気がつくと、子どもの顔や腕、足などに、水ぶくれができていたり、かさぶたができていたり、ひどいときは火傷のようにただれたり...そんな経験がある人も、多いのではないでしょうか。
皮膚のただれや、かさぶた、火傷もしていないのに水ぶくれができていたりするのは、「とびひ」と呼ばれる皮膚の病気かもしれません。
とびひの水ぶくれや、かさぶたには、原因となる細菌がたくさん。
そこを触った手で、あせもや虫刺され、傷口など、肌の弱った部分に触れると、火事が飛び火するように、あっという間に広がっていきます。
今回は、とびひの気になる、症状や、原因、治療法、予防法などについて解説していきます。
とびひの原因は、どこにでもいる細菌
とびひの正式名称は伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)。
あせもや虫刺されを、掻いてできた小さな傷や、転んでできた擦り傷などから、細菌が入り込むことで起こります。
主な原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌と、化膿レンサ球菌(別名、溶連菌)。
どちらも常在菌の一種で、鼻の穴や皮膚、自然の中など、身の回りの、いたるところに存在しています。
日本では、黄色ブドウ球菌が原因でとびひとなることがほとんどです。
傷口から皮膚に侵入し、増殖する際に出す毒素が原因で発症します。
また、とびひがよくみられるのは夏場です。
あせもや虫刺されの機会が多いこと、汗をかいて皮膚の清潔が保ちにくいこと、菌が増殖しやすい環境(高温多湿)であることから、流行しやすいといわれています。
汚れた指や爪、鼻の穴をいじったあとの指で、あせもや虫刺されを掻いたり、傷口に触れたりすると感染が広がり、あっという間に、全身に飛び火していってしまいます。

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とびひは2種類あり、それぞれ症状が異なります
とびひには、水ぶくれができる水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)と、かさぶたができる痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)、2つの種類があります。
それぞれ原因菌が異なることが特徴です。
- 水疱性膿痂疹の原因・・・黄色ブドウ球菌
- 痂皮性膿痂疹の原因・・・化膿レンサ球菌
皮膚についた傷や、何らかの原因で肌のバリア機能が弱まると、そこから菌が侵入し、水ぶくれやかさぶたなどを作ります。
特に、アトピー性皮膚炎では、通常よりも掻き傷が多く、皮膚のバリア機能も低下しているので、とびひにかかりやすい傾向があります。
水ぶくれタイプのとびひ・水疱性膿痂疹の症状
黄色ブドウ球菌が原因のとびひ「水疱性膿痂疹」では、水ぶくれ(ジュクジュクしたできもの)や膿胞(膿が溜まった状態)ができ、かゆくなります。
水ぶくれや膿疱は、掻くと簡単に破れてジクジクします。
水ぶくれや膿疱内の液体や、ジクジクした皮膚から染み出す液体には、原因菌や毒素が含まれており、周りの皮膚に触れることで、飛び火のように拡散。
この液体を触った指からも、感染は広がっていくので、あっという間に全身に広がっていってしまうのです。
水疱性膿痂疹にかかりやすいのは、小学校に上がる前の乳幼児。
好奇心が強い年頃なので、鼻をよく触ったり、身体のあちこちを触ったりと、知らないうちに感染を広げがち。
特に夏場は、菌が繁殖しやすいため、とびひになる子どもが多くなります。
暖房が効いた室内でも、菌は繁殖しやすく、近年では、冬でもとびひにかかる子どもが増加傾向に。
日本で発生するとびひの、実に90%以上が、水疱性膿痂疹だと言われています。
かさぶたタイプのとびひ・痂皮性膿痂疹の症状
夏場に多い「水疱性膿痂疹」に対し、かさぶたタイプのとびひ「痂皮性膿痂疹」は、四季を問わずあらわれることが特徴です。
最初は、小さな水ぶくれや膿疱(膿がたまった袋のようなもの)ができ、のちに分厚いかさぶたとなってあらわれます。
こうしてできたかさぶたは、やがて全身に広がっていきます。
多くの場合、こうした症状が出たときには化膿レンサ球菌と同時に、黄色ブドウ球菌にも感染しています。
強い炎症によって、発熱や喉の痛みが出ることも。
このほかリンパ節の腫れによるヒリヒリ、ジンジンといった疼痛がみられることもあります。
子どもだけでなく、大人にも多くみられるタイプのとびひですが、日本での発生率は10%未満とごくわずかです。
稀にみられるとびひの合併症
稀ではありますが、とびひには合併症がみられます。
その代表が、ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群と小児腎炎です。
これらの病気は、飛び火の原因である黄色ブドウ球菌や、化膿レンサ球菌によって発症します。
≪ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS症候群)≫
黄色ブドウ球菌の出す毒素が、血液の中にまで入り込むことで発症。
7歳未満の乳幼児に多く見られ、高熱を出し、真っ赤に腫れた皮膚に触ると、とても痛がります。
多くの場合、入院しての治療が必要に。
≪小児腎炎≫
化膿レンサ球菌が原因の場合、この菌が腎臓に影響を及ぼし、腎臓の働きを悪くすることが、稀に起こります。
熱が出てから1~2週間後に、血尿やむくみ、全身のだるさなどが症状としてあらわれます。
とびひの治療後に、身体の調子が戻ってこないときは要注意。

