量は成人と子どもで異なります。

成人・10歳以上の小児:2容器(イナビル40mg分)を1回分使用する
10歳未満の小児:1容器(イナビル20mg分)を1回分として使用する

イナビルを予防に使う時の用法・用量

イナビルの予防の時の用法・用量は成人と子どもで異なります。

成人・10歳以上の小児:2容器(イナビル40mg分)を使用する。1回ずつ2日に分ける方法と、2回を1日で使用する方法の2通りがある。
ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。
10歳未満の小児:1容器(イナビル20mg分)を1回分として使用する

イナビルにはさまざまな副作用が現れることがあります。治療・予防のどちらの場合でも副作用は現れるので注意しましょう。

イナビルの臨床試験や使用成績調査によると、治療目的で使用した場合の主な副作用は、下痢、めまい、悪心、ALT(GPT)上昇、胃腸炎、蕁麻疹などが報告されています。

予防目的で使用した場合には下痢や頭痛が主な副作用であると報告されています。

重篤な副作用が出たらすぐに病院へ!

発生頻度は高くありませんが、重大な副作用にショック、アナフィラキシー様症状があります。呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷汗などの異常が認められた場合は、症状の観察を十分に行い、迅速な処置が必要です。重大な副作用につながると思われる症状が出たら、すぐに病院を受診してください。

また、イナビル以外の吸入剤・抗インフルエンザウイルス薬で、次のような副作用が報告されています。

・気管支攣縮
・呼吸困難
・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)
・多形紅斑

高齢者や妊娠中のイナビルの使用について

高齢者や糖尿病を含む慢性代謝性疾患・慢性・腎機能障害・慢性心疾患などの基礎疾患がある方、免疫低下状態の方などにたいしては、「使用経験が少ない」旨がイナビルの添付文書に記載されています。

該当する方がイナビルを使用する場合には、状態を十分に観察しながら医師と相談の上で使用を検討してください。

妊娠中にイナビルを使う方

これまで妊婦中・授乳中の方へのイナビル使用は「できるだけ控えるように」というのが主流でした。

しかし、2014年の7月に「公益社団法人 日本産科婦人科学会」から、「妊娠中にイナビルを服用しても流産・早産・胎児形態異常などの有害事象は増加しなかった」との発表があり、妊娠中にイナビルを使っても問題ないとする見解が出されています。

イナビルに限らず、妊娠中の場合はかかりつけ医とよく相談の上、薬の使用を検討してください。

授乳中にイナビルを使う方

2013年に行われた第44回日本小児臨床薬理学会では、授乳婦がイナビルを使用した時の母乳中の薬物濃度測定についての発表がありました。

検査の結果、「イナビル吸入後1~46時間の母乳の薬物濃度を測定した所、全ての例において薬物濃度が検出限界未満であった」ことが発表され、授乳婦に対するイナビル投与の安全性は高いと示されました。

ただし、妊娠中と同じく授乳中も病院を受診する際は必ず医師に申告し、飲むタイミングなどの指示を受けましょう。

イナビルを予防目的で使う際の注意

イナビルを予防目的で使用する場合、治療の場合とは、用法・用量・服用期間など、さまざまな面で違いがあります。

予防目的で使用した場合、インフルエンザの予防効果は服用から10日間と限られています。

なお、2016年から10歳未満の子どもでも、イナビルの予防目的の使用が可能になりました。

予防目的で購入する条件

予防目的の場合、イナビルは誰でも簡単に処方してもらえるわけではありません。

イナビルを予防で使用することが認められるのは、原則としてインフルエンザ発症者と一緒に生活している方で、持病があったり高齢者など重症化のリスクが高い方です。

受験などで、どうしてもインフエンザに感染したくない事情がある場合は、医師に相談することで処方箋を貰えるケースがあります。ただし、予防目的では処方箋を出さない病院や医師もいるため、事前に問い合わせることをお勧めします。

予防目的は全額自己負担

イナビルを予防目的で購入する場合、全額自己負担になります。保険適用額になるのは、症状の発症がみられる場合のみで、予防目的では保険は適用されません。

イナビルは処方薬なので、薬価の他に病院での診察代や処方料、調剤料が加算されるため、合計で6000〜9000円程度の自費負担が見込まれます。

※薬価は2017年10月現在のものです。

イナビルと異常行動の関連性は明らかになっていない

抗インフルエンザ薬を服用後に、死亡につながる大きな事故が起こったニュースを記憶している人も多いのではないでしょうか。

厚生労働省では、異常行動の発生状況のさまざまなデータから「抗インフルエンザ薬の種類や使用の有無と異常行動には特定の因果関係がない」としています。

しかし、抗インフルエンザ薬との因果関係は確認できなくても、インフルエンザの患者に異常行動がでることは事実としています。インフルエンザを発症した場合は、異常行動が起きないように注意することが大切です。

小児・未成年者については、 異常行動による転落などの万が一の事故を防止するために、イナビルを使用した後少なくとも2日間は小児・未成年者が一人きりにならないように配慮しましょう。

インフルエンザの異常行動について詳しくは関連記事をごらんください。

おわりに

イナビルは、1回の吸引で済み、薬局で使い方の説明を受けながらその場で治療を完結することができる大変便利な薬です。

また、1回の使用で効果が5日間続くので、同じ吸入薬のリレンザに比べても使い方が簡単で、解熱が早い点が魅力といえます。

小児・高齢者・持っている疾患などにより、処方が変わる場合もあるので、医師・薬剤師ともよく相談した上で、使用を検討しましょう。

【インフルエンザ特集】症状・予防接種・潜伏期間・薬など徹底解説!

インフルエンザに関するお役立ち情報

インフルエンザに関連するQA

ピックアップ特集