インフルエンザウイルスは、ウイルスの種類によっては人だけではなく鳥や豚、馬など動物の間でも流行することがあります。

特に毎年「鳥インフルエンザ」の流行や危険性は大きな話題となり、関心を持っている人も多いのではないでしょうか。

2017/2018シーズンでは、11月9日に初めて高病原性鳥インフ ルエンザウイルス(H5N6)が検出され、農林水産省からは畜産関係者に注意喚起がなされています。

この記事では、鳥インフルエンザの症状や感染経路、2017/2018シーズンの発生状況などについて解説します。

鳥インフルエンザとは?

鳥インフルエンザとは、主に鳥類に流行するA型インフルエンザウイルスにヒトが感染する感染症を指します。

通常、人間以外の動物間で流行するインフルエンザウイルスが人間に感染することはありませんが、A型のウイルスは変異を起こしやすく、変異を繰り返しているうちにごくまれに人間に感染する場合があります。

鳥インフルエンザは人間に感染した場合も鳥インフルエンザと呼ばれ、これまでに世界で数百人の死者が出ています。

カモなど水禽類の間で流行

鳥インフルエンザウイルスは鳥類、主に水禽類(すいきんるい)の間で流行します。水禽類とは水辺や水上で生活する鳥のうち、カモなど水面に浮かんで生活することの多い鳥類のことです。

カモ類以外にも、鶏やアヒル、ウズラ、キジ、ダチョウなどさまざまな鳥類に感染することがあります。

特に危険な「高病原性鳥インフルエンザ」

鳥インフルエンザウイルスの中でも病気を発症させる性質が高く、感染した鳥の死亡率が高いものが「高病原性(こうびょうげんせい)鳥インフルエンザウイルス」と呼ばれます。

「高病原性」とは鳥に対しての病原性を示したものであり、人が感染した場合の症状の重さを表すものではありません。

しかし、鳥インフルエンザが人へも感染するように変異した場合、ほとんどの人間がウイルスに対して免疫を持っていないため、症状は重症化しやすいといわれています。

人に感染する鳥インフルエンザウイルスの種類

現在、人に感染する恐れがある鳥インフルエンザウイルスは、「鳥インフルエンザA(H5N1)」と「鳥インフルエンザA(H7N9)」があり、どちらも人の間で流行するインフルエンザ感染症と同等の2類感染症に指定されています。

また、頻度はまれですが、ウイルスの変異を経て新型インフルエンザウイルスとなる危険性も考えられます。

鳥インフルエンザA(H5N1)

鳥インフルエンザA(H5N1)は、A型インフルエンザウイルスの一種です。

2003年以降、東南アジアを中心に、中東・ヨーロッパ・アフリカ・北米の一部で鳥類から検出されています。人に感染した例では、アジアや中東などで感染報告があります。

人間へ感染することはごくまれであると考えられていますが、2003年から累計するとすでに1000近い感染例が報告されています。

鳥インフルエンザA(H7N9)

2013年3月に中国や香港で感染が検出された鳥インフルエンザです。

2016/2017シーズンでは多くの感染例が報告され、WHOの報告では、2013年3月以降の人への感染例は1564名、そのうち、少なくとも612名が死亡していると発表しています。

鳥インフルエンザと新型インフルエンザの関係

通常は鳥インフルエンザウイルスが人間に感染することはごくまれです。

ただし、ウイルスが特殊な変異したり、鳥インフルエンザウイルスに感染した以下の2つの経路を辿ることで人間に感染する新型インフルエンザウイルスに変異することがあります。

①トリからトリへ感染しているうちに人間に感染するウイルスになる

トリからトリの間で増殖している間にウイルスが変異を繰り返し、人間にも感染するウイルスへと変化する場合があります。

②豚を介して人間に感染するウイルスになる

豚は人間のインフルエンザイウイルスにも、鳥のインフルエンザウイルスにも感染します。

そのため、一匹の豚が人間のインフルエンザと鳥のインフルエンザの両方に、同時に感染することがあります。

このような場合、豚の体内で人間のインフルエンザと鳥のインフルエンザとのウイルスの間で「不連続抗原変異(ふれんぞくこうげんへんい)」と呼ばれる変異が起こることがあります。

この変異が起こった場合、人間にも感染力をもった「新型インフルエンザウイルス」が誕生する危険性があります。

実際に過去の新型インフルエンザのパンデミック(世界的流行)は、その多くが鳥インフルエンザが豚に感染し発生しています。

鳥イフルエンザの感染経路

鳥インフルエンザは、基本的には鳥インフルエンザウイルスに感染した鳥との濃厚な接触が主な原因と考えられています。

ウイルスに感染した鳥の死体だけでなく、排泄物や臓器などに触れたことでの感染も報告されています。

弱っていたり死亡した野鳥や、その排泄物を見つけた場合は、直接触れないことが大切です。もし触れてしまった場合には、速やかに手を洗ってください。

ただし、全ての感染例で鳥類との接触が確認されたわけではなく、感染源や感染経路が現在も調査中の状態です。(2017年11月現在)

人から人へうつることはある?