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とびひの原因は細菌なので、治療には抗生剤を使います
とびひは細菌が原因なので、治療に使われる薬は、主に抗生物質。
通常使用するのは、塗り薬と飲み薬です。
塗り薬は患部に塗ったあと、患部全体をガーゼで覆います。
カーゼは1日に数回交換することで、皮膚を清潔に。
また、とびひはかゆいので、掻きむしった手から広がらないように、かゆみ止めの薬でかゆみを抑えます。
症状が軽いときは、塗り薬などの外用薬での治療で済みますが、化膿レンサ球菌が原因で、重い症状が出ているような場合は、抗生剤を点滴で全身投与することもあります。
シーン別、とびひの治療の注意点
とびひは周囲にうつりやすく、幼稚園や保育園、学校での感染のほか、兄弟間での感染も多いです。
患部に触れた手で触ったり、同じタオルや衣類を使うことでうつるケースも。
とびひの患部を触らせないよう、しっかりとガーゼで覆い、タオルなどは別々のものを使うようにしましょう。
≪海水浴やプール≫
海の水は染みるので、治るまでは、海水浴は避ける方が良いでしょう。
プールの水で感染しないものの、患部を触ったり、ほかの子と接触すると、うつる可能性があるので、完治するまでは禁止されています。
≪登園や登校≫
幼稚園や保育園、小学校には、医師の許可なく行くことはできません。
医療機関で治療し、患部をカーゼでしっかりと覆っていれば、行くことが可能となるので、早めに皮膚科や小児科などの、医療機関を受診しましょう。
ただし、患部が広範囲にわたっていたり、全身に広がっている場合、治るまでは休ませましょう。
≪お風呂やシャワー≫
とびひの患部から出る液体から、ほかの人うつるので、お風呂は避けて、シャワーにしましょう。
身体を洗うときは、石鹸をよく泡立てて、優しく洗い皮膚を清潔に。
兄弟がいる場合は、とびひになっている子は、最後に入浴させましょう。

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皮膚を清潔に保つことで、とびひを予防ましょう
とびひの予防は、皮膚を清潔に保つことが最も大切です。
様々なものに触れる機会が多い手は、よく洗い、お風呂やシャワーで全身を清潔にするよう心がけましょう。
鼻の穴や爪は、黄色ブドウ球菌の温床となりやすい環境です。
鼻の下から発症するケースが多いので、子どもには、鼻や鼻の穴をいじらないように、言い聞かせましょう。
爪は短く切り、掻きむしって皮膚を傷つけないようにすることも大切です。

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とびひの治療は、お早めに
とびひは、早く治療を始めるほど、治療に必要な期間が短くなります。
放置したり、間違った対処をすると、症状が悪化することも。
また、とびひに似た症状は、アトピー性皮膚炎、水いぼ、あせも、接触皮膚炎、水ぼうそう(水痘)でも、よくみられます。
水ぶくれや、かさぶたができたときなどは、自己判断は禁物。
早めに、皮膚科などの医療機関を受診しましょう。
普段から手洗いやシャワー、お風呂などで皮膚を清潔に保ったり、細菌の温床となりやすい爪を短く切っておくことで、細菌の繁殖を抑えたりして、予防することも大切です。