現在、臨床の現場で用いられる主要な抗インフルエンザ薬は、タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタの4種類です。

抗インフルエンザ薬はA型・B型いずれにも用いられるため、A型・B型の種別によって現れる副作用が異なるということはありません。

この記事では抗インフルエンザ薬の副作用を中心に解説します。副作用とは異なる予防接種の副反応も紹介します。

タミフル(服用タイプ)の副作用

タミフルは口から飲むタイプの薬です。子ども用には水に溶かして飲むドライシロップもあり、服用しやすいため広く用いられています。

主な副作用

主な副作用は下痢・腹痛・吐き気といった消化器症状です。

タミフルにはカプセル剤「タミフルカプセル75」と粉薬「タミフルドライシロップ3%」の2種類の剤形があります。製造販売後の副作用調査の結果は以下のようになっています。

剤形 主な副作用の発生率
タミフルカプセル75 下痢22件(0.5%)、悪心12件(0.3%)、腹痛11件(0.3%)、発疹10件(0.2%)
タミフルドライシロップ3% 下痢63件(2.2%)、嘔吐40件(1.4%)、低体温23件(0.8%)、発疹22件(0.8%)

(出典:「タミフルカプセル75」「タミフルドライシロップ3%」添付文書)

個人差がありますが、いずれも低頻度といえます。副作用と思われる症状がみられた場合には、医師に相談し、症状に応じて薬を中止するなどの処置がとられます。

重大な副作用

いずれの副作用も頻度不明です。インフルエンザの症状が出てから5~7日たっても熱が下がらなかったり、胸の痛みや咳などがひどくなってきた場合など、肺炎が疑われる場合にも直ちに医師に相談してください。

副作用 具体的な症状
ショック、アナフィラキシー 蕁麻疹、顔面・喉頭浮腫、呼吸困難、血圧低下等
肺炎 発熱・悪寒・頭痛・咳などの風邪様症状
 劇症肝炎、肝機能障害、黄疸 全身の倦怠・疲労感、皮膚のかゆみ(掻痒)、感冒様症状、 発熱、尿の色が濃くなる
皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN) 全身性の紅斑(赤い斑点)・水疱(水ぶくれ)・びらん(ただれ)
急性腎不全 尿の出が悪くなる(乏尿)、尿が全く出なくなる(無尿)
白血球減少、血小板減少 鼻血、出血傾向
精神・神経症状 意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等
出血性大腸炎、虚血性大腸炎 血便、血性下痢等

(出典:「タミフルカプセル75」「タミフルドライシロップ3%」添付文書/難病情報センターホームページ(2017年9月現在)から引用/日本消化器病学会「黄疸」/全腎協「腎臓病とは」 参考:『病気が見える4』)

その他の副作用

頻度はまれですが、その他にもさまざまな副作用が報告されています。副作用が疑われる症状が現れた場合は、担当医に薬の変更を相談しましょう。

なお、カプセルとドライシロップでは副作用の内容が若干異なります。基本的には似通っているため、以下にカプセルの副作用を記載します。

大別 症状 頻度
皮膚 皮下出血、紅斑(多形紅斑を含む)、そう痒症 頻度不明
  発疹 0.1%以上 
  蕁麻疹 0.1%未満 
消化器 口唇炎、血便、メレナ、吐血、消化性潰瘍 頻度不明
  下痢(0.9%)、腹痛(0.6%)、悪心(0.5%)、嘔吐 0.1%以上 
  口内炎(潰瘍性を含む)、食欲不振、腹部膨満、口腔内不快感、便異常 0.1%未満 
精神神経系 激越、振戦、悪夢 頻度不明
  めまい、頭痛、不眠症 0.1%以上  
  傾眠、嗜眠、感覚鈍麻 0.1%未満 
循環器 上室性頻脈、心室性期外収縮、心電図異常(ST上昇) 頻度不明
  動悸 0.1%未満 
肝臓 ALT(GPT)増加 0.1%以上 
  上γ-GTP増加、Al-P増加、AST(GOT)増加 0.1%未満 
腎臓 血尿 頻度不明
  蛋白尿 0.1%以上 
血液 好酸球数増加 0.1%以上
呼吸器 気管支炎、咳嗽、鼻出血 頻度不明
視覚障害(視野欠損、視力低下)、霧視、複視、結膜炎 頻度不明
  眼痛 0.1%未満 
その他 疲労、不正子宮出血、耳の障害(灼熱感、耳痛等)、発熱 頻度不明
  低体温 0.1%以上
  血中ブドウ糖増加、背部痛、胸痛、浮腫 0.1%未満 

