アトピー性皮膚炎は、強いかゆみの湿疹が全身のあらゆる場所に生じる皮膚のトラブルです。
病名は誰でも知っていると思いますが、アトピー性皮膚炎には、「アトピー素因」というものが関与している場合と、そうでない場合があり、見た目だけでは判断がつきにくい疾患です。
乳幼児は生後2か月以降から起こることがあり、適切なケアが非常に大切です。
原因や症状、治療法を確認しておきましょう。
アトピー性皮膚炎の症状
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが「アトピー性皮膚炎」の特徴です。
慢性化することも特徴で、数年以上続くこともあり、症状にもかなり個人差があります。
症状は、皮脂の分泌が異なるため年齢によって変化していき、季節的な変動もあります。
多くの場合、乾燥のため冬にひどくなりますが、逆に汗や細菌によって夏にひどくなる場合もあります。
◼︎生後2〜3か月〜1歳頃までに多い症状の特徴
・ジクジクしたかゆみのある赤い発疹
・引っかくと汁が出る
・顔、首、わき、ひじ、背中、太ももの付け根、お尻にできやすい
・全身にできることもある
・耳の付け根がただれて切れる(耳切れ)
◼︎2歳〜10歳頃に多い症状の特徴
・手足が荒れたり、ひざの裏や手足の関節がカサカサになる
・ささくれ立って皮が剥けることもある
・頭皮が乾燥し、白いフケのような発疹が出る
・皮膚がゴワゴワと硬くなりしこりができる
アトピー性皮膚炎の原因は?
赤ちゃんはもともと皮膚のバリア機能が未熟なため、色々な刺激に敏感で、水分も抜け出しやすく乾燥気味です。
「アトピー性皮膚炎」は、体質や環境など様々な要因が関係して起こります。
「アトピー素因」によるもの
アトピー素因とは「遺伝的にアレルギー反応を起こしやすい体質」のことです。
家族にそのようなアトピー素因があると、アトピー性皮膚炎になりやすいということがあります。
また、必ずしも家族性が関係する訳ではなく、家族にアレルギーがなくても子どもに起きることもあります。
アトピー素因から起こる病気は、アトピー性皮膚炎だけではなく、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギー、花粉症、結膜炎などがあります。
通常、体を守るために「免疫」が働きますが、アトピーの人は異物(アレルゲン)に過敏に感応して、気管や鼻、皮膚や目などに炎症を起こしてしまいます。
ダニ・ホコリなどのハウスダストや、卵などの食べ物などがアレルゲンとなります。
アレルギー以外によるもの
科学物質による刺激や、乾燥による皮膚のバリア機能の障害によって起こることがあります。
衣服などの刺激や、汗をかいたときの発疹が悪化するなど、もともとの皮膚の性質によるところも大きいといえます。
発疹にも色々なタイプがあり、アトピー性皮膚炎と勘違いすることも多数あります。
アトピー性皮膚炎には、あらゆる原因があげられますが、これらの関係性や原因は人によって異なります。
アトピー性皮膚炎の診断
生後2~3か月頃までの赤ちゃんは皮脂分泌が盛んなため、湿疹ができることがよくあります。
乳児湿疹、脂漏性湿疹、あせも、とびひ等の湿疹との区別がつきにくいことがあり、発疹だけで「アトピー性皮膚炎」と判断することができません。
小児科では、主に血液検査により、抗原(アレルゲン)の有無を検査することがあります。
乳児期では 2か月以上、幼児期では6か月以上発疹が持続した時点で「アトピ-性皮膚炎」と診断されます。
アトピー性皮膚炎の治療法
アトピー性皮膚炎の治療法は、原因や悪化の度合いによって異なります。
食物が抗原となる場合、特に0歳~1歳のアトピーには、卵や牛乳、小麦などのアレルギーがあることが多く、検査の結果それらによって起こる場合には、陽性となった食物は、一定期間除去が必要となります。
治療の基本は「ステロイド軟膏」と「正しいスキンケア」です。
ステロイド薬の副作用を心配する方も多いようですが、ステロイド薬には強さの段階があります。
症状がある程度強いときに使用し、その後は非ステロイド軟膏に切り替えるなど、症状の程度や部位に応じて、外用剤を適切に使い分ける事が大切です。
ステロイドを使わない、または使い方に誤りがあると悪化するケースがあります。
その他、かゆみや炎症がとくに強い場合は、かゆみ止めの「抗ヒスタミン薬」や「抗アレルギー薬」を内服することもあります。
炎症が治まれば、清潔と保湿のケアでよい状態を保つことも可能です。
薬の使い方や頻度は、医師の話を良く聞き、適切なケアをしましょう。
アトピー性皮膚炎は悪化の予防対策が重要!
アトピー性皮膚炎は、日頃の対策が大切です。
アトピー性皮膚炎の発症のきっかけとなったり、悪化の原因となる環境をつくらないよう、次のような対策を取りましょう。
●室内全般の清掃、換気
●布団、じゅうたん、カ-ペット、ソファなどのダニやカビ対策
●爪を短く切る
●汗は早く流す
●冬は保湿剤のシップなどのスキンケアをする
原因となる可能性があるものは排除する環境作りがとても重要です。
おわりに
アトピー性皮膚炎は原因も様々で、治療も長期に渡ることが多い病気です。
すぐには改善しないこともありますが、早ければ2~3歳、ほとんどは思春期までには回復しています。
医師とよく相談して、焦らずにケアを続けることが大切です。