薬は、正しい使い方をすることで初めて効果を発揮します。
逆に、間違った使い方をすることで副作用が出やすくなってしまうことがあります。
この記事では、市販のステロイドの塗り薬の正しい使い方と使用上の注意点について、軟膏・クリーム・ローションといった剤形ごとに詳しく解説します。
ただし、薬の使い方について医師から指示がある場合は、自己判断で使用せずに、必ず医師の指示にしたがってください。
ステロイドの塗り薬の正しい使い方
市販のステロイドの塗り薬は、軟膏・クリーム・ローションという剤形ごとに使い方や注意点が少し異なります。
まずはそれぞれに共通する使い方や注意点について解説します。
塗り方のコツ
まず、塗り薬を使用するときは、手をきれいに洗っておきましょう。患部も同様に、水や石鹸、消毒液などで清潔にしておくと良いでしょう。
また、水分によって薬のチューブへの細菌汚染を防ぐため、薬を塗る前には洗った手をよく拭き、水分が残らないようにしてください。
薬の塗り方は、剤形や薬の種類によって多少異なりますが、原則として薬を皮膚に塗るときは、あまりゴシゴシと強く擦り込むと肌を傷つけてしまうので、やさしく塗りましょう。
保湿剤と重ね塗りする場合の順番
保湿剤とステロイドの塗り薬を重ねて使用する場合は、まず保湿剤を塗り、そのあとにステロイドの塗り薬を塗りましょう。
先にステロイドの塗り薬を塗ってその上から保湿剤を使用すると、保湿剤を塗り広げたときにステロイド薬まで広範囲に広がってしまうので、必ず保湿剤を先に塗ってください。
また、市販薬の中には、重ね塗り禁止の薬もあるので、事前に添付文書をよく読んでから使用してください。
なお、複数の塗り薬を使用するとき、塗る順番について医師から指示がある場合は、必ず医師の指示にしたがってください。
塗る回数
ステロイドの塗り薬を使用する回数は、朝と夕の1日2回が原則ですが、炎症など強い場合は1日3回使うこともできます。
また、ステロイド成分の強さによって塗る回数が異なる場合があります。
強さがストロングクラス以上のステロイド薬「フルコートf」「ベトネベートクリームS」「ベトネベートN軟膏AS」は、症状が改善し始めたら使用回数を1日1回に減らすと良いでしょう。
強さがミディアム・ウィークのステロイド薬は、1日1回よりも1日2回の方が効果が出やすいという報告があります。
なお、原則として、塗り薬の塗る回数について医師から指示がある場合は、医師の指示にしたがってください。
塗るタイミング
塗り薬を塗るタイミングとしては、入浴後が適しています。
入浴直後の皮膚は、柔らかくなっているため、薬の吸収がよくなります。特に、手のひらや足の裏などの皮膚が厚い部位は、入浴後に塗ると良いでしょう。
1日2回の使用が推奨されている薬の場合は、朝と夕(入浴後)に使用することをおすすめします。
塗る部位
ステロイド成分が皮膚からどの程度吸収されるか(経皮吸収率)は、皮膚の部位によって異なります。
基本的に、皮膚の薄い部位は、薬の成分を吸収しやすいため、顔にステロイドの塗り薬を使用するときは、原則としてミディアムクラス以下のステロイドを使用してください。
顔以外に、脇・足の付け根なども薬の成分の吸収率が高いため、ステロイド成分が配合された薬を使用する際は、特に注意を払う必要があります。
また、市販薬の場合は、自己判断で陰部にステロイドを使用することは避け、陰部に症状がある場合は、泌尿器科などを受診してください。
使用上の注意点
市販のステロイドの塗り薬を使用する場合は、5〜6日間使用しても症状が改善しないようであれば、使用を中止してください。
発疹・かゆみ・皮膚炎などにステロイド成分が配合された薬を使用する場合は、なるべく患部以外の正常な皮膚に薬剤が付かないように、丁寧に塗りましょう。
また、薬によって使い方や副作用が異なるので、薬を使用する際は必ず添付文書をよく読んでから使用してください。
軟膏・クリームタイプのステロイド薬の使い方
軟膏とクリームは、使い方が似ている部分が多いため、まずは両方に共通する使い方について解説します。
塗り方
軟膏・クリームの塗り方は、やさしく伸ばして塗る方法と、しっかりと擦り込む方法の2種類があります。
基本的には、軟膏・クリームを塗るときはやさしく塗ってください。
あまり強くこすると肌にダメージを与えてしまうので、ゴシゴシと擦り込むのではなく、やさしく繰り返し塗るイメージを意識しましょう。