(出典:「タミフルカプセル75」添付文書)

一般にインフルエンザ薬と異常行動との因果関係はない

なお、タミフルに関連して一時期「異常行動」が話題になったことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

現在の研究では、抗インフルエンザ薬と異常行動との因果関係は不明で、異常行動はインフルエンザの発症自体にともなうものと考えられています。

タミフル服用の有無にかかわらず、異常行動はインフルエンザ自体に伴って発現する場合があることが明確となった。

出典:厚生労働省ホームページ

タミフルと異常行動との関連や小児に使用する場合の詳しい注意については関連記事をごらんください。

リレンザ(吸入タイプ)の副作用

リレンザは吸入タイプの薬です。治療目的の場合、1日2回の吸引を5日間継続することになります。なお、リレンザは予防目的でも使用されます。

主な副作用

リレンザの副作用も主として下痢や悪心・嘔吐などの消化器症状です。頻度は低く、比較的安全な薬といえます。

患者に実際に使用した後の副作用調査の結果は以下のようになっています。

対象・目的 主な副作用の発生率
【成人対象・治療目的】 下痢13例(0.24%)、発疹7例(0.13%)、悪心・嘔吐7例(0.13%)、嗅覚障害6例(0.11%)
【小児対象・治療目的】 13例(1.7%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告された
【予防目的】 特定使用成績調査289例中、副作用は報告されなかった

(出典:「リレンザ」添付文書)

小児への使用や予防目的での使用では目立った副作用が報告されていません。

重大な副作用

いずれも頻度不明ですが、添付文書には「異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」とあります。症状が現れた場合には直ちに医師に相談しましょう。

副作用 具体的な症状
ショック、アナフィラキシー 血圧低下、呼吸困難、咽頭・喉頭浮腫等
気管支攣縮、呼吸困難 咳込み、呼吸困難
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑 全身性の紅斑(赤い斑点)・水疱(水ぶくれ)・びらん(ただれ)

(出典:「リレンザ」添付文書/難病情報センターホームページ(2017年9月現在)から引用)

その他の副作用

頻度はまれですが、その他にもさまざまな副作用が報告されています。

特に、発疹・顔面浮腫・蕁麻疹などの過敏症が現れた場合は使用を中止してください。その他の症状は、程度により担当医に薬の変更などを相談しましょう。

大別 症状 頻度
過敏症 発疹 0.1%〜1%
  顔面浮腫、蕁麻疹 0.1%未満
精神神経系 頭痛、手指のしびれ感、不眠症 0.1%未満 
  血管迷走神経反応 頻度不明(海外では0.01%未満)
消化器 下痢、悪心・嘔吐 0.1%〜1% 
  咽喉乾燥、口渇、口内炎、舌あれ、食欲不振、胃部不快感 0.1%未満 
呼吸器 嗄声、咽喉刺激感、鼻道刺激感、喘鳴、鼻出血、鼻漏、痰 0.1%未満 
感覚器 嗅覚障害、耳鳴 0.1%未満 
循環器 動悸 0.1%未満 
全身症状 発汗、発熱、頚部痛、背部痛、低体温 0.1%未満

(出典:「リレンザ」添付文書)

イナビル(吸入タイプ)の副作用

イナビルもリレンザと並び吸入タイプのお薬です。薬の使い分けには効果面を含め担当医によって好みがあるようですが、回数面ではイナビルは1回吸入するだけで効果が持続するため大変便利な薬です。

主な副作用

副作用の発生はかなり低頻度で、安全なお薬です。製造販売後の副作用調査の結果は以下のようになっています。

主な副作用は、下痢(0.31%)、めまい(0.11%)、悪心(0.08%)、蕁麻疹(0.08%)、発熱(0.08%)等であった。

(出典:「イナビル吸入粉末剤20mg」添付文書)