通常の生活を送っている場合、人から人へ鳥インフルエンザが感染することはほとんどないと考えられています。

現在報告されている例では、鳥インフルエンザに感染した患者の介護などのため長時間にわたって患者と濃厚に接触した場合の感染です。

鶏肉や卵を食べても感染しない

これまで鶏肉や鶏卵を食べることによって鳥インフルエンザに感染したという報告例はありません。

ただし、高病原性鳥インフルエンザが発生している地域では、食中毒予防の観点からも鶏肉や卵は十分に加熱してから食べることが推奨されています。

高病原性鳥インフルエンザが発生している国や地域に行った場合には、加熱調理が不十分なものは食べないように注意しましょう。

鳥インフルエンザの症状

鳥インフルエンザに感染した場合、1~10日(主に2~5日)の潜伏期間のあとに症状が現れます。

主な症状は高熱や呼吸器症状

鳥インフルエンザが人間に感染した場合の主な症状は一般的なインフルエンザA型とよく似ています。

・突然の高熱
・咳など呼吸器の症状
・全身の倦怠感や筋肉痛

症状の重さは感染したウイルスによって異なりますが、ほとんど症状のないような軽症のものから急激に悪化して死に至るようなものまで、さまざまな症状が現れます。

呼吸がしづらくなったり、呼吸時の異常音がしたり下気道の症状が現れやすく、肺炎の症状がみられることもあります。 

その他の症状

・多臓器不全
・下痢、嘔吐、腹痛
・ウイルス性肺炎
・鼻出血や歯肉出血
・結膜炎

治療はタミフルなど抗インフルエンザ薬を使用

万が一人間が鳥インフルエンザウイルスに感染した場合は、タミフルなどの抗インフルエンザ薬を使用して治療を行います。

インフルエンザウイルスは変異しても増殖の仕方は同じメカニズムとなっており、鳥インフルエンザウイルス・新型インフルエンザウイルスともに従来の抗インフルエンザ薬が効果を発揮すると考えられています。

また、呼吸不全や肺炎・多臓器不全などの症状に対しては、症状を軽減し予防するような薬や治療法がとられることもあります。

鳥インフルエンザの予防と渡航時の注意

鳥インフルエンザが流行していない地域では、特に鳥インフルエンザを意識した対策を行う必要はありません。

ただし、インフルエンザ流行シーズンは通常のインフルエンザ対策として、マスクの着用や手洗いの敢行を徹底しましょう。

鳥インフルエンザが検出された地域や外国に行く際は、ウイルスを持ち帰らないためにも出国前に予防対策を確認してください。

入国時の体調の変化に注意

鳥インフルエンザが流行している地域から日本に入国する際、発熱や咳が出ている方は、空港の検疫官に申告してください。

また、入国後の10日間以内に発熱や咳などインフルエンザが疑われる症状が現れた場合は、最寄りの医療機関を受診し、渡航していた旨を必ず申告しましょう。

鳥・動物との接触を避ける

鳥インフルエンザが流行している国や地域に行った場合、現地の野鳥などの動物と不用意に接触することは避けましょう。

特に子どもは好奇心から野鳥に触ってしまうことがあるため、周りの大人が注意する必要があります。

鳥などの動物に触ったあとは、必ず手洗いを行いましょう。動物に触れなくても、鳥インフルエンザが流行している国に滞在している間は積極的に手洗いを行ってください。

予防接種は有効?

鳥インフルエンザウイルスの感染予防に有効な人間用のワクチンはまだありません。(2017年11月現在)

現在日本で一般的に行われている季節性インフルエンザの予防接種には、鳥インフルエンザを予防する効果は期待できません。

現在世界中で鳥インフルエンザ予防のワクチンの研究や開発がすすめられており、近年のうちの実用化が期待されています。

2017/2018鳥インフルエンザの発生状況:日本国内での発生は?

今年の発生状況:2017年11月26日時点

現在人間の鳥インフルエンザ感染は国内では報告されていません。ただし、鳥類の感染は11月に報告があります。

2017年11月9日、島根県で回収された死亡野鳥から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N6)が検出されました。2017/2018シーズンでは国内初の感染報告になります。

国内では過去に、愛知県や宮崎県、茨城県、埼玉県、山口県、大分県、京都府などで鳥類から鳥インフルエンザウイルスが検出されています。

今後の感染拡大の予防として、農林水産省からは畜産関係者に注意喚起が出されています。

また、2018年2月に冬季オリンピックの開催を控えている韓国で、高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出され、聖火リレーのコースが変更されるなどの影響がでています。

過去の海外での発生状況

2017年11月現在、WHO・OIEから以下の国においての鳥インフルエンザの人への感染と、感染による死亡が公表されています。

アジア インドネシア・カンボジア・タイ・中国・パキスタン・バングラデシュ・ベトナム・ラオス
中東 アゼルバイジャン・イラク・エジプト・トルコ
アフリカ ナイジェリア
北米 カナダ

このうち、2015年の中国では症例数135・死亡数39という多くの報告がされています。

また、フランスなどの欧州でも鳥類からの鳥インフルエンザウイルスの検出が報告されており、2015年にはフォアグラの輸入禁止の措置もとられました。

おわりに

毎年話題となる鳥インフルエンザの発生ですが、家畜や食用の鳥にとっての危険性以外にも、ウイルスが変異し「新型インフルエンザ」となって人間の間で流行する危険性があります。

現在の日本国内において過度に心配する必要はありませんが、鳥インフルエンザのニュースなどには注目し、海外旅行の際などには十分注意してください。