インフルエンザウイルスの主な感染経路は、感染者のくしゃみや咳に含まれたウイルスを吸い込む「飛沫感染」と、ウイルスが付着したものや人を介して体内にウイルスを取り込んでしまう「接触感染」です。
飛沫感染を防ぐためにはマスクの着用が大切です。また、接触感染を防ぐためには手指や物の消毒が有効です。
この記事ではインフルエンザウイルスの消毒・除菌について解説します。
消毒以外でインフルエンザを予防する方法は、関連記事をごらんください。
インフルエンザにはアルコール消毒が有効!
手や物の表面に付着したインフルエンザウイルスを取り除くには、以下の2つの方法があります。
①インフルエンザウイルスの働きを無力化する
②洗い流したり拭き取るなど、ウイルスを物理的に除去する
インフルエンザウイルスを取り除くためには、無力化して除去することが最も理想的な形です。インフルエンザウイルスを無力化するときに威力を発揮するのがアルコール(エタノール)です。
インフルエンザウイルスにアルコール消毒が効く理由
インフルエンザウイルスは、外側がエンベロープという脂溶性の殻で守られ、糖タンパクでできた2種類の突起が突き出ています。
表面にでている突起が人や動物の細胞にくっつくことで、ウイルスが細胞の中に送り込まれ感染に至ります。
アルコール(エタノール)は脂溶性と水溶性の両方に作用する成分です。アルコールは、インフルエンザウイルスの脂溶性の殻であるエンベローブにもなじんで破壊する役割があります。
殻が壊れたウイルスは本体のたんぱく質も変性しやすくなり働きを失います。
この仕組みがアルコールの抗ウイルス作用につながります。
消毒用エタノールについては関連記事をごらんください。
手指の正しいアルコール消毒のやり方
手指の消毒にはアルコール消毒を使用します。
ただし、消毒用アルコールを使えば安心というわけではありません。アルコール消毒を正しい手順で行うことが重要です。
効果を最大限に引き出すためにも、日頃から爪は短く切り、アルコール消毒の前には指輪や時計をはずしてから行ってください。
①手のひらをこすり合わせる
アルコール消毒剤を適量手のひらに取り、両方の手のひらをこすり合わせて消毒剤をすりこみます。
②指の先までしっかりと
指を一本ずつ、爪の先から指の付け根、指と指の間までしっかりとアルコール消毒剤をすりこんでいきます。特に親指の付け根は忘れてしまいがちなので意識しましょう。
③手の甲も忘れずに
ウイルスは手の甲にも付着しています。左の手の甲は右の手のひらで、右の手の甲は左の手のひらで包み込むようにこすって消毒します。
④最後に手首も忘れずに
手首も露出している部分なのでウイルスが付着しています。反対の手で手首をつかみグリグリとアルコール消毒剤をすりこんでください。
日常生活で消毒液を使って消毒するもの
インフルエンザウイルスは湿度・温度・付着した物の表面の状態などの条件によって生存期間が大きく変わります。
衣類などに付着したインフルエンザウイルスは8~12時間ほど生存できるというデータがありますが、衣類などであれば基本的に洗濯すれば問題ありません。
しかし、プラスチックやステンレスなど表面がツルツルした物の上では、48時間程度まで生存するというデータもあります。
インフルエンザに感染した人が頻繁に触れるなどして心配なモノは、流水と洗剤でウイルスを洗い流しましょう。
インフルエンザウイルスには、80℃で10分間以上の加熱、塩素系消毒液、70%以上の濃度のアルコールによる消毒のいずれも有効とされています。
消毒例は以下の通りです。あらかじめ汚れを落としてから消毒してくださいね。
調理器具・食器など
洗剤を使用し、通常通り洗ってください。
ドアノブ・照明のスイッチ・手すり・椅子・テーブル・トイレのレバー・便座・蛇口など
【塩素系消毒液】
塩素系消毒液に清潔なタオルを浸して拭き取ります。その後10分経ったら水拭きします。
塩素は漂白作用があるので、使用の際には色落ちなどに注意してください。