重大な副作用

いずれも頻度不明ですが、添付文書には「異常が認められた場合には適切な処置を行うこと」とあります。副作用が疑われる症状が現れた場合には使用を中止し、直ちに医師に相談しましょう。

副作用 具体的な症状
ショック、アナフィラキシー 呼吸困難、蕁麻疹、血圧低下、顔面蒼白、冷汗等の異常
気管支攣縮、呼吸困難 咳込み、呼吸困難

(出典:「イナビル吸入粉末剤20mg」添付文書)

また、類薬の副作用に関しても注意喚起がされています。以下の症状にも注意してください。

副作用 具体的な症状
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑 全身性の紅斑(赤い斑点)・水疱(水ぶくれ)・びらん(ただれ)

(出典:「イナビル吸入粉末剤20mg」添付文書/難病情報センターホームページ(2017年9月現在)から引用)

その他の副作用

頻度はまれですが、その他にもさまざまな副作用が報告されています。

副作用のひとつである検査値異常は、自覚症状による判断が難しく気づきにくくはありますが、肝臓の副作用は疲れや倦怠感として現れることが多い傾向があります。また、肝臓や腎臓に持病のある方や、機能の低下している高齢者の方などは、定期的な検査の際に数値にも気を配ることをお勧めします。

大別 症状 頻度
過敏症 蕁麻疹 0.1%以上
  発疹 0.1%未満 
  紅斑、そう痒 頻度不明
消化器 下痢、胃腸炎、悪心、嘔吐、腹痛、口内炎 0.1%以上 
  腹部膨満、食欲減退、腹部不快感 0.1%未満 
精神神経系 めまい、頭痛 0.1%以上
血液 白血球数増加 0.1%以上 
肝臓 ALT(GPT)上昇、AST(GOT)上昇、γ-GTP上昇 0.1%以上
  肝機能異常 0.1%未満
泌尿器 尿蛋白 0.1%未満
その他 CRP上昇、尿中ブドウ糖陽性 0.1%以上

(出典:「イナビル吸入粉末剤20mg」添付文書)

ラピアクタ(静注タイプ)の副作用

ラピアクタは点滴薬です。インフルエンザが重症化した方や高齢者など、薬を飲んだり吸入したりすることに困難を感じる方に用いられます。

主な副作用

主な副作用は下痢や悪心・嘔吐などの消化器症状です。他の治療薬に比べ発生頻度はやや高めになっています。

ラピアクタには使用開始後のデータがなく、医薬品として承認される段階における安全性評価のデータになりますが、副作用の報告は以下のようになっています。

対象(成人/小児) 主な副作用の発生率
【成人】 下痢56例(5.8%),好中球減少27例(2.8%),蛋白尿24例(2.5%)
【小児】 下痢12例(10.3%),好中球減少11例(9.4%),嘔吐6例(5.1%)

(出典:「ラピアクタ点滴静注液バッグ300mg/ラピアクタ点滴静注液バイアル150mg」添付文書)

重大な副作用

症状が現れた場合、添付文書には「異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと」とあります。直ちに医師に相談しましょう。

副作用 具体的な症状
ショック、アナフィラキシー(頻度不明) 血圧低下,顔面蒼白,冷汗,呼吸困難,蕁麻疹等
白血球減少,好中球減少(1〜5%未満) (自己判断は難しい。感染症にかかりやすくなる。)
肝機能障害,黄疸(頻度不明) 全身の倦怠・疲労感、皮膚のかゆみ(掻痒)、感冒様症状、 発熱、尿の色が濃くなる
急性腎不全(頻度不明) 尿の出が悪くなる(乏尿)、尿が全く出なくなる(無尿)

(出典:「ラピアクタ点滴静注液バッグ300mg/ラピアクタ点滴静注液バイアル150mg」添付文書/日本消化器病学会「黄疸」/全腎協「腎臓病とは」)