スキンケアとして使用する保湿剤や、筋肉痛などに使用する消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい)の場合は、擦り込むように塗ると体内に吸収されやすくなり、より効果が得られますが、ステロイド薬は塗り方が違うため注意が必要です。
塗る量
軟膏・クリームを1回に塗る量の目安をはかる場合は、人差し指を使いましょう。
薬のチューブを絞り、人差し指の先端から第一関節まで出した量(約0.5g)が、手のひら2枚分程度の面積に相当します。
ただし、容量が5g程度の小さいチューブの場合は、人差し指の先端から第一関節までを2回絞り出した量が手のひら2枚分程度の面積に相当します。
市販薬の場合、1回に塗る量はこの手のひら2枚分まで、塗る広さによって絞り出す量を調節します。
たとえば、手のひら1枚分に塗る場合は、絞り出す量も半分に減らしてください。
実際に薬を出してみると、量が多いと感じる方もいるかもしれませんが、軟膏・クリームは量が少ないと十分な効果が得られないことがあるため、目安通りに塗ることをおすすめします。
塗る量がわからない場合は、医師や薬剤師に相談してください。
使用期限
軟膏・クリームの使用期限は長く、開封しなければ数年間使用できるものもあります。
多くの場合、正確な使用期限は、薬のチューブのキャップと反対の部分に書いてあります。
開封後の使用期限は、製品や保管方法によって異なり、一概には言えません。
基本的には開封後の使用期限は、おおよそ6か月から1年程度が目安になります。
薬が分離していたり変色していたりと、外観に変化がある場合は、使用期限内であっても破棄してください。
また、薬を塗るときに、チューブの先端を直接つけて使用する場合も、チューブが細菌に汚染されて薬が使用できなくなるので注意が必要です。
薬を塗る前に手を洗うとともに、塗るときは指や綿棒に絞り出してから塗ると衛生的です。
軟膏とクリームの使い方の違い
軟膏とクリームでは、塗る部位と塗る量に関して使い方が少し異なります。
【塗る部位の違い】
軟膏はジュクジュクした患部とサラサラした患部の両方に使用できます。
クリームは、一般的にサラサラした患部に使用することが多く、ジュクジュクした患部には使いません。
軟膏は保護作用が強く、なおかつクリームよりも刺激が少ないものが多いのですが、クリームの方が塗り心地は滑らかで、水で洗い流しやすいというメリットがあります。
【塗る量の違い】
軟膏を塗るときは、患部が少しテカテカとする程度が目安です。
クリームを塗るときは、クリームの色が消える程度が目安です。
ローションタイプのステロイド薬の使い方
ローションタイプの薬は、水やアルコールを配合している場合が多く、皮膚への浸透力が高いのが特徴です。
軟膏・クリームタイプの薬とは、使い方が若干異なるので注意が必要です。
塗り方
ローションタイプの薬は、使用前に容器をよく振ってから使用してください。
塗るときは、軟膏・クリームと同様に、強くこすらずにやさしく塗ってください。
塗る量
ローションタイプの薬の場合は、薬を1円玉程度の大きさに広がるように出した量(約0.5g)が、手のひら2枚分程度の面積に相当します。
また、薬を塗ったときに皮膚が少し光る程度もひとつの目安になります。ただし、薬の種類によって塗る量が異なるので、添付文書をよく読んでください。
使用上の注意
ローションタイプの薬は、刺激性が比較的強いため、傷口への使用には適していません。
また、ローションタイプの薬には、アルコールが含まれているものが多く、液剤を床に垂らしたり、薬を触った手でメガネなどを触ると塗装が剥がれることがあります。
使用後は、すぐに手を洗うとともに、火のそばで使用・保管をしないように気をつけましょう。
使用している薬にアルコールが含まれているかどうかがわからない場合は、添付文書を確認しましょう。添付文書を見てもわからない場合は、薬局・ドラッグストアなどの薬剤師に確認しても良いでしょう。
おわりに
薬の塗り方について医師から指示がある場合は、原則として医師の指示にしたがいましょう。
また、薬の塗り方がわからない場合は、医師または薬剤師に相談してください。
薬の使い方について詳しく知りたいときは、ミナカラ薬剤師Q&Aで無料で相談を受付けていますので活用してみてはいかがでしょうか。