【アルコール消毒液】
布やペーパータオルに十分に消毒用アルコールを含ませて拭き、自然乾燥させます。
洗うことが可能なものは、水と洗剤で洗い流します。
蛇口は石鹸でよく洗ってもよいです。
布団やシーツの除菌方法
スチームアイロンや布団乾燥機を使って殺菌したり、屋外で日光に当ててよく乾燥させると除菌ができます。天日干しする場合は、正午前後が紫外線量が多いので、午前10時~14時の4時間がお勧めです。カビの発生予防にも効果的ですよ。
インフルエンザウイルスは、生存する環境の状態により生存期間が異なると考えられています。
たとえば、乾燥状態の空気中であれば24時間以上生存しますが、湿度50%程度の空気中でしたら生存時間は8時間ほどとなります。
寝室の湿度を50~60%に保ち、ウイルスが生存しにくい環境を作ることも大切です。
また、インフルエンザが治らず天日干しなどができない場合は、ウイルスが部屋の中に留まったままにならないよう10~20分ほど部屋の換気をしましょう。
シーツや衣類の洗濯方法
シーツや衣類は、洗剤を使用して通常通り洗濯して問題ありません。
鼻水などが付着しているパジャマや枕カバーなどは、静かに水の中で洗った後、塩素系消毒液に30分以上浸してから洗濯機にかけましょう。
インフルエンザのときの洗濯については関連記事をごらんください。
インフルエンザ撃退!次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方
厚生労働省や内閣府の食品安全委員会が推奨している消毒液に「次亜塩素酸ナトリウム消毒液」があります。
インフルエンザの流行シーズンと時期が重なる感染症にノロウイルスがあります。ノロウイルスはインフルエンザと異なり、アルコール消毒が効かないためノロウイルスの消毒に推奨されている消毒液です。
ノロウイルスはもちろんインフルエンザウイルスにも効果を発揮します。
次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方
次亜塩素酸ナトリウムは聞きなれない名前ですが、次亜塩素酸ナトリウムを0.02〜0.1%に希釈した消毒液での消毒法で、身近にあるもので簡単に作ることができます。
次亜塩素酸ナトリウム0.10%、次亜塩素酸ナトリウム0.05%、次亜塩素酸ナトリウム0.02%の作り方を紹介します。
【用意するもの】
①ペットボトル・・・1リットルのものを用意
②家庭用塩素系漂白剤・・・(ハイター、ブリーチなど原液濃度が5〜6%前後のもの)
【分量】
次亜塩素酸ナトリウムを作る時は、濃度によって水の量と漂白剤の量を調整します。
0.10%を作るときは、20mLの漂白剤をペットボトルに入れて、あとはペットボトルいっぱいに水を加えて1Lにすれば完成です。
0.05%なら10mLの漂白剤を、0.02%なら4mLの漂白剤をペットボトルに入れてから水を加えて1Lにします。
漂白剤の量り方は、ペットボトルのフタを使うと便利です。ペットボトルのフタ1杯分が約5mLの漂白剤になります。
濃度 | 漂白剤の量 |
次亜塩素酸ナトリウム0.10% | ペットボトルのフタ4杯分 |
次亜塩素酸ナトリウム0.05% | ペットボトルのフタ2杯分 |
次亜塩素酸ナトリウム0.02% | ペットボトルのフタ1杯分 |
なお、ハイター・ブリーチなどの塩素系漂白剤は、コンビニエンスストアでも購入できます。
おわりに
アルコール消毒は、私たちの皮膚だけでなく身の回りの物にも便利に使用できます。
家庭の中でインフルエンザの感染者がでた場合は、家の中の消毒も意識してみましょう。
また、日頃の掃除にアルコール消毒を取り入れることで、ウイルスに感染しづらい環境づくりを目指しましょう。
参考情報:
厚生労働省「事業者・職場における新型インフルエンザ対策 ガイドライン」
厚生労働省「事業者・職場における新型インフルエンザ対策 ガイドライン」