また、類薬の副作用に関しても注意喚起がされています。以下の症状にも注意が必要です。

副作用 具体的な症状
肺炎 発熱・悪寒・頭痛・咳などの風邪様症状
劇症肝炎 初期症状としては全身のだるさ、吐き気、食欲不振など
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN),皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群) 全身性の紅斑(赤い斑点)・水疱(水ぶくれ)・びらん(ただれ)
血小板減少 鼻血、出血傾向
精神・神経症状 意識障害,異常行動,譫妄,幻覚,妄想,痙攣等
出血性大腸炎 腹痛・水様下痢・血性下痢

(出典:「イナビル吸入粉末剤20mg」添付文書/難病情報センターホームページ(2017年9月現在)から引用 参考:『病気が見える1』『病気が見える4』)

その他の副作用

下痢の頻度がやや目立ちますが、全体的に頻度はまれで、さまざまな副作用が報告されています。症状の程度にもよりますが、副作用が疑われる症状が現れた場合は、担当医に薬の変更などの相談をしましょう。

検査値異常の項目に関しては自覚症状による判断が難しく気づきにくくはありますが、肝臓の副作用は疲れや倦怠感として現れることが多い傾向があります。

大別 症状 頻度
皮膚 発疹 0.5〜1%未満 
  湿疹,蕁麻疹 0.5%未満 
消化器 下痢(6.3%),悪心,嘔吐 1%以上 
  腹痛 0.5〜1%未満 
  食欲不振,腹部不快感,口内炎 0.5%未満 
肝臓 AST(GOT)上昇,ALT(GPT)上昇 1%以上 
  LDH上昇,ビリルビン上昇,γ-GTP上昇 0.5〜1%未満 
  Al-P上昇 0.5%未満 
腎臓 蛋白尿,尿中β2ミクログロブリン上昇,NAG上昇 1%以上
  BUN上昇 0.5〜1%未満 
血液 リンパ球増加 1%以上
  好酸球増加 0.5〜1%未満 
  血小板減少 0.5%未満 
精神神経系 めまい,不眠 0.5%未満 
その他 血中ブドウ糖増加 1%以上
  尿中血陽性,CK(CPK)上昇,尿糖 0.5〜1%未満
  霧視 0.5%未満
  血管痛 頻度不明 

(出典:「ラピアクタ点滴静注液バッグ300mg/ラピアクタ点滴静注液バイアル150mg」添付文書)

予防接種の副反応

予防接種後に現れる腫れなどの症状には、主として一過性の反応であることから「副作用」ではなく「副反応」という語が用いられます。

※副反応とは:ワクチン接種に伴い、ワクチン接種の目的である「免疫の付与」以外の反応が発生した場合、 副反応と呼ばれる。インフルエンザの副反応としては、局所反応(発赤、腫脹、疼痛等)、 全身反応(発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、嘔吐等)があるが、通常 2〜3 日中に消失する。

(出典:平成 22 年版 厚生労働白書)

大別 症状 頻度
局所的な反応 接種した部位(局所)の発赤(赤み)・腫脹(腫れ)、疼痛(痛み)など 10~20%
全身性の反応 発熱、頭痛、悪寒(寒気)、倦怠感(だるさ)など 5~10%
アレルギー反応 発疹、じんましん、発赤(赤み)、掻痒感(かゆみ) まれ
非常に重い副反応 ギランバレー症候群、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎、けいれん、肝機能障害、喘息発作、紫斑など(※ただしワクチン接種との因果関係は必ずしも明らかではない。) まれ

(出典:厚生労働省ホームページ)

局所的あるいは全身性の反応に関しては2〜3 日のうちに消失するので過度の心配は必要ありません。また、アレルギー反応に関しては接種直後に現れます。違和感があった場合には必ずその場で申告しましょう。

予防接種の副反応は抗インフルエンザ薬の副作用とは異なり、ほとんどの症状はわかりやすく、かつ一過性です。

ただし、中には重大な副反応も含まれるので、最低限接種日を記録しておき、症状が長引いたり気になる症状が現れたりした場合には、かかりつけ医に接種日を申告の上、症状を相談してください。

予防接種の副反応について詳しくは関連記事をごらんください。

おわりに

細かいものまで含めると抗インフルエンザ薬にはさまざまな副作用が報告されています。

自身の気になる症状が重大なものなのかどうか、きちんと確認して適切な対応を行いましょう。